『人声天語』 第115回「AMT欧州ツアー2004 ~世界残酷食物語~」#9

11月 22日

夜中にパスポート・コントロールにて数回起こされれども、結局午前6時過ぎまで爆睡。午前7時Wien Sudbahnhof駅に到着、今度はここからVenezia行き列車にて7時間の旅である。午前8時57分発Venezia行きに乗り込めば、オーストリアもひたすら雪景色にして、それを眺めつつ、先ずは昨日テイクアウトして来たカツ丼の残りを頂く。何とも退屈な列車の旅にして、昨夜は充分過ぎる程眠りし故、これ以上眠る気分にさえならず、ただぼんやりと時間の過ぎ去るを耐え忍ぶのみ。オーストリアからイタリアに入れば、急に建物やら景色が一変、ヨーロッパの南側にやって来た実感が湧く。日没前の夕陽を眺めておれば、何と太陽が2つから3つに見える珍現象とかで、これには大いに感動。

午後4時45分、漸くVenezia Mestre駅に到着、オルガナイザーのLucaに電話してみれば、乗り換えて僅か1駅目のMagliamo Vento駅まで来てくれとの事で、再び列車に乗り込み午後5時半、Magliano Vento駅に到着し、さてLucaに再び電話すれば、今度は誰も出ぬ有様。先程の電話にて、イタリア全日程を取り仕切るオルガナイザーMassimoから何も聞いてなかったとの事で、多分アンプやらドラムキットの調達にでも出掛けているのであろうか。しかし通常1時間以内にMagliano Vento駅に到着する事なんぞ容易に想像出来ようものであるから、連絡がつくようにしておくのは当然ではあるまいか。駅構内のパブの電話を拝借し、何度か試みておれば、漸く連絡がつき迎えに来るとの事、それにしても何と云う段取りの悪さである事か。さてMagliamo Vento駅にて待つ事1時間半、漸くPaoloなる人物が迎えに来てくれれば、Lucaがもう1台の車にて迎えに来ると云うので、先ずは私とはじめちゃんが先発隊として、Paoloの車にて今宵のライヴ会場Filandaへと向かう。
さて会場へ着いてみれば、これは明らかに場違いなアートスペースにして、果たして斯様な場所にて我々が演奏して大丈夫なのであろうか。会場に着いた処で、機材も全く並んでおらねば、この段取りの悪さは一体何なのか。そして駅にてLucaを待つ東君と津山さんは、何と更に1時間もの待ち呆けを食らい、結局機材一式をピックアップしてから漸く拾われたらしく、いやはやこの段取りの悪さ、頭が悪いと云う以外の何ものでもあらず。
漸く全員が揃った処で、会場にての晩飯は、スタッフの奥さんの手料理らしきユーゴスラビアの豆スープ+ピザ。

