『人声天語』 第107回「旅姿4人衆ぶらりアメリカ彷徨記(Acid Mothers Temple US tour 04)」#6

6月2日(水)

午前7時半起床、久々に快眠。昨夜東君が夕食にオーダーすれど、結局食欲不振なればテイクアウトしては放ったらかしにされていたBBQバーガーを朝食とす。ハンバーガーにはウンザリなれど、「better than nothing」と云った処か。仕事に出るLucyを見送り、起きて来た東君が炊飯器を稼動、先日購入せし鮭缶をおかずにせんと思えど、これが久々の激不味な逸品なれば、鮭ふりかけとの合わせ技にて何とかこの苦難を乗り越える。本日の予定はレコード・ハンティングなれば、津山さんは朝から既に脳汁分泌状態にして、何とも落ち着きなし。
昨夜、KinskiのChrisのアンプを使用したにも関わらず、納得のいく音作りが出来なかった故、Bostonにて叩き壊したFresherのボディーにFender Mexicoのネックを移植する事を思い立ち、早速移植手術開始。無事に移植手術も終了、これにて今夜より、少しはマトモな音作りが出来るであろう。
中古レコード屋が10時にオープンなれば、朝寝坊なChrisを朝10時には起こす事になっておれど、Chrisもその空気を察して余りあったか、10時には寝惚けた顔を覗かせる。
午前11時、皆でショッピングへ繰り出す。先ずは民族楽器屋へ、と云うのも以前この楽器屋にてハーディーガーディーを購入せんとクレジットカードにて支払おうと思えば、使用可能残高が不足にして無念にも涙を飲んだ経緯あり。今回はここまでのギャラにて充分支払える故、今回こそ前回の雪辱を果たさんとの思いなり。店内に3台のハーディーガーディーの姿を確認、試奏してみれば自ずから最も作りの丁寧な逸品を選び購入。店のスタッフも、以前私が涙を飲みし事憶えていた様子、矢張りハーディーガーディーなんぞ購入せんと思いし者そう多くあらざりければ尚の事であろう。津山さんはアイリッシュ・ハープを試奏しておれば「これ持って帰られへんかなあ…。」されど斯様に巨大な逸品を持って帰るはなかなか困難なれど、それ以前に今日からもまだまだ増えるであろうレコードこそ、如何にして持って帰るか頭を痛める切実なる問題なれば、到底アイリッシュ・ハープなんぞと騒いでる場合ではあるまい。
さて楽器屋を後にして、いよいよレコード・ハンティング、先ずは楽器屋の近くにある一件へ。見つける度に絶対買ってしまうベリーダンスのLPを始め、ハーディーガーディーを購入した勢い余り、すっかり財布の紐が緩くなったか、衝動的に何枚か購入。津山さんはアメリカの野鳥の鳴き声のレコードを目敏く購入なれば、バードウォッチングが趣味の奥さんへのお土産であろう、愛妻家ぶりを披露。
次なる店のあるエリアへ移動、ここには2件の中古レコード屋があり、一件は「カスコーナー」充実にして、もう一件はサイケのレア盤等が安価にて充実せし店なり。

津山さんは前者へ、私と東君は後者へ。ここは、以前Electric Prunesの1stモノラル盤を10ドルにて購入した店なれば、今回もいろいろ掘り出し物を見つけては、脳汁分泌200%にして、冷静な判断力を完全に喪失、兎に角抜きまくり大いに積み上げてしまう。もう一店にて既に大量のレコードを購入し、すっかり興奮状態の津山さんもこちらに合流、こちらの店でもその勢い留まる処を知らず、殆ど意味不明の独り笑い状態にして、カスコーナーから次々とレコードを抜いていく様は、完全にレコードジャンキーの末期症状であろう。東君も大いに散財、サイケの王道から彼の青春のメモリアルの一枚Patti Smithの「Radio Etiopia」まで、我々に触発されたか大量購入。
レコード屋に続いて、東君が弦を買いたいとの事で、今度は楽器屋へ。ところがここで今まで沈黙を守っていたはじめちゃんが突如開眼、ラディックの中古スネアをいきなり衝動買い。満面の笑みにて、大事そうにスネアを抱えるはじめちゃん。
快晴の下、オープン・バーにてビールを呷り、Chrisと8月のKinskiのアメリカ・ツアーについての打ち合わせ等も済ませれば、さてそろそろ時間と相成り、午後4時Portlandへ向け出発。

