『人声天語』 第132回「くたばれ日本!(AMT & TCI 欧州ツアー 2006)」#3

6月16日(金)

午前9時起床、事務所にてネット接続し雑務をこなせし後、朝飯にラーメンを食し、シャワー。事務所にてSandroは完全ダウン状態にして、椅子に座するまま爆睡。午前10時、Sandroを起こさずにBern駅へと出発、駅にて東君の切符を購入し、さていよいよParisへ向かわんと、先ずは午前10時半発Geneva行きに乗り込む。2階席にて独りで座しておれば、何処ぞより何やら腋臭の如き異臭が漂いて、当初はもしや自分かと匂いを嗅げば当然自分にあらず、では誰かと周囲を見渡せばノースリーブの御婦人方やら若者グループやら乗り合わせており、ふと気付けばこれなる異臭は一瞬にして車内に充満、さて一体誰がこの異臭の源たるか。香水やら体臭やら様々な匂いが渾然一体と混じり合いし末の、この何とも例えようなき匂いこそ、私個人的には「ヨーロッパの匂い」と感ずれば、普段は然して気にもならねど、流石にこれ程に強烈なる腋臭には閉口、思いもかけぬ3日間続けての腋臭攻撃に、今や目眩さえする始末、今や腋臭がトラウマとなりしか。
Geneva駅にてParisのGarde-Lyon駅へ向かうTGVに乗り替え。TGVのプラットホームは既にフランス領なれば、ホームへの通路にパスポートコントロールも有り、ならばと今のうちにと昼飯を求め地下街へ。運良く中華料理&寿司屋を発見、未だ日本を出発し1週間も経っておらねば、私は最も安価な炒飯を購入、されど兄ぃとせんせいは寿司へ。兄ぃはこの気温の高さから食中毒を懸念しておられ「早く食べないとお腹壊しちゃうよ!」そんな事云うたらもっと蒸し暑い日本の夏には、絶対お持ち帰りの寿司食えまへんがな!
午後12時57分発ParisのGarde-Lyon行きTGVに乗車、車内は満員にして冷房の効き大いに悪く蒸し暑い事この上なし。また今や全車両全面禁煙なれば、ビールはタバコを誘発する故、バー車両にてキュッと冷えしビールを喉に流し込む訳にも行かず。しかし何でこんな冷房が効いてへんねん!日本でこれだけ車内が蒸し暑ければ、絶対に車掌は怒り狂うた客にどつき回されしばき倒される事間違いなし。
午後4時半過ぎ、ParisのGarde-Lyon駅に到着。J.F.Pauvrosのマネージャーにして今回のフェスにては通訳を務めるサトコさんとフェスティバルのスタッフIsabelleが迎えに来てくれし。車にて投宿先のホテルへ。私と東君が同室、今や日本代表チームに愛想を尽かしオランダ・サポーターとなりし東君の意向にて、テレビでW杯オランダvsコート・ジボアール戦をカップ焼きそばを食しつつ観戦、更に洗濯&シャワーを済ませる。確か東君は先日の日本vs豪州戦の折、日本の国歌斉唱シーンを観ただけで「感動するなぁ~」と感無量、また敗戦となるや茫然自失廃人状態となりしと記憶しておれば、その東君曰く「え?そんな奴いたっけ?日本を応援?バカじゃないそいつ?誰それ?俺はオランダサポーターだから…長崎の出島出身だからねえ…俺のオランダ頑張れ!」その頃、別室の兄ぃは近くのスーパーにて米を購入し電熱器にて炊いておられしとか。今宵J.F.Pauvrosがイベントを行いしとサトコさんから伺えど、元来出無精な私は出掛ける気力さえなく、ホテルに隣接するスーパーにて、グレープフルーツジュース、玉子6個パック、カップラーメン、粉末マッシュルームスープを購入、カップラーメンに玉子を放り込み、そこへ持参せしカレー粉を溶き、玉子入りカレーヌードルとして頂けば満更でもなし。

 

 

