11月16日(日)
午前7時半起床。朝飯はビュッフェスタイルにて、ベーコン、ソーセージ、スクランブルエッグ、茹で玉子、生野菜各種、パン、オレンジジュース等。スクランブルエッグはチーズが溶かし込まれておれば、チーズオムレツを忌み嫌う私にとっては到底食える代物にあらず、ホットソースを召喚すれどチーズの激烈なる風味の前に無念の憤死。茹で玉子と胡瓜にてサンドウィッチを拵え、茹で玉子3個と共に、これにてお昼の弁当とせん。
本来チェックアウトは正午なれど、能天気にして悪気皆無なるイタリア軍団なれば、午後1時チェックアウト、フロントの姉ちゃん達から如何に嫌な顔をされようが、全く以てお構いなし。何しろ彼等に微塵の「悪気」もなければこそか。一路Hamburgへ向け出発。相も変わらず車内にてアホ話で大いに盛り上がり捲る彼等が「Makoto、お前もそろそろポイント獲得したらどうだい?このままじゃKoppaの一人勝ちになってしまうから…」とナンパコンペティション戦線への参戦を促して来る始末、昨夜観賞せしエロチャンネルの顔射シーンを写真にて撮影しておれば「これが昨夜の俺の成果だ!」と披露、これには彼等も「Oh!! Bukkake!!!!! Great Job!!!…これでMakotoは100ポイント獲得だ!」と大爆笑。「Makoto、この写真いつ撮ったんだ?昨夜のホテルのテレビ?ハッハッハッ」ポイント獲得は冗談にせよ、彼等は夜な夜なポイント獲得を目論んでおれば昨夜も然り、一方で津山さんと兄ぃのAMT早寝組は早々に御就寝せりとかで、何と悠長にエロチャンネルを観てたんはワシらだけかいな。
今回のツアーに於いて、デンマークは2公演あれど、残念ながら今回もあの伝説の激不味料理「バババーグ」に遭遇叶わず、心残りと同時に些かの安堵感もあれば、何故人とは「臭いもん嗅ぎたがる」「不味いもん食いたがる」ものなるか。今までに我々が遭遇しては爆死轟沈せし激不味料理の数々に於いて、文句なしにぶっちぎりの1位と確信を持ちて言い切れる、あの到底食い物とは信じ難き「うんこの臭い&腋臭の味」を持つデンマークCopenhagenにて遭遇せし究極の激不味料理、我等が名付けし「バババーグ」、果たして運命の再会はいつなるか。また北欧の郷土料理にして、未だ食す機会こそなけれども、そのおぞましき姿から我等が名付けし「反芻肉団子」との初対戦は、果たしていつなるか。デンマークを去るに当たり、この2点のみが心残りかな。
午後5時、今宵の会場Hafenklangに到着。明日のここで行われるSky Saxon率いるThe Seedsのポスターが目に入る。Sky Saxonに限らず60年代から活動する多くのミュージシャンが、御老体に鞭打ち未だに地道なツアー生活を送っておられれば、果たして私もいつまで過酷なるツアー生活を続け得るか。そもそも遠洋漁業の猟師の如き出稼ぎ生活なれば、このまま足腰が立たなくなる迄、休む事なく馬車馬の如くツアーに出ざるを得ぬがアングラロッカーの宿命と知る。明日のThe Seedsを一目観てみたいと思えども、こちらもツアー中につき斯様な願い叶う筈もなし。
さて晩飯は、クラブのスタッフによる手料理にして、サラダと野菜のクリーム煮とペンネの如きショートパスタなれば、ペンネの類いを何よりも忌み嫌う私はショートパスタのみ拒否。野菜のクリーム煮はチーズを添えれば然して問題なし、今やこの程度の料理なんぞ殲滅撃沈するは屁なり。
今宵の女性エンジニアAngelicaが美人なれば、空かさずFrancescoが猛然とアタック、さて今宵見事ポイント獲得に到るのやら。
