『人声天語』 第137回「北米ホットドッグ殲滅戦線内ゲバ戦記(AMT & TMP U.F.O.北米ツアー 2007)」後編

5月3日、Baffaloの投宿先にて早朝に起床するや、「戦略的対峙段階」に突入しておればこそ、近所のガソリンスタンドへホットドッグを求めんと徒歩にて向かい、ここでホットドッグ2本を購入。1本はケチャップ&マスタードにてベーシックドッグとして、もう1本は、冷蔵庫にて発見せし葱を刻み、「レインボー大作戦犬殺し7人衆」より柚子胡椒とマヨネーズを召喚し、ネギマヨ柚子胡椒ドッグとして、ここに2本殲滅撃沈せり。

されど私が早朝より2本殲滅せりと聞き知るや、ヒガシもその後同じガソリンスタンドへ赴き、矢張り2本殲滅すれど「何が悲しくて朝からホットドッグを2本も食べんといかんのじゃ?いや、でも未だ全然余裕だけどね!」既に若干弱音を吐かんとしておれば、いよいよ「レインボー大作戦」による総決起総反攻のXデーもそう遠からざらんか。

されど夕方より突如壮絶なる下痢に見舞われれば、不覚にも治癒の為に急遽プチ断食せざるを得ぬ有様。自ら「影ドッグ」を名乗り、我々の内ゲバ戦を撹乱せんとする津山さんより、ライヴ会場の近所にて美味そうな手作りホットドッグ屋を発見との情報あれば、この好機にヒガシが更にアドバンテージを広げんとするやと思えども、意外にも私と共に敵前逃亡、さてはここに来て「ホットドッグ・ダブル攻撃」のリバウンドに苛まされ、心中では大凡ホットドッグに充分飽き飽きしているのではあるまいか。ホットドッグ内ゲバ戦争勃発の折より「戦略的防御段階」そして「戦略的対峙段階」の姿勢を貫く事で、その間ヒガシを調子に乗らせ、些か無謀なるハイペースにてホットドッグを殲滅させ、早々に食い飽きさせんとせし我が心理戦の戦果が、ここらでいよいよ現れしか。

5月4日、Detroitへの道中にて立ち寄りしガソリンスタンドに於いて、ホットドッグと遭遇するや、「戦略的対峙段階」に突入せし私は、昨日よりのプチ断食が功を奏し既に体調も見事復活、「レインボー大作戦犬殺し7人衆」よりマヨネーズと、そして先日購入せしオクラのピクルスを召喚し、先ず1本目はオクラマヨドッグとして、2本目は初心に立ち返り何も付けぬ素ドッグとして、締めてここに2本のホットドッグを殲滅撃沈せり。

一方のヒガシも「ホットドッグ・ダブル攻撃」の下、ベーシックドッグと柚子胡椒ドッグの2本を殲滅すれど、胃を押さえ思わず苦笑。「うむむ…ちょっと2本はキツかったなあ…。」ここぞとばかり影ドッグこと津山さんは、ヒガシに耳打ち。「旦那、1本10ドルで請け合いますぜ…。」されど斯様な様子を眺めては、こっそり戦況分析して愉しんでおるは、実は誰あろうJustinなり。

5月5日、Detroitにて投宿せしは、Justinの友人が大家たる安アパートの空室なれば、電気、ガス、水道こそ通じておれど、生活用品なんぞある筈もなく、調理器具の類いもフライパン1枚のみ。その友人が朝食にとパンとハムを用意してくれておれば、パンをプライパンにて焼き、ハムとオクラのピクルスを乗せ、ガソリンスタンドのホットドッグコーナーより失敬せし袋入り玉葱ピクルスとケチャップを添え、オクラハムトーストとして頂く。今や革命戦士として覚醒しておれば、元来大のパン嫌いなれど、最早トースト殲滅なんぞ屁でもなし。