Portlandまで3時間のドライヴ、車内のラジオにて偶然「Na Na Hey Hey」の原曲を聴き知れば、今宵のアンコールにてカヴァーしてみようと云う話になる。WWEにてお決まりの解雇劇等の場面にて聴き知った曲なれど、一体この曲がどういったものかは知らなかった故、オリジナルを聴けた事に何やら妙に感動。
今宵の会場Berbati’s Panには午後7時到着。「Na Na Hey Hey」の練習も兼ね、手早くサウンドチェックを済ませる。本日もMelyndaが友人のヘッドアンプを借りてくれた上、ギターも再び甦りしFresherなれば、昨日とは異なるダイナミクスの感じられる音作りも可能となる。
ディナーは、クラブのフード・メニューからステーキをオーダーすれど、これがスーパー・ウェルダンなれば固過ぎで、肉本来の持つ味なんぞさっぱり判らぬ程。付け合わせに野菜なんぞも付いておらず、その代わりに添えられしオニオンリングは、まるでイギリスのフィッシュ&チップスの如き、あまりの諄さに気分が悪くなる始末。

ノルウェイから来たと云う退屈な若手バンドが前座を務め、続いてSuArachnoid Spaceの出番となる。今やアメリカのアンダーグラウンド・シーンはここPortlandが一番活気づいてるとかで、いろいろ面白いバンドも出て来ていると云う話だが、そんな事が関係してかどうかは知らぬが、今宵のSubArachnoid Spaceの演奏はヘヴィーにて秀逸、Diegoは暴れまくり、はて一体何がどうしたかは存ぜぬが、兎に角今回のツアーここまでに於いてベストであった事は、自他共に認める処である。
午後10時半、我々の演奏の頃には会場は満員状態、なにしろAMT名義にてPortlandを訪れるのは初めてなれば、その期待感も物凄いものにして1曲目から大いに盛り上がる。アンコール「Na Na Hey Hey」の際には、客席は「ハイドパーク踊り(人声天語第80回「嗚呼、フィンランド…(後編)」参照)」状態にて、「今は一体西暦何年であったか?」そんな思いさえ脳裏を過る。大いに盛り上がり2時間のライヴは終了、ステージを下りるとMelyndaが大層感激していたのが印象的。
しかし問題はこの直後に勃発。ステージ横に立て掛けてあったMelyndaのギターが、何かの拍子で倒れた際、ネックとヘッドのジョイント部分辺りから大きく裂けてしまったのである。つい先程までのMelyndaから一変、その怒りの程は筆舌に尽くせぬ程なれば、金もないからどうやって修理すればいいのかと、今度はいきなり泣き出す始末にして、挙げ句は修理代を出してくれと懇願。明日San Franciscoに戻るや、早速修理に出す運びとなり、結局我々が修理代を出す事で、彼女も安堵したのか、今度は途端に御機嫌となり、まあ何とも喜怒哀楽の激しい事、付き合いきれん…。