今宵のライヴは、本来クラブの休業日にも拘らずFrancescoがツアー直前に強引にブッキングせしとかで、故にクラブ側のプロモーションが行き届かず、況してや開演時間が深夜なる海外にては、日本と異なり日曜日は最も集客の困難な曜日にして、10年以上に及ぶAMT海外ツアー史上に於いても類い稀なる不入りなれば、如何にもマニアックなヒッピー親爺連中のみが客席に佇むのみ。あれ程能天気にしてポジティヴなイタリア軍団Stearicaも意気消沈せしか、昨夜の熱き演奏とは一転し演奏もヤケクソ気味、Francescoも流石に責任を感じてか、クラブやオルガナイザーの悪態を突くばかりにして、挙げ句口説かんとする美人エンジニアAngelicaに対しても「今夜は最低の演奏だった」と愚痴を垂れる始末。されど我々は「これってまたゼロから再出発せえって事やな!」「また赤貧ツアーからやり直しましょう!」「今夜来いひんかったヤツらに絶対後悔させたる!」「今夜来てくれた人こそホンマのファンや!絶対に楽しんで帰ってもらわな!」と、そもそも客入りの悪い日の方が燃える性質なれば、今宵はいつも以上に壮絶なるステージを展開、御陰で集客数に反しShopzoneの売り上げは良好、これぞ赤貧どさ回りツアーから叩き上げし我々の強さなり。
午前1時半、投宿先のクラブ内の宿泊施設へ。今宵は大部屋にてイタリア軍団共々投宿なれば、皆でスコッチやワインを呷りつつ歓談。終演後も粘り強く美人エンジニアAngelicaを口説きしFrancescoは惨敗の様子、されど斯様な事でめげる筈なく、例によってアホ話をしては大笑い。昼飯にせんと今朝拵えしサンドウィッチを食らい、午前3時就寝。
11月17日(月)
午前5時半起床。朝飯を拵えんと思えど、朝寝坊のイタリア軍団を起こさぬようにと、兄ぃの携帯電気調理器を拝借し別室へ移動。今後ホテル泊が続けばキッチンにて調理する機会も皆無故、数分間ボイルを要するスパゲッティーをここらで消費消却せんと、先ずスパゲッティーを茹で、葱と大根おろしとおろし生姜を添えポン酢を差し、昨朝ホテルのビュッフェより失敬せし茹で玉子をトッピング、仕上げに本日よりデビューのタバスコ社製ハバネロソースをぶっ掛け紅葉おろし擬きにせんとすれば、紅葉おろし擬きスパゲッティーの完成、嗚呼、大いに美味なり。
これにて随分お世話になりし大根の大ちゃんも遂にはヘタと葉のみを残すのみなれば、感謝を込めて大ちゃんの天寿を全うさせんと、これを具材に味噌汁を拵えん。味噌汁と云えども持ち合わせるは即席しじみ汁にして、しじみ汁に今やヘタと葉のみとなりし大ちゃんを沈めれば完成。生の大根のシャキッとした食感がしじみ汁と見事に調和、また持ち歩く間に幾分か育ちし葉なれば食い手もあり、これまた美味なり。
ビールケースを食卓にしておれば、丁度起きて来た津山さん曰く「ハハハ…まるでホームレスやなぁ…」その津山さんも私に続いて朝飯を拵え始めれば「わしらまるでホームレスやなぁ…」と思わず失笑。津山さんは、先日アジアンマーケットにて購入せし生うどん2玉を、大根おろしうどんとして食されし。そこへ今度は東君が起きて来れば「何笑ってるんですか?」「どうせワシらまた『泪橋』から出直しや…客も来えへんしのう…ハッハッハッ!」勿論その東君も我々ホームレス軍団に仲間入り、東君も大根おろし麺つゆラーメンを拵え食されし。
午前11時、クラブ内のバーにてブレックファーストを用意してくれしとかで赴く。生野菜類、ハム各種、チーズ各種、パテやらジャムの類い等が並べられ、セルフスタイルに依るサンドウィッチと云う処か。私は無難にハムとトマトと胡瓜にてシンプルに纏めんとするや、何やら私の大好物たる厚揚の如きが目に入り「まるで厚揚みたいなチーズやなぁ」と冗談混じりに一切れ摘めば、何と正真正銘厚揚なり。厚揚がサンドウィッチの具材とは、成る程ベジタリアン向けメニューなるか、何にせよ斯くなる上は厚揚サンドにせんと挟み込めど、如何せん醤油もおろし生姜も葱も投宿先へ置いて来ておれば、残念ながら味付けは粗挽き胡椒のみ、結果ハムとトマトの味が強烈なれば厚揚の味殆ど皆無にして、折角の厚揚との遭遇は何とも不本意な結末に終われり。
Koppaは何とも美味そうなサンドウィッチを拵えておれば、自分の御粗末なる代物と見比べし東君曰く「俺のなんてサンドウィッチとさえ呼んでもらえんかもなぁ…既にバラバラやし…」サンドウィッチに関しては食文化的にアウェイなれば負けて当然、されど握り飯を作らせれば我々の勝利間違いなしとの言い訳の下、幾ら酷い出来映えなれど一切問題なし。
