『人声天語』 第115回「AMT欧州ツアー2004 ~世界残酷食物語~」#6

11月12日

午前7時起床。午前8時、タクシーにてKoln駅へ。午前8時半発Basel行き列車に乗り込まんとすれば、喫煙シートの表示と共に、何やら鼻糞をほじるようなサインを発見、これは喫煙席且つ鼻糞ほじり可のシートなのかと思えば、私語禁止の表示であり、また喫煙席は団体客の貸し切りとなっており、仕方なく2等席の喫煙席へと移動。

Koln駅構内にて巨大野菜生春巻+水を購入し、車内にて食す。水は迂闊にもスパークリング・ウォーターを購入してしまい、炭酸を抜くのに大いに苦労し、粉末ほうじ茶を入れてみれば、矢張りティーソーダと化し、いと不味し。巨大野菜生春巻は、タンドリー風味なれば、下手なサンドウィッチよりもなかなか旨けれど、腹持ちは非常に悪し。

車内にて2時間程仮眠。Basel駅にて午後1時8分発Brig行き列車に乗り換えBernを目指す。あと1時間程の列車の旅にして、成田にて購入せし週刊アサヒ芸能を退屈凌ぎに眺めておれば、午後2時過ぎに到着。オルガナイザーのSandroが迎えに来てくれており、例によって駅に設置されているカートに東君のスーツケース等を乗せ、そのカートのまま、今宵のライヴ会場Dachstock Reitschuleへ、徒歩5分。
先ずはSandroとビールにて再会を祝し乾杯、このビールは何でもスイスの新しいビールとやらで、美味な事この上なし。

Bern駅前には我々行きつけのレコード屋があれば、津山さんは早速出動、私は先ず事務所にてネット接続し雑務に明け暮れ、その後、駅にて昨夜のギャラをスイスフランに両替し、楽器屋にて弦を買い足し、漸く津山さんの待つレコード屋へと向かえば、前回エンジニアを務めてくれたルー・グラム似の男性(人声天語第81回「嗚呼、スイス…」を参照)に道でバッタリ遭遇、今宵は別の仕事だとかで、また次回は是非とも一緒に仕事しようと立ち話。さてレコード屋に辿り着けば、昨日所持金全部盗まれた故、そんな事になるならばレコードを買い捲っておけばよかったと後悔すればこそ、もう今や何だかどうでもよくなり、取り敢えず古楽やらトラッドやらを有り金叩いて購入。未だスイスフランを持たぬ津山さんは、今宵のライヴにて手にするスイスフランをアテに、取り敢えずはチェックに留まるのみ。
午後5時、会場に戻れば今宵と明日のオープニングアクトを務めるアメリカのバンドNeither Neither Worldが到着しており、メンバーの1人はSan Franciscoのラジオ局KFJCのスタッフなれば、まさかの斯様な場所にての再会であった。
サウンドチェックにて、スイスは音量制限に対する法律がある故、我々は決して爆音を出さぬ心得にして、今宵のエンジニアも私のクリアトーンのギターに対し「音がデカい」と嗜めて来れば、ここは微音量にてチェックを済ませる。そもそもギターの音量がデカいと云いつつも、PAからのドラムなんぞはかなりの音量に感ずれば、結局ドラム重視の近頃のミックスにこだわっている様子にして、ホンマお前らロックを嘗めてんのか!ギターが一番デカなかって、何がロックやねん!これも全てニューウェーブ以降の悪しき因習なり。モニター担当の女性から「何の音が欲しい?」と問われれども、「ヴォーカルのみ」と答える我々なれば、「それじゃあ仕事にならないわ!」と意気消沈の風体なれど、前回AMTにてここを訪れた際、演奏中に東君のシンセが喧しくカットして貰おうとモニター卓へ振り返れど、彼女は仕事そっちのけで踊り狂っておられれば、まあ仕事にならぬ方が彼女の為にもなろう。そもそも余程の広さを誇る大ホールでもない限り、楽器の音なんぞ生音で充分聴こえておれば、そもそもモニター依存率100%にして、一方でアンプはセコい音量セッティングにてなんぞ、到底演奏出来る筈もなし。デカいアンプ群は何の為にあるのか考えれば判りそうなもの。PAの発達がロックを殺したと云っても極論とはなり得まい。照明担当の女性は、鳶職人の如く身軽に天井周りを飛び回り、自分の仕事に相当のこだわりを見せておれば、「何か照明に対するリクエストはあるか」との問いに「We trust you, so play together!」と答えた処、大いに喜んでいた様子。彼女は、前回ここをJ.F.Pauvrosとのデュオにて訪れし折にも、素晴らしい照明ワークを披露しておれば、相当なセンスを兼ね備えし照明屋と推察出来る。
サウンドチェック後、スタッフやNeither Neither Worldの面々と、階下のレストランにてディナー。先ずは皆で赤ワインにて乾杯後、私はサラダ+ポークカツレツをオーダーすれど、各自アペタイザーは1品を選ぶセットメニューであるにも関わらず、一旦欲すれば如何なる我侭さえ意地でも押し通さんとする四国男児東洋之の「スープとサラダ両方!」と云うこれまた強引な押しの煽りを見事に食らい、私のサラダは東君に届けられ、結果Sandroがエクストラで注文し直す顛末となるが、その下りを彼に説明した処で「俺は両方食べたかったから」と、全く平然としたもので、流石は我慢を知らぬ男。サラダはイタリアン・ドレッシングにて注文しておれば、矢張り一番あっさりしており良かれども、そう思えば日本のドレッシングの種類の豊富さは世界一ではあるまいか。ドレッシングなんぞと云えば、私が小学生の頃に漸く普及し始めた逸品なれば、日本に於いてはその歴史が然して長い訳でもなかろうに、矢張り日本人の飽くなき食への探究心、いと恐るべし。

