News & Gossipにもアップしたので既に御存知の方もおられるだろうが、4月のAcid Mothers Gongの日本ツアーを最後にCotton CasinoのAcid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 脱退が決定。オリジナル・ドラマー小泉一のツアー復帰が決定し、今年から再び「AMT史上最強のメンツ」と云われた1999年のラインナップにてライヴ活動を行う心づもりであっただけに、些か残念ではあれど、これもまた仕方あるまい。神は我々に逆戻りする事を許してくれぬようだ。26年に及ぶ自分のバンド活動歴に於いて、メンバーチェンジが常に繰り返される故、今やメンバーの脱退劇如きで動じる私ではなし。
そもそもAcid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O.の母体は、Cotton Casino、須原敬三、小泉一と私の4名にて1995年に結成された。その後「魂の共同体 Acid Mothers Temple」と合体しメンバーは一気に増殖、それも私が常にメンバーチェンジに泣かされて来たが故の「メンバーを固定しない」と云う苦肉のコンセプトに基づいた、初期Gong同様、面白い輩がおれば即メンバーとして参加願うと云う、所謂バンド然とした体裁を敢えて避けた為である。されど現実とは往々にして皮肉なもので、海外ツアーを重ねるうちに自ずからメンバーは固定化、気付いてみれば当初のコンセプトは、すっかり有名無実なものとなってしまっていた。
故に今回のCottonの脱退表明は、私にとって当初のコンセプトに立ち返る良き機会となり得る。当面メンバー募集をする気もなければ、5月からのアメリカ/カナダ・ツアーも一応残された4人で敢行する心つもりなれど、勿論何らかの縁あれば新メンバーを加える事も念頭にあり。縁ある人とは、いずれ何らかの経緯で必ず知り合うもので、縁なき人とは如何なる経緯にても知り合わぬもの。今後の活動については、ヴォーカリストを固定しない事で解決。
斯様な訳で、確かにCotton脱退とは云えど、所謂一般的な意味での脱退とは些か趣を異にする。メールにて某方からも「i & Makoto、正式には解散とコメントされていないような」等と云う御心配まで頂戴したのだが、別にCottonと何らかの怨恨等で決別した訳でもなく、そもそも「Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. から脱退」とは発表したが、「Acid Mothers Temple から脱退」とは一度も申し上げておらぬ筈。即ち当然私とCottonとのデュオ・ユニット「i & Makoto」を解散する理由もなければ、斯様な御心配も無用。「Acid Mothers Temple」なる定義、至ってややこしく混乱や誤解を招きがちであるが、「Acid Mothers Temple」とは巨大な傘の如きもので、同じ「Acid Mothers Temple」の名を冠する「Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O.」や「Acid Mothers Temple mode HHH」「Acid Mothers Gong」をはじめ、更にその他の関連ユニットは、我々にとって全てのこの傘の下にある一部分に過ぎぬ。
AMTのBBSにて「Cottonの脱退はWWEのような『やらせ』ではないのか?」と云う投書まであり、思わずこれには苦笑してしまったが、しかし実際今後、CottonがまるでStone Coldのように電撃復帰する事もあるだろうし、突如ライヴに於いてゲスト参加する事もあるだろう。Cottonは、脱退こそすれども、今もAMTの一員である事に変わりはないのである。