グレープフルーツジュースを呷りつつ、引き続きアンゴラvsメキシコ戦も観賞、東君と今後のアフリカのサッカーの在り方について語り合いし。私が思うに、黒人の先天的且つ潜在的運動神経の良さを100%発揮出来たなら、サッカーも陸上競技同様、移民系黒人選手が殆どを占めるようになるのではないか。未だサッカー後進国のアフリカ諸国にしたところで、アフリカ人に最も適したサッカースタイルを完成させ得れば、今のヨーロッパvs南米たる勢力地図を大きく塗り替え得るであろう。それに比べ、今や根性さえも失いし日本人、金と知識と目先の技術と空虚なプライドのみでは未来はないと知れ。何もサッカー選手に限らず、現代日本人の精神的脆さは、既に亡国の危機にさえ迫りしと危惧されるべきなれど、安易に結果のみを追求しつつ何かと様子見する反面、何にも裏付けされぬ不毛なるプライドのみを誇示するような輩共では、国が滅びさる刹那に於いて、初めて自らの置かれし境遇を悟るのであろうか。否、死して尚悟れぬかもしれぬ。アンゴラの闇雲にゴールを狙わんとする姿勢こそ、日本人に最も欠落せし「石にしがみついても」的ひたむきさではなかったか。そもそも外見なんぞ取り繕う暇があるならば、みっともなくても構わぬ故、死ぬ気で何かやり遂げてみろ。お前ら先ずは「アストロ球団」でも読め!
試合終了と同時に、まるで電池が切れたが如く東君は爆睡、私は続けてツール・ド・スイスなんぞを独りテレビ観戦しておれば、みつるちゃんより飲みに行かぬかとお誘いあり。ならばと2人してホテル向かいのバーへと赴けば、ここはtoto等の賭博バーにして、店内には博打に負けし輩が醸し出す陰気な空気が充満しておれば、何とも居心地悪く、他のバーへと移動。次に訪れしバーは、バーテンに巨乳美女3人を揃えており、BGMは中近東ポップス、されど店内はやさぐれし親爺共で賑わっておれば、何とも云えぬ怪し気なる空気なり。されど斯くの如し空気こそ私の好むバーなればこそ、2人して次々ボトルを空にし、大いに楽しきひとときを過ごせり。午前3時、ホテルへ戻り就寝。

6月17日(土)

午前7時起床。湯沸かしポットにて食し得るは、今やカップ焼きそばのみなれば、最後のカップ焼きそばをここで放出、生玉子も割り入れ湯を注げば黄身は見事に固まり、玉子入り焼きそばとして食せり。続けてマッシュルームスープも頂かんとすれば、味は問題なけれど何しろ諄く、カップ1杯飲めば充分気持ち悪し。カップ麺にはそろそろ辟易し始めておれば、況してや昨日購入せしカナダ産カップヌードルの残り1個を最早食す事もなかろうと思え、本体にパッケージ等印刷されておらねば、ここにイラストを施しCDとセットにして売らんと思い立つ。されば今回個人の物販商品を持参せぬ東君もこれに同調、ならばカップヌードル2個+CD2枚のセットにせんと云う運びに、何しろ我々は、ヨーロッパ人(特にフランス人)が忌み嫌うキャピタリストなり。されどユーモアを解さぬフランス人オーディエンスが、果たして斯様なユーモア商品を理解するや否や。キャピタリストの聖地アメリカならば一瞬にして売れようものなれど、ここは芸術至上主義なるフランスなれば見向きもされぬがオチか。

 

 