Chicagoには「Chicago Hotdog」なるホットドッグチェーンがあるを知っておれば、ここはその代物を是非とも殲滅せんと思えども、Chicagoへの道中にて遭遇する事叶わず。晩飯はライヴ会場Empty Bottle隣のレストランよりのデリバリーにて、チキンサンドウィッチを殲滅撃沈せり。元ベジタリアンのJustinは「ニワトリこそこの世で最も愚かな生き物だ!俺はそんなニワトリが大嫌いだから、あいつらを皆殺しにする為に、チキンサンドウィッチを食い続ける!」と、毎度チキンサンドウィッチを貪る有様、どうせ皆殺しにせんと思うならば、肉のみならず、内蔵も皮も軟骨も食ろうて頂きたい故、この男を是非とも日本の焼鳥屋へ案内したきものなり。 
今宵はEmpty Bottleから3軒隣のPlastic CrimewaveことSteve宅に投宿の予定なれど、この界隈は非常に治安悪く、昨年も防犯対策としてJustinがバンにて眠りておれど、深夜にスペアタイアを盗まれる始末、今宵は私とJustinの2人体制にてバンにて眠る段取りなれど、そのJustinはバンの鍵を持ったまま、ライヴ会場にて意気投合せし女性と共に夜の闇へと消えてしまえば、結局私独りがバンにて眠る顛末。

5月6日、空腹にて目覚めれど、未だJustinは戻って来ず、さりとて私はバンの鍵を持っておらぬ故、バンより気安く離れる訳にもいかず、また皆が投宿するSteve宅を訪れる訳にもいかねば、退屈凌ぎにここまで購入せしレコード群を眺めるに明け暮れし。11時頃に漸くJustinが戻って来れば「彼女とホットドッグを作るから、皆でホットドッグパーティーをやろう!」何を企みしかと思えば、なんちゅう阿呆さぶり。10分で戻るから皆を呼んで来てくれとの御言葉なれば、Steve宅へ出向きて皆を招集し、Justinの帰りを待つ。 ヒガシは、Steve宅の冷蔵庫にてソーセージとドッグパンを発見せしとかで、兄ぃを立会人として既に朝飯としてホットドッグ1本を殲滅せしとか。「でもまだまだ全然余裕!ホットドッグもっと食べた~い!」彼のその発言は、まるでもうホットドッグ限界点を間近を迎えんとするにあたり、何とか私に悟られまいとする虚言にしか聞こえず。
Justinのお膳立てによるこのホットドッグパーティーを絶好の好機と見るや、なれば満を持して今こそ「戦略的総反攻段階」へと移行せん。 鍋を抱えしJustinが、女性と共に現れるを見るや、一同思わず絶句。「えっ?もしかしてあの鍋にソーセージが…?」鍋の中を覗けば、芋を洗うが如く大量のソーセージが犇めき合っており、ヒガシの顔色が一瞬蒼ざめしを見逃さじ。実はEmpty Bottleのスタッフなる彼女が、我々一同を店内に導き、ステージ上にテーブルを設置、何と大袈裟にも照明さえ点灯、シェフJustin自らドッグパンにソーセージを挟み、一人ずつに手渡せば、これにて「ホットドッグパーティー」の幕は切って落とされし。