豆スープはかなりイケる味なれど、ピザは元々あまり好きではない故、ピザ好きの東君が大喜びなるを尻目に、少々摘む程度にて食事終了。
客層も矢張りアートっぽい雰囲気なれば、なんとも御年配多く、また上品そうな風体であるが、全体の印象としては村の青年団主宰のロックコンサートに村中の民が集結したとでも云えば、想像に易いか。全く何がどうなっておるのか、誰が一体何者なのか、兎に角さっぱり判らぬまま。
PAも簡単なものしか見当たらなければ、結局自分達でPAさえもやる羽目に。何しろマイクスタンドも急遽即席にこしらえた代物なれば、いやはや斯様な状況は昔の赤貧どさ回りツアーの頃を想起させる。
いざ演奏を始めれば、年輩の御仁については遥か遠くになりにける若かりし頃を思い出したか、何やら異様な空気感にて盛り上がれども、この信じ難き弱小アンプ群ではまともな演奏なんぞ叶う筈もなく、敢えて今宵は音量抑え目の空間系演奏に終始、また一部かなりジャズっぽいアプローチともなれば、このツアーに於いてかなり特異なセットと相成り、されど最後はアンプが御陀仏になろうが知った事ではない故、可能な限りの大音量を振り絞り大暴れ、今回のツアーに於いて最短演奏時間記録となる1時間にて幕。
(impro/La Le Lo/impro/Pink Lady Lemonade)
開演前よりのあまりの空気に、思わずShopzoneさえオープンするを忘却しておれど、終演後にある御仁から「CDはないのか?」と訊ねられ、さりげにCD箱を取り出せば、一瞬にして人集りとなる。更にTシャツも取り出せば、これまたかなりの年輩の御仁達に大人気。なんでもこの田舎にあるCDショップでは、AMTのCDが4年前から店頭に並べられているらしく、皆探しているアルバム名を我々に告げて来る辺り、実はかなりマニアックな御仁の多き場所なのやら。
終演後も、振舞いワインが次々と抜かれ、客の多くは会場内にてワイン片手に歓談、何とも村人達の寄合の如きなれば、我々は早々に退散せんと、Lucaに投宿先へと送って貰うよう依頼、どうやら投宿先は駅に近いと云う事なれば、明日はVenezia経由でTrinoへ行く故、それは大いに好都合。さて車2台にて投宿先へと出立すれば、確かMagliano Vento駅から会場まで車で10分も要しなかった筈なれど、かれこれ1時間をも要し、漸く何処ぞへやら到着の様子なれば、何やら青年団の会館の如き建物にして、1階にてはバーが開いており多くの若者でごった返す中、我々はスーパーヘビー級の荷物を抱え3階まで階段にて上らされ、漸く案内されたその部屋とは、多くのPCが並ぶネットカフェの如き広間にして、当然の如く多くの若者で溢れ返り騒然としておれど、Lucaはこれにて自分の仕事は終わりのような顔をしておる故、こちとらすっかり腹腸煮え繰り返り「これでどないやって寝ろ云うんじゃ!」更に一体明朝は誰が駅まで送ってくれるのやら、否、そもそも此所は何処やねん?兎に角今日1日の顛末を思い返せば、こいつ到底我々には図り知れぬ程のド阿呆野郎の様子にして、思いつく限りの質問をしておく事が懸命ならんと捲し立てる。さすれば彼曰く、ここはMagliano Vento駅に近いのではなく、Castelfrancoと云う別の駅に近いらしく「アホかぁ~!」明日Torinoへ向かうに当たり、今宵到着せしMagliano Vento駅ならば、たった1駅にてVenezia Mestre駅なればこそ、そのままMilano経由にて容易にTorinoへ辿り着けたものを、何を考えてこんな訳の判らん所に連れて来くさっとんねんな!Luca曰く、Castelfranco駅からならば、一旦Padovaまで行き、Milano経由にてTorinoに行けるとの事なれば、早速時刻表をネットにて調べさせる。一応11時過ぎの列車に乗れば無事Torinoに行けそうと判れば、さて今度は明朝の駅までのピックアップであるが、彼曰く「徒歩でたった5分だから自分達で歩いて行ってくれ」ボケかぁ~!この荷物見てからぬかせ、アホがぁ~!と云う訳で、無理矢理Francescoなる輩に車で送って貰う事にはなれど、その当の人物は今ここにはおらず、されど今宵中にはここに帰って来る故、明朝誰かにFrancescoの所在を尋ねてくれとの事。おいおい、何かアテにならなさそうな話やな。「じゃあ僕は家に帰りますから」と、何やらまるで逃げ帰るように、Lucaは足早に立ち去れば、さてこの喧噪の中でどないやって寝ろ云うねん!館内禁煙にして、喫煙スペースであるテラスへの出口が施錠されておれば、何事につけ欲望に対し我慢出来ぬ男東君は、大声張り上げながらそこらを蹴り捲り大荒れ、疲労困憊一刻も早く眠りにつきたし津山さんも不機嫌極まりなく、その空気を察したか漸く数人は立ち去れど、まだ10人近くはPCに座りつつも大声にて喋り捲る有様なれば、斯様に酷き扱いは久しぶりなり。津山さんはソファにて就寝、私はPCを拝借しイタリアの残り日程の詳細をチェック、兎に角イタリア全日程を取り仕切るMassimoの仕事が杜撰にして、クラブの名前どころか都市名も出鱈目なれば、漸くここに来て全ての詳細を把握。とてもブッキング手数料20%を取らんとせし仕事ぶりにあらざれば、矢張り合言葉は「Don’t trust anybody!」であろうか。雑務をこなし午前2時半ソファにて就寝。

