『人声天語』 第140回「男は黙って噛み締めろ…ふたたび!(AMT & TCI 英吉利&愛蘭ツアー 2008)」其之参

8月7日(木)
午前7時半起床。朝飯は、昨日購入せしキムチの開封を見送り、昨日の麻婆豆腐のごはんの残り+チキンカレー缶にてカレーライスを食す。兄ぃのコメントとは裏腹に、案の定カレーは殆どニンジンの味のみ、全くカレーの味どころか風味さえ皆無、然ればハバネロソースを大量投入するしか術もなし。所変わればカレーも変わる、ツアー先に於いて数々の激不味カレー食せし経験数限りなく、その度に思う事は、如何にすればカレーを斯様に激不味く拵え得るのかとの一点のみ。子供の頃のキャンプに於ける飯盒炊爨にて味わいし水っぽいシャビシャビのカレーなんぞと比べるなかれ、単に味が薄い若しくは水っぽいどころにあらず、最早これはカレーに対する冒涜にも等しきかな。斯様な無味無臭カレーを何の文句もなく食するイギリス人の味覚を以て「日本食ダイスキデス!トッテモオイシイネ!」なんぞと云われし処で、全く嬉しくないどころか「お前らホンマに日本食の美味さって判ってるんか?」と、思わず猜疑的にさえならざるを得ず。それにしても昨日の兄ぃが発せしカレー缶に対するコメント、これ如何に捉えればよきものか。
まだBenもピカチュウも爆睡の様子なれば、今のうちにと入浴するや、湯がぬる過ぎやんけ!斯様に涼しき大英帝国なれば、斯様にぬるきシャワーでは風邪さえ引きかねん。ビールもぬるいがシャワーもぬるいってなあ、ワシはなぁ、ビールはキンキンに冷えてるのんが、風呂は熱いのが好きなんじゃ! 
昼飯は、ラーメン2袋を利用せし焼きそばを拵えんと、ラーメンの麺のみを用いウスターソースを絡め、薬味として青海苔も鰹節も紅生姜もなけれどもちりめん山椒と生姜を加え完成。矢張り味にパンチと奥行きが欠落すれど、なかなか和風な味わいなれば、まあこれはこれで気持ち的には充分満たされしか。 
別室に宿泊する喫煙組は、備え付けの洗濯機を稼働すれど、洗濯機のドア故障につき洗濯物が取り出せぬ危機に直面との報告あり。以前にもこの人声天語にて触れし通り、海外の洗濯機は洗濯コース設定のダイヤルも反対回り、兎に角一度たりともスムーズに使いこなせし経験なく、家人等その洗濯機に精通する人物が立ち会わぬ限り使用を控えるが賢明か。況してや昨年もこの同じホテルに投宿せし際、同室の兄ぃと洗濯機を稼働するや、一晩中洗濯機は回り続け、このままでは出発までに終了せぬのではと強制的に中途終了を試みれば、ドアが開かず洗濯物を取り出す事叶わず、結局ダイヤルが反対回りである事に気付き、寸での処にて無事終了し得し経緯もあり。思わず兄ぃに「去年のあの事件覚えてへんかったんですか?」と問えば「えっ、そうだっけ…?」(第138回「男は黙って噛み締めろ!(AMT & TMP U.F.O. 欧州ツアー2007 其之五)」参照)どうやら今回はドアが故障との事で、修理工に依頼し無事洗濯物を取り出せりとか。されど私が思う処、強ちドアを無理矢理力任せに抉じ開けんとして、破損したのではあるまいか。
正午、ホテルをチェックアウト。今宵のBelfastのライヴは、諸事情にてキャンセルとなっておれば、今回のツアー唯一のオフ。ならばと先ずはDublin散策、矢張り何だかんだ云うても女の子たるピカチュウ、いきなり怪し気なる雑貨屋を見つけるや「めっちゃ可愛い!」と突入。我々四十路オヤジ四人衆は、レコード屋数軒巡れど目星き代物もなければ、結局パブへ赴き、寒空の下、喫煙スペースたるオープンスペースにてギネス1杯を呷る。4.50ユーロ(698円)也。

 

幸か不幸か偶然日本料理屋を見掛けるや、東君が「トンカツ食いたい!」なんぞ宣う始末、されどその一声にて全員無性にトンカツが恋しくなれば「ほな食おか!」高価なれば禁断の日本食なれど最早我慢ならぬ、いざ食わんと赴けど、矢張りその余りに高額なる値段の前に全員「やっぱりやめよ…」と、あっさり屁たれぶりを露呈。結局兄ぃと中華料理のファーストフード店にてグリーンカレー8.00ユーロ(1240円)を食せば、これまた無味無臭にして気分は見事轟沈。さればここでもごはんは夜食にと残しテイクアウト。