「戦略的総反攻段階」へ突入し、いよいよヒガシに徹底的に鉄槌を下さんと思う私は、ケチャップのみを添え、食欲増進を図る必殺兵器タバスコを召喚、無言にて1本目を瞬殺殲滅撃沈せり。更に黙って指を2本立ててアピール後、矢継ぎ早に2本目をも殲滅撃沈せり。斯くなる私の姿にヒガシは些か戦慄を覚えし様子なれば、更に続いて指を3本立て無言にて3本目をも殲滅撃沈せり。ヒガシも負けじと2本殲滅すれど「朝もホットドッグ食ったからなあ~、う~ん、ケチャップとマスタードだけじゃあ味に飽きるなあ…、それに俺は飲み物がないと厳しいなあ…」なんぞと弱音を吐く始末なれば、此処こそヒガシの息の止め処と、ヒガシが水を求めバーカウンターへ赴く隙に、無言にて指を4本立て4本目も殲滅撃沈せり。「え~っ!4本目?負けんぞ~!でもJustin、俺にはぶっといソーセージを挟んで、まこやんには細いの挟んでるような気がする…これは陰謀じゃないのか!」思わぬ苦戦を強いられしヒガシは、ここで「J=K(Justin Kawabata)連合」なる権力の謀略論を展開する悪足掻きぶりなり。影ドッグこと津山さんは、ここで暗躍せんと「旦那方、1本10ドルで引き受けますぜ!」明らかにこの場での勝利を諦めしヒガシは「俺は今朝も1本殲滅してるし、この辺で止めとこうかな…」と、敗走の様相を呈しておれば、早朝より大いに空腹なりし私は、斯様な影ドッグの甘言教唆にも動ずる事なく、この好機に完膚無きまでヒガシに鉄槌を下さんと思えばこそ、無言にて指を5本立て5本目さえも殲滅撃沈せり。「うそ~!5本目!仕方ない…もう1本いっとくか…」既に苦悶の表情伺えるヒガシも4本目を殲滅すれど、これにて戦意喪失タップアウト。ここでヒガシに徹底的に脅威を与えんと思えば、続けて無言にて6本目を殲滅撃沈せり。されど流石にホットドッグ6本は、些か無謀にして玉砕戦法なれば、こちらの胃も大いにダメージを食らいしか、これにて私もタップアウト。この様子を眺めしSteve曰く「Crazy!!!!!」結局ヒガシが4本、私が6本殲滅すれど、今朝1本殲滅せしヒガシとの差は、1本分縮まりしのみにして、ここまでの総殲滅本数は、ヒガシが25本に対し私は21本なり。されど「Justinめ、いらんことしやがって!」と、文句を垂れる辺り、彼に与えし精神的ダメージは相当なるものと推し量れれば、これぞ当初よりの私の心理戦の戦果にして、いよいよ「レインボー大作戦最後の総反攻」の機も熟せしか。


 

Minneapolisへの道中にて、ホットドッグマシーンに遭遇すれど、何しろホットドッグの腹保ちの良さは然るべきにして、流石に双方ともここは見てみぬふりを決め込むより仕方なし。

5月7日、Minneapolisの投宿先にて、昨夜遅くまでそこの住人達やThe Mammatusのメンバー達と飲み明かせしヒガシは、未だソファーにて爆睡しておれば、私はいよいよ「レインボー大作戦最後の総反攻」を遂行せんと、その隙に近所のガソリンスタンドへ赴くや、ホットドッグマシーンを発見、ベーシックドッグとチリドッグのホットドッグ2本と、更にホットドッグ用ソーセージ8本入り大袋とドッグパン10本入り大袋を購入せり。丁度朝飯を作らんと台所に立つ津山さんと兄ぃを立会人として、先ずはベーシックドッグとチリドッグの2本を朝飯として殲滅撃沈せり。

さていよいよ「レインボー大作戦最後の総反攻」の機も熟せば、購入せし8本のソーセージを大鍋にてボイルし、ドッグパンの上に順次並べる。ここで「レインボー大作戦犬殺し7人衆」全員を召喚。冷蔵庫よりレタスを発見すれば、これは良き塩梅とトッピングとして利用させて頂かん。先ずは、コチジャンと焼肉のタレを用いての「コチジャン焼肉ドッグ」、マヨネーズととんかつソースを用いての「お好みドッグ」、マヨネーズと柚子胡椒を用いての「柚子胡椒マヨドッグ」の3種を作成。隣にて兄ぃがスパゲティーを転用し焼きそばを作っておれば、少々お裾分けして頂き「焼きそばドッグ」を、更に津山さんが胡瓜を塩揉みし漬け物を拵えておられれば、それもお裾分けして頂きタバスコを打っ掛け「ピリ辛漬け物ドッグ」を作成、そしてしんがりを務めしは、練りしそ梅を用いての「しそ梅ドッグ」なり。「しそ梅ドッグ」なる珍妙なる逸品は、ヒガシも是非とも食したい処であろうと、彼の分も1本作成せり。また焼きそばお裾分けのお礼にと、兄ぃにソーセージとドッグパン各1本を進呈し、コチジャン焼肉ドッグを試食して頂けば「あっ、う~ん、これは美味いよ」との御言葉も頂けり。これらをアルミホイルにて包み本日の弁当とすれば、これにて「レインボー大作戦最後の総反攻」開始まで、即ちヒガシに対する全面無制限戦争への突入は、いよいよ秒読み状態と相成れり。

