『人声天語』 第98回「Japanese New Music Festival European tour 2003 日記」第6週目

第1週目 第2週目|第3週目|第4週目|第5週目|第6週目

第6週目

11月5日「オフ.2(Sardegna)」

8時起床。津山さんが昨夜購入した米を炊いているので、同じく昨夜買ったステーキ肉を焼く。更に切り落としたスジを煮込み、茄子とワカメを合わせスジ汁も作る。朝飯は、御飯+スジ汁+漬け物(茄子&キュウリ)+ステーキ(ガーリック風味)+ふりかけ。漸くパスタから解放された喜びはひとしお。洗濯、昨日は室内に干して乾きが悪かった為、2階の外にあるTVアンテナにハンガーを吊るす。Stefaniaに電話するが全く通じず、さて今日の遺跡巡りはどうなるのやら。近所を散策し、よく分からぬキリスト教のカレンダーを購入。それにしても閑散としたこのド田舎、何も店も無ければする事もなし、ひたすらStefaniaが一刻も早く来るのを祈るのみ。少しでも早く遺跡巡りに出発したいばかりの吉田氏の苛々は、いよいよピークに達したのか、奇声をあげる等、かなりヤバい状態か。何しろ吉田氏の今回のツアーの最大の目的は、このSardegna島の遺跡巡りに他ならぬ。12時頃、彼女が漸くやって来た。開口一番「昨夜、電話をなくしちゃったの!」しかし携帯電話をなくそうが、ここの番号は知ってるであろうし、他にも電話あるやろ。後で伺った話では、実は寝坊しただけの様子。さてこれにて漸く遺跡巡り出発、されど出発時刻が遅い為、昨日立てた予定はまたしても変更され、私も楽しみにしていた鍾乳洞探検は割愛、結局近場の海岸へ。遺跡を巡りつつ、ホテルのレストランにて赤ワイン+シーフード・スパゲッティをオーダー、しかしムール貝とアサリだけやんけ!食後、Stefaniaがエスプレッソと一緒に何やらオーダーしたので、私も一緒の品をオーダー、これはどうやらシェリー酒であった。結局今日1日も遺跡巡りに終始、されど土産物屋なんぞ皆無にして、結局土産物らしいものを見たのは、初日に空港からの途中に立ち寄ったドライブインのみ。トラッドのカセットも、あのドライブインで購入しておけば良かった…今となっては後の祭り。昼はかなり暖かいが、日が落ちるとかなり冷え込む。津山さん曰く「Sardegnaでは寒い所と暑い所の植物が何故か共生している、普通では考えられない…。」

日没にて遺跡巡り終了、最後の遺跡の近くのバーにて、居合わせた森林警備員達とビールを呷る。帰路も山道を延々ドライブ、途中スーパーにて食材を購入、6時頃帰宅。Stefaniaが今夜飲みに行かないかと誘うので、すっかりお疲れの津山さんと吉田氏に代わり「OK」と返事。9時頃迎えに来ると云っていたが、果たしてどうなる事やら。晩飯は、津山さんの作った炊き込み御飯+朝の漬け物の残り+私が作ったダシ巻き…と云うよりはダシオムレツ+朝のスジ汁の残り。兎に角パスタでない事に大いに感謝。Stefaniaが「今夜もディナーを皆で…」と誘ってくれたのだが、我々3名、それを丁重にお断りして、いやはや本当によかった。明日は再びRomeへフライトの為、荷物をパッキング。洗濯物を2階のアンテナに干していた事を思い出し取りに行くが、風で飛ばされたのか見当たらず。明朝明るくなってから探索する事に。10時45分、約2時間遅れにてStefaniaとTazianaが迎えに来たので、お疲れの吉田氏と津山さんを残し、3人で近所のバーを2件ハシゴ、最後はStefaniaの実家へ、そこではライヴのスタッフ皆がディナー後に丁度一杯やっている最中。一緒に飲んでいるうち完全に泥酔。朝3時、同じくすっかり泥酔しているStefaniaに車で送って貰うが、死を覚悟した瞬間が10回以上、即寝成仏。