Strange Attractors Audio HouseのChrisからRebel PowersとつるばみのCDを受け取り、今宵の投宿先へ向かう途中、セブンイレブンにてホットドッグ1個と即席ラーメン数袋とカップヌードル(ケイジャンホット味)1個、赤ワイン1本を購入。セブンイレブンのホットドッグは安価にして、各種トッピング詰め放題なれば、随分お得な事この上なし。車内にてホットドッグを食す。赤ワインはスロベニア産なれば、せめてカリフォルニア産よりは美味であろう。
今宵の投宿先は、先程アンプを提供してくれた未だ随分若そうな男の子の家。SuArachnoid Space共々御厄介になるのだが、どうやら数人でこの一軒家をシェアしている様子なれど、インテリアと云い、家電機器やAV機器と云い、「こいつらめっちゃええしのボン(金持ちの坊々)やで!」と云わずにはおれぬ程、まあ顔ぶれも間抜けで世間知らずな坊々風なれば、疑う余地もあるまい。育ちが悪いせいか、坊々を見ると兎に角無性にむかついて来る上、何か虐めたくなってくるのが心情なれば「嗚呼、何でもええから虐めたい!」しかし世話になっている故、そうもいかぬか。
荷物を解くや、先ずは赤ワインを呷り、皆と居間にて歓談でもせんと思いきや、されどこの屋敷も室内禁煙なれば、結局玄関ポーチにて赤ワイン片手に居座る事となり、自ずから喫煙組=いつものメンバーと云う事で、ここの家人とは全く言葉を交わす機会もなく、ここの家人らとMelyndaらがヘヴィーメタルなんぞ爆音で聴きつつ大騒ぎしているのを尻目に、午前4時階下の部屋のソファにて就寝。

6月3日(木)

午前7時半起床、先ずは洗濯、昨日購入したカップヌードルを食さんと思いキッチンへ向かえば、矢張り津山さんも現れ、皆が寝静まる中、いつも通り2人してしょうむないギャグに爆笑しつつ朝飯を作る。冷蔵庫にてパセリを発見、ケイジャンホット味のカップヌードルなれば相性も良いであろうと、一緒にぶち込んでみれば、こちらのカップヌードル特有のしつこさが、パセリの風味で緩和され、これは至って美味なり。
昨夜はじめちゃんから、ここでADSLにてネット接続可能である事を伺い知れば、接続に試みるが私のiBookでは不可能であった。今回のツアーにて、2人とも接続成功の時もあれば、どちらか片方のみしか接続出来ぬ時もあり、また共に接続出来ぬ場合もあれば、この情報化社会にて、何故ネット接続でこれ程苦悩せねばならぬのか。衛星回線なんぞで、いちいち電話線やらを接続せずとも、世界中どこでも容易に繋がるようにしてはもらえぬものか。結局はじめちゃんが起きて来るのを待ち、彼のiBookにて、ネット上にある自分のメール・サーバーへ直接アクセスすれば、例によって屑メールの山故、先ずはそれらの削除作業に取り掛かれば、1通のメールを残し突然全て消え去ってしまうハプニング。件名と差出人は確認しておれど、その内容を見る前なれば、憶えている限りの差出人に再度送信してくれるよう詫びのメールを送る羽目となり、全くもって踏んだり蹴ったりである。これもそもそもは、この「ええしのボン」共のせいのような気さえして来れば、朝っぱらからしょうむないドゥーム・メタルなんぞを聴いてるこいつらの頭をどつき回したくなる衝動にこそ駆られども、先程お手製のベルギーワッフルも御馳走になっておれば、ここは堪え処と、冷蔵庫から冷えたビールを取り出し呷る。

午後1時、SanFranciscoへ向け、SabArachnoid Spaceのバンとランデブー。昼食は、途中で立ち寄りしガソリンスタンドにて鶏のデカい看板「Fresh Hot Chicken」が目に入れば、