さてカツレツはと云えば、思わずウスターソースが欲しいと思わせるチープな味にして、取り立てて旨くもなけれど不味くもなし。 そもそもヨーロッパに於いて見掛けるカツレツの類いは、日本のカツレツとは大いに異なり、多めの油にて「揚げる」と云うよりは、少なめの油にて「炒め揚げる」感覚なれば、衣も薄くサクサク感も感ぜられぬ。麺のコシ同様、日本人の揚物に対するこだわりは、即ち食感へのこだわりにして、これもまた世界唯一の食に対する美意識なのかもしれぬ。

津山さんが突然の頭痛でダウン、社長不在のまま私と東君にてShopzoneをオープンすれど、午後10時、Neither Neither Worldの演奏が始まるや、突如猛烈な睡魔に襲われ爆睡。起こされた時には、Neither Neither Worldの演奏は終了しており、私の横では、津山さんがいつも通りShopzoneを切り盛りしていた。本日のShopzone。

今宵の機材はAmpegやMarshallなので、アンプが飛ぶ心配も先ずないであろうと高を括っておれば、見事ベースアンプが御陀仏御昇天、急遽東君の使用せしMarchallをベースアンプに代用して急場は凌げども、2日連続してアンプを我々に取り上げられると云う憂目に遭いし東君はシンセに専念せざるを得ず、何ともやり切れぬ思いであった事であろう。されどベースをMarchallに繋いだ処で、その顛末は火を見るより明かなれば、Marchallが完全に吹っ飛んでしまう前に何とか終演せんと思えども、音色がまるでクリムゾン時代のジョン・ウェットンの如きなれば、いつもと異なるまるでジョン・ウェットンの如きフレーズを展開せし津山さんは、大層楽しそうにして大いに弾き捲る有様。
(impro/Dark Star Blues/impro/La Le Lo/impro/Pink Lady Lemonade/アンコール:God Bless AMT ~ La Novia(アカペラ))
終演後、Sandroが絶好調にてDJを行っておれど、当然誰も踊れぬような選曲にして、我々は大いに爆笑。何しろ前回も、客が全員帰ってしまってもお構いなしにDJをやっていた男である。客がいなくなってから「今からが俺の時間だ!」と、朝まで爆音でレコードを回し続けた男である。そして何しろ想い出波止場の大ファンなのである。到底まともな男であろう筈なし。前回は朝5時半まで彼ととことん付き合ったが、流石に今回はお先に失礼させて頂く事にし、相変わらず壮絶なテンションでレコードを回し続ける彼を残し、午前3時半、会場内2階にある宿泊スペースにて就寝。