斯様な企てを何も知らぬヒガシが漸く目覚めるや、昨朝の彼の如く卑怯なる抜け駆けは欲さぬ私なれば、近所のガソリンスタンドにてホットドッグを購入し、既に2本殲滅せし事実を伝えし。当然の如く彼は、引き続き4本のアドバンテージ維持を図り、ここで私と同じく2本を殲滅せり。 
さてこれよりロッキー山脈を越えカナダVancouverを目指す、2日半に及ぶ長距離移動へと突入せり。途中立ち寄りしガソリンスタンドにて、ヒガシにとっては不運にもホットドッグとの遭遇叶わず、結局マクドにて昼食と相成れば、ここで遂に「レインボー大作戦最後の総反攻」の正体を明かすや「やっぱりレインボー大作戦って弁当やったかぁ…、そう違うかなとは思ってたけど、まさかそんなにたくさんのホットドッグとは予想してなかった…」狼狽するヒガシに対しここで引導を渡さんとする私は、持参するホットドッグ群より、しそ梅ドッグを除く5本をペロリとならぬテロリと一気に殲滅撃沈せり。これにて私の総殲滅本数が28本となり、遂に常にリードを維持せしヒガシの総殲滅本数27本を越えれば、この思いもかけぬ事態に彼は「なにぃいいい!ここまで築き上げて来たアドバンテージがぁ…、くそぉ、ホットドッグさえ売ってたらなあ…」と、悔しがる事頻りなれど、私の「レインボー大作戦最後の総反攻」の前に恐れを為したか「なんかもうホットドッグ戦争なんてどうでもよくなってきたなぁ…それよりも自分の目標だった30本殲滅を達成したら、もうそこで止めようかな…」と、意外にも呆気なく戦意喪失し、一方的な「内ゲバ停戦宣言」とも取れるビビリズム的発言、臆したかヒガシ!この戦況を眺めし影ドッグこと津山さん曰く「敵に回すとホンマ恐ろしい男やで!」
されど敵がおらねばこちらもこれ以上の内ゲバ戦は不毛にして、そもそもヒガシの云う処の「三冠」なんぞ無関心なれば、ホットドッグ30本殲滅を以て、このホットドッグ殲滅戦を終焉とせん事を提言、今や完全に戦意喪失せり彼が受諾せしは当然にして、ならば未だ殲滅叶っておらぬ本場カナディアン・ホットドッグをVancouverにて殲滅して幕を引く事とす。これにてホットドッグ内ゲバ戦争は事実上終戦、これよりは再び世界味覚革命戦士として共に戦う事を宣誓し、ここに反革命ヒガシは再び世界味覚革命戦士東同志と相成れり。
この夜は投宿せしモーテルにて、2人仲良くしそ梅ドッグを殲滅撃沈せり。このしそ梅ドッグなる代物、美味いか不味いかの二極論的味覚ならんと想像しておれど、これがなかなかの美味にして、しそ梅の香りがソーセージの諄さを一蹴、素晴らしきミスマッチなれば、世界中の製パン業界へ是非とも提言したき逸品なり。

5月8日、ロッキー山脈越え中に立ち寄りしガソリンスタンドに於いて、東同志は29本目となるホットドッグを殲滅撃沈、いよいよ最後の1本たるカナディアン・ホットドッグを目指すのみ。