11月6日「Latina (Italy)」

8時過ぎ起床。昨夜飲み過ぎたので体調不良。朝飯に昨夜の御飯とスジ汁の残りを雑炊にして頂く。飛んで行った洗濯物は、隣家の屋根に引っ掛っているのを発見、無事回収。10時半、Stefaniaらが車2台にてお迎え、Cagliari空港へ送って貰う。3日間のSardegna島、素晴らしいひととき。Alitalia 1時5分Cagliari発Rome行きの便にチェックイン後、空港にてStefaniaらとお別れ。サンドウィッチスタンドにてトマトソースを挟んだパンを食す。1時間半のフライトは、ビスケット+オレンジジュースの機内サービス以外、離陸も着陸も知らず爆睡。3時半、空港からRome Termini駅行き直行列車に乗り、今度はRome Termini駅にてNapoli行きに乗り換えてLatinaへ向かう筈が、何とNapoli方面行きの列車全てを含め、ダイヤが大幅に遅れており大混乱、駅構内は大勢の客が列車待ちで大混雑。取り敢えず空腹を凌ぐ為、マクドにてビッグマックのセットを購入、一気にかき込む。5時10分に漸くNapoli行き列車が出ると判明し乗車。しかしこの列車は鈍行で、結局6時前にLatina着。駅にはオルガナイザーが迎えに来ており、今夜の会場Ridotto Teatro Comunaleへ向かいサウンドチェック。今日は「Newton Festival di musiche contemporanee」の中の1日。エンジニアが鈍臭く、我々の苛々は募る一方、音作りに一体何十分掛かってんねん、このボケがぁ~!得てしてこの手の「アカデミック」さを気取るボケエンジニアは、「音とは何たるか」も判っておらぬ癖に、妙に細々としたディテールに固執しがちで、自分が「音楽を作っている」なんぞと思い上がりも甚だしい事極まりなし。何ヌカしとんじゃ、このタニシがぁっ!サウンドチェック後、レストランにてスタッフらと共に夕食、エビやイカ等の海鮮トマトソース・スパゲッティ+赤&白ワイン+エスプレッソ。これはかなり旨かった。本当はイカ墨スパが食いたかったが、残念ながらここにはあらず。10時開演、客の入りは150人程度か。コンテンポラリーと云う事で、AMT mode HHHは、弓弾きを多様した少々それっぽいアプローチも織り交ぜ、アンコールでは津山さんのベース裏返しネタ等も炸裂。終演後、早々にホテルへ車で送って貰う。ホテルは海傍に建つリゾートホテルのような感じで、ダブルの個室なれば、独りで泊まるのが勿体ない程のムード溢れる環境。窓を開ければ眼前にビーチが広がり、波の音が絶え間なく聞こえる。シャワー&洗濯、テレビで「Mega Erotica」なるストリップのライヴを鑑賞、されど男のモデルも出て来るのには閉口。波の音が心地よく、明朝は早起きにてビーチを散歩でもしてみたいもの。波音を聞きつつ3時就寝。

11月7日「Venezia (Italy)」

7時半起床。朝飯はオレンジジュース+クロワッサン1個+乾パンのようなトースト1枚+カプチーノ、典型的なイタリアン・ブレックファースト。海岸を散歩、釣り人がまばらにいるのみ。9時に昨夜のオルガナイザーが車でお迎え、Latina駅まで送って貰う。駅にてクロワッサンとクリームパンを購入、お弁当に。9時58分発Venezia行きICに乗車、6時間の列車の旅。流石に3人ともかなり疲れ気味にして空腹、されど相変わらずギャグ連発。吉田氏は9日からの藤井郷子カルテットの曲を覚えたりもしている。4時Padova着、駅にはSillyboyのオーナーMarco(通称「大マルコ」)とJeniffer GentleのヴォーカリストMarco(通称「ちびマルコ」)そして東君&Tiffanyがお迎えに。東君&Tiffanyは既に数日イタリアで過ごしているらしく、サッカー狂なれば既にセリエAの試合観戦にて中田も観て来たそうな、今夜は8時半にJeniffer GentleのドラマーAlessioに駅にてピックアップして貰うとかで、ここで一時お別れ。大マルコの車で彼のマンションへ、取り敢えず荷物を降ろすやビールで乾杯。大マルコの彼女がペンネを作ってくれると云うので、我ら3名は頑なにスパゲッティーを要求、わざわざ買いに行って貰う事に。トマトソースのみのスパゲッティー、日本で云うなら玉子御飯みたいなものか。されど空腹なれば津山さんと吉田氏はおかわり、それにしてもこの2人は本当によく食う、量もそうだが、いつも何か食っている。6時と云われていたサウンドチェックを8時に変更してもらい、食後は大マルコと雑談、つい先日行われたCottonのThe Birdsのコンサートの様子等も伺う。7時、大マルコ宅を車にて出発、今夜の会場であるJam Clubは隣のVeneziaなれば車で50分。前回のAMTツアーの際には、アンプの件で問題がいろいろ生じた為、今回は苦労してマーシャル等のデカいアンプを揃えてくれたらしい。サウンドチェックを手早く済ませ、近所のレストランにてスタッフ共々夕食、エビのクリームソース・スパゲッティー+サラダ+ワインをオーダー、しかしここのスパゲティーは滅法不味い、それでいて斯様な場合に限り量が滅法多いと来る。空腹なれば、勢いに任せスパゲッティーは何とか完食、しかし一気に胸焼け&胃もたれを起こし、何故か後から出て来たサラダには全く食欲も湧かず、ちょっと箸をつけたのみで残し、最後はエスプレッソ。今日は当初10時半開演だった筈が、結局11時開演と云われ、されどなるべく早く終演して帰路につきたい我々は、10時45分頃、勝手にステージに上がりさっさと開演。兎に角遅い開演(=遅い終演)は辛い。何しろ我々3名とも早起きを信条としている為、遅い開演であれば、兎に角眠たい事この上なし。またツアーも1ヶ月を越えた辺りから、疲労度がいきなり倍増してくる故、なるべく早くベッドに入りたいと切望してやまぬ。客はこのクラブの場所が辺鄙で判かり辛い事もあってか150人程度。全体的にかなり疲れた演奏、日本人女性らしい客も見受けられたがヤケクソで下ネタ連発、AMT mode HHHは東君のゲスト参加でかなり救われたか。終演後さっさと帰路につき、2時、大マルコ宅着。御年配の吉田氏&津山さんは即就寝、私は大マルコとビールを飲みつつ歓談、結局朝4時就寝、と思った矢先、突然吉田氏の寝言ならぬ寝絶叫「ああああ~っ、もうやだぁ~!」既にSardegna島にての遺跡観光も終えた今、吉田氏も望郷の念に駆られているのか。

