今回は他のメンバーより一足先に、Air Franceにて成田からの出発と相成った。Air Franceはフランス国内線以外では搭乗経験がなく、果たして国際線は如何な塩梅か、特に毎回チェックインの際に問題となる荷物の重量については、幾許かの不安もあり。何しろヨーロッパの航空会社は、預けられる荷物が20kg1個と云うセコさなれば、アメリカのUAの如き30kg2個の計60kg、況してマイレージクラブのプレミア会員なれば更に10kg、ゴールド会員ならば20kgも追加出来る太っ腹具合とは雲泥の差である。因ってヨーロッパへ飛ぶ場合は、自ずから荷物をかなりシェイプアップせねばならぬ。以前もバンド全体で超過料金11万円を請求され、散々ごね捲った挙げ句、運良く通り掛かった乗務員に掛け合い、結局無事荷物全てをを無料で預けられた事なんぞあれば、何にせよチェックインカウンターでの巡り合わせもあり、担当の職員が融通効かぬ阿呆であれば、毎度騒動になる事間違いなし。ギターについても「壊れても保証出来ませんからお持ち込み下さい」と云われる場合が常なれど、「機内にスペースがありませんから預けて下さい」と云われ「じゃあFragile(壊れ物)扱いで」と答えた処、「保証出来ませんので、では楽器の為にもう1席チケットを御購入して頂きます」とホザきくさるや、「アホか!今までそんな事言われた事一回もないど!コントラバスならいざ知らず、何でギターの為にもう1席もチケット買わなあかんねん!ほなら壊れてもええから預けるわ!それやったら文句ないやろが~っ!」と応酬すれば、ならば今度は「ではお預けのお荷物が2個となりますので超過料金を頂く事になります」「なに~っ!ふざんけんな!ボケがぁ~っ!お前が預けろ言うたんやないけ!」結局ごね捲り事なきを得たのであるが、これなんぞは空席を少しでも捌かんとせん策謀か、兎に角ほとほとチェックインでは血管が切れそうになる事少なからず。
されどフランス国内線に於いて、Air France搭乗の際は全く問題なく、況して今回は荷物も26kg程度に纏めて来た上に、ギターは我らがLondonの常宿Glynさん宅に昨年より置いてあれば、機内に預ける鞄1個と手荷物のバックパックのみの一見普通の旅行者風情の装備故、まあ然程心配もせずにチェックインへと向かえば、おおっ!なかなか可愛い女性職員揃いではないか。他の客への接客態度も見る限り問題なさそうであれば、これは若干取り越し苦労であったかなんぞと思いつつ、さていよいよチェックインカウンターへと臨む。
当然預けられる荷物の重量は20kg、私の鞄は26.7kg、通常この程度の超過ならば先ずほぼ問題なく通過出来る筈であるが、このチェックインカウンターの日本人女性職員曰く「この重量ですと、超過料金を頂かなければお乗せする事が出来ません」アホか!この荷物積んだからって、重量オーバーでその飛行機が飛ばれへんって訳とちゃうやろが!と、心の中で文句を垂れつつも「いつもこれぐらいの重量オーバーなら問題なく預かってくれるけど…」と懇願してみれば「お客様のお荷物は既に5kgおまけさせて頂いておりますが、それでも1.7kgオーバーしておりますので、お預けのお荷物を少し手荷物の方へ移して頂いて、規定重量にして頂ければ結構です」ならばここは譲歩して手荷物のバックパックへ、1.7kg相当と思しきアダブターの束やらを移動してみた処、「まだ26.7kgですので、1.7kgオーバーです」アホか!こちとらわざわざ荷物を開けて手荷物に移してやったにも関わらず「まだ26.7kgです」ってなあ、1gも減らへん訳ないやろ!結局はこのクソ女職員が重量計のカウンターを見直しておらなかっただけであったが、このクソ女職員、気が強い事この上なく、自分のミスを棚に上げておき「それでも25.4kgですので、0.4kgオーバーです」この居直りぶりには流石にこちらも逆上寸前「0.4kgがなんやねん!これでええやろが!荷物移したっていう誠意は見せたど!」その後も散々ごね捲った挙げ句、何とか25.4kgで了承させたが、このクソ女職員の接客態度、勘に触る事この上なし。何でもAir Franceでは超過料金の金額設定を値下げしたらしいが、逆にそれに乗じて超過料金で稼ごうと云う魂胆か。これではまるで全社挙げての「超過料金徴収キャンペーン」の如きなれば、なんちゅうセコさや、Air France!