矢張りギターの調子いと悪ければ、ジャック部分を開けてチェック、どうやらケーブル先端部を固定するパーツ自体に問題ありし、これならばパーツ交換にて容易に修理可能たらん。
午前11時となるや、ギターのリペアをせんと、ストラップピンを求める東君共々、楽器屋が犇めくPigalleへと向かう。地下鉄の駅を出るや、いきなり目に飛び込みしは立ち並ぶSex Shopの看板なり。Sex Shopの多さに思わず感嘆すれど、何はともあれギターのリペアが先決と、先ず1軒目の楽器屋へ。ギターをリペア出来るかと訊ねれば「Non!」2軒目、3軒目と順番に訊ねれど答えは全て「Non!」こんだけ楽器屋が並んでて何でリペア出来へんねん。漸く「Guitar Garage」なる店ならばリペア出来ると伺い赴けば、無愛想そうな親爺が何やら作業中、これならばリペアも叶わんと、親爺にジャックが接触不良故にパーツ交換して頂きしと伝えるや、何と斯様に簡単な作業を行うに当たり3日間も要すると宣いにけり。こちとらツアーバンドにして、今夜Parisにてライヴがあるので何とかならぬかと持ち掛けるや「Non!」お前おちょくっとんか!そんなもん5分か10分もあったら出来るやろがぁ!この糞フランス人がぁ!アメリカならば常に「OK!」と快く引き受けてくれしもの、流石ロック不毛の地にして音楽レベル世界最低の国フランス、楽器屋が斯様に体たらくなるも仕方なかろうか。結局他所の店にてパーツを購入、パーツ代(2個入り)3ユーロ也、ホテルにて東君が修理してくれる運びとなれり。東君もストラップピンを購入、Fender純正パーツなれば何と7.5ユーロ、流石純正パーツいと高し。
さてこれにて楽器屋街を後にし、待望のSex Shop巡りへ。各国にてスーパーマーケットを巡れば、その国の文化や生活習慣を垣間見る事が出来、大いに興味深けれど、Sex Shopもまた然り。年間セックス回数が世界で最も多いフランス国民(世界41カ国の年間セックス回数調査によれば、フランス人は137回で1位、因みに日本人は41カ国中41位の46回)なればこそ、果たして如何に激烈にして過激な商品揃えたるか、いざ店内へ突入すれば、何と巨根天国アメリカを軽く凌駕する超巨大バイブ群、アナル用バイブ等も直径20cmはあろうかと云う巨大な代物多数にして、いやはやフランス人の性生活とは一体如何なるものやら。呆気に取られ東君共々店内をうろついておれば、女性スタッフが「何かお探しですか?」なんぞとまるで服屋の如く接客に現れ、こちとら思わず狼狽せり。
Sex Shop巡りを終えれば、そのSex Shop街にて見つけし日本料理屋にて昼食とする。東君共々ちらし寿司を注文すれば、マグロやサーモンの他、白身とサバが乗っており大いに興奮、矢張りサバは美味なり。思わずサバビア~ンなんぞとオヤジギャグも飛び出せり。
ホテルへ戻り、最近めっきりハンダ付けの腕前を上げし東君に、ギターの修理を施して頂く。確かに以前に比べれば別人の如き鮮やかなハンダ捌き、本人曰く「God hand!」これにてギターのリペアも終了。