津山さんは、バーの隅に飾られしオルガンを見つけるや、鍵盤にナイフを突き立て、何とキース・エマーソンが憑衣の御様子、流石はロックをこよなく愛する永遠のロック番長なり。
午後1時、一路Kolnへ向け出発。我等がドライバーはパンクスKoppaなれば、車内はハードコアが爆音にて流れておれど、今や条件反射の如く矢張り爆睡。されど2列目に座する東君は、その爆音に苛まされ眠る事侭ならじとか。御愁傷様です。
午後6時、今宵の会場Kultur Bunkerに到着。このクラブに関しては、以前演奏せし折にオルガナイザーがレンタルせしアンプを片っ端から吹っ飛ばし、それ以来ブッキングを断られ続けておれど、今回は別のオルガナイザー故に再びブッキングされしものか。Stearicaのサウンドチェック終了を待ち、晩飯を食らわんとオルガナイザーの案内にてトルコ料理屋へ。私はドネルカバブとフリッター(フライドポテト)のセットを所望、ホットソースをぶっ掛けて頂けどパンチ不足なれば、更にチリパウダーを添え、持参せしタバスコ社製ハバネロソースもぶっ掛け頂く。味的には全く問題無けれど、何しろ量が半端でなければ、結局半分を残しテイクアウト。
皆がドネルカバブを注文する中、ベジタリアンのKoppaと大のピザ好きなる東君はピザをオーダー。欧州に於いて斯様なるカバブ屋とは、日本に於けるラーメン屋に相当するか。大抵メニューはドネルカバブを筆頭にトルコ料理が主流なれど、何故か必ずピザも扱っており、キリスト教の教義上理由からか、さてまた労働者の権利を最優先する社会主義的建前を振翳す怠け者気質からかは定かでなけれど、大抵の飲食店が深夜までには閉店する中、非キリスト教系移民が営むこの手のカバブ屋のみが深夜にても営業しておれば、日本に於ける「飲んだ後のラーメン」の如く、こちらでは「飲んだ後のピザ」やら「飲んだ後のカバブ」が一般的にして、深夜まで大層な繁盛ぶりなり。
さて会場へ戻れば、ダモ鈴木さんの奥方が、手料理とシャンパンを差入れして下さり感謝感激。ダモさんはここKoln在住なれど、丁度日本ツアー中なれば、残念ながら再会とはならず。されどこの欧州ツアー後、ダモさんと2人して1週間のUK&アイルランド・ツアーが控えておれば、再会の日は近し。ダモさんの奥方の手による海老の一口パイと葱の一口パイが大層美味なれば、先程食らいしドネルカバブにて腹は膨れておれど、ついつい手が伸びる始末。
今宵はアンプを吹っ飛ばすハプニングもなく無事終演すれば、ステージ裏にてダモさんの奥方と、差し入れて下さりしシャンパン片手に歓談。今宵の投宿先は、ゲストハウスの如き宿泊施設にして、ベッドルーム3部屋に簡易キッチン付きダイニングとトイレとシャワー完備と云うマンションの1室なり。皆でダイニングにてワインやらスコッチやらを呷り歓談。ベッドメイキングはセルフサービスなれど、津山さんと東君はその性格を反映せしか、面倒臭きベッドメイキングなんぞ糞食らえとでも云わんばかり、全く出鱈目極まりなき状態にて御就寝。一方、嘗てラブホのルーム係のバイト募集に赴けど、ラブホの社長から「こんな仕事はオバハンのやる仕事だ!君のような前途ある若者は、もっとまともな仕事に就きなさい!」と、説教され断られし経緯ある私と、流石元主夫の兄ぃは、共に完璧なるベッドメイキングにて、午前2時過ぎ就寝。
11月18日(火)
午前7時半起床。シーツが欧州特有の激烈なる洗剤臭を発するが余り、強烈なる体臭の屈強な巨漢に襲われると云う悪夢を2度も見る羽目となり、目覚の気分は全く以て最悪極まりなし。これも昨夜御丁寧にベッドメイキングせし故かと思えば、何とも皮肉な顛末なり。
津山さんは既に朝飯のスパゲッティーを茹でておられ、日本より持参の粉末パスタソースにオクラと大根おろしと練り梅を施し食されし。