後で搭乗ゲート付近の喫煙コーナーにて、同じAir Franceのタグを付けた手荷物を携える方々に於いては、何とも馬鹿デカい鞄を機内に持ち込もうかと云う輩も見受けられ、また映像用機材であろうと思しきラックケースをキャリアーに縛り付けて転がす御仁もおられれば、手荷物に関してはある程度デカくても御咎めなしの様相にして、なるほど斯様な抜け道もありか。大抵の航空会社は、機内持ち込み荷物が増える事で、乗客の搭乗に際し無駄な時間を要する為、なるべく荷物を預けてくれと云うのだが、流石は時間にいい加減なフランス人、斯様な事は気にせぬと見える。
チェックインカウンターでのごたごたにて、すっかり気分を害したが、そもそも成田に辿り着く迄の過程でさえも、銀行振り込みの所用があればこそ、東京駅にてATMの所在なんぞをキオスクにて訊ねてみれば、「それがねえ、一旦改札から外に出ないとないんですよ~」と、別にキオスクのおばちゃんの責任でもなかろうに、何とも申し訳なさそうな返事なれば、あれ程大規模なターミナル駅である事を自負しておるにも関わらず、実はATMのひとつも設置されておらぬお粗末さに大いに憤慨。長距離移動路線のターミナルなればこそ、改札を出ずとも何事も事足りるよう配慮すべきは当然と思えども、車内やホームの禁煙化を推進する一方で、未だ我らがタバコ税にて国鉄時代の赤字補填を続ける等、親方日の丸気質が抜けぬ腐れJR東日本は、結局有料トイレの設置程度しか、ヨーロッパから学んだものはないらしい。そもそも割高の成田エクスプレスは数多く走っておれど、快速成田空港行きが、何故斯様に少ないのか。関空のように競合する私鉄もなければ、我々の如き貧乏な乗客への配慮から、割安の快速を増便しても良さそうなものなれど、それどころか空港利用者の足元を見た暴利を貪らんとする阿漕な商売しくさりやがって、許すまじJR東日本。南海電車を難波から成田まで走らせるど、ボケッ!加えて総武線のホームは、何故あれ程新幹線のホームから遠いのか。一体地下何十メートルにホームがあるのやらと思わせる、あのクソ長いエスカレーターは何やねん。ついでに何度も云うが、エスカレーターは左側を空けるのが国際標準であり、右側空けるのはクソ東京だけじゃ、ボケがあ。よう憶えとけ、このタニシが!
なんぞと東京への嫌悪感どころか憎悪感が更に鬱積倍増しつつも、後発隊の東君に、荷物の重量の件をメールしようと、空港内の100円ネットコーナーへと向かえば、前回利用の際は全くスムーズに日本語変換し得たにも関わらず、今回中国語や韓国語には変換し得れども、何故か日本語変換のみ出来ぬ有様にして、いよいよもって怒り心頭。これも全て石原慎太郎の陰謀なのか(そもそも成田は東京都ではなかったか…況して三国人発言の彼なれば、中国人や韓国人に斯様な配慮をするとは考えられぬか…失礼!)それとも「超過料金徴収キャンペーン」に抵抗せんとする我々に対するAir Franceの妨害工作なのか。何で日本国内でメールをローマ字で送らなあかんねんな!
さて幾許か気分も鎮静した頃合に、いざ搭乗してみれば、機内いと臭し、さながら腐りし犬の死骸でも積むが如し。斯様に異臭の充満せし機内なんぞ、未だ嘗てお目に掛かった事、否、お鼻に掛かった事なし。色事好きのフランス人なればこそ、まさか搭乗準備に先駆けて、乗務員による乱交パーティーでも開催されていたのではあるまいかなんぞと、思わず要らぬ憶測もしてみたくなるが如きの異臭にして、常々搭乗の際には、機内食の保温に起因する何とも不味そうな匂いが既に客室に漂っているのであるが、この異臭は結局機内食配膳に際し、その機内食から発せられる何とも不味そうな匂いによって、見事中和解消されると云う顛末を迎えたのである。
勿論客室乗務員に於いては、世界で最もいい加減且つ独善的な人種であろうフランス人なればこそ、機内サービスの段取りの悪い事なんぞ云うまでもなし。何かにつけて楽しようと二度手間を避けてか、ドリンクと機内食を同時に配膳するも、客室乗務員1人で対応している上、何しろ話好きのフランス人なればこそ、いちいち客とにこやかに話し込めば、全くもって一向にその配膳作業は捗る筈もなし。
