『人声天語』 第142回「2008年総まくり」

遂に今年はこの人声天語も殆ど更新出来ず終い、何しろツアーに次ぐツアーと、その隙を縫ってのレコーディングに忙殺され、到底人声天語まで手が回らず。いろいろと綴りたきネタなんぞあれど、それらはまた日を改め来年にでも。されど来年と云いし処で、果たして斯様な暇があるのか。所謂ブロガーと呼ばれる世の諸氏なんぞ、一体如何にして斯様に毎日ブログを更新し得るのやら。先ずは今年殆ど更新し得ず終いの人声天語に対する言い訳から、今年の総まくりとさせて頂く。

 

「今年のAcid Mothers Temple」

Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O.(以下AMT & TMP UFO)は、メンバー2名の離婚劇なんぞもあれど、毎年の如く春の北米ツアーと秋の欧州ツアーを敢行せしは勿論の事、初の帝都ワンマンを行い、また非常階段との合体ユニットAcid Mothers階段としてのライヴも行いし。
初の帝都ワンマンは、国内にてAMT & TMP UFOとして海外ツアーと同ラインナップ、即ちゲストなしのライヴを行う事自体稀なれば、漸くAMT &TMP UFO本来の姿を晒せしとの意味もありしか。知らぬ間に客層も随分変わりしかとも見受けられ、これもまた興味深き事なり。来年もAMT & TMP UFOとして国内でのライヴも予定している故、また何か面白そうな企画やイベント等、条件等が合意し得る限り出演したき処と思う故、関係者各位の皆様、是非よろしくお願いいたします。
Acid Mothers階段は、そもそも企画者kuma.ccのtさんの発案要請によるものなれど、彼の熱意がなければ実現する事なかりしかとも思われる。非常階段がロックに於ける最もコアな部分を抽出凝縮しノイズ化せしがその起源ならば、AMT & TMP UFOはロックに於ける最もコアな部分を抽出凝縮しロックの地平線上にて展開せしが起源故、お互いが共感し得るは当然の経緯なりしか。一夜限りと思われしこのユニットなれど、是非とも今一度、今度は帝都襲来を画策せん。
AMT階段の前座として、AMT & TMP UFOのアコースティックセットを披露すれど、これは初の試みにして、来年辺り是非ともスタジオ録音作品としても披露したき処。
恒例のAMT祭に於いては、今やドラびでおとして活躍中の一楽儀光氏が、7年ぶりにAMT & TMP UFOに一夜限りの復帰。何とも同窓会と云うよりは戦友会とでも云うべき空気にして、一同大いに楽しまさせて頂きしか。さて2009年のAMT祭は12月12日(土)@名古屋トクゾウにて、再び山本精一氏を迎え「大サイケ」を凌がんと「メガサイケ」をテーマに御送りする予定。

Acid Mothers Temple & The Cosmic Inferno(以下AMT & TCI)は、正月早々から難波ベアーズにてライヴを行えど、結局国内のライヴは6月下旬の札幌でのライヴと2本のみ。夏に敢行せしUK&アイルランド・ツアーに合わせ、ピカ様参加後初のスタジオ録音作品やライヴCD及びDVDもリリースすればこそ、国内でもその姿をもう少し御披露目したき処なれど、残念ながら叶わず終い。またいずれ機会があればと云う事で。ピカ様を擁するラインナップでの初の海外ツアーとなりしUK&アイルランド・ツアーも大盛況にて終了、また海外でも漸くAMT & TMP UFOとAMT & TCIの相違が認知されし様子か。 ピカ様参加の影響もあり、そのバンド名とは裏腹に随分とハッピーな音に変貌しておれば、果たして今後以下に変貌して行くか、大いに愉しみなり。

吉田達也、津山篤、私の3名からなるAcid Mothers Temple SWR(以下SWR)は、2月にGuru GuruのMani Neumeierさんを交え、SWR、Acid Mothers Guru Guru、吉田達也氏とManiさんのデュオManitatsuの3ユニットにて「Guru Guru祭」国内ツアーを敢行。昨年のCD発売記念ライヴに於いては、アルバム収録曲の再演等も行えど、再び完全即興バンドに立ち戻れり。
4月から5月に掛けて敢行されしJapanese New Music Festival欧州ツアーは、津山さんが病欠の為、SWRも私と吉田氏とのデュオにて演奏せざるを得ず、7月に行われし凱旋国内ツアーにて、漸く本来のトリオにての演奏叶いし。来年は1月下旬に、SWR+梅津和時と云う特別ラインナップにて国内ツアーを予定しておれば、皆様のお越しをお待ちしております。