11月23日

午前7時半起床。次またいつネット接続し得る環境に遭遇するか判らぬ故、もう一度接続し雑務に勤しむ。さてFrancescoなる人物を探さねばならぬが、現在館内には我々以外に3名程しかおらぬ中、どうやら彼等は誰もFrancescoにあらぬ様子なれば、これは矢張りアテにせぬ方が得策なりと、まあ徒歩5分なれば早めに出立し自力にて行かんと云う事に決定。そうと決まれば、どうせ朝飯どころかコーヒーさえもない上、斯様に気分悪き場所に長居は無用とばかり、スーパーヘビー級の荷物を携え一路駅を目指す。昨夜Lucaから貰いしディレクションに因れば、最初の交差点を右折すればそのまま駅に到達と云う事であったが、その交差点にて「Stazione(駅)」なる案内表示は、幹線道路であるにも関わらず何処にもなし。ならばと通り掛りし自転車の親爺に訊ねてみれば、確かにこの交差点を右折なれど、ここから優に2.5km以上はあるとか。どこが「徒歩5分」やねん、あのLucaの調子の良さには再び腹腸煮え繰り返れども、幸い時間的にはかなり余裕をもって出立した故、何とか列車には間に合うであろうが、このスーパーヘビー級の荷物を携えての徒歩2.5kmなる距離は、相当な地獄となるであろう事想像に易し。何にせよ、もしもLucaのお調子良き戯れ言通りFrancescoなる人物アテにしておれど、結局車が手配出来ずなんぞと云う下りとなり、矢張り徒歩にてと云う事にでもなっておれば、間違いなく列車には乗り遅れたであろう。この荷物を携えての2.5kmは、かなり急ぎ足にてでさえ30分は要すれば、運良く2.5kmと云う距離を事前に掌握し得た事の意味合いは大きく、御陰で良きペース配分にて歩ければ、矢張り30分を要し無事Castelfranco駅に到着すれど、流石に滝のような汗。
午前10時34分発Padova行き列車に乗り込むや満員にして、約45分にてPadova駅に到着。これも当初の計画通りVenezia Mestre駅からMilanoに向かっておれば、ほぼ始発駅にての乗車であった故、優に座って行けたであろうと思えばこそ、またしてもLucaに対する腹立しき気持ちが再燃。空腹なれば、私と津山さんは駅の表にあるマクドへ出向き、私はビッグマック・セット、津山さんはキャンペーン商品「オリエンタル・バーガー」なる代物のセットをオーダー、同じくキャンペーン商品「サムライシェイク」は如何なる味がするのか興味あれど、流石にオーダーせず。「毎日ピザでもOK」とまで宣うピザ大好き男東君は、当然駅構内のピザ屋にてピザを食せど、これはあまり旨くなかった様子。何故だかいつも間の悪い男はじめちゃんは、ここでもどうやら矢鱈と時間を要する逸品をオーダーしたらしく、嗚呼、矢張りはじめちゃんなればこそか。イタリアのみならず外国嫌いの津山さんなれば、「せめて1ヶ所ぐらいはイタリアのええとこ探さへんとなあ」と、大好物のイタリアン・ジェラートに舌鼓を打つ。午前11時50分発Milano行きに乗車、早速ビッグマックを頬張れば、暫くバーガーキングに慣れ親しみし事もあり、何ともお粗末な味である。イギリスの如きファーストフードが一番マシな食い物である土地とは異なるイタリアにては、マクドの店内が閑散としているのもこれまた当然の理か。されど店員の働きっぷりは、ハンバーガー1個に15分も要せしフランスとは異なり、なかなかキビキビしており好感度高し。されど列車内にて同じくマクドの袋の封を切りし津山さんに於いては、なんと店員のミスにてオリエンタル・バーガーならぬビッグマックが包まれておれば、矢張り所詮イタリアであったか…。腹も満たされれば、窓から差す日射しの御陰で程良き陽気と相成りて、車内にて爆睡。Milanoに到着すれば、今度は午後3時半のTorino行き列車に乗り込むが、何とも可愛い女性から、果ては津山さんに「もし『糞蛙』って云う生物がおるとしたらあいつじゃ!」と言わしめる程の不細工な中国人女性に到るまでにて、車内はほぼ満員状態。イタリアも今や車内禁煙なれば、ただひたすら然して何もする事なく、沈む行く夕陽と夕映えのアルプスを眺めるのみ。
午後5時10分、イタリアの列車にしては珍しく、定刻よりも数分早くTorinoに到着せし故、明日のRomaまでの列車のチケットを予め購入しておく。何しろヨーロッパにて、切符売場は常に長蛇の列にして、客1人に対応する所要時間も平均3分以上なれば、御陰で列車の発車時刻が差し迫る事少なからず、先ずは備え有れば憂い無し。タクシーにて今宵のライヴ会場Cafe’ Procopeへと向かう。今宵は「Festival Musica 90」なるフェスティバルの一夜にして、ツアー前にRocoちゃんから、11月下旬にイタリアへ行く故、何処かで前座としてライヴやらせて貰えませんかと打診されておれば、今宵はそのRocoちゃんとLamちゃんなる日本人女性デュオの演奏も行われる段取りとなっている。津山さんのみRocoちゃんLamちゃん双方共に面識があるそうで、久々に逢う大阪の友人との再会に嬉しそうである。
会場へ着くや、イタリア全日程のオルガナイザーMassimoからのメッセージが届いており、明日のRoma公演と明後日のFirenze公演の日程変更とやらで、日程が入れ替わったと伝えられれば、先程購入せしRomaまでのチケットを変更せねばならぬ事に気付く。Romaと云われておれど何処かよく判っておらず、昨夜受け取りしメールにてSalernoと記されていた故、スタッフに何処か訊ねてみれば、何とRomaから350kmも離れているとか、Napoliよりも更に南なれば、それって全然Romaとちゃうやんけ!となれば、その翌日のUdine公演は、物理的にフライトでもせぬ限り辿り着く事はほぼ不可能と推察されるや、今宵自身のグループZuのライヴの為フランスにいるMassimo宛てに、26日のUdine公演はキャンセルする所存であるとの連絡を依頼、後程彼から了解との返事を伝え聞く。されど御陰で、Udine公演の翌朝、Udineから列車にてVenezia Mestre駅まで移動し、更にバスにてVenezia空港へと向かい、veneziaからRomaにてトランジットしギリシャのAtensへ、更にギリシャ国内線にてThessalonikiまでフライトせねばならぬと云う、今回のツアー中最も強行軍となるであろう過酷な移動は、単にRomaからギリシャのフライトへと変更出来れば、何しろ列車も飛行機も遅れて当然の国イタリアである、もし何処か1ケ所でも乗り継ぎに失敗すれば、その当夜のThessaloniki公演はキャンセルせざるを得ぬかも知れず、このリスクが解消されただけでも気分的には随分楽となる。
さてサウンドチェックは、例によってアホなエンジニアにして、いきなり津山さんに「音がデカ過ぎる」と告げれば、皮肉っぽく超微音ベースにて「これでええやろ」と再び音を出せども、何とそれでも「デカ過ぎる」と云われ、そのあまりに予想を反するリアクションには呆れ返るしか術もなく、思わず全員で大爆笑「こんな音量で演奏出来るか、このカスが!」その間、彼の助手であろう若者は、何とドラムスタンドのツアーケースに跨がり、会場内をゴロゴロと周回しておれば、その様を見て「こいつええなあ!アホやで!」何とこの輩の話では、これが彼のフェラーリだとか、正真正銘のアホに思わず拍手。さて結局斯様な微音量では到底演奏侭ならんと、一挙に大爆音にてサウンドチェックを行えば、大抵のエンジニアは「音量を下げろ!」と怒り出すのが常なれど、彼はもう諦めたか、すっかり黙認している様子なれば、未だ見所ありと云った処か。
サウンドチェック後、スタッフやRocoちゃん達とレストランにてディナー、皆で赤ワインにて乾杯すれば、ピザ大好き男東君は当然の如く阿呆のひとつ覚えの如くまたしても大のお気に入りルッコラのピザをオーダー、ピザをオーダーする際、毎度「ルッコラ、ルッコラ!」と連呼する様、これから一体何度伺えるのであろうか。