午後4時、一路Belfastへ向け出発。午後7時半、ホテルに到着。このホテルは昨夜Benがネットにて予約せしものなれど、巨漢フロント嬢の我等が名付けし「マヨネーズちゃん」曰く「御予約は承っておりませんが…」そんな筈あるかい!私はBenが予約を入れし際に立ち会っておれば、また間違いなく受付完了メールも届いており、 予約完了直後にBenから「日付は7日になってるかもう一度確認してくれ」と云われし故確認までしておれば、思わずマヨネーズちゃんに「お前おちょくっとんか!予約完了メールも届いてるから見せたるわい!」と我々一同息巻きて、さてMacBookを取り出しメールを見るや、日付は確かに7日に間違いなけれど、何と9月7日なり。これにはBenも天を仰ぎ「Fuck! そういや月は確認しなかったなあ…」こちらの不手際にも関わらず、マヨネーズちゃんは息巻きし我々にも笑顔にて対応「今夜は空室ありますから、ネット予約割引の価格でお部屋を用意させて頂きますね」ありがとうマヨネーズちゃん。

斯くして無事にチェックインも果たせば、今宵は最早運転する必要あらざるBenが提案「じゃあ皆で飲みに行こう!」Benの案内にて向かいしは、以前AMT & TMP U.F.O.やJNMFにて演奏せしAuntie Annie’s Porterhouseの階下にあるパブなれば、居合わせし客に「おおっ!Acid Mothers Templeじゃないか!今夜ここ(2階)でライヴあるのか?」と矢鱈尋ねられる始末。所謂海外に於ける酒豪スタイル、即ちBenが全員の分の最初の1杯目を払えば、次は東君が、その次は私が、と最終的には全員が1杯ずつ払う計算となるスタイルにて飲み始めるや、みつるちゃん曰く「ってことは、6人いる訳やから6杯も飲まなあかんのか!」結局ギネスやらウイスキーやらで£10.00(2050円)以上散財、されどオフと云う事で何とも御気楽極楽いい気分にて酩酊、Benも饒舌となりパンク魂&サッカーフリーク魂炸裂。表にタバコを吸いに外へ出るや、hen partyと呼ばれる所謂結婚式前夜に行われる新婦の独身最後の夜を大勢の女友達と祝う泥酔軍団に遭遇、その奇天烈な格好に驚かされておれば、その中の数名に逆ナンパされる始末、女肥ゆる此の地に夢も希望もなければ丁重にお断り。 
午前2時半ホテルへ帰還、酩酊状態なればこその空腹感に苛まされ、夜食厳禁の戒を破り、昼飯のグリーンカレーの残りのごはんに、斯くなる上は不味き代物はさっさと償却せんとの思いから、Tesco製チキンカレー缶をそのままぶっ掛け、まさしく冷カレーを食せば、矢張りこれも無味無臭、トンカツソースとハバネロソースにて無理矢理調整加味、酩酊しておれば腹さえ膨れれば最早味なんぞどうでもええか。

午前3時過ぎに就寝。

 

 

8月8日(金)
午前9時起床。同室の兄ぃと共に朝飯を求め、ホテル内のレストランへ。朝飯はイングリッシュブレックファーストのビュッフェなり。ビュッフェなればこそ、ソーセージと厚切りベーコンは1切れにて充分、マッシュルームを多めに、トマトやスクランブルエッグやベイクド・ビーンズトマトソーセージも定番として外されず、トーストは遠慮しクロワッサンを、そしてデザートのフルーツとヨーグルトを頂きし。このイングリッシュブレックファーストに関しては、調理の呼べるような代物にあらざれば、何時何処で食らおうが同じ味にして、当たり外れ皆無と云う一点に於いては安心なり。更にスクランブルエッグとマッシュルームのサンドイッチを拵え、本日の弁当にするはツアー生活の基本なり。

シャワー&洗濯を済ませれば、先日購入せしキムチの臭いが未開封にも関わらず部屋中に充満せし事に気付き、ビニル袋を幾重にも重ね厳重に梱包。
午前11時半、一路Glasgowを目指し出発。イギリス本島へ戻るフェリーに乗船、先日の如く船内のレストランにていい値段の飯なんぞ食うておられねば、今朝仕込みしサンドイッチを食す。マッシュルームに染込みし油がパンに滲み、まるでバターを塗りたくりしかの如き、されど元々味への期待なんぞ皆無なれば問題なし。

