リリースラッシュを控えたAMTのレコーディングが、遂にスタート。オリジナルメン バーでもある気違いドラマー小泉一氏を迎えてのセッションは、やはり壮絶の一言に 尽きる。白眼を剥きながらプレイする彼の姿は、我々の忘れていた何かに火をつけ、 セッションを終えた時には私も津山さんも廃人状態にまで追い込まれる程、この2日 間、無心にギターをベースを弾きまくった。何しろあまりの入魂ぶりからか、何とミ キサーのベース用チャンネルが火を噴き、一時スタジオ内は何やらビニルが燃えた匂 いと煙に包まれ、録音を一時中断せざるを得なくなる程。斯様な経験は、長年いろい ろな録音に携わってきたが初めての事で、勿論他でも聞いた事さえない。さて終わっ てみれば録音済みのテープの山。私の最初の仕事は、先ずこれらを全部聴く事から始 まる。
と云う訳で、今度は果てしなくベーシックの製作等に追われつつ、今後のオーバーダ ブ計画等考えていれば、ヨーロッパへ旅立つ日があと10日ばかりに迫っているでは ないか。このツアー最終日に丁度Uehと共演する為、AMTからリリースする彼等の1st アルバムをそれまでには出してあげたかったが、どうやらあちらでのジャケデザイン が難航しているようで、向こうから全然送られて来ぬ。まあ得てしてフランス人等と 云うものは斯様に悠長なもので、そう思っておればこちらも気楽と云うものか。いつ まで経っても理解出来ぬのはフランス人なり。
何より今回のツアーに於いては、私には演奏以外に重大な目的があり、それについて はまたいずれ発表出来る日も来ようか。
ツアーに向けて、未だ触った事さえないMDウォークマンなるものを購入しようと、ネッ トオークションを覗いてみれば、結局ついついヨーロッパ・ピンク映画のビデオやら エフェクターやら、挙げ句の果てには遂に見つけたフレッシャーのストラトやらを落 札しては、結局未だMDウォークマンには入札さえしておらぬ始末。されど最近、あち こちの商品に於いて見覚えのあるIDを何度となく見掛けるうちに、次第にライバル意 識が芽生え始め、況していつも終了直前に結構な高額を突っ込んで来る奴なんぞ、そ の輩の御蔭でこちとら一体何度落札し損ねた事か。せめてもの報復として、その輩が 入札しそうな物に目を付け、入札してきた途端にこちらも入札して遊んでいる。つま りその輩の過去の入札経歴を調べ、今までの傾向から入札しているであろう最高入札 金額を弾き出し、それと同金額を私も入札する事によって、御丁寧にも最高入札額ま で釣り上げてからその輩に落札させると云う、何ともしみったれた報復である。一歩 間違えばこちらが落札してしまう為、念には念を入れて調査し、そして入札する。そ の結果、入札履歴が同金額でピタリと並んだりすれば、これはもう痛快極まりなし。 私の本職である探偵の推理力を、斯様なしょーむない事でしか発揮出来ぬのは寂しい 限りではあるが、しかしまだまだ錆び付いてはおらぬ等と確認も出来、私にとっては 一種のゲームのようなものか。
しかし得てしてゲーム感覚で相手を陥れる為に入札する時は、見事に予想金額が的中 するが、いざ自分が本気で落札しようと思う時に限って、必ずと云っていい程逆転さ れる。そもそも終了直前に入札すると、終了時間が延長される為、これはまるでサッ カーで云うロスタイムで負けるようなものだ。
先日、A-DAT3台まとめて落札しようと目論んだ折も、10分延長された間に新たに 3人も入札に参入し、結果その10分間で値段は倍額以上にまで跳ね上がり、私はラ スト1分まで最高額入札者であったにも関わらず、終了直前に逆転され諦めざるを得 なかった。目に見えぬ一体何処の誰ともわからぬ奴に、突如自分の庭を荒らされたか のような錯覚さえ起こし、「今度何処かで遭遇すれば…」等とその場は熱くなるので あるが、以外とさっぱり忘れてしまう事の方が多い。
