『人声天語』 第93回「ダッシュ合併!」

ここ暫くは旅雑記ネタが続いた当「人声天語」であったが、最近矢鱈と第87回「J-Pop悶絶記」が好評の様子にて、結局は「他人の不幸ほど面白いものは無し」と云った処か。

さて夏の国内ライヴ予定なんぞも殆ど片付き、ひたすらAMTの録音に明け暮れる日々なれば、やらねばならぬ事は山積みなれど、そう易々と仕事は捗る筈もなく、時折一切合切投げ出したくもなる気分にして、金がないにも関わらず物欲亡者と成り果てては、ヤフオクやらネット通販にて散財。前々より欲しかった現代音楽のCD一挙大量購入に始まり、中古レコードや古本は勿論の事、最近の猛烈なリリースラッシュに踊らされるDVD新譜、挙げ句は加賀まりこのヌード写真集から果ては誰が描いたかも知れぬ謎のイラスト原画まで、まさしく貧乏神が憑意したかの有様で、気がつけばすっかり赤貧である。ネットバンクの口座を作ったにも関わらず、未だ預金額ゼロでは全く活用出来ず、結局日々最寄りの銀行へ出向いては振り込みする始末である。

されど金融再編なんぞの御陰で、振り込み先の銀行名がATM画面上に見当たらぬ事もしばしばなれば、係員に「○△×銀行って?」と問うては「現在は△□▽○銀行です」と教えて頂く羽目に。漸く新たな銀行名を覚えたと思いきや、こうコロコロと名称が変わると、私なんぞ世情に疎い輩は全くもって混乱するばかり。それでなくとも銀行の接客態度には憤りを感じる事多かれば、この預金者(と云った処で私の預金額は常に3桁、否、時には2桁でしかないが…)を小馬鹿にしたような体質許すまじ。山本薩夫監督作品「華麗なる一族」宜しく銀行合併の裏には政界との癒着等による多くの策謀なんぞあるのだろうが、斯様な事は我々庶民の存ぜぬ処。せめて合併の暁には一目瞭然の名称を冠して頂きたいもの。と云えども今迄にも金融再編による銀行の合併劇は幾度となく行われて来ており、「非常階段+原爆オナニーズ=原爆階段」的な発想では既に対応出来ぬであろう事も事実か。(http://www.channel-e.tv/voice/herohero/nichidiary/library/2003/5may/21-31/030522-1.html)そう云えばガソリンスタンドなんぞも合併を繰り返しており、突然御贔屓にしていた系列スタンドが見当たらなくなったと思いきや、単に合併による名称変更であったと云う事も屡。何でもかんでも合体すればと云うのは、ハカイダー4人衆によるガッタイダーだけにして欲しいもの。

否、どうせ合併するならば、逆もまた然りで造反して裏切り分裂をも行えばどうか。先達ての第一勧銀と富士銀行の合併ではないが、合併後の権力抗争なんぞより派手にやって頂き、金融戦国時代なんぞ眺めるのも一興か。そもそもここまで経済が落ち込み、庶民の生活に大きな負担と不安を与える銀行なれば、それぐらいの余興を興じた処で最早何も変わるまいし、エンターテイメント化すればもう少し経済に関する興味も湧くと云うもの。とは云えWWEの如く優れたシナリオ作家によって面白可笑しくストーリーがテンポ良く展開すれば、経済ニュースから毎日目が離せぬであろうが、ただ無意味に分裂再編を繰り返す日本プロレス界のような状況となってしまえば、観客不在のお家騒動と大差なく、退屈な事この上なし。何事も「サービス」である故、本人達にその意識が欠落しておれば、何をやった処で不毛であろう。