11月13日

明け方一度目覚めし折は、未だ階下よりSandroが回すレコードの爆音が聴こえていたが、午前8時半起床。シャワー&洗濯を済ませ、さてSandroは何時までレコードを回していたのだろうか、斯様な事を思いつつ会場の方へ伺えば、どうやら朝方にそこいらで力尽き、ついぞ今し方まで雑魚寝してたであろうと思しき襤褸襤褸のSandroを発見、昨日のレコードを回していた時の面影はすっかり失せ、今やまるで魂の抜けた廃人の如し。「コーヒー飲む?」私を見つけた彼は、バーカウンターの中に入り2人分のコーヒーを入れれば、彼曰く「昨夜はあまりに楽しい夜だったので、朝までひたすらレコード回し続けて、すっかり燃え尽きた」そりゃそうやろ…。
宿泊スペースに併設されているキッチンにて、津山さんが米を炊けば、御相伴に肖る事とし、津山さんよりレトルトカレーも少し分けて頂き、先ずはカレーライスとして、その後は、Londonにて購入せしとろろ昆布と日本から持参せし塩昆布とゆかりにて、「こぶこぶゆかり御飯」として頂けば、これは大いに美味なり。

更に即席味噌汁も添えてみれば、そこへはじめちゃんが持参せし「鰯の甘露煮」真空パックが登場するや、嗚呼、何と豪華な朝食である事か、感涙ものの美味なり。

素晴らしき朝飯を大いに堪能後、再びバーカウンターにてSandroのコーヒーを頂きつつ歓談。音響屋よりレンタルせしベースアンプに見事引導を渡せし津山さんよりの弁償するとの申し出に対し、Sandro曰く「ロックの保険は高くつくもの」と一蹴、この男も矢張り真のロックバカであろう。
今宵のGenevaと明日のLilleが終われば、再びここに戻って来る予定故、その2日分の荷物を纏めんとするが、ここBernはShopzoneの商品補充中継ポイントにして、ツアー前に私が日本から、そして各国の各レーベルから追加在庫として、ここの事務所宛に大量の商品群が届けられておれば、Shopzone在庫管理部長東君は、このとんでもない在庫数の前に暫し呆然。結局2軍通達されしこの先売れそうもない不人気タイトルの不良在庫を、イタリアのディストリビューターに送る段取りを組み、またCotton懐妊との知らせを受ければ、彼女に懐妊祝い代わりとしてCD1箱をプレゼントせんとし、これにて何とか自分達で運べる臨界量にシェイプし得る。古いスーツケースに各々問題を抱えし東君とはじめちゃんは、昨日新しい鞄を購入しておれば、2人とも御満悦にしてパッキング。

さて午後12時、レコード屋の開店時刻なれば、津山さんは当然の如くスイスフランを握りしめ突撃すると聞けば、たかがギターを爆音にて弾きステージ上にてホタえるのみで手にした金を、今回は何とか持ち帰らんなんぞと云うセコい了見であったからこそか、きっとレコードの神様の罰が当たったのであろう、若しくは、来年はこの金を元手に少々のんびり休もうかなんぞと邪な考えを持っていた故、神様から「お前みたいなカスはもっと死ぬ気で働かんかい、世の中は厳しいんじゃい、ボケがぁ~」と天罰が下ったのであろう、今や失う物は何もない私なればこそ、矢張り本来の享楽的且つ刹那的に生きる事を決意、当然の如くスイスフランを握りしめレコード屋へ突入。今回の津山さんは、荷物の重量やキャパの都合上、いつものようなカスレコード大量購入ではなく、レアなオリジナル盤等の貴重盤を中心に購入する作戦の様子なれば、Rory Gallagherの初回のみEP付きオリジナル盤やらRabbit(ex.Free)のオリジナルUK盤(こんなん一体誰が欲しいねん?)、Thunder Pussyのブートリイシュー(名盤!)津山さん曰く「世界3大女性歌手の1人」カタルーニャの歌姫Maria Delmarbonetのスペイン・オリジナル盤やらを購入しておられる。私はElena LeddaのLP2種(津山さんでさえ見た事ないと言わしめる代物1枚を含む)やらN.C.C.P数枚、その他民族音楽やら購入すれど、こうなれば例の「Vinyl Junky症候群」に火が付き、サントラやらカルト系やらカス・イージーリスニング(特に世界軽民族音楽!)やらに到るまで、片っ端から購入したけれども、明かに元手不足にして諦めざるを得ず、大いに無念なり!
午後2時47分発のGeneva Aeroport行き列車に乗り込み、さて2時間弱の旅なれば、毎回Bernを訪れる度に立ち寄る駅構内の中華料理屋「大平洋大酒楼」にて、焼飯+酢豚+鶏腿肉の唐揚げをテイクアウトし、クラブより持参せし赤ワインのボトル共々車内にて頂く。何故か今回のツアーに於いて、矢鱈と酢豚を食したいと思っておれば、然程旨い訳でもなけれども、取り敢えずはこれにて大いに満足。されど酢豚にパイナップルを入れるのだけは御勘弁願いたし。