11月8日「Mezzago (Italy)」

9時起床。日を追う毎に朝起きる事が辛くなりつつある。これは昨秋のAMTヨーロッパ・ツアー終盤と全く同じ症状、かなりの疲労度と推測出来る。吉田氏と津山さんは、既に朝飯のスパゲッティ-を食したとか。昨夜の吉田氏の寝絶叫の話に本人もバカ受け。流石に3人とも「帰国」が見えて来ただけに、今が一番辛い頃合か。エスプレッソをやりつつネット接続、ところがiBookの調子いと悪し、これは下手すればHD交換か。大マルコから、Alessioの家にて皆で昼食を会食すると聞く。今夜はMilanoの近くMezzagoにてライヴ、移動はここPadovaから2~3時間見ておけば充分であろうから、3時辺りにPadovaを出発すれば余裕か。されど用意されているホテルがMilanoなのかMezzagoなのか、何しろ明日はフライトについて、Londonへ飛ぶ私とBerlinへ飛ぶ吉田氏はMezzagoに近いBergamo空港、帰国便の津山さんはMilano市街を挟んで反対側に位置するMalpensa空港からのフライトの為、今夜宿泊する場所は、明日の予定にいくらか影響を及ぼす。されどオルガナイザーと連絡取れず、結局判然とせぬまま。12時半、ちびマルコもやって来て一緒にAlessio宅へ。車にてどんどんとPadova市街から外れ田舎の方へ向かう。前回のツアーで訪れた際、確かAlessioの家はこれほど郊外ではなかったと記憶するが、一体何処へ向かっているのか。Padovaから列車に乗るつもりであるにも関わらず、何故斯様に駅から遠く離れた場所にて昼食を取ろうと思い立つのか、どうやらイタリア人には「効率」と云う思考回路は存在せぬらしい。結局車は高速道路まで使い、30分以上のドライヴにてAlessioの実家へ到着。着いてみれば未だAlessio&東君一行は到着しておらず、もう我々は、何時の列車に乗ろうか、ホテルが何処であるか等と考える事も不毛と悟り、斯くなる上は用意された赤ワインを飲み倒す事に決定。やがてAlessioと東君とTiffanyも到着、追っていろんな人が訪れる。メニューがパスタと聞き、我々3名はスパゲッティーをリクエストすれど聞き届けられず、されど忌み嫌うペンネではなかった為、「better than penne!」と承諾すれば、ちびマルコが大いにウケて「better than penne!」を連呼。ミートソースのパスタ+赤ワインを平らげた後、イタリア特産の強烈なリキュールの試飲会となり、何となくほろ酔気分。結局4時半に、ここの最寄りの駅から列車を乗り継ぎ、Padova経由でMilanoへ行く事と決定した我々、もうヤケクソで飲みまくる。クレイジーな昼食会も終わり、今夜もジョイントする東君とTiffany共々、最寄りの駅から列車に乗り一路Milanoへ。車中では酔いも回り爆睡、更に異常なる疲労を感じて来た為、ここで先日Parisで購入した抹茶羊羹を食す。Padovaにて乗り継いだMilano行きが鈍行であった為、Milano到着は予定を1時間オーバーした7時。ここで漸くオルガナイザーと連絡が取れ、地下鉄にて待ち合わせ場所へ向かう。地下鉄に乗る事15分程度、待ち合わせ場所の駅からオルガナイザーの車にて今夜の会場Bloom Clubへ向かう。MezzagoはMilanoからかなり離れており、高速道路に乗り約30分、漸くクラブへ到着。ホテルはここから更に10km離れているとかで、津山さんが明日フライトするMalpensa空港までは、およそ100kmもあるとか。軽くサウンドチェックを済ませ、夕食はクラブにてピザ各種。ピザ好きの東君は、もうかれこれ既に5日間程イタリアに滞在しておれど、未だピザは食い足らぬと喜んでいるが、イタリア料理にうんざりしている私と津山さんは、これがたとえ今回のツアーにて初めてピザであるにせよ、もう見るだけでゲンナリ、食欲も湧かぬ。マッシュルーム+ガーリックのピザを何とか2切れ食べてみればいきなり胸焼けを起こし、後は赤ワインを飲むのみ。向いの席にて次から次へと、至福の面持ちにてピザを平らげて行く東君の姿が対照的。偶然クラブ内にレコード屋を発見、津山さんに告げるや、ツアー最終日なればこそといろいろ買い漁っている。11時開演、客入りはほぼ満員。

