『人声天語』 第107回「旅姿4人衆ぶらりアメリカ彷徨記(Acid Mothers Temple US tour 04)」#3

5月24日(月)

結局モーテルにて、全く眠る事なく夜明けを迎えた訳だが、ジワジワと襲い来る空腹感に苛まされ、更に日の出と共に室温は一気に上昇、このままでは死ぬやもしれぬと思う程なれば、折しも窓の下に設置されしクーラーの存在を発見、即スイッチ・オン。これにて何とか室温は下がり、快適な温度となった辺りで津山さんが起床、続いてはじめちゃん、Sam、Jonと皆が起き出すや、各々にシャワーを浴びたり荷造りしたりと、先程まで静寂を保っていた室内は一転、急に慌ただしくなる。Samが階下からコーヒーとドーナツを持参。流石にこれ程の空腹なれば、ドーナツであれ格別の味わいである。
午前9時半、さて皆あまりに空腹なれば、SubArachnoid Space一行より一足先にチェックアウトし、一路Oberlinなる五大湖畔の街を目指すが、先ずはドライブインにて朝食。私はSubwayにて「Cheese & Steak」なる逸品をオーダー。先ずパンを選ぶのだが、私は「Itarian Harb & Cheese」を選択、おばちゃんが細切れになったステーキ肉(と云うよりトルコのジャンクフード「Doner Kebab」の如き)を挟むや、さてここからのトッピングはカスタマイズ出来るのである。されどこのおばちゃんの仕事スピードの遅さたるや表彰モノにして、御陰で私の後ろには、あっという間に長蛇の列が生じてしまったが、斯様な事を気に掛ける素振りもなしで、お気楽極楽のんびりマイペースにて仕事をこなすのであった。「Cheese & Steak」なる名前にも関わらず、私はトッピングのチーズを拒否、続くキャベツ、トマトスライス、そしてハラペーニョを大盛りにして頂き、マヨネーズは拒否してケチャップ&ペッパーのみ。これが思い掛けずも結構美味なれば、今回のツアー中にもう一度二度なら食っても良かろう。
特大サンドウイッチ1本を平らげ、ドライブインのお土産物等を見て歩いておれば、突如物凄い大人数なる中国人系の観光客御一行が到着。ドライヴイン内は一瞬にして、ペンシルバニア州から広東省に装い早変わりである。トイレには中国系オバハンが優に30~40人は行列を為し、その最後尾は軽く土産物ゾーンまで届いている程。そこいらを飛び交う言語も、いきなり英語から中国語に取って変わり、いやはや中国人華僑の逞しさを実感して余りある。ヨーロッパ等で中国人華僑はかなり忌み嫌われているが、その理由は、どこの国であろうと完全に自分達のみで社会形成し、一切他の人種と関わりを持たぬ故だとか。確かに中国人は一人二人で見ても何とも思わぬが、大人数なる場合に遭遇すると、一種昆虫的な統率性と、それに伴う薄気味悪さを感じざるを得ぬ。況してや世界に誇るあの昆虫並みの繁殖力である。たとえ世界が滅亡した処で、中国人だけは生き残りそうな気がするのは私だけか。
さて華僑で溢れたドライブインを後にし、また出発とバンに戻る。津山さんは野鳥の鳴き声がする壁掛け時計を購入し、すっかり御満悦の表情。
電脳奉行はじめちゃんは、私のiBookよりデータをコピーし、車内にて「人声天語」のアップロードの準備に勤しむ。