午後4時半頃Geneva到着。明日のLille行きのTGVの予約も済ませ、迎えに来てくれたクラブのスタッフの車にて、今宵のライヴ会場L’Usine – Le Kabへ。ここを訪れるのは既に3度目なれば、エンジニアの親爺の毎度の仕事の遅さにも、唯々呆れ返るのみ。この手の輩の場合、サウンドチェックにてファズを踏めば「ギターの音量を下げろ」と文句を垂れられ喧嘩となる故に決して踏まぬのだが、この親爺に到っては、何とクリアサウンドにも関わらず「耳が痛いからミドルレンジを絞れ」と耳を塞ぎながら文句垂れくさるではないか。音量がデカいと云うならまだ判るが、ミュージシャンに対し音質を変えろとは、こちらの音作りに対して文句垂れている訳であり、エンジニア如きの分際で斯様な発言をするなんぞ、烏滸がましいにも程がある。当然斯様に不毛且つ不条理にして身の程知らずな要求に屈する筈もなく、中指を突き立てしFUCKサインと共に「impossible!」と一蹴、お前は何でもええからフェーダー全部目一杯まで上げといたらええんじゃ、このカスがぁ~!ここも照明担当が相当にこだわりを見せておれば、足元やらドラム周りにも多くの照明機器がセットされ、例によって「何か照明に対するリクエストはあるか」との問いに「We trust you, so play together!」と答えれば、大いに燃えている様子なり。
昨夜に続き今宵もオープニングアクトを務めるNeither Neither Worldの面々が到着、彼等のサウンドチェック終了後、スタッフ共々皆でディナーと相成り、赤ワインを抜く。今宵のディナーは店のスタッフの手に拠るものなれば、先ずはパンプキン・スープであるが、これはカボチャの味も殆どせぬ程に薄められ、何ともへたれな味、いと不味し。

続いてのメニューは、チキンのクリームソース煮+ポテトのチーズ焼き+マッシュルームのバター炒め+缶詰法蓮草。缶詰法蓮草以外は、一応七味等で味を整えれば何とか食せ得れども、果たしてこれを料理と呼べるかどうかは疑わしい処。

ここGenevaはフランス語圏なれば、矢張りこの食する側が勝手に味付けしろとの高慢且つ手抜きな味付け具合こそ、まさしくフランス的なり。デザートのチョコレートケーキは、もう腹一杯胸一杯にて丁重にお断り。
店のスタッフから「アブサント好きか?」と問われ、勿論大好きだと答えれば、何とスペイン産アルコール度数85%の通称「ブラックアブサント」を御馳走になる。

先ずは一口ストレートにて味見してみれば、フィンランドの「Koskenkorva/Salmiakki」とそっくりにして矢張り色具合も同じなれど、こちらは到底ストレートでは飲めぬ程のきついアルコール臭さが鼻を突く。お馴染み緑色のアブサントよりも甘みが強い故、角砂糖を使わずに水のみで割ってみれば、これは大いに美味なり、と云う訳で結局グラス4杯馳走になる。
ここGenevaに於いては、毎回必ずある日本男性が観に来てくれるのだが、誰かに似ているなあなんぞと思っておれば他ならん、LSD-Marchの道下君であった。