さてスコットランドに到着との事でバンに戻れば、閉め切りし車内には例のキムチ臭が充満、Benは無類の奇麗好きパンクスにして、更に御自慢の新車ともあれば「ワオッ!何だこの臭いは!まるで生ゴミの臭いじゃないか!」そもそも洗濯物を乾かさんと車内に干しておれば「洗濯物の臭いが車内に付く!」と怒られ、シートに上着なんぞ掛けておれば「シートに臭いが付く!」と怒られし我々、体臭のキツい欧米人に怒られるなんぞ心外なれど、他ならぬBenなればこそ我々も素直に従いし。斯様な苦言をここまで散々聞かされておればこそ、このキムチ臭に対する彼の反応は想像に易し。真っ先に疑われしはピカチュウにして、何しろ私が「ピカチュウの巣」と名付けしが如く、彼女の席の周囲は散らかり放題、シートの下にてバナナが半分腐りかけ異臭を放ちし前科もあれば当然か。ピカチュウの冤罪を晴らさんと、彼にキムチの臭いだと告白すれば「キムチって何だ?」朝鮮漬け即ちピクルスの一種だと説明するや「こんな生ゴミみたいな臭いの食いもんがあるのか?」斯様な代物を食す我々に一瞥をくれし後、キムチの入りしビニル袋をまるで汚物を処理するかの如く摘まみ上げ、機材一式が収納されしコンテナ部へ即座に移動。ビニル袋にて幾重にも梱包すれど、結局は徒労に終わりし。されどピカチュウ曰く「へぇ~、なんで?キムチ美味しいのになあ…」幾ら欧米人に美味しいと云われようが、日本人がブルーチーズを臭いと忌み嫌う事と同じならん。近頃北欧のフィンランド産松茸が日本に大量輸入される現状も、そもそもフィンランド人にとって松茸の香しき香りとは腐敗臭にしか感ぜられぬとかで、あろう事か、フィンランドに於いて松茸は「腐れキノコ」と云う名にて呼ばれており、当然食する者なんぞ皆無なれど、日本に於いては高級食材として高値を以て取引されると知るや輸出を始めしものなり。嘗て同じ北欧のデンマークに於いて「うんこの臭いで腋臭の味」がするバババーグと名付けし代物と遭遇せし経緯あれど、彼等にとって松茸の香りが腐敗臭なれば、お互いの味覚を形成する価値観なんぞ全く共有し得る筈もなく、なれば世界味覚統一革命なんぞ絶対に起こり得ぬ絵空事か。 午前7時起床。寝袋に包まり就寝せし御陰か、風邪のピークは既に過ぎ去りし様子なれど、未だ重々油断禁物。兎に角「食うて治す」を心掛けんとすれば、早速朝飯として、スペインにて購入せし唐辛子入りオイルサーディン缶を用い、ピリ辛サーディンスパでも拵えんとす。唐辛子入りオイルサーディン缶を開け、オイルサーディンを担々麺醤と唐辛子にて炒め、茹で上がりしスパゲッティーと混ぜ合わせ、更に辛味と酸味を足さんとタバスコをぶっ掛ければ完成。スペインにて購入せし缶詰を用いし一連のスパゲッティー、全く以て調理は簡単にして大いに美味なれば、今回のこの「対大英帝国激不味料理戦線海鮮缶詰パスタ作戦」は予想以上の戦果を上げしと云えよう。
いよいよスコットランドに上陸、車内のDVDプレーヤーにて「This is Spinal Tap」観賞、当然日本語字幕なんぞあろう筈なけれども、充分に聞き取れる程度の英語なれば問題なし。流石にBenが「The Best Movie!」と太鼓判を押すだけあり、東君と2人して大爆笑の連続。Benにこの映画の蘊蓄を語らせると、普段あれ程にクールなる彼がパンクロック話やサッカー話に匹敵する程熱くなり「観る度に絶対新しい発見があるんだ!俺なんてもう28回は観てるが、まだ新しい発見があるんだぜ!最高にクールでファニーな映画だ!」「役者は皆アメリカ人だが、ヤツらの英語(主人公たるバンドメンバーは全員イギリス人の設定故、彼等の台詞は全てイギリスアクセント)はパーフェクトだ!アメリカ人がこんなにちゃんとした英語を話せるなんて信じられないぜ!」即ち東京出身の俳優が、大阪弁の台詞を完璧なアクセントにて話すが如きか。予め斯様な蘊蓄を、彼から数え切れぬ程に伺いておれば、時折「あ~、これがBenの云うてた箇所やな」なんぞと思い、ニヤリとしつつ観賞せり。
午後4時45分頃、昨年演奏せし会場Monoが入る建物に到着、この建物内にはThe PastelsのSteven Pastelが営むレコード屋が入っており、AMTレーベルのCDやDVDを卸せば、矢張りレコードを目の前にし素通りは無理とばかり、ついつい「Blood On Satan’s Claw」のサントラ盤等LP3枚を購入、£41.80(8569円)也。その間にBenは「世界で最高に美味しい」と常に大絶賛するお気に入りのMonoの豆腐チーズケーキを食し得れば御満悦。「Glasgowに来きたらこの豆腐チーズケーキだけは絶対に食わないといけないんだ!やっぱりいつ食ってもFuckin’ Brilliantだぜ!」
午後5時半、今宵の会場Nice’n’Sleazysに到着。サウンドチェックを済ませれば、晩飯はオルガナイザーが何処ぞより出前を取るらしく、私はメニューよりビーフチリブリトーを選択。ここ数年に渡りGlasgowに於いては、常にベジタリアン料理ばかり食らわされておれば、久々にベジタリアン料理にあらざる代物を食し得るか。さてそのビーフチリブリトーはと云えば、ハバネロソースを大量に添えれば別段問題なく食し得しか。付け合わせのチップス(フライドポテト)の量に驚かされれど、ここではこれが主食なれば、要するにビーフチリブリトー定食の如きと思えばよし。