Acid Mothers Gong(以下AMG)は、ここ最近年1度のライヴ活動に終始しておれば、今年は、JNMF欧州ツアーにてイスラエルを訪れし折、丁度前後してDaevid Allen & University Of Errorsのライヴもありし故、AMGとしてのライヴも行いし。津山さんが病欠の為、Joshが急遽ベースを担当、Daevid、Josh、吉田氏そして私による4人編成と云うAMG史上最小編成で臨めど、これがまた随分新鮮な結果を導きしか。何にせよ御歳七十路半ばに差し掛からんDaevidが、元気でいつまでも活動し得る事を切に祈るものなり。

Acid Mothers Guru Guru(以下AMGG)は、2月に「Guru Guru祭」国内ツアーを敢行、相も変わらず元気なManiさんとの演奏を堪能。4月にはオランダにて開催されし「Roadburn Festival」に出演、残念ながら津山さんは病欠にて、代打として元EmbryoのLocko Righterがベーシストとして参加、更に吉田氏も参加しツインドラム形態にて演奏、従来のAMGGとは大いに異なる音となれど、これはこれでAMGGの別の姿とも云えしか。
AMGGではなけれども、7月にはドイツにて開催されし欧州最大のヒッピーフェスティバル「Herzberg Festival」に出演の本家Guru Guruにゲストギタリストとして参加。完全即興のAMGGと異なり、当然こちらはGuru Guruの曲を演奏する内容なれど、大いに楽しめし。
さて来年2月には豪州ツアーを、3月上旬には再び「Guru Guru祭」国内ツアーを予定しておれば、いつも元気なManiさんとの演奏が今から楽しみなり。

Acid Mothers Temple & Melting Cosmic Blues Bandは、ロック番長津山さんが新たに結成せしAMTの名を冠するブルースロックバンドなり。私はエレクトロニクス担当なれば、これまた何とも楽しき限り。そもそも私の音楽ルーツは電子音楽やミュージック・コンクレートなれど、純然とバンド内にてエレクトロニクスのみを担当するは、自分の音楽生活に於いて初めての事。いずれ1stアルバムの録音等も行われる予定。

 

「今年のその他の活動」

先ずは、Kawabata Makoto & The Mothers of Invasion(以下MOI)再始動が挙げられるか。そもそも2001年に津山さんと一楽さんとのトリオ編成で、1stアルバム「Hot Rattlesnakes」をLondonにて録音せしが発端にして、後にメンバーを大幅に一新すれど、それが結果AMT & TCIに発展、結局MOIは事実上消滅しておれど、神戸の超絶若手ジャズロックバンド灰皿との出会いを契機に、完全即興の高速ジャズロックを目論み、MOI再始動を思い立ちしものなり。更には元リフォームの超絶ベーシスト森田聖氏も参加、現在に至る。来年は是非ともこのラインナップにて2ndアルバムを製作したき処。年明けの1月11日には梅田ムジカジャポニカにてライヴを行う故、皆様のお越しをお待ちしております。

また元Mandogの宮下敬一君とのユニットGodmanも活動再開、ラインナップも一部刷新され、ドラムに一樂誉志幸君、キーボードに灰皿の坂口光央君を迎え、更なる恍惚系サウンドを目指すものなり。こちらも来年は是非とも2ndアルバムを制作したき処。何しろ数年前にリリースせし1stアルバムは、ジャケットの酷さもありセールスは今ひとつ芳しくなく、ここは何とかこのパワーアップされしラインナップにて挽回せんとの目論み。殆どのメンバーが現在帝都在住なれば、来年はライヴ活動も精力的に行う心積もりなり。

さて昨年始動せしピカ様とのデュオ光宙★魔呼斗も、今年はいよいよコンセプトも固まり、謎の宇宙神話の如きストーリーを展開するに至れり。されど今年行いし大阪、札幌、Londonの計3度のライヴに於いて、各回ストーリーが展開する故、結局誰もそのストーリー全体を捉える事は不可能と云う暴挙に出ており、その身勝手なる無謀さも我々らしからん。来年はいよいよスタジオ録音作品もリリースせんと思えば、それにて漸く全貌が晒されるか否か、それは未だ知る由もなし。

同じくドラマーとのデュオ形態の新ユニットとして、砂十島NANI君とのヒューマンシャワーも遂に始動。こちらも完全即興に依るものなれど、果たしてこれを所謂即興ユニットとしてカテゴライズしていいものか。当初は即興にて変拍子爆裂のプログレ的アプローチを目指さんとすれど、実際に蓋を開けてみれば、そのアホさぶり荒唐無稽ぶりは、ライヴを体験せし方々のみが知るものにして、1月15日に難波ベアーズにてライヴを行う故、是非とも見届けて頂きたき処か。