手際良く作業終了したならば、まるで電池が切れたかの如く爆睡。

ドラマーは兎に角よく眠るものと知る。私も流石に昨夜徹夜した御陰か、車内ではただただ爆睡。

起こされた時は既に、本日の会場Oberlin Collegeに到着していた。本日はここOberlin Collegeなる大学内のホールでの演奏である。

何でも「ええしのボン」が通う金持ち学校らしく、確かに学生はどいつもこいつもボンな顔立ちである。先ず楽屋に通されるや、そこにはビールが用意されており、取り立ててする事もなければ早速飲み始めるしか術もなし。どうやらネットカフェのような部屋が近くにあるとかで、そこへ案内してもらうが、満員御礼なれば使用出来ず。サウンドチェックの際、私が使っているギターアンプに接触不良が発生。取り敢えずケーブルのジャックを固定する事で今日の処は解決。また買ったばかりのストラトキャスターは、昨夜のチョークスラムにて、ケーブルがジャックから抜けなくなると云うトラブルに見舞われており、分解してみた処で、まるで膣痙攣の如く矢張りどうにも抜けぬ。取り敢えず音は出る故、まあ良しとしておくか。

サウンドチェック後は、近所に中華料理のテイクアウトがあると聞き付け、皆で早速そこへ向かう。私と津山さんと東君は「エビ炒飯」をオーダー、長年の経験上、如何に料理が不味い中華料理屋であれど、この逸品のみは常にマシな事を知っているのである。はじめちゃんとJonは「チキン炒飯」を、Samは「セサミ(胡麻)豆腐」なる逸品を予約。流石日本に住んでいた事もあるSamである、「セサミ豆腐」は厚揚げを甘辛く炊いたもので、これがなかなかの美味なり。勿論「エビ炒飯」は取り立てて問題なく、とんでもなく不味い訳でもないが格別美味な訳でもなし。持参した「味の素」と七味をぶっかけて頂けば、まあ納得出来ると云った処。今回のツアーに於いて、私個人の必殺アイテムはこの「味の素」なり。日本ではこの「うまみ調味料」と云われる怪し気なる逸品、かれこれ20年以上も使った事すらなけれども、先日ふとこれなる品の存在を思い出すや、海外に於けるこの一味も二味も足らぬ料理群に対し、かなりの効果を期待出来るのではないかと思った次第。ところでこの「味の素」、子供の頃は「化学調味料」と呼ばれ「石油で出来ている」と云われたもので、オイルショックの折には「味の素が無くなる!」と噂されたものであったが、知らぬ間に「原料はサトウキビ」なる表示がなされており驚愕。祖母が「味の素」を舐めると眠れると話していた事をふと思い出しつつも、自分もよく母の目を盗んでは「味の素」を舐めて怒られた事なんぞが回想される。さてその「味の素」であるが、効果は抜群にして流石は「うまみ調味料」と呼ばれるだけの事はある。嘗て名古屋に「聖家族」なる店があり、私はそこで働いていたのだが、その近所に「本郷亭」なるラーメン屋があり、開店当初は閑古鳥が鳴いていたものだったが、ある日よりスープに「味の素」が増量されるや、瞬く間に行列の出来る店に早変わり。これなんぞは「味の素」は斯様に偉大であったかを知る良き例か。
この中華料理店の隣が食品雑貨屋なれば、野菜ジュースV82本とカップ麺やら即席ラーメン等を仕入れておく。この野菜ジュースV8は、日本のそれとは異なりかなり 濃厚にしてスパイシーなれば、野菜不足気味になりがちなアメリカに於いて、何かと重宝する逸品である。
さてこの中華のテイクアウト、袋に何やら我々がオーダーしておらぬ2品が同梱されており、何かと開けてみれば、どうやら他の客が食べ切れぬ分をテイクアウトしようと折詰にして貰った折詰の様子、早い話が残飯である。いんげん豆炒めと厚揚げと野菜の炒め煮なれば、何かと野菜不足気味にして、また厚揚げが妙に郷愁をそそる故、他人の残飯なれど一切お構いなしで美味しく頂く事とする。
それにしてもアメリカの炒飯は、いつもながらとんでもない量の多さである。到底一度で食い切れる筈もなければ、夜食若しくは明日の朝食にせんと、残り半分はお持ち帰りする事にす。

夕飯も食い終わり、タバコでも吸おうか等と思い表へ出れば、警官2人がビールを飲んでいる学生数人を発見、丁度ビールを押収している処であった。アメリカは外での飲酒が厳禁とされている為、ペナルティー等はないらしいが、酒は全て押収されるとか。警官にしてみれば、今宵の酒には不自由せずと云った処か。