午後3時半、ホテルにIsabelleとサトコさんが迎えに来てくれれば、会場Cite De La Musiqueへ向かう。これは「Nippon A Go Go」と銘打たれし1ヶ月に渡るフェスティバルにして、各日異なるテーマの下に、一楽さんのドラびでおをはじめジャンルを越え数多くの日本人が出演すると云うものなれば、今宵は「Culture pop」と名付けられ、Extreme trip musicとコメント付けられし我々AMT & TCI、Electro cocooningだそうなRei Harakami、そしてPop explosionと書かれしKonishi Yasuharuと云うラインナップなり。わしらを捉まえてPopってなあ…と思いきや、フェスティバル全体を眺めてもRockたる語見当たらず、成る程ロック不毛の地フランスなればこれも当然か。エンジニアと誤解による多少のコミュニケーションの行き違いこそあれど、サウンドチェックは到ってスムーズに終了。SonoreのFrank Stoferと再会、フォトセッション2件を済ませし後、楽屋にて彼と歓談。ツアー前に交通費の件で大いにこのフェスティバルと揉めておれば、その時私とフェスティバル側の板挟みになりしスタッフJosと対面、てっきりオッサンだと思い込みかなり辛辣なるメールを送っておれば、なんとうら若き女性にして、これには幾ら勝手な思い込みとは云え驚愕、思わず先達っての件を謝罪せり。フランス女性特有のはにかみ具合にして笑顔で「気にしないで」なんぞと云われれば、尚の事立つ瀬なし。楽屋にて本日の出演者が次々現れれば、Konishi Yasuharuとは何でもピチカートファイヴのメンバーだそうで、されど当方そのピチカートファイヴを存じ上げず申し訳なし。
午後8時、先ずは我々Acid Mothers Temple & The Cosmic Infernoからスタート。ステージに登場するや「カワバタァ~!」なる叫び声に思わず赤面。持ち時間僅か55分間なれば、今宵は「Pink Lady Lemonade」「Om Riff From The Cosmic Inferno」の2曲のみのセット。2階席まで大入り満員にして、大いに盛り上がれば、ホールのフロアはダンスホール状態、こちらも大層気持ちよく演奏し得る。結局5分オーバーの1時間のセットにて終演、これにて今回のツアー前半のハイライトも無事終了、物販も飛ぶように売れ捲れば、一応成功と云えるか。
終演後、AMTのドキュメントフィルム「Dokonan」の制作者Audrey Ginestetと再会、楽屋にて歓談。Shopzone社長みつるちゃんと部長東君は、ロビーに広げられしShopzoneにて大奮闘、兄ぃとせんせいの出品せしサイン入りドラムヘッドも見事完売、されど私と東君の出品せしカップヌードルセットは、矢張りフランス人には支持されず売れ残り、結局スタッフに差し上げる顛末と相成りし。トリのKonishi Yasuharuが演奏する頃には、既に多くの客も帰路についており、ホール内はすっかり閑散としておれど、彼は歌謡曲のレコードを流してはポップスター然としたポーズなんぞ決めておられ、成る程これが日本のサブカルの大御所かと思えば「なんだかなあ~」な気分にもなりし。
午後11時半、全て撤収完了、Isabelleの車にてホテルへ。私はAudreyと近所のバーへ、彼女の在籍するバンドUehの近況やら映像作品の話やらで大いに盛り上がり、結局ホテルへ戻りしは明け方なり。他のメンバーはプチ打ち上げと称し、昨夜訪れしあの中近東ポップスの流れるバーへと繰り出せしとか。結局フライト用パッキングなんぞしておれば徹夜となり、不覚にも眠る事叶わず。

