『人声天語』 第140回「男は黙って噛み締めろ…ふたたび!(AMT &;amp TCI 英吉利&愛蘭ツアー 2008)」其之四

8月13日(水)
午前8時起床、朝飯は最後の2袋となりしラーメンにて、最後の麺つゆラーメン。今回はこの麺つゆラーメンに大いに救われしか。結局箱買いせし20袋、幾つかをピカチュウとBenに提供すれども、ここに見事完全消費せり。
午前9時よりWire誌の写真撮影。写真を撮影されるはどうにも苦手にして、そもそも一体如何な顔付きをしていいものやら見当さえ付かぬ有様。撮影も無事終了するや、四十路男4人衆にて帰国へ向けてのCD解体再構築作業に突入。
午後12時半にAlanと待ち合わせておれば、Piccadilly Circusへ赴きし。地下鉄の1day passを£5.20(1066円)にて購入。 中華街にてAlanと飲茶、海老シューマイやらチャーシューまん、その他帆立や海老の詰まりし饅頭類、焼きそば、デザート等、これは大いに美味にして、海外にて食せし如何なる中華料理に於いても間違いなく最も美味なる逸品なり。1人当たり£12.00(2460円)なれば金額的にも納得せり。

その後他のメンバーは、CDとDVDの卸しの為にレコード屋へ、更に日本円への両替に、私はカフェにてAlanからWire誌のインタビューについて補足分の取材。取材も終え、行きつけの両替屋Money Corporationにて他のメンバーと合流すれば、何とあろう事か日本円が底を尽きししとか。Alanの案内でレートが良いと言う両替屋へ赴き無事両替も終了すれば、彼と別れカムラさん宅へ。ピカチュウもカムラさん宅へ戻って来れば、バンから下ろされし自分の荷物を見て唖然「こんなに荷物あったんや!こんなん全部持って帰るん無理やわ」結局段ボール1箱分の荷物をLondon在住の知人宅へ預け置くと云う女王様ぶりを発揮。
今宵はカムラさんの企画にて、ピカチュウと私のデュオ「光宙★魔呼斗」と、みつるちゃんと兄ぃと東君に依る「ミルフィーユヤクザ」のライヴあり。
ライヴ前の腹拵えとして、ボンベイポテト缶をレンジにて温め食せば、今回購入せし一連のカレー缶に於いてこれが一番美味なるか、美味と云うには語弊あれど無味無臭にあらず、云うなれば日本のレトルトカレー甘口が更に甘くなりしかの如し。ハバネロソース大量投入に加え、キッチンにて発見せし粉末のミックスカレースパイスと必殺アイテム麺つゆ少々を加えれば、何とも懐かしき日本のレトルトカレー擬きとなりて、これならば充分納得行く味にして大いに満足。

午後5時半、カムラさんと共に、地下鉄とバスを乗り継ぎ今宵の会場The George Tavernへ。今宵は出演者のケータリングやドリンクチケットの類い一切なければ、1杯£3.20(656円)のギネスを呷り、酒の肴にと、界隈のアラブ人が営むカバブ屋にてホットウイング2本+チップス£1.20(246円)を食らいし。結局自腹にてギネス3杯を呷り£9.60(1968円)也。会場にて現在London在住と云う日本人男性2人に出会えば、1人は子供の頃に父親に連れられ、嘗て私と東君が勤めしライヴハウス兼レストラン「聖家族」を訪れし事ありしとか、何と彼の実父はセンチメンタル・シティ・ロマンスの中野督夫氏なればそれも納得。 
世界初ライヴのミルフィーユヤクザは、シンセ爆裂のコズミックヘヴィーブルース、カムラさんのバンドI Am A Kamuraは何とも優し気な音にして心地良く、海外初演となる光宙★魔呼斗は例によって例の如く大爆裂、客入りも超大入りにて無事終了。Hugh HopperとのデュオHUMI等にて知られるキーボードプレーヤーユミさんとも再会、ユミさんと云えば勿論恒例の記念撮影なり。
カムラさん宅に戻るや、全員総出にて残りのCD解体再構築作業、続いて物販商品の分配、最後はツアー最後の大仕事たる帰国フライト用パッキングに勤しむ。受託手荷物の重量制限20kgなんぞ厳守は到底無理なれば、この際チェックインカウンターの係員の大雑把さに全てを賭け、無事パッキング終了。
さて夜食は残りし食材の大処分大会にして、ピカチュウは「未だ嘗て作った事もないスペーシーな料理」と称し、いきなりオイルサーディンをオイルごとジャガイモと共に茹で始めれば、猛烈なる異臭発生、されど彼女曰く「大丈夫やって!」そこへラーメンと粉末コーンスープをぶち込み一旦試食「うわっ!生臭っ!何で?」当たり前やろ…。チーズをこよなく愛する彼女なれば「これにチーズ入れたら絶対美味しいって!ホンマやって!」と云う訳で粉チーズを大量投入すれば、粉チーズが汁気を吸収、いよいよ以てスペーシーなと云うよりストレンジな料理と化せり。試食せしピカチュウ曰く「あっ、これヤバい!これは美味しいで!」されど残念ながら、四十路男共には到底理解不可能なる御味でございました。