昨年初顔合わせとなりし灰野敬二+河端一+吉田達也は、今年スタジオ録音DVD「一と一が重なってしまうまで」をリリース、その発売記念ワンマンライヴも敢行。灰野さんとは、十数年前に御自身のバンドにギタリストとしてお誘い頂きし経緯あれど、その折は幾つかの理由からお断り申し上げざるを得ず、時を経て今漸く御一緒するに至る。不失者、Ruins、AMTと三者三様の音楽性を各々展開して来れど、共演するに当たりそれらの音楽性に囚われる筈も無く、そもそもAMT関連の活動に於いては、ロックバンドなればこそロックと云う枠組に敢えて拘りギターを演奏しておれど、そもそも30年前に所謂前衛と呼ばれる音楽にて演奏活動を始めておれば、所謂ロックギター的アプローチとは飽くまで戦略的なものでもあり、故に久々に自分の深層部に潜む音響(敢えて音楽とは云わぬ)を解放し得る可能性を感ずる。 灰野さん曰く、DVDタイトルと思しき「一と一が重なってしまうまで」とはこのユニット名らしけれど、もしそうならこれまた所謂ユニット名らしからぬ名前にして、それも我々らしくて良しか。

夏にクロアチアより7 That Spellsを招聘、ゲストとして3公演に参加。初日の東京公演こそ控えめにエレキシタールのみでの参加となれど、翌日の名古屋公演からはギターでも参加、最後の大阪公演ではNikoと共に完全ツインリード状態と化し、ほたえ捲らせて頂きし。ツアー中にドラマーが健康上の理由で急遽帰国と云うハプニングもあれど、各オルガナイザーの尽力にて無事終了し、彼等も「人生最高のツアーだった」と述べておれば、お世話になりし関係者の方々に、遅ればせながらも御礼申し上げます。

その7TSの大阪公演では、対バンとして山崎マゾ+河端一+須原敬三+ピカチュウとしても出演。マゾ君の要望にてマスターベーションの「兵士となって戦場へ向かえ」なんぞもカバーすれど、最後はピカ様とマゾ君の大暴走にて修羅場と化し幕。ピカ様は「1年に1回このメンバーでやりたい!」と仰っておられれば、果たして来年もこの大暴走ユニット活動するのやら。

暴走ユニットと云えば、今年の仕事納めとなりし高知でのライヴ、ピカチュウ+河端一+津山篤の暴走トリオか。昨年京都のイベントにて、オルガナイザーの要請にて組まれしユニットなれど、今回も高知Chaotic Noise井上さんの要請により再び結集せしものなり。案の定大暴走にして、ピカ様のドラムセット解体もあれば、挙げ句私も思わずギターを破壊し、これにて今年1年を締めくくりし。音楽生活30周年たる今年もこれにて無事終われば、来年も更なる精進を志すものなり。

今年はソロにてサイケフェスティバル「Terrastock 7」に出演。フェスティバルに3日間滞在すれば、アシッドフォークユニットTanakh、そしてKinskiと重鎮Bardo Pondのセットにもゲスト参加。Terrastockには毎回友人のバンドが多数出演しておれば、多くの友人に会える事こそ一番の愉しみか。私のソロセットは最終日のトリなれば、終演後にオルガナイザーPhil McMullen氏から「一体誰がこの後に演奏出来ると云うんだ?Makotoのセット以外に今回のフェスティバルのクローザーは務まらなかっただろう!」との賛辞も頂けし故、フェスティバルのクローザーとしての任も無事全う叶いしか。
また元オックスの栗山純さんの営むロックバーTerrazzoの15周年記念パーティーにてもソロを演奏すれど、急遽純さんがヴォーカリゼーションにて参加、思い掛けぬコラボレーションとなれど、これも大いに楽しめしか。 来年はソロ活動ももう少し精力的に行わんと思えば、国内外問わず出演依頼等を求むるものなり。

つるばみは、現在も活動を続ける私の参加バンド中、最も長い歴史を誇れども、例によって年1度か2度のライヴを行うのみ。されどその僅かな機会に我々の想いを凝縮せんとしておれば、これにて充分とも思われるか。毎年「来年こそは」と云い続け既に十数年。来年も気の向く侭に活動せん。