午後11時半、女学生によるカレッジバンドTall Boys、そしてSubArachnoid Spaceの演奏に続き、我々の出番と相成る。月曜の夜にしては客入りは上々の150人程度か。学生に混じり髭面ヒッピー親爺等も見受けられるが、AMTのコアなファンの学生も結構いる様子にして、物販も好調なれば、ライヴも当然大いに盛り上がる。今夜は「La Nòvia」を含まぬセットメニューなれば「Pink Lady Lemonade」にて終演、されどアンコールにて「La Nòvia!」とのリクエスト多数故、「La Nòvia」後半部のみを演奏、「Speed Guru」に雪崩れ込むや、私は天井に設置された照明のケーブルにギターを逆さ吊り。爆音のフィードバックはまるで逆さ吊りにされたギターの悲鳴の如し。

終演後はそそくさと機材撤収、本日の宿泊先であるStevenなるイラストレーターの家へ。車で約40分、3階建ての一軒家にして家賃725ドルとか。斯様に広い家に一人で悠々自適に暮らせるのもオハイオ州なればこそか。テキサス生まれSan Francisco在住のMelyndaは、オハイオ州に住みたいと云っていたが、それもこれも家賃が安く人も親切だからとか。津山さんと東君は早々にStevenのアトリエにて御就寝、マイペースなJonはいつもバンにて荷物と共に就寝、はじめちゃんは洗濯に明け暮れ、私はエビ炒飯の残りと東君のサンドウイッチの残りを一気に食し、一瞬にて洗濯も済ませ、居間にてStevenとSubArachnoid Spaceのメンバー、そしてSamと、ここの家にあるビールを片っ端から飲み倒す事となり、結局朝5時まで付き合わされる羽目となる。ここでドラマーのChrisが特技を披露。Stevenの愛猫が行方不明となるや、Chrisは頬を手で押して「ニャ~」なる猫の鳴き声を模倣してみせるや、何とStevenの愛猫が何処からともなく「ニャ~」とChrisの鳴き声に呼応するが如く現れたではないか。これにはStevenも大いに驚愕「super amazing!」を連発。厳ついルックスのChrisの可愛い一面ここに見たり。結局飲み疲れ、朝5時居間のソファにて就寝。

5月25日(火)

「はじめちゃん、開けて~!」なる津山さんの叫び声にて、正午起床。実はこれ、外に出たはいいが、玄関が施錠されて中に入れなくなった津山さんの懇願の声なれど、丁度その頃私は、何故か檻に入れられた津山さんが「はじめちゃん、開けて~!」と叫んでいる夢を見ていたのであった。一昨夜は徹夜にして、昨夜は夜更かししたせいか、久々に気持ち良く眠れたが、少々寝過ごしたか。もう荷物の積み込みもほぼ終了しておれば、大慌てで荷造りし、カップラーメンに湯を注いで表へ出る。カップラーメンを食し、さて本日はColumbusへ。

車にて3時間のドライヴ、あれ程寝たにも関わらず車内で再び爆睡、起こされた時には既に本日の会場Wexner Centerへ到着。到着が早過ぎたとかで、ならば以前Columbusを訪れた折に買い漁った中古レコード屋の所在を記憶していた故、津山さんと東君共々当然の如くレコード・ハンティングへと赴く。
店に入るや否や、店員からいきなり「Acid Mothers Temple!」と声を掛けられ、これでは下手にしょうむないレコードが買えぬではないか。3人揃って一目散に「Doller Land」なる1ドル均一のカスコーナーへ。津山さんは今回コンプリートを目指すJoni Mitchell等一気にLP38枚、更にカセットコーナーを見つけるや、脳汁分泌率200%にて津山さんのアイドルRichard & Linda Thompsonをはじめ、これまた12本を購入。東君もLP20枚程を購入し、私も何だかんだ買い控えようと思えども、やはり宝の山を目の前にすれば思わずLP33枚購入。レコード・ハンティング初日の仕事としては満更でもなしか。3人とも各々段ボール箱を抱え、何とも御満悦な表情にて会場であるWexner Centerへ戻る。