一方で結局全く出番なく終わりし影ドッグこと津山さんは、中身の野菜が豊富と云う理由から、移動の際はひたすらSubwayの巨大サンドウィッチに明け暮れておられれば「もうあかん、限界や…もうSubwayなんて見たくもないわ!」と、手前勝手に自爆して果てておられし。ホットドッグ殲滅戦停戦中なれば、私は今回未だ殲滅しておらぬアメリカ帝国主義的3大ジャンクフードのひとつに数えられるフライドチキンを標的とし、練りしそ梅やオクラのピクルスを召喚し連続徹底殲滅撃沈を果たせし。
晩飯はJustinの要望もあり中華料理店へ、されど看板には中華料理以外に「Japanese, American, Italian」とも記されておれば、結局何料理屋やねん。ビュッフェスタイルのディナーなれば、確かに中華料理の他に、寿司やら味噌汁やらも並び、ピザもスパゲッティーもあれば、フライドチキンやらフライドポテトも並べられており、成る程看板に偽りなしか。ビュッフェの場合、ついつい貧乏人根性を以て食い過ぎる嫌いあれば、今回のツアーにて掲げし「食い過ぎず、飲み過ぎず、夜食厳禁」を厳守せんと、果たして一体如何にして巻きしかと疑問抱かせし奇妙なペイズリー形の巻寿司に始まり、ムール貝やら海老等のシーフード、焼きそば、葱玉子スープ、そして酢豚らしき代物等を殲滅撃沈せり。偏食家東同志は、ここでもその偏食家ぶりを大いに発揮、大好物の蟹の足を見つけるや「10ドルちょっとで蟹が食い放題だ!」と歓喜、他の品々を一切無視し、只ひたすら山盛りの蟹の足を貪り啜る始末にして、挙げ句「うむむむ…蟹もこれだけ食べると有り難みないなあ…うぷっ…気持ち悪い…」当たり前やろ…。

5月9日、カナダ国境手前にあるガソリンスタンドに於いて「Canadian Jumbo」と銘打たれし巨大ソーセージ群が串刺しになりて回るホットドッグマシーンを発見、されど我々は本場のカナディアン・ホットドッグを求めておれば、ここは戦略的撤退を決め込み、敢えて手作り巨大チーズバーガーを殲滅撃沈せり。 
さてVancouverにてホットドッグ屋台の本場カナディアン・ホットドッグを殲滅せんと思えども、ライヴ会場Richards on Richards界隈には屋台の影もなく、またしても日本料理屋が軒を連ねる有様なれば、これは既に大東亜美食共栄圏を訴える世界味覚革命同盟によるヘゲモニー獲得は充分進行中と思しきか。Subwayにて自爆せし津山さんの希望もあり、皆で日本料理屋の暖簾を潜れば、これは明らかに華僑による贋日本料理屋にして、注文せし熱燗は燗のし過ぎにてアルコールが半ば飛んでおり、揚げ出し豆腐は揚げし豆腐にテリヤキソースを施せし代物にして、茄子田楽も揚げられし巨大茄子に田楽味噌ならぬ唯の田舎味噌を塗りたくりし代物なれば、見事にも全品大いに不味く大外れ、矢張り華僑による日本料理擬きは日本料理不信さえ生み出さんとする反革命的料理の類いなれば、徹底的な自己批判を求めねばなるまい。

5月10日、再びアメリカへ戻らんと国境を目指す道中、カナディアン・ホットドッグを求めんと思えど、結局遭遇叶わぬまま国境へと到着。ならばせめて昨日遭遇せし「Canadian Junbo」なる贋カナディアン・ホットドッグ殲滅を以て妥協するしか術もなしと、昨日立ち寄りしガソリンスタンドへ。串刺しにされ回る巨大ソーセージに、トッピングのピクルスと刻み玉葱を添え、これにて今回のホットドッグ殲滅戦終焉を意味する30本目を殲滅撃沈せんとす。東同志と共に、この巨大カナディアン・ホットドッグを眺めながら、ここまでの熾烈なる内ゲバ戦の経緯を思い返してはお互いの健闘を讃え合い、 感無量にてこの巨大なる代物をここに殲滅撃沈、これにて約4週間に渡りしホットドッグ殲滅戦も終戦せり。