さてメニューはと云えば、ビーフシチュー+パスタか焼き魚+飯からの選択なれど、どちらも相当不味そうにして、そもそも焼き魚があんかけってどういう了見やねん!どうせ不味いんやったら、せめて気の利いたフランス懐石なんぞ出さんかい!これやったらUAの不味さと互角やないけ!然程期待していた訳ではないが、この不味さは、世界三大グルメの一端を担うフランスのイメージからは、到底想像し難き不味さである。されどそれを平然と食らっているフランス人もフランス人なれど、何とも有難そうに食らっている団体ツアーの日本人ババア共、お前らそれでも日本人か!大阪のオバハン連中の如く「これめっちゃ不味いわ!」と、声高に文句垂れる様にも閉口させられるが、まあ東京周辺御在住の方々故、「おフランス」なんぞと妙なステイタスや幻想をお抱えになっておられるのであろう、これもまた仕方なしか。
座席もUAに比べて圧倒的に狭い故、前の座席がリクライニング・ポジションをとれば、こちらの膝がつかえて痛い事この上なし。UAなんぞ、アメリカ特産超ド級ウルトラ巨漢デブ連中が搭乗する事を考慮してか、エコノミーと云えども若干席が大きめに作られておれば、勿論斯様な連中に隣に座られた折には、暑苦しく更に何とも臭い上、一度なんぞは、そのたぶり捲った腹の贅肉とは既に呼べぬ肉塊ならぬ脂肪塊の如きを無遠慮にも肘掛けに乗せる故、肘掛け部に設置された私のリモコンが操作出来ず往生した経験こそあれど、このAir Franceの狭さに比べればまだ些か快適であったか。兎に角この狭いAir France機にてアメリカ特産ウルトラ巨漢デブ共と乗り合わせるような事、即ちAir France機にてフランスから渡米する愚行だけは、今後如何な理由があろうとも、絶対に阻止回避せんとここに決意せしものなり。
更に大抵の航空会社が、機内のミュージック&ビデオ・サービス用に、オーバーヘッドバンド・ヘッドホーンを採用しているのであるが、事もあろうかAir Franceは、インナーイヤー・ヘッドホーンを採用している故、これは私のように耳たぶが小さく、インナーイヤー・ヘッドホーンをはめる事が困難な人間への厭がらせとしか思えぬではないか。御陰でスピーカー部を無理矢理耳に捩じ込まねばならず、耳の穴周辺がヒリヒリ痛みこそすれど、折しも今月の特集チャンネルにて流されていた「ジャン・ミシェル・ジャール特集」がどうしても聴きたかったと云う、何とも哀しき性なればこそか。
午後9時55分成田発のフライトであった為、翌日午前4時過ぎにParis CDG空港に到着したはいいが、未だトランジット用の通路も閉ざされており、御陰で随分と空港内を遠回りさせられた上、乗り換え先のゲートへ行こうにも、未だセキュリティーチェックさえ開いておらぬ故、仕方なくロビーにて延々と待たされる羽目に。さりとてカフェさえ開いておらねば、全く何をするでもなし。斯様な時間に到着する客も結構いるのであるから、せめてカフェぐらいは開けとけよ、ボケがぁ~!CDG空港は、幾度となく訪れているのだが、未だに何とも不案内であり、それも全てはややこしい案内表示に起因するのである。一度なんぞ、セキュリティーチェックを通過した後、まだ搭乗まで時間もある故、ならば飯でも食おうとレストランを探せども、レストランは全てセキュリティーチェックの外部にしか存在せず、またセキュリティーチェックへ戻るべく下りのムービングウォークも存在せぬ故、仕方なしに逆行してみる等、何とか地下のレストランへ向かおうと悪戦苦闘すれば、遂には何故か入国審査へ辿り着き、さて今から出国せんと云う人間が何故入国審査を通過せねばならぬのか、事情をセキュリティーに話しフライトチケットを見せ、漸く事なきを得たのであったが、結局レストランへは辿り着けず終いであった。世界で一番嫌いな空港は文句なしに成田であるが、2番目は矢張りこのParis CDG空港であろう。
それにしても各国際空港毎で、何故斯様にいろいろなシステムが異なるのか。例えばSeattle Tacoma空港では、預けた荷物を一度受け取り通関するや、再びその荷物を設置されたコンベアーに乗せ、自分はその間にシャトルに乗車し移動、そして到着ロビーにて再度荷物を受け取ると云う、何とも二度手間なシステムである。San Francisco空港では、国際線同士の乗り継ぎであれ、一旦アメリカへの入国審査を済ませ、そしてその足で搭乗ゲートへ向かえば、今度は出国手続きを取らねばならず、トランジットの時間に余裕がない場合なんぞ、このどうにも無駄な入出国手続きに要する時間の御陰で、全くもって冷汗ものなれば、嘗て両手に大量のレコードを抱えた津山さんが、このトランジットで泣かされた経緯さえある。
