2003年になろうが、それはただいつも通り「明日」が「今日」になり、「今日」が「昨日」になっただけの事で、別段大した意味も持たぬが、せめて何かやりかけの事柄に対し、一区切り付ける良い機会ではある。
年末年始は、ひたすらウェブサイトのリニューアルの為のデータベース作りに明け暮れた。今迄随分とサボっていたツケに加え、更新毎に形式を統一していなかった為引き起こされた数々の問題点が浮き彫りにされた事で、此処は一発奮起、先ずプログラムやデータファイル周りを整理し組み直す次第と相成った。AMTのウェブサイトは、オリジナル・ドラマー小泉一氏と私との2人で管理運営されている。我々は、今後の活動に於けるウェブサイトの在り方や、如何に効率良く更新出来るシステムを確立出来るか等の点を踏まえた上で、システム全体の改善策を、この4ヶ月間話し合ってきた。それはあまりに抜本的改革であった為、基礎工事は集中工事せざるを得ず、 御蔭で2人とも正月返上で、日がなPCの前に鎮座しては、お互いメールでファイル等を送り合い、この3週間でほぼ完成する見通し。未だアップこそしてはおらぬが、このリニューアルが完了すれば、膨大なる量を誇るデータベースとして、我々にとってのウェブサイト本来の機能を回復出来得るであろう。
AMTに於いてウェブサイトとは、単なるレーベルやバンドの紹介が目的の「ホームページ」ではなく、世界中のメディアやプロモーター等に対しての「プロモファイル」でもある。例えばツアーのブッキングに際し「バイオグラフィーと写真、音源を10セット送ってくれ」等と言われた場合、以前はいちいち送っていたのであるが、今は「ネット上からダウンロードしてくれ」の一言で済ませられる。これにより、こちらの送料や梱包作業の必要はなくなり、なによりいちいちプロモシートなんぞを作らねばならぬと云う煩わしい作業から解放される。世の中便利になったものである。
矢張りウェブなるもの、立ち上げれば見て戴きたいと思うのは当然なれど、一方で更新されぬサイトと云うものは、自分もそうであるが、自ずと足は遠退くもの。ならばリピーター確保の為には、更新するしか道はなし。況してAMTは海外を中心に活動している為、そうそうライヴを行える訳でもなく、活動情報提供はひたすらインターネットに一任される。言ってみればインターネットは、今や我々のライフラインであるとも言えるであろう。世界中の誰もが求めればその情報を簡単に得られると云う状況は、一昔前なら考えられなかった事である。情宣には金と手間が掛かるものと相場は決まっており、仮にその点をクリアした処で、果たしてどれ程の効果が上がったのか等、個人レベルでは皆目見当もつかなかった。
海外に於けるAMTを取り巻く今の状況も、インターネット時代だからこそ成し得たのかもしれぬ。勿論、地道なツアー活動、レーベル設立、録音作品のクオリティー、ライヴでのポテンシャルあってこその事ではあろうが、資本力や流通力のあるレーベルから作品をリリースしておらぬ我々にとっては、ウェブサイトの開設がひとつの契機となった事も事実で、更にJULIAN COPEのサイトで大きく紹介された事も含め、その他多くのサイトで取り上げられた事が、この状況を引き起こしたと推察出来る。作品が流通しておらぬ南米や東欧諸国でさえ、今やネット上でCD等は容易に購入出来る上、ライヴ映像さえ観る事が叶う。
さて、その更新であるが、これが思う程生易しいものにあらぬ事は、一度でもウェブサイトを立ち上げた経験のある御仁なら、容易に納得し得る事であろう。そもそも一体誰が見てくれるのかもわからぬ「待つ」側の立場で、闇雲に更新し続けるなんぞ、余程の物好きか頑な精神力の持ち主でない限り、煩わしく難しい事この上なし。開設当初は好奇心も手伝って、あれこれと更新してみるのだが、次第にその手間暇に費やす時間も無くなると同時に、開設当初抱いていた熱意も失せ、気付いてみれば半年も更新しておらぬと云う有様となってしまう。更新する限り「ネタ」も必要であるし、ネタ詰まりに陥って来るや、「一体何の為に斯様な苦労をせねばならぬのか?」等と自問自答さえし始める始末。結局はBBSのみが機能しているだけのサイトも少なくはない。