Wexner Centerの駐車場へ戻ってみれば、丁度はじめちゃんの姿を発見、さて何処から入ればいいのか尋ねれば、何ともはっきりせぬ返事故、イラチの私と津山さんは勝手に「どうせここらへんやろ」なんぞと、適当に見つけた「Stuff Door」から中へ入るが、なにやら巨大なコンサートホールに辿り着き「え?ここか?」「でもこの時間にPAも組んでへんのおかしいし、絶対ちゃうでしょ。」「せやな、こらデカ過ぎるわ。」なんぞと脳天気にホール内を彷徨、何度も行き止りに出会しつつも、辿り着いたは学生のパーカッション・アンサンブルによるコンサートが行われる小ホール、「これはちゃうやろ。」「ほな一体どこやねん?」「何て場所でしたっけ?」「え?何やったけ?」彷徨い続けるうちに段々無性に腹が立って来た我々2人「なんでこんな広いねん。」「ちゃんとわかるようにしとけや!」「あかん、もうやめよか。」「もう今日はホテルでも泊まって、先にChicago行って待ってよか。」「もうやめじゃ!」「クソむかつく、ボケがぁ!」「なんやねん、これは!」「なんでわしらがこんな目に合わなあかんねん!」「ボケカス!」「もう1回レコード屋行って帰ろか。」「もうやめじゃ、やめじゃ!」2人とも汗だくになりつつも何の充てもなく無闇矢鱈と彷徨い続けるうち、遂には外へ出てしまい、されどここで偶然にもAMTのポスターを発見。
これにて漸くWexner Centerなる場所の名前を知り得、ではそのWexner Centerなる場所は何処かと、ふと振り返れば、そこがまさにWexner Centerの入り口であった。インフォメーション・カウンターにて尋ねれば、親切にも受け付けの男性が会場まで案内してくれ、無事に辿り着ける事と相成った次第。されどここはついぞさっき通った処であり、何とも間抜けな話である。案の定東君らは我々の捜索に乗り出していた様子だったが、なんでも会場内のあちこちで我々2人の目撃情報が寄せられていたらしく、ほなら何でその時誰も教えてくれへんねん!

SubArachnoid Spaceは、昨日トラブルが発生したギターアンプを修理、ベースアンプの真空管も新調し、会場へ到着。これで機材面的には当面安心か。
会場は2階席もある程の天井の高い綺麗なホールで、ビデオ・プロジェクションを使うSubArachnoid Spaceは、ステージ後方の白い壁に投影出来ると、巨大なスクリーン獲得に嬉しそう。実際ここは音響も素晴らしく、彼等のステージはなかなか見栄えするものであった。観客も皆座ったり寝転んだりして、彼等の音楽を各々のスタイルで楽しんでいる様子。

ところでここは大学内のホール故か、禁酒禁煙なれば、楽屋にはいろいろな食べ物やらジュースこそ用意されておれど、酒類は一切なし。

近所にて酒屋を探そうにも、またこの界隈で彷徨させられる事は御免被りたい故、今日の処は用意されている山盛りの苺と葡萄を楽しむ事とす。しらふでの演奏なんぞ一体いつ以来の事やら。
午後10時半、我々の演奏の頃には、客数も増えて総立ち見状態。いつもの如く大暴れにして大盛況にて幕。終演後は、ホールらしく一瞬で撤収作業終了。深夜1時、Melyndaの友人夫婦宅へ皆でお世話になるべく、陽気なSamの運転にてそのお宅へ。今宵は未だ早い時間なれば、気分も随分楽なもので、これでのんびりビールでも飲めれば気分は最高であろうか。東君は余程疲れたのであろうか、車内にて爆睡状態。