ここら辺りは鶏肉生産地なのかどうかは存ぜぬが、何故かWWEのディーヴァのひとりアイボリーの直筆サインも飾られており、彼女もお薦めと云う事なれば、きっとその筋では名の通った隠れた名店であるやもしれぬと、フライドチキンとフライドハラペーニョをオーダー。フライドチキンはカラっと揚がって美味なれど、フライドハラペーニョは中にチーズが入っており、特に溶けたクリームチーズが大の苦手な私は1個食した処でパス。Samが「BBQ肉団子」と持って来た逸品は、6~7個の巨大ミートボールが団子のように串刺しにされたもので、そこにBBQソースがたっぷり掛けらており、多少甘ったるいがなかなか旨い。
San Franciscoまでは凡そ10時間のドライヴと聞かされておれば、嘗てMainlinerのツアー時も、PortlandからSan Franciscoへは丸1日掛かった記憶もあり、斯様に長いドライヴに於いては、一体如何に退屈しのぎを考え出すか、そこが最大の問題。非常に乗り物酔いし易い質なれば、車内にて雑誌は疎か地図さえも読めぬ故、結局はただひたすらこの単調な景色を眺めるのみ。せめて時折山なんぞが見えれば気分も変わり、美峰Shastaを仰げば山男津山さんは大いに感動されている様子。
されど矢張り単調な景色に食傷気味となれば、知らぬ間にうとうとしており、起こされた時は既にSan Franciscoの巨大スーパーに到着していた。ここにて当面の食料を補充する算段なれば、必需品である野菜ジュースV8の巨大ボトル、葱やサニーレタス等の野菜各種、即席ラーメンや即席焼そば、そして焼肉のタレと700gはあろうかと云う牛ステーキ肉。そして今夜から3夜お世話になるKimさん宅へ。

SubArachnoid Spaceのリハーサル・スペースにて一旦機材を降ろす。ここSan Franciscoが地元であるSubArachnoid Spaceのメンバーは、久々に一旦自宅に戻り彼女や奥さんに会えるのが嬉しそうなり。午後11時に投宿先であるKimさん宅に到着。
韓国系アメリカ人であるKimさんの家は、メゾネット形式の3階になっており、1階は駐車場と自宅スタジオのミキシング・コンソール、2階は一体何畳あるのか想像さえつかぬ程の広さを誇る居間兼レコーディング・スタジオに加えてキッチンとトイレ、3階はKimさんの寝室と浴室。このスペースに独りで暮らしているとかで、何とも優雅極まりなし。SubArachnoid SpaceのドラマーChrisの話では、先日もここで100人ぐらい集まったパーティーが催されていたとか。斯様な立派なスペースにして、冷蔵庫には当然コチジャンやらキムチが犇めいており、おおっ!調理する意欲が湧いて来る…と、単純な私は、偶然にも購入していた即席韓国ラーメンにコチジャンを加えて頂けば美味なり。Kimさんがそれを見て「その韓国ラーメンは悪くない」なんぞと笑っている。更には明日の朝飯にと購入したステーキ肉に筋切りを施し、手頃な大きさに切り分けては焼肉のタレに浸し、すっかり下拵えも済ませておく。津山さんは、ここまで購入したレコードの整理に勤しみ、そしてレコード整理で疲れたか、ミキシング・コンソールにて就寝、はじめちゃんも場所を同じくして就寝。私と東君はソファに腰掛け各々赤ワインとビールを呷る。JonとSamはKimさんと何やら楽し気に話しているが、矢張り今日のドライヴ疲れが出たか、Samはミキシング・コンソールの入り口で倒れるように眠っており、いつもは車中にて眠るJonも珍しく居間の床で眠っている。午前5時半、赤ワインのボトルも空となり、漸く皆が眠り静かになったので、私も居間のソファにて就寝。

6月4日(金)

朝8時半起床、丁度東君が御飯を炊飯器にて炊いた処なれば、昨夜下拵えせし牛ステーキ肉による「早朝ひとり焼肉大会」を開催。付け合せは玉葱スライスのみなれど、焼けた肉と玉葱をサニーレタスで巻いて頂く韓国流なれば、これまた美味なり。勢いもあって結局700gのステーキ肉を一気に完食。流石にこれは食い過ぎなれば、動く事さえ叶わぬ有様。風邪気味の東君も同様にステーキ肉を購入しており、彼はニンニクを大量に添えたガーリック風味ステーキとしてその半分を貪り、残り半分はまた明日に頂く算段なれば、私もそうすればよかったと後悔すれど時既に遅し。