海外でのCotton人気は、到底この日本では伺い知れぬ程絶大なるもので、何故斯様な顛末になったのか、私も全く推察しかねれど、確かにステージ上にて彼女の発するオーラたるや尋常にあらず。常に大量のタバコとビールを携え、ひたすら吸いまくり飲みまくる事に始まり、意味不明の決めポーズやらアクション、時にはステージ上で横たわり、時には猛烈なヘッドバンキング、そして何よりも「歌わないリード・ヴォーカリスト」として、Cotton Casinoと云うキャラクターは次第に完成して行ったように思われる。更にはスーパーサイヤ人宜しく「Super Cotton」なる最強バージョンまで登場し、Super Cottonが降臨するや、まるで「ひとりアルマゲドン」の如き究極の自滅キャラとして、ステージ上にてシンセと共に倒潰する程度ならまだしも、挙げ句は車の運転の妨害行為にまで及び、時折こちらまで生命の危機に晒されられる始末なれど、しかし翌朝、まるでレインボーマンの「ヨガの眠り(主人公ヤマトタケシは、レインボーマンへの変身に際し、化身の力が大量に消費される為、変身後は必ず一種の仮死状態である5時間の『ヨガの眠り』を必要とする)」の如く、すっかり鬱状態になっている姿には思わず失笑させられたもので、またスーパー化すると英語しか話さぬ上、時折普段は全く耳にせぬ「恋する乙女」の如き妙に甘い声色になる等、故に愛すべきキャラでもあった。Daevid Allenもこの「Super Cotton」なるキャラに非常に興味を示し、幾度も「Cotton、変身してくれ!」と懇願しておられれど、結局Daevidの眼前でスーパー化する事はなかった。Gongの新譜「Acid Motherhood」には「Super Cotton」なる曲が収録される予定であるが、では果たして今秋行われるGongのヨーロッパ・ツアーにて、再びSuper Cottonは降臨するのであろうか。
Cottonはバンド内に於いて唯一の女性なれど、ツアーに於いて兎に角着替える事はなく、ツアー全日程を通し、ステージ上もプライベートも就寝時も、その出立ちは全く同じなのである。「風呂に入るのは嫌いだが着替える東君」と「風呂には入るが着替えないCotton」この2人どちらが方が良いものか、時折斯様な笑い話も囁かれた程。腰にぶら下げられたハンガーに洗濯した下着を人目を憚る事なく堂々と吊るし、更にお菓子等が詰められたビニル袋をも腰にぶら下げ、そして大きなスーツケースを転がす小さなCottonは、まるで「ちびっ子ホームレス」の如し。99年の金もなく食べ物もない厳しい「どさ回り貧乏ツアー」を体験して以来、事ある毎に食料を溜め込んで行く様もまた、海外の某雑誌の記事ではないが「Playstation Generation Hippy」的な雰囲気を醸し出すに充分な要素であったであろう。
楽屋に用意された大量のビールの1/3は、彼女によって一瞬にして消費され、宿泊先にて私と津山さんが料理を始めれば、いつの間にやら皿を持ってニヤニヤしている。ツアーを重ねる毎に、いろいろと食料を持参するようになり、遂に彼女の荷物の中身はシンセ以外全て、到底道中のみでは食い切れぬであろう大量の食料で埋め尽される事となった。この「Cottonの生態」とも呼べる姿には、流石に我々一同も呆れ果てたものであったが、毎回一体何を持参して来るのか、それもツアー中のメンバー間での話題のひとつであった。
食うか飲むか寝るかゲームボーイに耽るかボーッとしている(瞑想?)か、彼女のあの生活リズムの強固さには、我々も圧倒されたものでったが、あのタフさがあってこそ、長期の過酷なツアーにも耐え得れたのであろう。「365日ずっとツアーだったら楽しいのに…」これは彼女の口癖。昨秋「これからは旅人になる!」と宣言し、自分のユニットでのツアーに明け暮れた彼女こそ「リアル・ボヘミアン」だったのかもしれぬ。
AMTのBBSにも書いたが、「AMT’s Super Cotton is over…」であり、しかし彼女は新しいキャラクターとして既に転生済みなれば、今度は「Cotton Love」として新たな道を邁進する事であろう。
兎も角人気者であったCottonの脱退、これはファンのみならずメンバーである我々にとっても残念な話ではあるが、彼女自身の判断で新たな人生を選んだのであるから、ここは彼女の将来の幸せを願い温かく見送ってあげたい。
Acid Mother Gongの日本ツアー終了後、彼女はアメリカに引っ越してしまう為、彼女の姿も日本では当分拝む事も叶わぬやもしれぬ故、この機会を逃さぬよう是非ともお出掛けあれ。
Thanks Cotton, and Good Luck!!
(2004/2/06)