されど幾度となく痛い目に遇わされた輩については徹底抗戦の様相を醸し出す。特 にディーラー系の奴や、金持ちの道楽っぽい奴は、徹底的に有り金を叩かせてやらぬ 事には気が済まぬ。何故か私が入札する楽器や機材関係は、大抵の場合、車のパーツ を矢鱈と落札している輩と鉢合わせするケースが殆どで、履歴を見たところで、一体 何故この機材に斯様な高額の入札をするのか、否そもそも何故こいつが斯様なエフェ クターに入札するのかと、首を傾げたくなる。こちとら必要に迫られて入札している にも関わらず、どう考えても道楽としか思えぬ輩に、無闇矢鱈と値段を釣り上げられ る等、全く心外な事甚だしい。当然の如く奴らは金持ちらしく、こちらが死ぬ思いで つけた最高入札額を、最後に軽く高値更新出来る余裕ときたら、これには私の憤りも 怒髪天を突くどころではない。貧乏な私が悪いのかもしれぬが、金持ちならもっとそ れ相応のぼったくりヴィンテージショップでしょーむないヴィンテージペダルでも買 うてろ、ボケェ。
しかし向こうは向こうできっと、私の事を鬱陶しい奴と思っているに違いあるまいて。 一体どれほどの人達が、ネットオークションに参加しているか等知る由もないが、た だその無数とも云える参加者の中、再び相まみえるなんぞ甚だ奇跡のようなもので、 何だかんだ云ってもこれもまた何かの腐れ縁なのか。
最近何やら怪し気なる添付ファイル付きメールが矢鱈と送られてくる。どう考えても 新手のウィルスだろうが、以前と異なりメールのタイトルが凝っている。「ウィルス 対策」やら「ADSLへの御案内」やら、更には「不達通知」の形で送られてくる等、兎 に角添付ファイルを開かせようとするトリックの巧妙さには呆れ果てる。
しかしより効果的だと思うのは、矢張りエロサイトの案内と偽る事ではなかろうか。 かつてhotmailを使用していた時なんぞ、毎日20通以上の海外エロサイトの案内が 届いたのもだが、中でもSuzyやらKateやらの個人名で「How are you?」等の親し気な タイトルで送られてくると、ついつい誰だったか等と思い巡らせ開いては、矢張りエ ロサイト案内だったりするのだが、ついでだからちょっと覗いてみようか等と見事に 相手の思惑通りクリックしてしまう。(因みに今日もJenniferなる女性名で「When will i see you again?」なるメールが到着。当然エロサイトへの御案内であったが、 「一体いつ何処で合った女性だったかな。」と、メールを開くまで本気で思い巡らせ てしまった。情けなや…。) もしも「添付ファイルに『サンプル画像満載』」等の 魅惑のフレーズでもあれば、きっと多くの寂しい男共が開けてしまうに違いあるまい。 また誰ともわからぬ個人名で送って来られたところで、親し気に「久しぶり。このあ いだの写真が出来たわよ。」なんぞとあれば、矢張り添付ファイルさえ開いてしまう のではなかろうか。
ネット上の匿名性は、常日頃問題とされているが、何やらありがちな名前の偽名等を 使える事が、犯罪の温床となり易いように思える。チャットや掲示板で知り合った顔 も素性も知らぬメル友なんぞ、信用出来る事自体、私にとっては不可解極まりない。 yahooネットオークションも有料化された事で、この類いの被害は減ったように思う がどうなのだろう。
スティーヴ・オースチンのキャッチフレーズではないが、「D.T.A.(Don’t trust anybody = 誰も信用するな)」でないと、ネット上では生きては行けぬか。何とも寂 しいことではあるが、そもそもネットなんぞに執着する輩とは「寂しい」奴なのであ ろうから、それもまた自業自得、自然の理か。そして私もその「寂しい」一人である のだろう。何しろ最近の愉しみは、ネットオークション上で評価のページを使っての、 評価者から評価者へ次々と辿り歩く「yahoo IDサーフィン」であるのだから。
(2002/5/10)