ライヴ後、Richard Youngsと久々に再会、彼の愛娘の写真なんぞも拝ませて頂き、コラボレーションを再開せん等と歓談。 午前0時45分頃に今宵の宿泊先たる精神科医Roger宅に到着。ピカチュウのみ今宵のオルガナイザーたる女性宅へ投宿とか、何でも彼女はMogwaiのメンバーの奥方と伺えど、嘗てATPにMogwaiから招聘されし折にも「ほんでMogwaiって誰やってん?」なんぞと云う始末にして、こちらとしては面識なく、況んや面識ありしとすれども記憶になけれど、あふりらんぽは以前彼女に世話になりしとか、どうぞ女性は女性同士、楽しい夜をお過ごし下さい。
さて我々が投宿するRogerの家は大豪邸にして、超高級オーディオ一式が先ず目に入れば、壁には数え切れぬ程のロックに関連するアート作品(勿論本物!)が並び、無造作に床に放置されしはレアなオリジナル盤の山。御自慢の高級スコッチのコレクションを見せて頂き、スコッチとギネスを馳走になれば、ここで満を持してキムチを開封。当初興味津々たりしRogerもその異臭に尻込みする始末、どうやらキムチの匂いは彼等にとっては「生ゴミのような異臭」の様子。東君と兄ぃは既に別室にて就寝しておられれば、みつるちゃんと2人して、キムチを肴にスコッチやらギネスやらを呷る。ここで夜食厳禁の戒を2夜連続破り、ラーメン2袋+麺つゆ+キムチにてキムチ麺つゆラーメンを食せば、嗚呼、何と美味たる事か。これはたまらん!普通に美味いやんけ!折角の大豪邸のリビングルームをキムチ臭にて充満させれば、若干申し訳なき心苦しさも感ずれど「こいつらキムチの美味さわからんのか…アホやのう」と云うみつるちゃんの一言に大きく同意「アホなお前らが悪い」と云う観点にて、一切の心苦しさも見事晴れ渡れば、最早一天の曇りもなし。

Rogerは御自慢のオリジナル盤を以てDJに徹しておれど、所謂マニアに多く見受けられる「ちょっと掛けたらハイ次!」的なプレイぶり故、そこら中にマニア垂涎ものたるレアなオリジナル盤は無造作に放り投げられ、掛け終わりし盤をジャケットに戻す事もされねば、みつるちゃんが「信じられへん!ああ~勿体ない!こんな風に扱うんやったらリイシューでええんちゃうんか?オリジナル盤全部俺にくれぇ~!」と、マニアならではの悲痛な叫びが響き渡る中、セレブな夜は更け行くなり。
午前4時半過ぎ、流石にスパークし捲りのRogerのDJに付き合い切れず、オリジナル盤とスコッチにてスパークするみつるちゃんを横目に、ソファーにて就寝。

 

 

8月9日(土)
午前9時起床、昨夜スコッチにてスパークせしみつるちゃんは、二日酔いどころか未だ酩酊状態。ラーメン1袋にて再びキムチ麺つゆラーメンを食せり。嗚呼…激烈に美味いやんけ!朝鮮半島の偉大なる食文化に敬意を表する一方、韓国料理店の更なる海外進出を切望してやまぬ。されど「生ゴミの臭い」なんぞと言い放つアホ共の国大英帝国に於ける成功は些か困難ならん。開封せしキムチを再びBenの御自慢のバンに載せるは忍びなければ、丁度朝飯を拵えんとする東君とピカチュウに提供、両者共キムチラーメンにして食しておれば、ピカチュウ曰く「キムチヤバいわ!あかん、焼肉食べたなってきた…日本に帰ったら絶対焼肉行こ!」何はともあれこれにて無事キムチ500gを消費せり。
午前10時過ぎ、生憎の雨天の中、一路Sheffieldを目指し出発。S.A.内のスーパーにて前回と同じサラダ2個を£3.13(642円)にて購入、1個を昼飯としてポン酢をぶっ掛け食す。車中にて「This is Spinal Tap」2度目の観賞。矢張りBenの云うが如く、新たな発見多数にして再び爆笑。
午後4時、今宵の会場The Shakespeareに到着。サウンドチェックを済ませれば、晩飯は何の因果かまたしてもスタッフの手料理なる豆と南瓜のカレーなれど、矢張り辛味なんぞは当然皆無、カレーの風味さえも皆無にして、味は矢鱈と甘ったるければ、ピカチュウ曰く「え~っ、これってカレー?味ないやん…っていうか甘いやん!」如何にもその通り、これぞ云わずと知れし英国流カレーなり。(決して「英国風」にあらず!)存分に堪能されよ。私は、Londonにて野菜ジュースV8を飲む為のみに購入せしタバスコ社製ハバネロソースを大量投入し何とか食せり。ここにタバスコ社製ハバネロソースは名誉の戦死。Benさえも「このカレー不味いな…甘過ぎる!塩と間違えて砂糖入れたんじゃないのか!」と文句タラタラ。されど調理せし本人を含むスタッフ一同は、見る限り普通に食しておれば、お前ら一体どんな味覚しとんねんな!否、今更異国人況してや英国人と味覚について語るも無駄にして、決して同じ味覚を共有しかねぬ事も重々承知しておれば、これ以上何をか云わんや。嘗てそれはそれはおぞましき激不味料理戦線を撃破せし猛者たる我々なれば、取り敢えず充分食し得し事に感謝すべきか。