食に対し保守的な津山さんは無難にスパゲッティー・アラビアータ、はじめちゃんはボンゴレを注文。私は海鮮スパゲッティーと説明されし「Spaghetti Al cartoccio」をオーダー、これは鳥が形取られしアルミホイル包み焼きとなっており、運ばれて来た際には未だ炎が灯されている状態にして、さていざアルミホイルを開けてみれば、イカやらタコやら貝やらの出汁がトマトソースと見事なハーモニーを醸し出す、何とも美味なるスパゲッティーにして大いに堪能、これは大いに満足なり。

スタッフの女性がオーダーせしカツレツにルッコラが乗せられし逸品「Finissima」これも何とも美味そうにして、少々試食させて頂けば、こちらも大いに美味なり。

さて会場へと戻れば、隣の小ホールにて我々曰く「エロ・シェイクスピア」なるパフォーマンスが行われており

矢張り今宵も前衛系フェスティバルなのかと憂鬱にさえなれば、こちらは超満員の入りにして、Shopzoneも開店と同時に大盛況。本日のShopzone。

QBICOのEmanueleとも再会、彼が赤ワインを奢ってくれるも、何とその香りはまさしくボンドかセメダインなれば、到底飲めた代物にあらず。Roco & Lamの2人はAMTツアーTシャツを着てのパフォーマンス、このプログラムにない謎の日本人女性デュオ、されど大いに盛り上がれば、一体イタリア人の目には如何な風に映ったのやら。