6月18日(日)

午前6時、迎えのタクシー2台に分乗しCDG空港へ。チェックインを済ませ、マクドにてエッグマックマフィンのセットを食す。朝食メニューが僅か2種類しか存在せぬにも関わらず、この仕事の遅さは何故か。況してや溶けたチーズがこの上なく嫌いな私にとって、このエッグマックマフィンの不味さは激烈にして、更にコーヒーの不味さはと云えば、まるでセメダインの如き後味なり。これ絶対コーヒーちゃうで!
午前8時半発Vueling航空Valencia行きに搭乗、離陸するを待たずして即寝成仏、着陸せしを知らぬ程に爆睡。
午前10時半、Valencia空港に到着、オルガナイザーのJoseが迎えに来てくれておれば、車にてCastellonへと向かう。先ずはホテルへチェックイン、私は今回個室となれば、早速シャワー&洗濯、そして再び即寝成仏。
午後1時半、昼飯を食わんとJoseがお迎えに現れ、海岸近くのレストランへ赴く。今回のツアーに際しメンバー一同本場のスペイン料理を大いに楽しみにしておれば、ホタルイカのフライ、サラダと食らい、メインディッシュたるイカ墨パエリアを頂けば大層美味。されど次第に味の濃さと脂っこさに食い飽きて来れば、パエリアもこの1食にて充分なり。東君は「美味いよ!俺は1週間パエリアでも大丈夫!」流石ピザ大好き人間である、地中海沿岸の料理ならば何でも来いか、大いにスペイン料理を御堪能の様子。食に関しては保守派どころか国粋主義者たる私なんぞ、斯様な境地には到底至りかねるなり。南米旅行経験豊富な兄ぃは多少スペイン語を話す故、Jose相手に本場のスペイン語会話を実践せんと、話す話す。せんせい曰く「こんなに喋る兄ぃ初めて見ましたわ!」されどスペイン人から「君のスペイン語は南米スペイン語だ!」と指摘される一幕もあり。
ホテルへ戻りサウンドチェックまで30分間の休憩、未だ猛烈なる睡魔が襲って来んと思えばこそ、ギターの弦なんぞ張り替えコンセントレーションに努めておれど、皆はその間に仮眠せしとか。
午後4時、Joseの車にて今宵の会場Sala Ricoamorへ、既にホリデーシーズンなれば、矢張り店の営業は先月末日にて終了せしとかで、今宵のみ特別にオープンせんと云うが、見渡せど街中に殆ど人影なし、まるでゴーストタウンの如きなれど、これも既にホリデーシーズンにしてW杯期間中、更に日曜日なればこそか。ホンマに客来るんかいな。
確か先日はオランダサポーターを自負せし東君、されど何故か本日行われる日本vsクロアチア戦が気になりて仕方なき様子、何処かW杯テレビ中継を流すスポーツバーなんぞないかと辺りを徘徊すれど、まるでゴーストタウンの如きにして、殆どの店がシャッターを下ろしておれば、その些々やかなる夢は無情に散りにけり。「あれ?オランダサポーターちゃうかったん?」「え?でもやっぱり今日ならクロアチアに勝てそうだからね!」「どうせ負けるって。せやな予想は0-2で日本の負けってとこにしといたろか?」「いや、今日は日本勝つって!勝てるって!絶対勝つ!日本頑張れ!」されど暫くして引き分けとの結果速報が、兄ぃのvodafone経由にて兄ぃの奥様より知らされるや、東君は「これでもう決勝トーナメント行きは絶望だなぁ…あ~あ…終わったなぁ…」と大きく落胆せし後、みつるちゃん相手に御得意の解説癖が爆裂、みつるちゃんと如何なるケースになれば日本が予選突破叶うか、端で聞いておれば大いに不毛なる儚き望みにしか思えぬが、当の2人は大真面目に語り合いし。その話の腰を折らんと「でも自分って確かオランダサポータとちゃうかったっけ?」と面白がって突っ込めば「え?あっ、うん、そうだよ!だから別に日本が決勝トーナメントに行けなくても関係ないけどね!」「確か日本の国歌斉唱で『感動するなぁ』云うてる人おったなぁ…」「誰それ?錯覚じゃない?」「確か日本負けた時、茫然自失廃人状態になってる人がおったような…」「誰それ?そいつバカじゃない?俺じゃないよ!俺はオランダサポータだからねぇ」「ホンマ?おらへんかったっけ?あれって錯覚やったんかいなぁ?」「うん、そんなバカいないよ!俺はオランダサポータだから…俺のオランダ頑張れ!」
ステージは狭くドラム2台とアンプ群を乗せれば既に立つ余地もなし。何とかセッティングを済ませ手早くサウンドチェック、兎に角店内猛烈に暑ければ既にサウナの如し。Joseに「冷たいもんでも飲みに行こう」と誘われ、てっきりビールなんぞかと思いきや、なんと此処Castellon名物horchataなる豆乳の如き芋ジュースなり。喉を通り抜ける一瞬こそ美味いと思えども、後味は明らかに芋そのものに相違なく、まるでジャガイモの汁でも飲みしかと思えれば、何とも不味し。メロン・アレルギーを持つ私と兄ぃは、何故かここでアレルギー反応、私は喉から耳の奥まで猛烈に痒くなり死ぬ思い。クッソォ~ッ、騙された!こんなもん2度と飲まへんど!東君は未だみつるちゃん相手にW杯談義。