そもそも銀行のサービスの悪さと云えば、何せ矢鱈と待たされる上、少額預金者の私なんぞまるで客扱いされておらぬ。かつて最寄りのUFJ銀行へ外貨の両替えに赴いた折、カウンターにて手続きを済ませてから、待たされる事何と2時間。どう眺めても大勢の行員が働いているが、何故私の両替えに2時間も費やされるのか。1枚ずつ偽札鑑定機へ通すにしても、空港内の銀行では通常数分もあれば処理される。ATMも振り込みする輩が多ければ、その長蛇の列はなかなか進まず、況して自分が単に引き出しするだけなれば、もし仮に1台でも「引き出し専用機」なんぞ設けてありさえすれば、斯様に時間を要する事もないのである。またカウンターに赴けば、「あっちのカウンターへ行け」だの「こっちへまた戻って来い」だのと、客を行内盥回しにする塩梅で「それよりお前らが動けや!」と云いたくもなる。そもそも自分の口座から引き出すにも、時間によっては手数料を取られる上、最近でこそコンビニにATMが設置され24時間引き出し出来るようにこそなれど、何故「預けてある自分の金」を引き出すに際し手数料を取られなければならぬのか。とは云えCITI BANKのように24時間ATMが稼動しておれど、預金額が30万円以下の場合は「口座維持費」と称し毎月数千円ずつ天引きされるシステムにも合点がいかぬ。

合併し巨大化したのならば、せめて窓口には各銀行きっての美女行員を配して頂きたいもの。それならば多少時間を待たされようが、待たされ甲斐もあると云うものである。それこそ「サービス」と云うものであろう。

合併と云えば、市町村の合併もある。いざ合併する際にはいろいろ問題も多いのであろうが、結局最後は名称が最大の関心事なれば、馴染み深い地名やら由緒ある歴史的地名が消えてゆくのも寂しい話であろうが、況してや新名称が最近見られる「ひらがな表記」の地名であったりすると、当事者でない私でさえ寂しい面持ちとなる。この調子では、いずれローマ字表記の妙な地名さえ出て来るやもしれぬ。現在のカタカナ語と呼ばれる外来語の氾濫ぶりも、国立国語研究所が「わかりにくいカタカナ語を日本語に言い換える工夫の提案」なんぞと云った処で、結局は常に新たな語彙に対し後手に回っている末の事であろう。名古屋市内の「大曽根商店街」がリニューアルして「OZモール」になった際には流石に笑えたが、この手の妙な名称も増えつつある昨今、いずれ地名が例えば「O坂」「SUCK-La島」になる日も来るやも知れぬ。

その他にも政界再編とかで政党の分裂合併も繰り返され、選挙に行った処でそうしょっちゅう政党名がコロコロ変われば、混乱を招く事この上なし。かと云って今更2大政党制なんぞにされた処で、保守ばかりでは選択肢にならぬではないか。そもそも政党政治や間接民主主義と云うシステムにさえ、今や問い直されるかと云う御時世、何ともおめでたい話である。そもそも「自由民主党」はかつて「自由党」と「民主党」が合併して誕生した政党であった筈であるが、今また「民主党」「自由党」なる同じ名前を冠する政党が合併しようとしているとかで、しかし一応「民主党」の名称を継続使用するらしいが、どうせなら「民主自由党」にでもすればどうか。それにしても政党の名前にロクな名前なし。もう少し「気のきいた」名称は付けられぬものなのか。「パンス党」「全ス党」と云った永井豪のネーミングセンスを少しは見習って欲しい処。かと云って「マニフェス党」ではヒネリ不足か。

私の出身高校も含め、奈良県の公立高校も再編されるとか。何だかんだ御託を並べてはいるが、結局は単に近隣の高校同士を合併再編する様子にて、私の母校も校舎は残るが、名称や校歌等は合併に際し消えて無くなるかもしれぬとか。私個人としては、母校への思い入れは皆無故、斯様な事なんぞ一向に構わぬが、母校愛なんぞ持ち合わせる奇特な方々は心中穏やかではなかろうて。されど県下有数の進学校とアホ学校が合併する際、高校受験を控えた学生達が一番の煽りを食らう事は必定で、だからと云って「従来の偏差値偏重主義の受験体制の崩壊」と云う革命的事態が訪れる筈もなく、結局哀しいかなアホな受験生が泣きを見るだけの事であろう。さて新校名も奈良なればこそ、せめて「大仏高校」「夢殿学園」「阿修羅工業高校」等と付けて頂きたいものであるが、きっと従来通り野暮なものになる事は想像に易く、またサンバやハワイアンをベースにした校歌なれば、甲子園なんぞで校歌斉唱する際にも賑やかで良いのではあるまいかと思うのであるが、結局は相変わらずのものとなろう。