午前11時に、その名は今や世界中にまで轟く巨大中古レコード店Amoeba Music Height店へ向かう為、SamとJonを同伴し、津山さんと東君共々出発。昨日の移動中の車内より、Amoeba Music店内を思い出してはイメージ・トレーニングなんぞ繰り返しておれば、如何に無駄なく効率的に店内を巡るか、そこまで全てシュミレーション済み。
いざAmoeba Music Height店に到着するや、何と店内のレイアウトが大きく変化しているではないか。アナログ盤コーナーが随分縮小され、以前はクラシック&ジャズのブースであった別部屋は、DVDとサントラ・コーナーに豹変している。結局どこに何があるのか皆目見当つかなければ、天井に吊られているジャンル別パラペットを頼りに店内を巡る羽目に。現代音楽から民族音楽、ロックから挙げ句はムード音楽までいろいろ物色すれど、いつもここを訪れる時程は掘り出し物も少なく、結局30枚程抜いたに過ぎぬ。津山さんは、壁一面に並ぶ膨大なカセット群を前に呆然。そして果敢にも挑むや、案の定30本近くのカセットを購入し、更に珍しくCDまで物色しておられた様子にして、想い出波止場の「Mantako」も「持ってへんから」と購入、結局LPも合わせれば、またしても相当数のアイテムを購入せし模様。東君も気が付けば330ドルも散財、私と東君は箱買い状態なれば、大量購入者お約束のAmoeba Tシャツと布製手提げレコードバッグをおまけで頂いたが、実は最もAmoebaグッズを欲しがっていた津山さんのみ貰えず「何で俺だけ貰われへんねん?」Amoeba Music Height店では、先日Acid Mothers Gongのメンバーとして来日したJoshが働いており、店内でレコードを物色しておれば、日本で購入した阪神タイガースのシャツを着たJoshが挨拶に来る。SubArachnoid SpaceのベーシストDiegoもここの店員なれば、彼曰く「Joshは、ツアー等で休みがちなのでペーペーです。」店内を徘徊しておれば、いろんな人から「今夜楽しみにしてるよ」と声を掛けられる有様で、更に私を担当したレジ係の男性からも「今夜観に行きます」と声を掛けられるが、スタートレックTV版のMr.スポック・スポークンLPなんぞ購入しておれば、思わず笑われる始末。LP箱を抱えて表に出るや、いきなり男性から「You’re my hero!」なんぞと声を掛けられ、何とも照れ臭いやらバツの悪い感じである。オフステージの時ぐらいは、そっとしておいて欲しいものなり。