また空港内の禁煙状況に関しても、私の知る限り、アメリカでは、首都DCの空港のみ全面ガラス張りの喫煙コーナーが設置されておれど、嫌煙運動の盛んなアメリカであるから、勿論それ以外の空港で喫煙コーナーにお目に掛かった事なんぞないどころか、当然空港内のレストランやバーでさえ殆ど禁煙であり、トランジットで降り立ったDenver空港にて、「Smoking Bar」なる愛煙家の為のバーが1軒あっただけでも、大いに感激したものである。
以前まで禁煙の表示があろうとも誰もお構いなしで、ゴミ箱の蓋さえ灰皿と化していたParis CDG空港は、今やセキュリティーチェックを通過すれば、喫煙エリアどころか、灰皿と化していたゴミ箱の蓋にさえ吸い殻は見受けられず、地下レストラン以外は全面禁煙となってしまった様子。世界で一番喫煙マナーが悪いと信じてやまなかったフランス人が、あれ程嫌悪しているアメリカからの影響にて、全面禁煙化を推し進めているとは、全くもってお笑い草である。
今や関空や成田でさえも、以前の如き搭乗ゲート付近にて、ビール片手に気軽に一服とはいかず、気が付けば喫煙コーナーが激減しており、我ら愛煙家は何とも肩身の狭い思いをさせられる。されどまだレストラン内にて喫煙出来るだけ有り難いと云わねばなるまいか。それに比べFrankfurt空港なんぞ、喫煙コーナーがガラス張り等にて隔離されている訳でもなく、バーに併設された灰皿付きカウンターにて、何とも陽気にドイツビール片手に一服出来るのである。
しかし何と云おうが、最もニコチンの禁断症状に苦しむ刹那とは、長時間フライトでの禁煙と云う苦悶を耐え忍び、さて漸く目的地の空港に着いた安堵感からか、ここまで長時間の禁煙に耐え忍んで来た緊張感も今や失せ、ではと空港の外へ出て一服つけようにも、未だ預けた荷物を受け取らねばならぬ故に、手荷物受取所で自分の荷物が出て来るのを延々と待たねばならぬ時であろう。何故手荷物受取所に喫煙コーナーがないのであろうか、これは常々思う疑問であったが、嘗てParis CDG空港に降りた際なんぞは、勿論禁煙であるその手荷物受取所にて、当然と云わんばかりに、荷物を待つ皆が徐ろにタバコに火を付け始める様を見ては、「流石は喫煙マナーなど物ともせぬ個人主義者ならぬ利己主義者フランス人!」と、妙に感心した事もあれど、喫煙コーナーなんぞと云う代物が設置されている訳ではなかった。されど来年には常滑沖に開港される新空港の御陰で、国際線のみならず国内線に到るまで全線全便撤退と云う憂き目に晒される名古屋空港は、何と手荷物受取所に喫煙コーナーが存在すると云う、何とも愛煙家への配慮がなされた数少ない空港なのである。愛知新空港には、是非ともこの名古屋空港の頑な意志を遺志として継承して頂きたいものである。
それにつけても「快適な空の旅」とは何たるか。所詮エコノミーに座する我々からの斯様な欲目なんぞ、航空会社からしてみれば、烏滸がましいにも程があると云わんばかりか。快適さを求めるならば、「せめてビジネスに座れ。エコノミーなんぞ、目的地に連れて行って貰えるだけで感謝しろ」と云われるのが関の山か。しかしあのビジネスとエコノミーの格差と云えば、何故そこまで違わねばならぬのかと思わずにはいられぬ程にして、預けられる荷物の重量も異なれば、客室乗務員の接客ぶりも心無しか随分異なるように感じられ、何しろ事故にて最も死亡率の高い場所はエコノミーに他ならず、確かにファーストクラスの圧倒的な優遇による快適感は論外としても、ビジネスに座してふと後ろのエコノミーを眺めた時に感ずる、あの雑然とした何とも云えぬ澱みきった雰囲気とは、まるでゴミ溜に巣食う鼠かゴキブリの如きなれば、何やら集団搬送されているようにさえ伺え、空の旅こそ社会的階級の縮図のようにも思えて来れば、斯様な中で一喜一憂している下層階級の哀しさとは、これ一体如何に。
「文句云うねやったら金払え」快適な空の旅を求めるならば、先ずはそこから始めよと云う事か。
(2004/10/26)