今年は音楽活動30年目なれど、斯様な事なんぞすっかり忘却しておれば、そもそも斯くの如く節目なんぞ気に留める性分でもなし。自作楽器とアナログシンセにて最初のカセットを録音せしは30年前かと思い返せば、人生とは斯くも短く、時間は斯くも速く過ぎ行くものと知る。さて次の30年にて果たして何を成し得るか。そもそも刹那主義者にして運命論者、常に「今」のみに生きんと思うものなり、とは昨年の総まくりにても綴っておれば、来年も多分今年と然して変わらぬか。斯くして歳とは重ねるものならん。

 

「今年の1枚」

兄ぃこと志村浩二率いる「みみのこと」に、ヴォーカル&ギター担当スズキジュンゾ君が加入して既に1年以上が経過せしか。幾度かライヴを観る機会あれば、観る度に進化を遂げておられ、また兄ぃと西村さんのリズム隊の秀逸さには、思わず目が釘付けとならざるを得ず、聴き惚れる事頻り。もしもこのトリオによる新録が発表されておれば、今年の1枚に選び得しかもしれぬが、残念ながら現在未だ録音中との事。 
さて今年の1枚に選びしは「幸せの可視 / ムーン♀ママ」なり。昨年選びしもあふりらんぽの「Suuto Breakor」なれば、どうせ内輪の贔屓目かと思われる御仁もおられようが、もしも未聴ならば先ずは一聴される事をお薦めする。洋楽にて育ちし私は、常々歌詞を聴き取る事に全く無頓着なれば、所謂歌詞重視の音楽に余り興味を示さぬ嫌いあり。「音楽」なればこそ、その「音」そのものに重きを置くのは当然故、わざわざ歌詞を聴き取らんとするが余り、肝心の「音楽」そのものを聴き損ねるを避けんと思うからか。されどこのムーン♀ママの歌とは、音楽として聴いておれど、自ずから言葉さえもが同時に聴こえて来ると云う、何とも不思議な体験を齎せし。それは曲調がシンプルなんぞと云う理由にあらず、まるで語り掛けるが如くの息遣いとリズム感を伴うからか。決して所謂「上手い」歌ではなけれども、歌唱技法により感情表現せんとする世の歌手とは全く正反対な天真爛漫たる純粋さにて、聴き手に何かを語り掛ける、稀なる1枚と感ずる限り。「お母さん」を歌う彼女の純粋な気持ち、より多くの人達に届いて欲しいと切に願うものなり。

 

「今年の機材新調」

私はどうにもコンピュータにて録音する事に抵抗ありて、幾ら周囲からHD録音の便利さや手軽さを説かれれど、未だにA-Datとアナログミキサーを愛用するものなり。されど15年間愛用せしA-Datが、遂に御陀仏御昇天。またA-Dat共々愛用するTascam社製アナログミキサーも、既に幾つかチャンネルが死亡しておれば騙し騙し駆使しておれど、遂に御陀仏御昇天となり、これはいよいよコンピュータにてHD録音へと手法を転換せねばならぬかと一度は覚悟。されど幸運にも、中古のA-Dat2台と、愛用せしアナログミキサーと全く同機種の新品在庫を格安にて入手し得れば、これにて今後15年間は引き続き同じ録音機材にて作業し得らん。唯一の問題は、A-Dat用のS-VHSのテープの入手が困難になりつつある事か。斯くなる上は、S-VHSテープ15年分買い占めじゃ!

 

「今年の目から鱗」

アナクロ人間たる私は、相変わらず携帯電話なんぞと云う文明の利器を所持しておらねど、固定電話も持っておれば、コンピュータにてメール送受信も行い得る。然れば今年はコンピュータを新調、iBook G4からMac Bookへと買い替えし。ツアー中も野良電波を拾っては無線LANにてネット接続しておれど、道端にてラップトップを広げ野良電波を探すは何かと難渋するもの。以前一楽さんより野良電波探索キーホルダーの如きが存在すると教えられれど、斯様な代物見つけられず終い。されどiPod touchにメールソフトが搭載されしと聞き知るや、これぞその代役充分に務まらんと思わず購入。気軽に野良電波を探し得る上、ツアーの移動中の退屈凌ぎに携帯用音楽プレイヤーとして、カーステにも接続可能なれば、これにて車内にCDを持ち込む必要さえなくなり、またスケジュール帳としても、アドレス帳としても使えれば、これ程重宝な代物なし。これらの機能は携帯電話に搭載されておれば、世の御仁達は「何を今更アホな事を」とお思いになるやもしれぬが、携帯電話を持たぬ私には正に目から鱗状態なり。

 

「今年のレコードプレーヤー」

ふと気が付けば、7インチEPレコードが部屋に溢れる有様。アルバムを買う程にあらざれど、お気に入りの曲のみ聴きたいと思う事多々あれば、ついつい7インチEPを購入してしまう悪癖あり。されどステレオに組み込まれるレコードプレーヤーにて7インチEPを掛けんとすれば、何とも面倒臭く、より手軽に7インチEPを聴く為にと、中古のポータブル・レコードプレーヤーを購入。これまた何とも風情もあれば、あれ程面倒臭かりし7インチEPの再生も何やら楽し気にして、思わず独りDJなんぞに耽る有様。やっぱりレコードはええなあ!