さて私も朝飯を食さんと、昨夜のドネルカバブの残りとダモさんの奥方の海老一口パイと葱一口パイの残りを用い、使用する袋入りラーメンはカレーラーメンなれば、ここはカバブカレーラーメンなるを拵えんとす。昨夜ドネルカバブを残す際、既にこのアイデアあれば、具として相性の良さげなる肉と玉葱のみを敢えて残しておれど、もしフリッターも若干残しておけば、ジャガイモが入りし日清カレーヌードルの如きを拵え得し筈と思わず後悔。熱湯の中に麺を放り込み、続けて付属の粉末カレースープ、そこへドネルカバブの残りも煮てみんとぶち込み、カレー味をより強調せんと日本より持参せり粉末カレー粉を投入、更にラーメンである限りマストアイテムなる味の素を、最後にキッチンにて発見せし胡椒を加え仕上げ、昨夜の一口パイを数切れ添えハバネロソースをぶっ掛ければ、ここにカバブカレーラーメンの完成なり。そもそもこのカレーラーメンはインド系移民で賑わうスーパーにて購入せし代物なれば、そのカレー味自体は全く問題なく、更に日本のカレー粉と味の素にて、所謂日本のカレー風味が加味されれば、結果若干スパイシーな日本のカレー味に纏まり、これは大いに美味なり。
惜しまれるは、以前嗅覚を喪失せし経緯ありて、その後幾分かは回復すれどもそれ以来カレーや焼肉の匂い一切感ぜられぬ故、何かひと味足らぬと思わるる事かな。皮肉にも所謂悪臭異臭の類いは感じ得れど、料理の匂い等は殆ど嗅げぬ有様なれば、これもまた天罰の類いか。斯様な私が、常々ニンニクを大量消費する東君の料理に対し「うっ…強烈なニンニク臭!換気しよ!」と、毎度述べ得る事は、即ちニンニクは矢張り「臭い」と云う事の証明に他ならん。況して欧米女性の強烈なる香水の匂いも感じ得れば、これも矢張り本音としては「臭い」と云う事に他ならんか。
兄ぃはまたしても、先日購入せしベイクドビーンズ缶を湯煎して頂いておられ、東君はスパゲッティーにケチャップとニンニクのスライスを混ぜ、更に私の進言により味の素も加えれば「おっ!なかなかイケる!」と頂いておられし。
昼飯は、スパゲッティーを茹で、永谷園お吸物の素と麺つゆにて味付け、海苔と津山さんより御裾分けして頂きし塩昆布を添え、松茸風味麺つゆスパゲッティーを拵えれば、期待せし程の美味さにあらず。所詮松茸風味とは風味にしかあらじか。
本日はオフにして、ここにもう一泊する故移動の必要もなく、今回のツアーに於いて唯一となる「移動なしライヴなし」の完全無欠のオフなり。なればこそイタリア軍団は、愛しのイタリア料理を拵えんと食材調達にスーパーへ赴くと云えば、我々も同行。このマンションのオーナーより、階下の巨大キッチンと食堂の使用許可を得しとかで、今宵は日伊交歓晩餐会を催さんとの運びとなれば、お互いの郷土料理を作らねばならぬ経緯となり、されどスーパーにて大した食材も見当たらねば、何とか適当に誤摩化しつつもそれらしいものと云う事で、ごはん+漬物+おろし豚冷しゃぶのオーダーに決定。イタリア軍団の豪快なる買い物ぶりは、常々「残ったら勿体ない」と必要最少限度の買い物に徹さんとする我々日本人的発想と根本的に異なり、これには思わず大陸的感覚を感じざるを得ぬか。我々は既に昼飯をも済ませておれば、イタリア軍団のみ昼飯の調理に突入せり。結局調理から食い終わるまでに何と4時間をも費やしておれば、これも昼飯に常々2時間程を費やすまさしくイタリア人そのものなり。それに比べ日本人の食事に費やす時間とは、まあ何と短い事か。私なんぞ晩酌を除けば通常の食事は凡そ精々5分程度にて充分か。常々早食いに拘る津山さんに至っては、私の知る限り10秒程度にてスパゲッティー1皿を平らげし程。さて本当に食事を食事として楽しむは、果たして日本人かイタリア人か。
やるべき事なければ転寝するのみ。Francescoが楽器屋へ赴かんと云うので、我々はレコード屋へ行きたしと伝えおく。午後5時過ぎに漸くイタリア軍団は長き昼飯を終え動き出せり。されど矢張り能天気なるイタリア人なれば、レコード屋どころか楽器屋の場所さえも判らぬとの行き当たりばったりぶり、結局楽器屋もレコード屋も所在判明せず終いにて、彼等はコインランドリーへ洗濯に行く目的一点のみとなれど、コインランドリー付近にてレコード屋を発見し得るかもとの僅かな可能性に賭け、我々も同行。辿り着きしコインランドリーは所謂インド系移民居住区にて、服やアクセサリーを扱う店を覗くや、いきなり過ぐる夏より探し求めるボリウッド映画「Om Shanti Om」のDVDを発見。