いよいよ最後のライヴと云う事で、今夜のZUBI ZUVA Xはレパートリー全4曲を演奏。ワールドミュージックの冒頭、津山さんの「ネタ」で私と吉田氏は爆笑してしまい仕切り直し。赤天の「ワイン」で再びゲスト参加。RUINSは「Vrresto」を含むノリの良いナンバー連発で大いに盛り上がる。ZOFFYも津山さんが語り部に扮する「トルバドール」の総決算、AMT mode HHHはスペシャル・ゲスト東君を迎えて爆裂、アンコール「Hyderomastgroningemn」にて終演、これにて全31公演無事終了。終演後、QbicoのEmanuele一行と歓談。2時頃、車でホテルへ送って貰いチェックイン、ツアー最後の夜は我々3名同部屋。明日9時にクラブのスタッフが、津山さんと東君&Tiffanyをここから近くの駅へ送ると云っていたが、津山さんは明日の空港へのアクセスやKovenhagenでのトランジットが少々不安の様子。何しろイタリア人(に限らずヨーロッパ人)は時間にルーズな事この上なし。iBookの調子は更に悪化、帰国したら即リペアに出さねば。最後の夜らしく、何となく落ち着かぬ雰囲気を漂わせつつ、3時前に就寝。

11月9日「全日程が終わって」

6時半起床。3名揃って朝食、4つ星ホテルなれどロクな物はなく、クロワッサン1個+ゆで玉子2個+オレンジジュース+シリアル+コーヒーを食す。シャワー後、フライト用にパッキング。8時頃、東君とTiffanyが朝食を誘いに来たが、勿論我々は既に終えている。9時前に津山さんと東君&Tiffanyはチェックアウトし、ホテル入り口にてお迎えの車を待つ、私と吉田氏はお見送りに。ところが案の定、車は9時15分になれどやって来ぬ。痺れを切らせた津山さんはタクシーを呼び、結局タクシーの方が早く到着、「200ユーロかかっても構わへんから、もうタクシーで空港へ行く!」と、津山さんは独りタクシーにてMalpensa空港へ。このタクシーと入れ違いに漸く迎えの車が到着、東君とTiffanyともここでお別れ、彼等は今夜Milanoにて再びセリエAの試合観戦とか。そして吉田氏と2人が残った。10時半にお迎えの車が空港まで乗せて行ってくれる事になっている。吉田氏は今夜から藤井郷子カルテットのヨーロッパ・ツアー、私はイギリスにて鈴木清純監督作品「ツィゴイネルワイゼン」のライヴサントラのソロ・コンサートが2発、2人とも一足早く帰国の途についた津山さんが羨ましい限り。10時半にお迎えの車でBergamo空港へ。私は3時40分のフライトである為、未だチェックイン出来ず、既にチェックインを済ませた吉田氏と一緒にカフェにてカプチーノをすする。11時50分、吉田氏の搭乗時間が近づき、これにてお別れ。空港内のビストロにてステーキ+サラダ+赤ワインを食し、ひたすらチェックインを待つ。2時台のフライトが皆無と云うのも至ってイタリアらしいのか。1時40分漸くチェックイン、3時40分London Luton空港行きのフライトにて私も一路Londonへ。今頃、津山さんは成田へ向かう機内であろうし、吉田氏は既にBerlinに降り立った頃合か。これにて「JAPANESE NEW MUSIC FESTIVAL European tour 2003 日記」も幕。

12月12日(金)@梅田Hard Rainにて国内唯一の「JAPANESE NEW MUSIC FESTIVAL tour 凱旋帰国公演」あります。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

Welcome to JAPANESE NEW MUSIC FESTIVAL!

第1週目 第2週目|第3週目|第4週目|第5週目|第6週目

Share on Facebook

Comments are closed.