されど斯様に熾烈なるホットドッグ殲滅戦を遂行すれど、果たして我々が世界味覚革命戦士として、アメリカ帝国主義的ジャンクフード世界侵略戦線への潜入及び完全殲滅により、アメリカ人民をオルグしヘゲモニー獲得を図ると云う使命は全うし得しか。単にJustinと云う一人のアメリカ人を面白がらせしのみに留まりしかと思えば、これこそ戦略上の大失敗による大敗北と云わずにはおれず、アメリカ帝国主義的ジャンクフード世界侵略戦線いと恐ろし。津山さんよりBurger Kingが来たる6月より日本に再進出するとの話も伺い知れば、これぞアメリカ帝国主義的ジャンクフード世界侵略戦線による日本本土空爆作戦に他ならず、何しろアメリカ帝国主義的ジャンクフード世界侵略戦線の急先鋒にして最大の反革命マクドにより、日本人のみならず全世界人民が無防備にオルグされし状況を考慮すれば、この業界第2位のBurger King再進出は、何としても不成功に終わらさねばならねども、これを機に共倒れなんぞしてくれぬかとも空しく願う処。その独自の食生活からカプサイシン多量摂取により肥満とは無縁と云われし韓国に於いてでさえ、マクド等のアメリカ帝国主義的ジャンクフード世界侵略戦線が齎せし食生活の変化により、今や若年層の肥満が社会問題になりしと聞けば、世界人類家畜化計画の魔手はアジア圏をも手中に収めしか。
一方で空前の大ブームとなりつつあるダイエット商品「Billy’s Boot Camp」も、これを以て確実に痩せ得るとの幻想を与える事で、アメリカ帝国主義的ジャンクフード世界侵略戦線が齎せし食生活の変化への危機感を希薄化せんとのアメリカ帝国主義的超重量級養豚料理戦線の陰謀に他ならず、今やインターネットやテレビの通販番組を介しての大規模なる情報戦にまで展開されしが実状か。 
ならばせめて日本食好きとして有名なるMadonnaの専属シェフ西邨まゆみ女史が提唱するマクロビオテック料理なんぞを以て、既に反革命にオルグされし全世界人民を啓蒙し反攻すべきか。先ずは「日本料理はヘルシー」なんぞと云う幻想を以て情報戦を展開する一方で、「日本料理は高級料理のイメージがある故に金になる」と、出鱈目な贋日本料理にて荒稼ぎしつつ、日本料理の信頼を失墜させる華僑共による反革命的日本料理屋へ完膚無きまで鉄槌を下し、更に徹底的な自己批判を求め、日常的大衆食としてのお惣菜等を紹介させる事こそが重要なり。また同じく金儲けの為に日本料理屋を営む韓国移民達に、今こそ韓国料理に対する尊厳と誇りを回復させ、全世界的に韓国料理屋を展開させる事も同時に行えば、特にメキシコ料理やタイ料理等の刺激物嗜好が強いアメリカ人民に対し、オルグを行うは難しき事にあらざらんと推察し得る。されど何よりも当の日本人民こそが食生活への更なる根本的意識改革を行うべく徹底的な自己批判を行う事こそ最優先事項なれば、メタボリックシンドロームなんぞが流行語に選ばれ、食生活を含む生活習慣の見直しが叫ばれつつも、メガマックなんぞと云うアメリカ帝国主義的超重量級養豚料理戦線の急先鋒が空前の売り上げを記録せしとは、これこそ世界人類家畜化計画による末期的飽食依存症なるを自覚すべきにして、今こそ世界侵略を狙うアメリカ帝国主義的超重量級養豚料理戦線に対し、全国民一丸となり宣戦布告すべきなり。

5月14日、Seattle、Portland、San Franciscoと西海岸を順次南下し、いよいよ本日はサポートバンドThe Mammatusの本拠地たるSanta Cruzにて千秋楽なり。最後はThe Mammatusのメンバーも入り乱れての大団円となり、さて打ち上げは彼等が共同生活を送るスタジオ兼住居にて行われし。彼等が我々の為に構えしは、Santa Cruzが誇るローカル・ソーセージ各種のバーベキュー・パーティーなり。美味そうな匂いと共に次々に焼き上がるソーセージを、ドッグパンに挟み、玉葱やトマト等がふんだんに使われし手製のピリ辛ソースを添えて頂けば、これは大いに美味なり。今回30本のホットドッグ殲滅を果たせし私なれど、このソーセージの美味さは格別にして、流石彼等が自慢するだけの事はあり。食に対し大いに保守派を自負する津山さんにさえ「これはホンマ美味いわ!」と云わせる程にして、晩飯を食いそびれ空腹と云うこともあり、夜食厳禁の戒めを破り、私は結局この特大バーベキュー・ホットドッグを3本も殲滅撃沈せり。東同志は「もうパンはいらん」と、ソーセージのみを酒の肴に齧っておれば「ちょっと塩っぱいなあ…。」成る程そもそもホットドッグとして食らう事を想定し、ソーセージ自体の塩加減が強めに施されしか。