夫婦共々かなり太った陽気なアメリカ人なれば、室内はシンプソンズ・グッズで溢れるが、なかなか可愛くレイアウトされたインテリア等、その裕福さとセンスの良さを感じさせる。空腹なれば、先ずは先程購入したカップ麺をすすり、本日御無沙汰であったビールを一気に流し込む。当然の如く室内禁煙なれば、玄関ポーチにてビールを呷りつつ皆と歓談。流石にこの時間ともなれば、涼しくなかなか快適なれば、外にて飲むビールいとをかし。津山さんはさっさとソファにて就寝、東君もそろそろ疲れが蓄積されてきたのか、2階のコンピュータが設置されている部屋にて既に就寝、電脳奉行はじめちゃんは、久々のネット接続にしてそれもADSLと来れば、早速「人声天語」の更新等やっておられる様子。ビールも飲み尽した故、ここはシャワーを浴び洗濯も済ませておく。はじめちゃんも就寝するとかで、ならばとネット接続。今日は昼まで眠っていた御陰か、全く睡魔も襲って来ぬ様子なれば、久々にサーバーからOutlookへ吸い上げたメール300件以上をチェックし、雑務仕事等に腐心しておれば、知らぬ間に朝となる。Daevid Allenから東君宛てに、Gongの欧州ツアー参加要請メールが届いている。どうやらCottonは、ツアーマネージャーを自称していた彼女の夫Bill共々解雇された模様。以前よりDaevidとGilliから再三再四、東君のGong参加を要請されていたが、Cottonとはこれ以上演奏出来ないと云う理由から彼が辞退しておれば、これにて全て解決と云う処か。DaevidやGilliの音楽に対する厳しさや真剣さを改めて実感すると共に、矢張り信頼出来るミュージシャンであると確信。

5月26日(水)

結局またしても徹夜となってしまい、午前8時半に先ず津山さんが起床、続いて東君が目覚めた故、Daevidのメッセージを伝える。朝飯はこちらで購入した即席ラーメン「マルチャンラーメン」をすする。
午前11時半、Detroitへ向け出発。

途中マクドナルドにて昼食。皆で新製品「Fiesta」なるメキシコ風サラダをオーダー、されどチーズやらナチョスチップスやらが乗せられておる上、ミンチの混ざったサルサソースが諄い事この上なく、そして当然これまたとんでもない量故に、一瞬で食傷気味。店内BGMにBeach BoysやらCCR等がかかっており、なかなかアメリカンな気分にさせられる。
約3時間半のドライヴは、流石に徹夜明けなれば、本日の会場であるMagic Stickに到着するまで爆睡。

Magic Stickはかなり大きいクラブの様子、往年の英米パンク・クイーンPatti SmithやSiouxsie Sioux等の予定も見受けられる。入りは5時と伺えばこちとら5時に参上しているにも関わらず、エンジニアは未だ来る気配もなし。暇にかまけて津山さんとSamのセッションが始まる。

実はJohnは相当な腕のエンジニアとSamから聞き知れば、本日辺りから彼にやってもらってはどうかと云う下りなり。
先ずは飯を食わせて頂けるとかで、15ドル分の食事券を貰い受け、これにてここのレストランにてオーダー出来る故、私は夜食分も考慮して、1/2パウンドのハンバーガー2個をオーダー。同じく夜食をもと目論む東君とはじめちゃんは、2回に分けてオーダーしようとしたなれば、食事券が一度きりの使用のみと推察しかねた故、結局5ドル程のオーダー1品にて涙を飲む。
クラブ内にてビリヤード台を目敏くも発見した津山さんと東君は、例によって当然の如くプレイに熱中。この2人は世界中何処にてもビリヤードをやっており、どうやら実力はなかなか互角の様相。
午後6時、1時間遅れで漸くエンジニアが登場、結局Jonはアドバイザーとして彼と仕事をする段取りとなる。サウンドチェックを早々に済ませ、楽屋に用意された赤ワインを呷る。と、そこへ津山さんが外から戻って来るや「すぐ近所にレコード屋あんで!しゃあけどもう閉まってるわ。もっと早う気ぃついとったらなあ…」と残念がる事頻り。