然ればそのピカチュウのスペーシーな料理の傍らにて、私は兄ぃから譲り受けし米を炊き、ピカチュウから譲り受けしジャガイモにて煮っころがしを作らんと、麺つゆと醤油と砂糖と粉末出汁にて煮れば完成。ジャガイモがかなり青臭き代物故に、味の方は大いに不満を残す結果となれど、チューブ入り生姜を添えれば充分食し得るに値せり。ごはんにちりめん山椒ふりかけを施せば、こちらは感涙さえ誘いしか。夜食厳禁なればこそ矢鱈と試食させてと絡むみつるちゃん曰く「うわっ!ごはん炊いてる!うわっ!煮っころがし!めっちゃ本格的やん!……(一口試食)………んんん!うまっ!泣けるわ~!」

食後はカムラさんと歓談。明朝は午前6時半にタクシーが到着する故、このまま徹夜にて仕事せんとネット接続すれど、明け方の猛烈なる冷え込みに根を上げ、午前5時過ぎにソファーにて就寝。

 

 

8月14日(木)
午前6時過ぎに起床。タクシーは定刻通りに到着すれば、皆でHeathrow空港へ。大型の7人乗りタクシーなれば£50.00(10250円)也。午前7時10分、予想以上に早く空港に到着、Lufthansa組の私と兄ぃとみつるちゃんが、先ずターミナル2にて下車。これを以てターミナル4へ向かうKLM組の東君とピカチュウとはお別れ。チェックインカウンターは長蛇の列なれど、私はマイレージクラブのゴールド会員なれば、ファーストクラスのチェックインカウンターにてスムーズに無事チェックイン。同行せし兄ぃとみつるちゃんが思わず洩らせし一言は「ゴールド会員っていいなあ…」ゴールド会員の私はラウンジへ、無料にてカプチーノ+クロワッサン+アップルパイを食し、ネット接続しツアー中に於ける最後の業務も完了。午前9時50分発Frankfult行きに搭乗、Frankfultにて乗り継ぎも問題なく一路灼熱の東京へ。
後日談として、我々3名が利用せしLufthansa航空よりも割安なればとKLM航空を利用せしピカチュウと東君は、チェックインに際し受託手荷物の重量超過を咎められ、東君は幾らかを機内持込み手荷物へ移し事なきを得しとか、されど超重量級を誇りしピカチュウは為す術なく、結局荷物の幾らかを捨て去りて無事チェックインを果たせしとか。

これにて今年3月から続きし過酷なツアー生活は一段落すれど、11月に控えるAMT &;amp TMP U.F.O.の欧州ツアーに向け、新譜の録音やら雑務も山積み、されどここから10月下旬までの10週間は、漸く日本に滞在し得る故、レコードでも聴きたし、DVDも観たし、本も読みたしと思えども、況や折角のオフなればこそ、ソロ作品等の製作も行いたければ、結局は引き続き馬車馬の如く稼働し続けん。斯くも過酷に稼働し続けれど、哀しきかな借金は一向に減る気配見せず、経済的には相も変わらず低空飛行を続けておれど、元来大層な怠け者なれば、借金なんぞでも抱えておらねば怠けんとするばかりにして、さて残す処精々数十年もあらざらん人生を如何に謳歌せん。ツアーに明け暮れるも一興、山に籠りてひたすら作品制作に没頭するも一興、音楽と異なる新たな道を模索するも一興、赤貧に喘ぎつつ怠け惚けるも一興か。今年を以て音楽生活30年ともなれば、ここまで一体何を為せりか、さてこれより何を為さん。実働時間から推考すれば、私の日当や時給なんぞ世間を賑わすワーキングプアをも凌ぐ程に微々たるものなれど、人生を金銭に換算すれば、何と陳腐に感ぜられる事か。過ぎ行きし時間は、如何な大枚を叩こうが買い戻し得るものにあらず、なればこそ自分の時間こそ質素倹約し大切に消費したきもの。質素倹約と云えども時間を遅く進める事は不可能なれば、質量を増やすしか術もなく、斯く思えばこそ過酷なれども摩滅さえ厭わぬ程に稼働せねばならぬ。金に執着すればする程、自分の人生を安売りせし心持ちとなれば、金なんぞ云わば「幾ら食らおうがいずれは尻から糞となりて出で失せる飯の如し」か、そもそも大金なんぞ縁も無ければ、何とも御気楽地獄極楽なり。凡そ生涯収入が1億円にさえ届かざらんと思えばこそ、金に執着する意味さえなし。斯くなる上は、セコい事極まりなき質素倹約なんぞ糞食らえ、金輪際縁なきものにして、従来通り享楽的且つ刹那的に生きんと誓うものなり。

 

(2008/10/23)

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