Kimさん宅へ戻って来るや、津山さんと東君は腹が減ったと何やら即席ラーメンなんぞ食しているが、私は朝の焼肉が未だ利いており、全く空腹感なんぞ感じぬ始末。その間にシャワーを浴び、気分一心した処で今宵の会場Bottom of The Hillへ出掛ける。会場へ赴く前に、SubArachnoid Spaceのリハーサル・スペースにて機材の積み込み、久々に彼女や奥さんに会えたメンバー達は、何となく嬉しそうな様子。MelyndaとドラマーのChrisから、日本から発射してもらったEcho2カートンずつ計4カートンを受け取る。Chrisは以前来日した時以来のEchoファンなれば、お礼に1箱プレゼント。先日我々の車内に吊ってある洗濯物干し(百円ショップ等で売られている下着や靴下等を干す洗濯ばさみがぶら下がった輪状の逸品)を見つけて大いに感動していたMelyndaには、その代物をEchoと同封してもらった故プレゼントすれば、「これはスーツケースにも入るし便利!何て日本らしい逸品!」と喜んで頂けた。
Bottom of The Hillは、以前にも幾度か演奏した事のある馴染みのあるクラブであり、何しろここの夕食で出て来る特大のBBQバーガーは絶品なれば、既に多少ハンバーガーに対し食傷気味なれど、矢張り何となくこれが楽しみのひとつであった事は事実なり。されど何とコックが解雇されたとかで、もう二度とあのBBQバーガーにはお目に掛れぬらしく、至って残念至極。取り敢えずSan Franciscoの地ビールを呷りつつ、地元フリーペーパーなんぞを捲っておれば、AMTが1ページ半にも及び特集記事とされており、今日明日とここBottom of The Hillにて2daysなれば、何とか多くの客入りを期待したい処。
Chrisのアンプとの相性がどうにも芳しくない事から、今日よりMelyndaがSubArachnoid Spaceの前任ギタリストMasonのアンプを借りて来てくれ、何とかこれで凌げそうか。サウンドチェックも順調に終え、さて夕飯はと云えば、案の定何とも不味そうなパスタとこれまた不味そうなライスサラダ、そして生野菜のサラダである。漸く朝の焼肉も消化された様子なれど、僅かばかり口にして箸を置く。カリフォルニア州なので、公共の場所における喫煙は一切禁止されておれば、当然クラブ内も禁煙にして、されどアメリカなれば屋外での飲酒は禁止されている故、喫煙と飲酒を同時に行う事は事実上不可能であり、故にバーやクラブは中庭のようなオープンスペースを設け、そこを喫煙エリアとしているのだが、ここBottom of The Hillも御多聞に漏れず、中庭にてビール片手に喫煙出来るようになっている。更に以前はなかったバックステージが、中庭を抜けた階段から上がる2階に新設されておれば、何でも昨年2階部分が火事で消失した事で、その部分を買い取り改装したのだとか。当然バックステージに於いては喫煙出来る故、これは有難い配慮と云えよう。津山さんと東君はビリヤード台を見つけるや、例によって勝負に明け暮れる。そしてこのビリヤード台が、そのままShopzoneへと早変わり。中庭でビール片手に寛いでおれば、Mason他、知人友人が次々現れ、その対応に終始しておれば、SubArachnoid Spaceの2人のChrisが各々彼女を紹介にやって来るは、Diegoも奥さんを紹介にやって来るは、Melyndaは多くの友人を紹介にやって来るはで、しかし斯様に多くの人を一度に憶え切れる筈もなく、特に以前会った事があると云われた処で、向こうはこちらを憶えているかもしれぬが、こちらは憶えておらぬ故、そこは何とか上手くお茶を濁しておくしか術もなし。

午後9時半、SabArachnoid Spaceの演奏が始まる頃には、ホールはほぼ満員。今宵の彼等の演奏は少々固めか、と云うのも、どうやら彼女や奥さんや知人等が大勢押し掛けた為と思われる。Shopzoneに座っておればJoshが矢張り阪神タイガースのシャツを着て登場、どうやら来たるGongのヨーロッパ・ツアーは、Daevidの息子Orlandがドラマーとして有力との情報を提供してくれたので、こちらからは、Cottonの代わりに東君が参加する事を告げれば、意外にも知らなかった様子なれど、「それはGood News!」と大喜び。
10時を回る頃には、すっかり中庭までかなりの混雑にして、ではと我々の演奏開始。2daysと云う事もあり、新曲1曲を除けば、基本的に全く異なるセットを用意しており、私はKimさんから拝借して来たエレクトリック・オルガンもセットアップ、実はライヴに於いてキーボード類を演奏するのはこれが初めて。本編ラストは「Pink Lady Lemonade」にて終え、アンコール「Na Na Hey Hey」にて2時間のライヴも終演。
Melyndaが「San Franciscoの客はちょっと斜に構えているので、40分以上もホールに留まっている事はないのに、2時間も客をホールに留めておくなんて、それは本当に凄い事!」と、至って興奮気味。確かにこちらのライヴでは、日本と異なり、客はつまらないとすぐにバーで酒を飲んだりするのが常の様子で、以前Seattleにてダモ鈴木氏のライヴを観た際も、開演当初は150人近くいた客も、終演頃には皆外のバーにて飲んだり喋ったりしており、最後は確か10名程しか残っていなかったと記憶している。

機材を撤収し、我々は再びKimさん宅へ。津山さんは、昼にAmoebaにて購入したレコード群の整理に勤しみ、そのまま就寝、はじめちゃんも当然疲れたか即寝成仏。

私は夜食に即席ラーメンを食し、Kimさんを始めSamとJon、東君と共にビールを呷りつつ雑談。結局午前5時半就寝。

(2004/6/14)

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