今宵の投宿先はこの会場にして、海外ツアーに於いて会場内にツアーバンド用の宿泊施設が完備されし処も多々あれど、今宵に関しては会場たるホールにて雑魚寝と伺いておれば、筋金入りパンクスにも関わらず無類の奇麗好き且つ神経質なBenは「こんなゴミ溜めみたいな不潔な床になんて寝られないぜ!シャワーもないし最悪だぜ!俺は自腹ででもホテルに泊まるぜ」と、かなりの不貞腐れよう。嘗て散々赤貧ツアーを繰り返せし我々なれば、数々の信じ難き過酷なる状況にて投宿せし経験豊富にして、雨露を凌ぎ「寝る」と云う行為が可能なる場所ならば、全く以て些かの問題あろう筈なし。これぞ長年のどさ回りにて叩き上げられし「強さ」と「逞しさ」なるか。これら無くしてどさ回りツアーなんぞ叶う筈もなし。
会場の壁には、来月ここで行われるSilver Applesのライヴのポスター等も張られておれど、今宵果たして斯様な田舎町にて客は来るのかと心配しておれば、いざ開場するや老若男女大挙して押し寄せひと安心。ピカチュウが物販コーナーにて何やら怪し気なる行動しておれば、不用となりしワンピースにイラストなんぞ施し£30(6150円)の値を掲げ展示。これぞ10年に及ぶどさ回りツアーに於いて培われ遂に辿り着きし境地、故に自ら「キャピタリズムロック」と称しライヴを「実演販売」と称するAMT魂に他ならねば、漸く浪花娘ピカチュウにもその片鱗を今伺えれど、そのキャプションに目を通すや「super vintage!」って、これって年代物なんか?ピカチュウの「vintage = 年代物 = 高値 = rare」なる「連想英語」ぶり爆裂、それを云うなら「super rare!」とかやろ。

斯様なピカチュウは、大好きなDavid Lynchのポートレートを見付け、思わず投げキスにてラブコール「うちデビッド・リンチの映画に出たい!」物事万事切に願わば叶うものなれば、斯様な事が起こらぬとも限らぬか。これも若きピカチュウなればこその無邪気なる夢やもしれぬが、歳を重ねるうちに次第と無邪気な夢なんぞ忘れ去り、日々の現実に追われるようになれば、彼女の無邪気さに何か忘れかけしものを思い出さされし。

結局Benも会場ホール内にて投宿せんと腹を括れば、今宵はもう運転する必要なしと、調子良くギネス片手に客達と歓談。私も散々ギネスを呷り、午前4時、会場内のL字型ソファーにてL字となり就寝。

 

 

8月10日(日) 
午前5時半起床。矢張りL字の体勢にて眠るは、寝返りが打てぬ故か、全く以て快眠出来ず。空腹なれば、朝飯を求めキッチンへ赴き、鍋に残されし昨夜の激不味カレーを用いカレーラーメンを作らんとす。ガスの開栓の仕方が判らねば、丁度兄ぃが起床せし故、携帯用電熱器セットを借り受け、ラーメン1袋の麺を茹で、冷め切りしカレールーに若干の茹で汁を差し、味を整えんと麺つゆも加え、麺と合わせればいざ試食。矢張りカレーの甘ったるさに加え諄さのみが口に残る始末、ならばと醤油を差せども余り効果なく、トンカツソースを差せども同様にして、矢張り最終兵器ハバネロソースしかないかと、本日より2本目に突入せし99ショップのハバネロソースをぶち込めば、漸く食するに耐え得る程度まで味を補正し得し。

兄ぃも朝飯に昨夜の残りの激甘カレーを食せし後、また寝ておられれど、再び起きて来られれば今度は食パン定食を貪りておられし。 久々の快晴なれば、日当りの良さげなる非常階段に洗濯物を移動、御陰で出発までには見事乾燥せり。何しろ荷物の軽量化の為、Tシャツ2枚、下着3枚、靴下3足、ステージ衣装1着、ズボン1本のみしか持参しておらぬ故、日々の洗濯は必須にして、雨天なんぞにて乾かぬとなれば死活問題ともならん、兎に角隙あらば洗濯と乾燥を心掛けねばならぬ。
午前10時頃、昨日あれ程文句を垂れておれど結局熟睡せし様子のBenが漸く起床「こんな不潔な場所に長居は無用だ!」と、一路Manchesterを目指し出発。正午頃にManchester付近のS.A.にて昼飯休憩。東君とみつるちゃんは「もう我慢出来ん!高くても食う!」と、ここで遂にバーガーキングへ。Whopperのセットに到底£5.80(1189円)は払えぬと、私はここで倹約せんとす。兄ぃもサンドウィッチとポークパイを、ピカチュウも何やら散財して捕食せしを横目に眺めつつ、ここは結局バンに戻りし際に昨日購入せしサラダにポン酢と東君から借り受けしマヨネーズを和え食らえば、僅か£1.57(322円)也。
午後1時過ぎに今宵の会場Islington Millへ到着。以前訪れし際は未だスクワット然としておれど、今やホールも随分奇麗になり、またギャラリーや工房、録音スタジオまで完備するのみならず、向かいの棟にはスタッフを始め多くの人が居住しておられ、現在は隣の棟をツアーバンド用の宿泊所に改装中との事。嘗て我々と一緒にここの2階に投宿経験のあるBenは「今夜の泊まる所を覚えてるか?あのマットレスだけが置かれてる病院みたいな真っ白い部屋だぜ。ってことは今日もシャワーがないって事じゃねえか!俺はシャワーを浴びたいから、今夜こそ自腹ででもホテルに泊まるぜ!」と、息巻きておれど、今や向かいの棟にスタッフの居住スペースも備える故、当然シャワーも完備されておれば、早速シャワーへ赴きし。無精髭も剃りさっぱりするや、今宵はここに投宿故、またしても運転の必要なく心置きなくビールも飲めれば、今やすっかり御機嫌の御様子。さてサウンドチェックは何時から始まるのやら、今宵は1階の大ホールと2階の小ホールの両方を使うイベントらしく開場時間も早けれど、全く何か始まる気配さえなければ、偶然見つけしショッピングカートに乗りたいと云うピカチュウを乗せて遊ぶしか術もなし。