確かにデータベースだけでは、一度覗けばそれで充分事足りてしまい、次は一体いつ覗く気になろうや。データベースは所詮データでしかなく、調べたい事でもない限り、先ずもって覗く必要もなかろう。ディスコグラフィ-を週1回必ず覗く物好きはおらぬであろうし、そもそも斯様なハイペースで更新されている筈もなし。結局は、日記の類いやエッセイ等、若しくはニュース項目や新入荷商品カタログ等の比較的更新され易いページしか覗かぬのが普通であろう。されどこれらの項目を更新するには、それなりのネタが必要である上、更新に要する時間も必要なれば、挙げ句大抵のサイトが、BBSを中心に稼動しているのも大いに納得出来る次第。
ウェブサイトの長所とは、管理人の胸先三寸で容易に削除出来得る点であろう。言い換えれば「実体なきもの」的な感覚で、インターネットと云う形なきものの上に存在しているが故、削除されてしまえばもう何も残らぬ。(勿論プリントアウトして残している個人が居ると云う、利用者個々のケースは除外するとして。)出版される刹那に情報を化石化してしまう書籍等と異なり、ネット上に於いて情報は、常に新陳代謝を繰り返しその命を保つ事が出来る。それ故に無責任な情報も流されはするが、情報メディアたるものそれでいいのであろう。
AMTのウェブサイトは「Copy Left」である。即ち全ての著作権を放棄しているのだが、インターネット上の「実体なきもの」であるウェブサイトに、一体何をもって著作権を訴えねばならぬのか。よもや撮り下ろしのエロサイトなんぞであれば、その意図も明白であるが、我々のようにデータベースとして情報開示の為に開設している立場なれば、無断転載大いに結構である。そもそも私は自分のリーダー作品に関しては、自分の著作権は放棄している節がある。勝手に誰かが如何な目的で使用しようが、若しくは誰かがそれで小銭を儲けようが、斯様な些細事なんぞどうでもよろしい。ライヴ録音のトレードは、オフィシャルBBSにて大っぴらに行われているし、勿論ライヴ会場での録音行為も、主催者や会場側に問題がなければ認めている。我々の音楽をどのような形で楽しもうが、既に「手から離れたもの」に関してまで、逐一言及する気は毛頭ないし、それは個人個人の自由であろう。そもそもブートレグ根絶を訴える阿呆の権化R.FRIPPなんぞ糞食らえである。ZAPPAにせよFRIPPにせよ、自分の作品に対するあまりの溺愛ぶりが斯様に愚かしい考えをさせるのか、それとも金に纏わる利権の問題なのか、まあ他人事なればどうでも宜しいが、少なくとも私にとっては、音楽も「実体なきもの」であり、仮にオフィシャルな作品であれ、それは「複製」でしかない訳であるから、その先を杞憂する事は煩わしい限り。
さて近々、AMTウェブサイトのリニューアルも完了するであろう。斯様な事務的作業に追われる中、新年を迎える顛末となったが、それと云うのも今後の活動の為であり、世の中の勤労諸氏が休んでいる正月ぐらいは働かねば、日がな気侭な暮らしを送っている私なんぞ、罰が当たろうと云うものか。とは云え、溜まっている録音予定にも手を付けず、斯様な事をしているなんぞ本末転倒も甚だしく、いやはや売れない音楽を生業にするとは誠に大変な事である。気侭に暮らす為には、どうしても避けられぬ煩わしい事も多々あるようで、それでも詰まる処は自分の為なのであるから仕方なし。私如きの人生に於いて、「遊び惚けて暮らせる程の器量なんぞなし」と思い詰まされし年始であった。
(2003/1/13)