 

「今年の『竜詣』」

今やアングラ系ミュージシャンで姫路を訪れし経験あれば、世界最強のホルモン屋「竜」を知らぬ者はおらぬ筈。「竜」については人声天語にても幾度か紹介させて頂いておれば、未だ「竜」を訪れた事なき御仁は、一度チェックされる事をお薦めする。さてその「竜」なれど、今年は姫路を訪れる機会に恵まれず、気が付けば一度も暖簾を潜らず終いにて年を終えんとしており、先日高知へ赴く道すがらに漸く今年の「竜詣」も叶いし。大将の相変わらずな駄洒落を肴に、生レバーやら絶品ホルモンやら名物鍋に舌鼓を打てば、これにて今年1年も思い残す事なし。来年は是非とも姫路に足繁く通いたきかな。道下君、よろしく!

 

「今年の煮物三昧」

私は殆ど完全自炊生活を送っておれば、日々食したきものを食さんと思っておれど、「野菜の炊いたん」所謂煮物だけはなかなか得心行かず、御陰で日々あれやこれやと試行錯誤を繰り返せし。されど今年、漸く納得の行く味の深みやら奥行きを得る技を会得、なればこそ明けても暮れても様々な煮物を拵えては食す有様。さて今後は、より高級料亭の味の如く究極の煮物を探求せんと思えども、如何せん高級料亭なんぞに赴く機会なんぞ皆無なれば、その味を知る術なし。ならば嘗てのシェフとしての経験と知識を以て己の舌のみ信じ、精進するのみか。まあ結局自分で食うんやから、自分が美味いと思えたらええっちゅう事か。

 

「今年の哀しき円高」

海外ツアーの僅かながらの収入こそがライフラインなれば、今秋に勃発せし円高騒動は、私の経済に大いなる打撃を与えしものなり。何しろ外貨→円の両替レートは、UKポンドが210円程度から119円、ユーロも160円台後半から一時は114円、USドルも110円弱から80円台後半に下落。その他の外貨も軒並み下落の一途を辿る始末。御陰で収入は当初の見込みより3割半から4割減。この貧乏暮らしにトドメを刺すかの如きこの騒動、全く以て死活問題なり。そもそも斯くの如き「売れない音楽」を生業にするが故、貧乏生活は覚悟の上なれど、まさかここまで下落すると、迂闊に海外ツアーさえ行えぬか。円高を理由にギャラの値上げなんぞ叶う筈もなく、されど我々如きではこの円高に歯止めを掛けるなんぞ全く以て無理と知れば、ひたすら円安となる材料を切望するのみ。それこそ政権交代程度では何も望めず、そもそも革命なんぞ無縁の国民性なればこそ、帝都が同時多発テロ若しくは大震災による壊滅的打撃でも受けぬ限りは望みもなしか。我々如きの些細なる金額の損失なんぞ、大企業やら投資家共の損失に比べれば屁のようなものなれど、結局は社会的弱者が貧乏くじを引くは同じ事。どうせほっといても円高で減る金なら、パッと散財した方が得か?そもそも円高にて赤貧になろうが、元来赤貧に喘いで暮らしておれば、然して何も変わらぬか。セコい事で思い悩むは愚の骨頂、人生そのものが泡銭なり。

 

「今年の流行語」

毎年バンド内にて何かと流行語が生まれるもので、今年は東君に因る「推して知るべし」か。語るにも足らぬ事、語らずともよき事、語るを憚られる事、語らぬ事に秘められる真実やら嘘やら噂やら、全てを代弁して余りある一言なれば、何とも便利にして、不都合なる話題を時にはそこで打ち止め、またある時にはギャグとして流す効用さえあり。時には真実が疑われ、時には嘘を見透かされ、されど弁明すれば無闇に猜疑心を煽るのみにして、なればこの「推して知るべし」こそ、逆に相手にこちらの信用さえも問い質す究極の弁明なり。

 

 

(2008/12/31)

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