合併ではないが、アメリカン・プロレスのメジャー団体も、結局帝王ビンス・マクマホン率いるWWE(元WWF)によって統合されてしまった。統合後、「父ビンス率いるWWF vs 息子シェインと娘ステファニー率いる連合軍(WCW+ECW)」の図式で抗争劇を繰り広げる展開を見せ、それが終結するやすかさず2人のオーナー「ビンス・マクマホン vs リック・フレアー」による2大番組RAWとSDの抗争劇をnWoを復活させてまで展開したが、矢張り宿敵WCWの消滅は視聴率に大きく影を落とし、特にSDの視聴率はガタ落ちの危機的状況を迎えた。そこで更により「RAW vs SD」を明確化し番組同士の抗争激化により視聴率回復を図る為、ビンスにとっては仇敵中の仇敵であった元WCW副社長にして「マンデー・ナイトロ」の敏腕プロデューサー兼nWoのオーナーであったエリック・ビショフを起用して、2人のGM「エリック・ビショフ(RAW)vs ステファニー・マクマホン(SD)」の抗争激化を図りつつも、両番組共に各々独立した体制を築き上げ、遂にRAWは2人のGM「エリック・ビショフ vs スティーヴ・オースティン」の抗争へ、SDはお馴染みマクマホン一家の抗争「父親ビンス vs 娘ステファニー」へと発展させ見事に成功させてしまった。新人や若手を次々と起用する一方で、ホーガンを筆頭にWCWに在籍していた大物レスラーを次々復帰させる辺り、統合されたが故に成し得たストーリー展開でもあり、況して今やWCWとECWを買収してしまっている故、かつての団体を越えてのエピソード等も上手く盛り込み、そのストーリー展開は無限に拡がって行く。これでこそ吸収合併した意味もあろうと云うものか。矢張り帝王ビンス恐るべし。

さて昨年暮れに結成されたDaevid Allenの新たなGong「youNgong」は、Daevidの息子でありドラマーであるOrlandと彼の盟友でありベーシストであるDharmawanのオーストラリア在住リズム隊と、私とJosh (from Daevid Allen’s University Of Errors) によるギタリスト組が決裂、結局「youNgong」は事実上消滅(Daevidが「youNgong」の名称をOrlandにくれてやる事で決着)し、残ったDaevidとGilli、そしてJoshにCottonと私の5名は、紆余曲折の末「Acid Mothers Gong」を結成するに至った。これは本来単なる「Gong + AMT」と云う1回限りのスペシャルユニットとして、私が以前からDaevidに提案していたものであったが、結局「youNgong」消滅により、この「Acid Mothers Gong」がそれに取って代わる事となった次第。「youNgong」名義で行われる筈だった10月のLondon Royal Festival Hallでのコンサートは、自ずから「Acid Mothers Gong」のデビューコンサートとなり、 Acid Mothersと云う限りは、東君と津山さんが参加する事は勿論、ドラマーは、丁度その時期に私と津山さんと共に「Japanese New Music Festival Tour 2003」でヨーロッパ遠征している事もあり、Ruinsの吉田達也氏である。「youNgong」分裂騒動も結果的には「Gong + AMT」と云う事でひとまず決着を見たのであるが、Daevidは今迄にも「Here & Now」との合体による「Planet Gong」やビル・ラズウェルらとの合体による「New York Gong」等、様々なGongを結成した経緯もあり、彼にとってはこれもひとつの常套手段なのであろう。

果たしてこの合体この先どうなるのであろうか。取り敢えず東西のアホ同士が合体する事で「世界最強のアホ」になる事だけは、ほぼ間違いあるまいて。この「Acid Mothers Gong」は来春ヨーロッパ・ツアーを行う予定。

(2003/8/13)

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