そう云えば、海外ではよく誰かにそっくりの人を見掛けたりするもので、以前Parisの地下鉄にては、嘗て働いていた「聖家族」のスタッフ秋仁君に瓜2つの白人に遭遇、秋仁君自体が日本人離れした顔立ちであったからであろうが、また今回のツアーに於いてはTampereにてY2Jことクリス・ジェリコそっくりのフィンランド人に遭遇、ちょっと生意気な感じまでY2Jであった。本日のShopzone。

丁度真夜中頃の出番なれば、知らぬ間に場内はかなりの入りとなれど、もう少し早い時間にライヴは行いたいもの。何故夜中にならねば外出せぬのか、スタッフの話に因れば「寒いから」だそうで、されど真夜中も寒い事には変わりなかろうが、何にせよ出無精の私には何とも理解しかねる。
さて大爆音にて演奏すれば、あの腐れエンジニア一体如何に思っている事やら。客は大いに盛り上がっておれば、アンコールに今回のツアーでは初めてとなる「Na Na Hey Hey」を披露、ファンキーな曲故に会場内は大ディスコ状態と化す。
(impro/Dark Star Blues/impro/La Le Lo/Pink Lady Lemonade/アンコール:Na Na Hey Hey)
終演後楽屋に戻れば、Neither Neither Worldのメンバーが、私がブラックアブサントを飲んでいたのを見たらしく「やっぱりアブサントはこの緑色のが本物だ!」と、緑色のアブサントを馳走してくれれば、こちらの方は、このラベルこそ初見なれど、味は確かに私がよく存じているアブサントであった。

どちらのアブサントであろうが、私にとっては美味極まりなく大いに堪能。
終演後の会場内はDJタイムにてすっかりディスコと化して大盛況なれど、会場2階にある宿泊施設に投宿なれば、頂いたアブサントを呷りて、何とか午前3時半就寝。

11月14日

午前9時起床。明け方に目を覚ませば、未だ階下よりテクノなんぞが聴こえて来ており、一体何時まであの騒ぎは続いたのやら。午前9時半、階下にてクラブオーナー自らが、我々の為に朝食を用意してくれれば、パン+オーナー自ら焼いた玉子焼き+コーヒー+オレンジジュース+昨日のケイタリングの残り物であるフルーツやらチョコレートやら。パンは焼き立ての様子なれば1個食してみんと頬張れど、何と障子紙の如き味にして不味し。結局玉子焼きとキウイとオレンジジュースにて朝食とする。

朝食を済ませれば、強い向い風の中、徒歩10分にてGeneva駅へと向かう。駅にてスイスからの出国手続きを済ませ、午前10時半のLyon行きの列車に乗り込めば、1等車の喫煙席は僅かに8席、疲れているのか即爆睡。Lyon駅にて乗り換えんとすれば、いきなり東君が見知らぬフランス人男性から「Are you Hiroshi?」と、声を掛けられる。東君の彼女Tiffanyは、ここLyon出身である上に、昨秋に於いては東君が暫くTiffany宅に滞在していた経緯もあれば、どうやらその折に顔を会わせていた様子にして、東君が「世界は狭い」と呟けば、すかさず津山さん曰く「アー・ユー・ヒロシ?世界は狭し。」
午後13時5分発Lille Europe行きTGVに乗り込めば、何と車内満員にして、何と東君とはじめちゃんの座席指定は「空いてる席に座れ」となっており、そんな座席指定あるか、ボケ~ッ!現在TGVの1等車両には、何と喫煙席が存在せず、3時間予期せざる禁煙を強要される羽目に、世界で一番喫煙マナーの悪しきフランスにて、全席禁煙とは如何な了見ぞ。
午後4時10分、Lille Europe駅着。Lilleには少々思い出もありて、初めての海外ツアーの折、初めて自分独りにて列車に乗った駅なれば、その頃は未だ英語も殆ど話せず、ベルギーへの普通列車に乗ろうとLille Europe駅に来てみれば、ここはTGVとEuro Starのみの発着駅故に自分が乗るべき列車は当然見当たらず、いろんな人に稚拙な英語にて訊ねては、何とLille Frandersなる別の駅の存在を知り、漸く無事列車に乗り込めたのであった。また1999年に行われたAMT2度目のツアーにて訪れた際は、伝説の「ブレックワースト事件」が勃発、当時は未だ微々たるものでありし前夜のギャラ全額を投入し、駅前の総菜屋にて購入せし食料は、尽くとんでもなく不味かった事極まりなく、その不味さたるや、未だ海外ワースト・フードのトップ3にノミネートされ続けている程である。
今宵は「La Malterie Hors D’elle」なるフェスティバル最終日のハイライトとして出演することになっておれば、スタッフの車にて会場La Maison Folie de Wazemmesへ。昼食を取らなかった為、猛烈に空腹なれば、到着早々我々のケイタリングを貪り食う様は、周囲から見れば、まるで餓鬼の如しであった事であろう。生ハムもチーズも苦手にして、更にパン嫌いの私としては、たとえパンの中ではマシな種類であるバケットであれ、今や到底食う気にさえならず、ビール片手に、ハムの中では唯一食し得るサラミ+人参サラダを貪るのみ。ドレッシングは、フランス特有のマスタード+オリーブオイルなる質素なものにして、矢張りフランス人が美食を愛する民族だとは到底信じ難きものなり。