次第に他のバンドの連中も集まれば、漸くサウンドエンジニアがセッティングを開始すれど、その余りに愚鈍なる様に、最早憤る気力さえ損なわれ唯々呆れ果てるものなり。
漸く長く退屈極まりなきサウンドチェックを済ませれば、Shopzoneにて業務開始せり社長と部長の2人を残し、界隈の中華料理屋へ、私はフィッシュ&チキン炒飯£6.00(1230円)を食せし。ブロッコリーの茎が具となっておれば、これはなかなかの妙案か。唐辛子たっぷりの辣油をぶっ掛ければなかなか美味なれど、これで1200円強とは今更ながら物価の高さに閉口するばかり。

妥協なき美食家たる兄ぃは、幾度もの海外ツアーに於ける経験上「オイスターソース炒めにハズレなし」との持論を常々展開しておられれば、矢張り野菜と豚肉のオイスターソース炒めを食されし。

ピカチュウは牛肉麺の如き汁麺を注文「結構美味しいで!でも肉多過ぎや!」然もありなん、何しろ狩猟民族の国なれば、肉こそ主食材なり。肉パワーを心行くまで充電なされい。

我々の出番は最後なれば深夜にして、思わずShopzoneのテーブル横に腰掛け居眠りすれば、何でも女性客が次々と眠りこける私の髪の毛をおもちゃにする等弄りまくり、挙げ句眠る私と勝手に記念撮影なんぞせしとか。「面白いから何も云わずに見ちょった」とは東君の弁。ライヴはサウンドエンジニアがド素人故、マイクがハウり捲るトラブルに見舞われれど大盛況にて終了。その後はDJによるディスコタイムとなりし会場にて、我々もウォッカやウイスキーを呷れば次第に酩酊状態と化し、東君とみつるちゃんは早々にホールへ突入し踊り狂いし。私は嘗てカラオケスナックにてタンバリン振りのバイト経験あれば、昔取った杵柄とばかり久々となるタンバリンプレイを披露、周囲が「ええ~っ!タンバリンめっちゃ上手いやん!」と驚いておられれど、何しろ当時は一晩中全く聴き知らぬ演歌やら歌謡曲に合わせひたすらタンバリンを降り続けておれば、プロ級の腕前になりしも当然か。

夜も更け殆どスタッフのみがホールに残る頃、酩酊状態のみつるちゃんとピカチュウが大スパークし、閑散となりしホールにて踊りまくりておれば、若きピカチュウは兎も角、みつるちゃんは明日大丈夫か。結局酔いどれし挙げ句、彼等のスパークぶりを眺めつつ、ホールのソファーにてうたた寝後、翌午前7時に目覚めれば、2階の小ホールにてみつるちゃんが事切れて轟沈しておれど、それも昨夜のスパークぶりから察すれば当然の結果にして、非情にもそのまま捨て置き、会場の3階に用意されし投宿先へと移動し、洗濯のみ済ませ再び就寝。

 