店主曰く「英語音声に吹替可能なものは7.5ユーロ、英語字幕のものは4ユーロ」さりとてオリジナル音声ヒンズー語にあらざらねば、あの独特の空気感を堪能するに到らず、勿論英語字幕版を所望。ついでに店主推薦のDVD「Shahrukh Khan The King Khan」も購入、こちらは「Om Shanti Om」にも主演するボリウッドの大スターShahrukh Khanが出演諸作品にて歌い踊るシーンのみを抜粋、全100曲収録せしもの。続けて訪れし質屋にてレコードコーナーを発見、私のレコード屋探知能力未だに衰えじ。Kolnの大聖堂を始めとする市内の教会やカテドラルの鐘ばかりを録音せし代物等、LPとEP合わせて10枚程購入。津山さんも何やら物色しカセットまでも購入しておられれば、ここでレコードジャンキーらしき一言「やっぱりレコードはええなあ!嗚呼、何でもええからレコード買いたい!」 さてコインランドリーへ戻ればイタリア軍団は未だ洗濯中にして、我々はひたすら待つのみ。
漸く洗濯も完了し投宿先へ戻るや、いよいよ日伊交歓晩餐会の調理開始となれり。イタリア軍団のシェフは唯一のベジタリアンKoppaにして、次々と下拵えを進めて行く。一方我々は長年のツアー生活にて培われし共同作業にて挑まん。飯炊き係は勿論山男津山さんと元主夫兄ぃ、漬物は津山さんの豪腕にて瞬時に拵えて頂き、冷しゃぶの下拵えは庖丁人の実兄たる東君が一手に引き受け、元シェフの私は肉捌きの後半戦と大根おろし製作を担当。果たしてイタリア軍団は如何な料理にて臨んで来るや。Koppaの指示の下、Stearicaの面々が助手を務め、次第に料理の全貌が伺い知れ始めるや、我々の方も同時に料理を出さんと、東君が豚肉や野菜を順にボイルし始め、キッチンはまるで「料理の鉄人」のキッチンスタジアムの如き様相を呈し始める。 我々の投宿する部屋の簡易キッチンでは、津山さんが既に白菜と茄子の漬物2種を完成させ、鍋にて米も炊き終えておられ、また兄ぃも携帯電気調理器にて米を炊いておられる。前菜から主菜までコース料理のスタイルを取るイタリア軍団に対し、こちらは全ての料理が一度に配膳される日本家庭料理スタイルなれば、前菜たるオリーブ&トマトソースのショートパスタが出されると同時に、おろし豚冷しゃぶ、漬物2種、ごはん、ベジタリアンのKoppa用にとインゲン豆のおろし生姜和えを、食卓に並べる。Koppaによるオリーブ&トマトソースは味に深みもあり大いに美味、思わずお替わりする程にして、オリーブ嫌いの津山さんにも「俺オリーブ嫌いやけど、これは美味いわ!味にコクあるなあ!これやったらオリーブ大丈夫や!」と云わしめる程。一方こちらのおろし豚冷しゃぶと漬物2種もイタリア軍団に大好評、特に大根おろしを大層気に入りし様子にして、大根に関し質問責めに遭う始末。シェフKoppaが、主菜たるスパニッシュオムレツ即ちトルティーヤとサラダを運んで来れば、彼曰く「丁度良い塩梅のフライパンがなかったのでちょっと失敗した」との事なれど、これまた葱等の野菜たっぷり具沢山にして、大いに美味なり。津山さんと兄ぃは、「米やっぱし美味いわ!漬けもんも美味い!」「う~ん、ごはん美味いよ~!」と、凄まじき勢いにて、更にごはんをも貪り食らう。結局大量の料理は殆ど奇麗に平らげられ、皆大いに満腹満足、後は赤ワイン片手にアホ話に花を咲かせるのみ。お互いの食文化を通しお互いの文化に敬意を表し得る事は素晴らしきかな。これが例え激不味料理地帯の郷土料理であれど、それはそれでお互いの文化を知り得る事に変わりなく、その差異を通しお互いの文化を理解せんとするものなり。
さて楽しき晩餐も終われば、今度は皆で後片付けに勤しむ。何やらまるで合宿の如き雰囲気か。ごはんの残りと漬物は、勿論明日の朝飯としてキープ。
自分達の部屋へと戻り、「イタリアの愉快な仲間達」とスコッチを呷りつつ、アホ話やら猥談やらが果てしなく続けば夜も更けし。午前2時半、本ツアー唯一のオフも終われば、これにて消灯就寝。
(2009/1/4)