さて会場へと戻れば、斯様なる酷暑にも関わらず、Shopzone社長みつるちゃんと部長東君は、店を広げ営業開始。私は猛烈なる睡魔に襲われれば、されど到底このサウナ然とせし会場内にては寝る事も叶わねば、涼しい風さえ吹く表通りにてウエストポーチを枕に、まるでホームレスの如く昼寝を決め込む。
前座のバンドが終わりせんせいに起こされるや、会場内へと戻りいそいそとセッティング、寝てる間に会場内は鮨詰め満員御礼にして室温湿度共に更に上昇しておれば、これぞまさしくサウナ状態。今宵は演奏時間1時間の予定なれば、まだ何とか無事に終演し得らんか。
さて演奏を開始するや、鮨詰め満員の客が大きく揺れ出し更に室温上昇。「田舎の客には速弾き」とのツアーのセオリー知っておればこそ、猛烈な速弾きを繰り出せば、客のテンションは更に上昇せしか、況してや狭い会場故に、立ち位置が客席と同じレベルなればこそ、こちらがどれ程暴れようがお構いなし、それどころか更にエキサイトせしかギターが当たる程に押し寄せて来ておれば、まるで冷房無しの夏のラッシュアワーの列車内でライヴやるかの如し。
何とか終演し楽屋へ退避、アンコールを要求されれども、こちとらすっかり脱水状態なれば、当然それに応える余裕なし。体温が上昇したきりなれば全く以て汗が止まらず、兎に角大量に水分補給を行い、外へ出て風に当たれば、ここで漸く体温も下降し始めしか。「Hi!」と声を掛けられ振り返れば、何と先達てのUSツアーにてサポートバンドを務めしThe AntracticansのギタリストDaveなり。彼はツアー終了後、NYよりそのままフランスへ飛び、フランス人の彼女の下でホリデーを楽しんでおれば、現在は2人してスペインを旅行中とか。初めてお目に掛る彼女も大層な美人なれば、これまた羨ましい限りか。
全て撤収すれば、一旦ホテルへと戻り晩飯と相成る。スペインでのライヴは、どれ程深夜になろうとも、毎度必ず終演後に晩飯を食うておれば、これもスペイン特有のスタイルか。Daveと彼女共々、Joseに連れられホテルより徒歩にてレストランへ向かう。矢張り魚介類を食さんと、Joseがいろいろ注文してくれておれど、私はイカのカルパッチョの如きを注文。赤ワインを呷りつつ、テーブルに並べられし料理を適当につまめども、スペイン料理は結構味濃く塩っぱければ、矢張り薄味嗜好の私には些か厳しけり。未だ脱水状態から回復出来ぬ東君は、コーラと水を飲みつつも、依然食欲が沸かぬと全く食さず。痛風再発を恐れるみつるちゃんも本日より禁酒宣言しており、ふと見渡せば酒を頂くは私のみ。嘗ては日本の大酒豪バンドの異名さえ戴きしAMTなればこそ、矢張り歳は取りたくないもの、されど健康に留意する自己管理能力こそツアーに於いて最も重要なれば、これもまた当然にして仕方なし。
明日のMadridの宿泊に関しメールのチェックは必須なれど、一昨日のParis到着以来ネット接続出来ておらねば、Daveが自分の滞在するホテルにて接続すればと申し出てくれ、ならばとホテルへ戻るメンバー達と別れ、Daveが滞在する高級ホテルへと向かう。無線にての接続は叶わねど、ロビーに設置されし備え付けPCにてメールチェックは叶えば、案の定Madridからは何の連絡もなし。オルガナイザーの母親が急病にて入院せし故、已む無く我々のライヴをキャンセルせざるを得じとの事なれど、既にホリデーシーズンに突入せしは勿論の事、更に最もブッキングを嫌がられる月曜日にして、況してやW杯スペインvsチュニジア戦が行われる当夜なれば、どうせ客入りが見込めぬとドタキャンしたのではあるまいか。まあキャンセルに関しては仕方なしとすれど、宿泊に関してはアレンジするとの事でありし、されどその後何の音沙汰もなければ、結局自分達でホテル探しをするしか術もなし。ツアーに於けるAMT心得の条「Don’t Trust Anybody (D.T.A.)」是れ決して忘れるなかれ。Daveに礼を述べ、9月に行われるJNMF USツアーにての再会を誓い、自分のホテルへと戻る。自室のクーラーが壊れておれば窓を全開、W杯マニアの東君に幾らか感化されしか、他に観るものもなければ日本vsクロアチア戦の録画放送をテレビ観戦、柳沢の日本サッカー史上どころかW杯史上にも残る素晴らしきシュート(なんか?)を堪能、大いに笑かしてもらいました。結果は残念ながら日本惨敗の予想に反し引き分けなれど、これにて決勝トーナメント行きは絶望となれば、これも自業自得。選手のみならず日本サッカー協会やらマスメディア、更にはそれに踊らされてる俄サポーターの阿呆共、これで少しは目が覚めるか。洗濯&シャワーを済ませ、午前4時就寝。

(2006/7/13)

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