8月11日(月) 
午前11時起床。ピカチュウが昨夜の中華料理屋へ朝飯を買いに行くと言う故、無難に海老炒飯£5.50(1128円)をオーダー。

正午、一路Nottinghamを目指し出発。車中にて海老炒飯を4分の1程食せば睡魔に襲われ爆睡。午後3時過ぎにNottinghamに到着、機材搬入まで未だ1時間程あれば、チェーンのCD量販店にて、先日見つけられじBollywood映画「Om Shanti Om」のDVDを探せど矢張り見つけられず、結局大島渚監督作品「愛のコリーダ」の海外版ノーカットバージョンのDVDとCD3枚を購入、£19.00(3895円)を散財。しゃあけど何で日本映画のDVDを海外で買わなあかんねん。そもそも嘗て日本ではDVD化されぬと云われし牧口雄二監督作品「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」のドイツ版DVDをギリシャにて購入せし事あり。また私がボーナスCD用の音源を提供せし東映ピンキーバイオレンス映画のDVDボックスをリリースせしアメリカのPanik Houseも、日本に於いてDVD化されぬピンキーバイオレンス諸作に始まり、石井輝男の諸作品等を次々リリースしておれば、海外にて日本映画のDVDを購入するもやむを得ぬ事か。
午後4時、今宵の会場Bodega(旧The Social)へ。サウンドチェックを済ませれば、メンバー皆、晩飯を求め何処ぞへ、東君とみつるちゃんは大好物のピザ、兄ぃはトルコ料理に於ける代表的なファーストフードたるドネルケバブ、ピカチュウはひたすらアジア料理を求めタイ料理屋にてパタイと、各々思い思いの一品を選択せし様子なれど、先程DVDやCDにて散財せし私は、こここそ節約を旨とせんと、先程の海老炒飯の残りにハバネロソースをぶっ掛け済ませれば、これにて£5.50の海老炒飯も1食あたりの単価は半額の£2.75(564円)となりし。
兄ぃがまたしてもドラムヘッドを張り替えし故、ピカチュウ画伯によるイラスト付きドラムヘッドがShopzoneに並べられし。「新体操してみたいです」とのピカチュウのコメントが添えられし、ピカチュウと兄ぃの2人が新体操を行う謎のイラストなり。ドラムヘッドは常に出品せし刹那に売れるキラーアイテムなれば、勿論この力作も瞬時にして売れしは云わずもがな。

一方ピカチュウのイラスト付き真っ赤なワンピースは、未だ買い手が現れず。「もし変なオッサンが買うて行ったらどないする?」「えええ~っ!イヤや~っ!あっ、でも飾ってくれたりするんやったら、まあええかなぁ…」「そんなん当然着るに決まってるやんけ!あと匂い嗅いだりとか!」「絶対イヤや~っ!」因みにこのワンピースは、London公演にて無事買い手が付きし。 
Benの口癖のひとつに「Bollocks!!(睾丸 / 金玉野郎 / アホらしい)」なるがあれど、全くその意味を理解せぬピカチュウが「Are you bollocks?」と口にするや、Benは「誰がそんな質問するんだ!そんな言い回し聞いた事ないぜ!」と大爆笑。ピカチュウは続けて「I am bollocks…」Benは更に爆笑しつつ「女性が『私は金玉です』って言うか!」漸くここでピカチュウが問いし。「えっ?ほんでbollocksって何て意味?」意味知らんと何ちゅう事口にしとんねん!意味を教えれば本人も苦笑「えええ~っ!そらあかんわ、こんなん言うたらあかんやん」さればBenが「bollocksだけだと悪い意味だが『the』を付けて the bollocksにすれば『サイコーだぜ!』って意味に変わるんだ」と教示するや、調子に乗りしピカチュウは「Are you the bollocks?」と、早速Benに向け質問、勿論クールなパンクスの彼曰く「Yes!」ピカチュウは続けて「I am the bollocks…」Ben曰く「Yes!」斯様な遣り取りがあれば、案の定今宵のライヴにて、ピカチュウはいきなり満場の客へ向け「Are you the bollocks?」「How are you the bollocks?」これには詰め掛けし客も些か驚きし様子なれば苦笑も洩れれど、ピカチュウは更に続けて「I am the bollocks!!!」ここで客から「Yes, it is!!」ならばとピカチュウは「Are we the bollocks?」と問いかければ「Yeahhhh!!」されどここで「I am bollocks…」これには客も思わず苦笑、斯様な遣り取りが繰り広げられし今宵のライヴは、ピカチュウの歌も炸裂。嘗てはone grooveに終始せりAMT & TCIなれど、ピカチュウの参加により歌を交えし即興演奏が大幅に増えておれば、矢張り歌に絡みて演奏するは大いに楽しきものにして、日々の演奏に関しても新たな展開なんぞ次々と見られるものなり。

 

午前0時過ぎにホテルへ、またしても禁煙組と喫煙組に分かれて投宿。Benもピカチュウも早々に就寝の御様子故、喫煙組の部屋へ赴き、午前3時半までワインやらギネスを飲みつつ歓談。午前4時就寝。

 

 

8月12日(火)
午前8時起床、のんびり入浴&洗濯。朝飯としてAlanから頂きし即席味噌汁の詰め合わせから、わかめの味噌汁1袋と大根葉の味噌汁2袋を啜れば、大いに郷愁を誘われし。
午前10時半、今回のツアー最終目的地なるLondon へ向け出発。朝飯が味噌汁のみ故に大いに空腹、道中のS.A.にて遂に禁断のバーガーキングへ、当然バーガーキング名物たる巨大バーガーWhopperのセット£5.60(1148円)をオーダー。アメリカのバーガーキングに於いては、Whopperはチーズ抜きにすると若干割安になれども、ここ大英帝国のバーガーキングには斯様なる選択肢なく、自ずからチーズ入りを食す羽目となれど、最早チーズが入っておろうが問題なし、このアメリカ産帝国主義的超重量養豚料理を大いに満喫。さりとて凡そ通常の倍額もするハンバーガーに救いを求めねばならぬ国とは、一体何たる食事情か。

気付けばピカチュウ以外の四十路男4人衆は、揃ってバーガーキングへ。うら若きピカチュウのみ「もう一度イングリッシュブレックファースト食べとこ!」と再チャレンジするも、揚げトーストの前に見事轟沈、Ben曰く「普通誰も揚げトーストは食わないぜ!あれを食うのはデブのトラック運転手か肉体労働者だけだ!」