客入りはほぼ満員、何故かマニア系のヒッピー親爺も多く、サインを求められる事頻りなれば、矢鱈と皆話し掛けて来る故、その応対だけでかなり消耗する。当然Shopzoneも大盛況、津山さんと東君は慣れた風なれば、ズラッと並んだ客を手際良く捌いて行く。SamもTシャツ販売等手伝ってくれている様子なれば、今やShopzoneはすっかりシステム化され、如何にも日本人然とした効率の良さを披露、と云うよりも、斯様な努力等一切無縁な西洋人とは何と阿呆な人種なのであろう。

9時過ぎからSubArachnoid Spaceの演奏が始まるや、昨夜徹夜した私は、ここで猛烈な睡魔に襲われ爆睡。続いてWolf EyesなるまるでTGが腐ったようなバンドの演奏なれば、退屈至極この上なくやはり爆睡。SubArachnoid SpaceのChrisのギターアンプにトラブルが発生したとかで、Melyndaが急遽アンプを手配、PaikなるここDetroitのグループからアンペグのヘッドを無事調達してくれた。
さていよいよAMT登場なれば、この時点で既に満員御礼の約400人、いやはや恐ろしい程の盛り上がりにして、津山さんも絶好調なれば、椅子2脚を駆使しての「バードダンス」やら、意味不明のパフォーマンスを連発、挙げ句はバレエまで披露し、ステージ狭しとほたえまくる。またいつも以上に連発するギャグも精彩なれば、途中私も思わず吹き出してしまい、術もなく演奏が中断してしまう程。はじめちゃんも何かが憑依したかの如く叩きまくれば、遂にはドラム椅子から後方へ転落。私のギターも、急遽拝借したアンペグが恐ろしい大爆音にして、自分の耳さえ飛びそうな程。ただただ凄まじい勢いのみで突っ走り続けた2時間なれば、アンコールは当然GFR「Are You Ready」の予定であったが、時間切れにて終演を余儀なくされ、演奏する事叶わず。

終演後もShopzoneは大盛況、社長津山さんを筆頭に東君達も大奮闘、爆発的セールスを記録。DetroitのバンドOutrageous Cherryのメンバーとも再会、残念ながら私のステーシー・キーブラことDebちゃん(人声天語第21回「AMT US TOUR 雑記(其の参)」並びに第34回「2001年~総まくり」参照)にこそ会えねども、彼等の新譜2枚を頂き歓談。今宵は、先程アンプを貸してくれたPaikなるDetroitのグループの家に投宿の予定なれば、彼等の先導にてSabArachnoid Spaceと共に4ブロック先のその家へと向かう。

深夜2時、到着した先は一件の古いビルなれば、何と地下には私設バーまで備えられ、ビリヤード台やらピンボール台やら懐かしいテレビゲーム機やらが並び、時々ステージにてライヴも行われるとか、これはあのLas Vegasの私設クラブ「Chez Bippy Lounge」(人声天語第70回「憧れのLas Vegas、そしてLAの青い空」を参照)も叶わぬやもしれぬ。Paikのメンバー且つBeyonder Records主宰者にしてここの住人Robのアフロヘアには思わず感動、

生涯に一度はアフロヘアにしたいと云う東君もいたく感動してた様子にして、されど黒人のアフロヘアは全く違和感がないどころか、何とも格好良く見える辺り、流石としか云い様もなし。
さて荷物を下ろし、先ずは私設バーにてビールを呷れば、東君と津山さんは当然ビリヤード勝負、SubArachnoid SpaceのベーシストDiegoとドラマーのChrisはテレビゲームに夢中、されど津山さんは知らぬ間に部屋へ戻り就寝、勝負相手を失った東君は、今度はPaikの女性メンバーとビリヤードで勝負。ビールに飲み疲れた私も部屋へ戻り、残しておいたハンバーガーを食した後、深夜4時ソファにて就寝。

(2004/5/31)

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