さてAMTなれば、何しろノリの良い陽気なイタリア人である、津山さんも昨夜とは対照的に絶好調、イタリア用ネタもいろいろ披露され、キダタロー作曲なれどオリジナルはイタリア民謡であると云う「アホの坂田」も飛び出し、大いに盛り上がる。アンコールは、Roco & Lamも一緒に「Na Na Hey Hey」で大狂乱の夜も幕。
(impro/Dark star Blues/impro/La Le Lo/impro/Pink Lady Lemonade/アンコール:Na Na Hey Hey)
終演後、タクシーにてホテルへ、洗濯を済ませるや、Rocoちゃんが持参してくれし麦焼酎と柿ピーを、RocoちゃんLamちゃんと大いに堪能、粉末ほうじ茶にてほうじ茶割りにして頂けば、矢張り焼酎は旨い。テレビでは偽ブルース・リー主演の70年代B級香港カンフー映画が放映されており、それが何故だか妙に可笑しい。久しぶりの焼酎にすっかりほろ酔い、午前3時就寝。

11月24日

午前9時40分起床、昨夜の焼酎が効いたか爆睡、御陰でブレックファーストは午前9時半にてタイムアウトなれば、誰もおらぬレストランへ赴き、残されたクロワッサン2個+紅茶にて朝食とす。シャワー後、ダイヤルアップにてネット接続を試みれば成功、ホテルでの接続可能率は非常に低い上、これは有り難や。MassimoにUdine公演キャンセルの件、改めてメールにて通知。
午前10時半、ホテルをチェックアウトし、タクシー2台に分乗するや、この運転手の陽気さ計り知れず、なんともナイスなタクシードライバーなり。Torino駅へ到着するや、先ずは昨日購入せしチケットの変更手続き、Roma行きをFirenze行きに変更はし得れども、差額はキャッシュバックされねば、MilanoからFirenzeまでの超特急Eurostar Italiaのリザベーション代とTrinoからMilanoまでを1等車へグレードアップする事にて見事消却。
午前11時50分発Milano行きに乗り込めば、1等車なれどかなりの乗車率にして、イタリアならでは車中も大いに賑やかなり。午後1時45分にMilano駅へ到着すれば、Milano駅にて毎度お世話になるスポット、我々曰く「端っこカフェ」なる駅構内の隅にあるカフェへ、RocoちゃんとLamちゃん共々伺い、私はビール2杯を呷れば、ピザ大好き男東君は矢張りここでもピザを注文、いやはや本当にピザの好きな男である。