Londonに早々到着。Benは、我々の物販商品に課されし法外なる消費税VATの一部返却を試みんと奔走してくれれども、相手は所詮親方日の丸ならぬユニオンジャックの役人共なれば、電話が繋がらぬと云う有り勝ちな卑劣なる手口にて、結局我々異国人は為す術もなし。
今宵の会場Madam Jojo’sは、Piccadilly Circus界隈の香ばしきエリアにある元ストリップクラブなれば、道幅狭く人通りも車通りも多き、路上駐車が最も困難な地域故、会場入口から数十メートル彼方に無理矢理駐車、然れば迅速なる機材搬入を迫られ、超重量級機材群を大汗流しての搬入。London市内の駐車場事情は東京等と同じくして駐車場代が法外に高ければ、駐車場代節約の為にBenは一旦自宅へ。 
さてサウンドチェックも終え、いざ晩飯でも食わんと思えば、Piccadilly Circusにある我々のLondon否イギリスでのオアシスたる日本料理屋「てんてん亭」へ。日本への帰国を明後日に控えながら、何故今更高価なる日本料理を食わねばならぬのか、最早この問い掛けに答える必要あろう筈もなし。納得しかねる激不味料理の類いに金を使うは愚かなれど、充分に納得し得る美食、況してや己れのソウルフードたる日本食ともなれば、ケチ根性を以て僅かばかりの金を惜しむ事こそ愚かにして、多少の散財なんぞなんぼのもんか。幾らかの金にて魂が浄化され全身の細胞が歓喜の声を上げるならば、此れ大いに安からん。「てんてん亭」は日本人スタッフに依り営まれておれば、華僑や韓国人等に依る胡散臭き日本料理擬きなんぞを食らわされる心配もなし。さて今宵の焼魚ディナーセットが鯖と知るや、私とピカチュウはその焼魚ディナーセットを注文、更に私はしめ鯖も単品にて追加注文すれば恒例のサバサバセットなり。みつるちゃんと東君はトンカツディナー、兄ぃはカツカレー、四十路男4人衆は当然我々のソウルドリンクたる烏龍ハイも逃す筈なし。ディナーセットには、サーモンとマグロの刺身、揚げ出し豆腐、照焼チキン、ごはん、味噌汁が付いておれば大層豪華、鯖は半身なれば、これまたボリューム的にも文句なし。大いに懐かしき味を満喫、締めて£26.00(5330円)也。千秋楽たる今宵のみは豪遊も許されん。

パブへ繰り出しギネスを呷っておれば突然の豪雨、長蛇の列を成して入場中のお客さん達が何とも気の毒か。今宵の前座Shit & Shineは、ドラムセット5台にギター数名と云う大所帯にして、されどその音楽は退屈極まりなく、ドラム群とアンプ群の撤収に大層手間取る上、バックステージへの通路は捌けられしドラム群とアンプ群にて既に通行さえ不能となり、更にビール片手にのんびり歓談する糞野郎共とその糞友人共にバックステージまで占拠されておれば、こちらは最早怒り心頭。何でもええからとっとと出て行きさらせや、ボケがぁ!幾ら2001年の初UKツアー以来世話になるRiot SeasonのAndyのブッキングにして、更にこの糞野郎共の新譜もそのRiot Seasonからリリースされしとは云え、この糞野郎共との対バンだけは金輪際御免被りたし。そもそもそのAndy本人は、体調不良との理由から今宵来ておらねば、Benも「Bollocks! 本当にヤツは糞野郎だ!」と、笑いつつ苦言を呈せし。
斯様なバックステージに於ける憤りもライヴへのパワーに昇華させれば、千秋楽も大盛況にして、最後はギターにラストライドを食らわせ完全に破壊殲滅せり。
終演後、火曜日にも関わらず続けてDJイベントが開催されるとかで、Londonの友人宅へ投宿すると既に会場を後にせしピカチュウを除く面々と有志数名にて、超重量級機材群をこれまた超高速撤収、この頑張りも今宵にて最後と思えばこそか。気が付けばフロアは再び超満員にして入口も長蛇の列なり。機材の撤収も無事終われば、今宵Benと共に我々のライヴに訪れし彼の愛妻Priscilaも交え、路上にて皆でビールやワインを呷りつつ最後の歓談。

名残惜しけれど、いざカムラさん宅へ。バンから我々の荷物を下ろし、Benと11月のAMT & TMP U.F.O.のLondon公演の際に再会せんと約束。さてピカチュウ不在なれど、彼女の座せりシートに築かれしピカチュウの巣を解体すれば、案の定食材やら土産物やら挙げ句は下着まで発掘される有様。カムラさん宅前の路上に展開される我々の荷物は、まるで粗大ゴミ集積所か、それとも貧乏学生の夜逃げの如し、到底ツアーバンドの荷物には見えぬ有様。

深夜のカムラさん宅にて、先ずは各々の荷物を片付け、四十路男4人衆にてビールで打ち上げ。午前4時就寝。

 

 

(2008/10/19)

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