漸く空腹感も取り敢えず落ち着いた処で、では早速セッティングへと向かう。小ステージと大ステージにて交互にプログラムが進行する故、小ステージにて何やらチェロ等を使ったしょうむないインプロが繰り広げられている隙に、大ステージにて我々はセッティングを済ませる段取りである。今宵は日曜日にして、夜遅くともなれば客は帰ってしまうが為、我々は午後7時15分から1時間半の演奏を予定されておれば、終演時間も早く何とも気分は楽である。
この手の前衛系フェスティバルなればこそ、エンジニアは矢張り鈍臭い事この上なく、ミックスもディスコ・ミュージックかと聴き紛うが如きのドラムサウンドをフューチャーした具合なれば、全くもって斯様にロックの熱き魂を解さぬアホ共、お前ら何でもええからフェーダー全部目一杯まで上げとけや!されど客の反応も頗る良ければ、まあ良しとするしかあるまい。
(impro/Dark Star Blues/impro ~ What Your Name/impro/La Le Lo/Pink Lady Lemonade)
終演後、漸くディナーなれど、ライス+豆の煮込みのような代物+バケット+サラダ+パンプキンスープ。

昨夜同様、パンプキンスープには全く味がなければ、持参せしうどん出汁やら塩昆布やら七味を混ぜ合わせ何とか食せるレベルにアレンジを施し頂く。津山さん曰く「なかなか旨い湯やったわ」不味いものには文句垂れるばかりなれど、空腹故に背に腹は代えられぬと見るや、その料理を料理として認めぬ事で、無理矢理自分を納得させてまで腹の足しにしてしまうとは、その満腹感への執念計り知れず。豆の煮込みのような代物にもうどん出汁やら七味を混ぜ合わせ、さすれば何とか食し得れども、結局はライスに塩昆布を乗せて食するが最も旨し。
さてもう少し会場にて飲んで行くと云う東君を残し、我々3名はスタッフの案内にてホテルへ。今宵は個室である上、終演時間も早ければ、何とものんびり快適にホテルでの滞在を満喫。シャワー&洗濯後、テレビにて「X-File」のフランス語吹き替え版を続けて2話分観賞、それにしてもフランス語吹き替えの酷さと云えば、台詞はまるで素人の棒読みの如く、更にオリジナル英語版に対して、声色の似た声優をキャスティングする筈もなければ、モルダーもスカリーも何ともすっとぼけた声色にして、違和感を感じる事頻り。続いてシャラポワちゃんの試合中継を見つけるや、嗚呼、シャラポワちゃんの可憐な事この上なく、本来テニス観戦なんぞ全く興味なけれども、単にオヤジのスケベ心のみにて観賞しておれば、結局試合終了までシャラポワちゃんを満喫、午前4時半就寝。

(2004/12/10)

其之壱其之弐其之参其之四其之五其之六其之七其之八其之九其之十其之十一
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