午後3時発Napoli行きEurostar Italiaに乗り込めば、これにてRoco & Lamのご両人とは名残り惜しけれどお別れ。列車内は満席にして、矢張りツアー終盤なれば疲れているのか皆爆睡、東君のみワイン1本をラッパ飲み。車内アナウンスの英語が非常に聞き取り易いのは、日本語同様「子音+母音」の発音形態を持つイタリア語訛りなればこそか。
午後5時45分、Firenze駅に到着、クラブのスタッフが駅まで迎えに来てくれており、車にて今宵のライヴ会場Auitorium Flogへと向かう。この運転手、何ともイラチな様子なれば、まるで同じくイラチの私の運転の如き出鱈目な運転ぶりなれど、他の車もかなりな運転にして交通法規は有って無いようなものか。街に霧が掛かっておれば、何ともサイバーパンクな風景にも見え、以前オフにて訪れし折の美しき観光地なる印象とは大いに異なる。
会場へ到着するや、スタッフは皆何とも陽気にして、各々キャラクターが立っており、何ともイカれたクラブである。スタッフの1人、我々は勝手に彼の事を「ボス」と呼んでいたのだが、そのボスが「ディナーは何がいい?ベジタリアンはいるのか?」と訊ねて来た故、「何でも食べるが、No Penne!(ペンネはお断り)」と答えるや、それが可笑しかったのか「No Penne! ガハハハハ!」と大笑いする始末。それにしてもキャパ1000人程の巨大クラブなれば、昨日日程変更されたのであれば果たして客は来るのやらと思わず危惧せし処なれど、こちらの雑誌に今宵のAMTのライヴについて大きく取り上げられておれば、どうやら単にMassimoが日程を勘違いしていただけの様子。
先程駅まで迎えに来てくれた親爺がエンジニアなれば、イラチな性分故か、PA関係のセッティングは既に見事完了しており、誰から聞いたのか、アンプの配置さえも既に正しく置かれている徹底ぶりなり。何とも段取り良くサウンドチェックは進むのかと思えばその矢先、津山さんのベースの重低爆音の振動にてあちこちに問題多発、その原因解明から対処までに時間を要せども、対応の早さは素晴らしく、大いに信用できるエンジニアなり。されどここで東君のギターが壊れている事実露見、結局は対バンのギタリストからストラトを借り受け事なきを得るが、果たして明日はどうなる事やら。
対バンは女性ヴォーカルを中心とした「Firenze唯一のサイケバンド」だそうで、これまたAMTの大ファンにして、私のエフェクター分析等余念なく、何でも2年前のBologna公演も来てくれていたとか。その彼等のサウンドチェック終盤に於いては、イラチのエンジニア親爺、我々は「大将」と勝手に呼ばせて頂いたが、その大将は既にミキシングブースから離れ、既に飯を食いに行く体勢。
サウンドチェックが終わるや、大将の運転にてレストランへと向かう。クラブのスタッフ連中と対バンのメンバー共々ディナーと相成れば、流石は陽気なイタリア人、赤ワイン片手に大声で喋り捲る事この上なく、兎に角何処にでも割り込んで話し始める辺りはまるで関西人と同様にして、何とも賑やかなディナーと相成る。サッカー好きの津山さんと東君がサッカーの話題を振るや、現在中田が在籍するFirenzeなればこそ、ボスが即座に「ナカタ~ナカタ~」と、多分こちらでの中田の歌であろうと思しきを歌い始め、これにて皆も大盛り上がりとなり、再び乾杯の嵐と化す。
さて先ずはアペタイザーのパスタが運ばれて来るや、ボスが「No Penne!」を連呼し大爆笑、トマトスースとガーリックソース2種類のパスタ盛り合わせなれば、これはなかなか美味なり。

続いて鶏とオリーブのトマトソース煮なれど、これも大いに美味にして、食には保守的且つ相当な文句垂れの津山さんにさえ「これは旨いわ!」と言わせる程。

これで終わりかと思いきやポテトが登場

更にステーキ+鴨ロースが運ばれて来る。

おお~っ、パスタ&ピザ地獄と覚悟して乗り込みしイタリアにて、まさかステーキにありつけるとは嬉しい限り。焼き具合も見事にレアなれば、美味しい肉の焼き方もよく存じている様子、流石イタリア、世界で日本共々唯一「麺のコシ」を理解している民族なればこそ、その食へのこだわりも共感し得るか。鴨ロースもステーキも大いに美味にして、よくよく思い起こせば、今朝のクロワッサンより何も食しておらず、その空腹さもあればこそ、ステーキは異なる3パーツを貪り食う。ジェラート好きの津山さんは、デザートにレモンのジェラートを注文、大いに満足げにしてその旨さに舌鼓を打つ。
さて会場へ戻れば、突然猛烈な睡魔に襲われ爆睡、故に本日のShopzoneの写真は撮れず終いなれど、大盛況にして、当初あれ程膨大な在庫量を誇り、またツアー途中に於いては商品補充まで行えども、今や多くのタイトルがソールドアウト状態。
今宵はアンプ群が特に素晴らしく、物凄い大爆音にて演奏すれども、音響状態は非常に素晴らしくクリアにして、流石大将を筆頭に曲者にしてつわもの揃いと云った感である。ライヴ最中、最前列の客から何やらイタリア語のメモを手渡され、一体何ぞやと見てみれば、何とリクエストにしてこれには思わず苦笑。昨夜同様今宵も踊り狂う狂乱の客なれば、津山さんも全開モードにして、再び「アホの坂田」も演奏。
(impro/Dark Star Blues/impro/La Le Lo/アンコール:La Novia(アカペラ))
終演後、再び大将の車にてホテルへと向かえば、お見送りのボスは最後まで「No Penne! Come back soon!」と叫んでいる始末。ホテルにては津山さんと同室、流石にツアー終盤なれば大層お疲れの様子で即寝成仏。私は洗濯を済ませ、テレビのエロチャンネルを眺めつつ、午前3時就寝。

(2004/12/10)

其之壱其之弐其之参其之四其之五其之六其之七其之八其之九其之十其之十一
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