The Mammatusのメンバーが米も炊いておれば、何とこの米はホットドッグのトッピングにして、いきなりドッグパンにソーセージと米を挟みて食らう様を見るや、これに驚愕せし私は「え~っ!パンに米を挟むなんて信じられへん!」確かに米を主食とする我々日本人にとっては、これは暴挙以外の何ものでもなく、到底信じ難き光景なれど、彼等曰く「そんな不思議がる事じゃない、同じ炭水化物同士だし別におかしくないだろ?」云われてみれば、西洋人にとっては主食たるジャガイモを、ポテトサラダにしてサンドウィッチにする事もあれば、ごはんのおかずとして食らう事もある上、焼きそばパンや焼きそば定食、ラーメンライスなんぞも、結局は炭水化物同士の組み合わせなれば、況してや米は主食にあらず野菜の一種と捉える彼等の云い分、確かに一理あると納得せざるを得ぬか。

5月15日、The Mammatusに別れを告げ、今回の北米ツアーの出発点たりしLos AngelsのBruce邸を目指す。大東亜美食共栄圏世界味覚革命同盟シンパなるBruceは、案の定特製カレーライスを仕込みて我々の到着を待ってくれており、更に焼酎やら冷奴やらで持て成してくれれば、焼酎は日本酒と異なりスピリッツ類として分類される故、輸入される際に関税率が高く、またウォッカやテキーラ等のアルコール度数の高いスピリッツが好まれる故、価格が高価なれどアルコール度数が低い焼酎は至って海外に於いて知名度が低く、入手も些か困難なるを知ればこそ、彼のその心遣いに感謝すると共に、ここ最近は、以前の如く無闇矢鱈と日本食の禁断症状に苦しめられる事もなけれども、矢張り焼酎の美味さには思わず感無量。
ハードリカーと呼ばれるアルコール度数の高い酒をストレートで飲みがちな欧米の飲んだくれ共に、焼酎を紹介せし経緯幾度かあれば、当初は「味がない」「薄過ぎる」なんぞと文句こそ垂れられれど、次第に「飲み易い」「翌朝の調子が頗る良い」等と好評を博すは常にして、最終的には「何で日本はもっと焼酎を輸出しないんだ!」等と、こちらが叱責さえ食らう始末。
そもそも所謂「晩酌」と云う小鉢等の酒の肴をつまみつつ酒を飲むと云う習慣のない欧米なれば、勿論「酒の肴」と云う概念も持ち合わせる筈もなく、唯ひたすら酒を呷るのみなれど、晩酌に伴う食文化を彼等に啓蒙すれば、自ずからあの食に対する情緒が欠落せしコース料理なんぞと云う食習慣が如何に不毛たるかを知るに相違なく、なればいずれは一汁一菜若しくは一汁三菜の如くバランスを考慮せし食習慣さえも啓蒙し得らん。また同じく焼酎が愛飲される韓国に於いては、酒を注文すれば酒の肴は無料サービスにて付いてくる程なれば、今こそ日韓が協力し、焼酎と酒の肴文化を全世界に向けオルグする事こそ、世界味覚革命への道に他ならぬ。されど日韓の居酒屋や小料理屋やらが全世界侵略を果たせども、禁煙天国たる欧米諸国に於いては、晩酌しつつ喫煙する事叶わねば、我々愛煙家にとっては地獄の沙汰にして、全世界の嫌煙運動活動家共に対するテロ攻撃も同時に行わねばならぬか。

斯くして世界味覚革命成就への道いと遠し。そもそも海外ツアーに於いて、激不味料理に遭遇する事幾度と知れず「言語はなんぼ違ってもええから味覚は同じであってくれ」と云う切実なる想いこそが、世界味覚革命へ我々を奔走させれども、今や日本食禁断症状さえ克服しておれば「料理なんてなんぼ不味うたかて、日本に帰ったら美味いもん食えるって我慢も出来るけど、言語が違うのはええ加減往生しまっせ!」

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