『人声天語』 第136回「欧州激不味料理戦線完全撃破殲滅宣言!(欧州ソロツアー 2007)」

1月31日より2月21日までソロ・ヨーロッパツアーへ、2月23日から27日までNew Yorkへ、そして28日から北欧サイケの重鎮Trad,Glas och Stenarを日本へ招聘しておれば、4月13日より予定されるAMT & TMP U.F.O.の全米ツアーに向けてリリースされるべき新譜3タイトル+1タイトル(当初の予定は3タイトルなれど、急遽Trad, Glas och StenarとAMT & TMP U.F.O.の日本ツアー記念カップリングCDのリリースを決定せし故に4タイトルとなれり)は、何としてもヨーロッパへの出発までに終わらせねばならぬは絶対的使命にして、新年早々より睡眠時間を平均2時間にまで削り、何とか30日付けにて無事に新譜4タイトルを完成させるに至れり。されど音源の完成に安堵する暇なく、ジャケットの草案作りやらそのネタ画像探しやらも行わねばならず、出発直前が斯くの如きであれば、当然ツアー準備なんぞろくに叶う筈もなけれど、今や海外ツアー慣れさえしておればこそ「まあ行ったら行ったで何とかなるやろ」と、何ともお気楽な楽観主義者ぶりを発揮するに至り、そもそもツアー中の方が、携帯するiBookにて必要最低限の雑務こそこなせども「ツアー中やから」と云う、至って安易な言い逃れにて、面倒臭き事極まりなき諸事雑務から解放され得る故、私にとってみれば些々やかなるオフの如きか。況してやお気楽一人旅たるソロ・ツアーなれば、メンバー引率の重責からも解放され、何かとんでもない失敗を犯そうが不慮のアクシデントに見舞われようが、自分独りと云う気楽さからか、これまでも如何なる苦難でさえ「これもまた旅の愉しみなり」と云う調子にて、挫ける事なんぞあった試し些かもなし。

さて今回は、毎度の如く食料を持参しようにも、買い出しに行く時間もなければ金もなく、また原油価格高沸の煽りを食らいて燃料費を節約せんとするのか、ヨーロッパの航空会社各社の受託荷物の重量規制が以前にも増して厳しくなって来ておれば、機材の詰まりし重量級の鞄を携えるミュージシャンとって、1人20kg1個までなんぞと云う規定はあまりに不条理極まりなく、かと云って追加料金徴収なんぞと云う辛酸を舐めさせられるは真っ平御免被りたき処なればこそ、予め小さめの鞄に必要最低限の機材のみを詰める事でクリアするしか術もなし。不思議なもので、大きな鞄を携えんとするや「まだ入るなあ」と、空きスペースに何やら要るか要らぬか判然とせぬ代物まで詰めたがるのが人の常の様子、小さめの鞄を選び機材のみにてキャパいっぱいとなっておれば、潔く諦めもつくものにして、今回も20kgなる重量規定に対し余裕の15kgを以てパッキングを済ませけり。但し食料なんぞ詰めるスペースもほとんどなければ、常温保存可能なる生うどん3袋+とろろ昆布1袋+とんかつソース小瓶1本+七味小瓶1本のみを何とか隙間に詰め込みし。和食を常とする私の食生活を思えば、非日常的とも云えよう欧州料理に連日挑む事は必定ならん今回のツアーに於いて、この少数精鋭部隊とも云えるラインナップこそ、長年海外ツアーに於いて培いし「欧州激不味料理迎撃四天王」とも呼べる強者共なり。
生うどんは、小腹が空きし折に鍋とコンロさえあれば即座に食し得る上、地獄の超ヘビー級欧州料理集中砲火にて胃が撃沈されし折も、胃に優しい食事として重宝される事度々なれば、カップラーメンや袋入り即席ラーメンの類いより優れし事間違いなく、また普段より食い慣れておればこそ食い飽きる事もなし。何故生うどんでなければならぬかと云えば、棒状の乾麺はあまりに食感悪しき上に何とも不味き事この上なく、またコシに拘る讃岐うどんとは異なり、大阪のゆるいうどんにて育っておれば、常温保存の生うどんならではのコシのなさが、また郷愁を誘うなり。
とろろ昆布は、当然うどんの具材として重宝するは当然の事(特に生うどんに添えられし粉末スープはかつおだしが主流なる故、普段より昆布だしのみにてうどんを食する私とすれば、とろろ昆布を大量にぶち込む事により、デリカシーに欠ける剛悍なるかつおだしの風味を緩和する効果も大)、酒の肴にさえなる優れものにして、また私は普段より海草類を好んで食しておれば、海草類を全く食さぬ欧州食文化に辟易するは必定、地獄の欧州激不味料理戦線にて完全勝利を治めるに当たっての最終防衛戦線の要とも云えようか。
とんかつソースは、味のない激不味サンドウィッチ類や、諄くて到底食せぬ揚げ物類を撃破する必殺アイテムにして、何しろ如何に不味いサンドウィッチやら揚げ物やらであれ、一度とんかつソースを加えれば、宛ら焼きそばパン擬きやら陳腐な串カツ擬きに豹変し、これも矢張りソース文化にて育ちし哀しき性か、いざとなれば醤油にあらず、とんかつソースこそ重宝しがちなり。
七味は言わずもがな、そもそも激辛嗜好大いに強く、また一方で山椒の香しさに痺れておれば、七味こそ世界最強の万能調味料なり。但し既製品の小瓶を持参する分には問題なけれども、500gをビニル袋詰にして持参せし折、通関に際し運悪く「これは何じゃい?」なんぞと、七味なんぞ見た事もなかろう係員に怪しまれ、散々因縁を付けられし経験もあり。されど小瓶では計画的に消費せんとすれど、凡そ数食分も保たぬ有様(時には僅か2食分にて消費)なれば、本来矢張り500g程度は持参しておきたい処か。
さていざ関西空港より出発と相成るや、最後の売店にて究極の最終兵器「都こんぶ」1箱を購入。この逸品こそ、嘗てソロ・ツアーの折にフランスにて、完全液状化と云う凄まじき下痢状態が続き、遂には水さえも口にし得らざりし折、喉や口内の乾きを緩和させてくれし究極の非常食にして、必携するに越した事なし。
これにて「欧州激不味料理戦線完全粉砕五家宝連」勢揃い叶えば、いよいよこれより敵地に突入を図り、欧州激不味料理戦線に我が身自らを以て敢然と挑み、決して怯む事なくこれを完全撃破殲滅せん事をここに宣言するものなり。

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