『人声天語』 第141回「日伊共同戦線欧州道中股栗毛(AMT & TMP U.F.O.欧州ツアー2008)」其之七

11月22日(土)
午前8時半起床。朝飯を食わんとホテルの厨房を拝借。先日の日伊交歓晩餐会にて残りし白菜があれば、カップ麺のキムチラーメンの具に加えんとす。キムチラーメンのカップに白菜と調味料棚にて発見せし唐辛子をぶち込み、ここに熱湯を注げば完成かと思えど、白菜から水分が出ればスープが若干薄まりて、キムチ特有の辛味と酸味を足す為にハバネロソースを召喚、これにて完成。

Davide曰く、何と昨夜Lucaが100ポイント獲得せり。Luca本人を見れば一目瞭然、何とも至福感と満足感に満ち溢れし面持ちなれど、Davideは御親切にもあれから壁に聞き耳を立て、隣のLucaの部屋の様子を夜通し伺いしとか。さて我々日本勢は、AMTモテ男ランキングNo.1の東洋之の双肩に全てが託されておれど、未だポイント獲得の可能性の兆候さえ見えず。そもそも我々はヘッドライナーにして、終演後にナンパする時間なんぞある筈もなく、況してや連日連夜1時間半以上に及ぶライヴにてホタえ捲っておれば、ナンパなんぞに惚ける気力も体力も既に残ってはおらじ。一方イタリア軍団は、現在ポイントランキング・トップのKoppaを筆頭にLucaが続けど、Koppaは勿論更なるポイント獲得に連日御執心、Davideも今夜イタリアから彼女が逢いに来るとかで、彼女との逢瀬さえ済めばいよいよポイント獲得に臨むとか、勿論昨夜延々とSkypeにて彼女と歓談せしFrancescoも連日好機を伺うは当然にして、日本vsイタリアの戦況は、まるでサッカーの試合の如く、日本勢の勝利の可能性は限りなくゼロに近し。
ホテルの食堂に、朝飯としてパンやらハムやらチーズやらが用意されれば、菓子パンとオレンジジュースとコーヒーを所望、更に弁当として玉子ペーストとハムにてサンドウィッチを拵えし。

午後1時、一路Eindhovenへ向け出発。今朝より背中に痛みを抱えておれば、如何なる姿勢に於いても大いに難儀極まりなけれど、Koppaは本日も途中休憩なしにて一気に走破すれば、狭き車内にては為す術もなく、ひたすら痛みに耐えるのみ。 午後4時、今宵の会場Effenaarに到着。今宵はオランダの超有名バンドKaneが、同会場内の大ホールにて演奏とか。 機材搬入後、津山さんとレコード屋を求め会場界隈を散策、オランダに於いては殆どの店が午後5時から6時に掛けて閉店する故、漸く発見せしレコード屋も既に閉店しておれば作戦変更、ツアー後半へ向け食糧を補充せんとスーパーへ赴き、即席ラーメン3袋、鯖缶2個、ホットソース2本を購入。
楽屋へ戻れば、イタリアから遠路遥々訪ねて来しDavideの彼女を紹介され、またテーブル上にはケータリングとして大量のパンやらハムやらチーズやらポテトチップスやらが用意されており、Davideと彼女のいちゃつく様を肴にビールを呷る。

晩飯は食堂にて、夥しき人数のKaneのクルー達と共に、ハンバーグ擬きの如きと野菜のトマトソース煮とサラダとポテトを頂けば、まるで私が忌み嫌うフェスティバルの食堂の如き雰囲気なり。料理の方は可もなく不可もなく、当然ハバネロソースを召喚せしは云うまでもなし。津山さんは「Kaneは何処じゃ?」と探しておられれど、オランダ国内にてCD売り上げ百万枚以上の超有名バンドらしければ、斯様な場所にて席を共にする筈なからん。勿論Kaneのメンバーとは顔を合わせる筈もなし。そもそもMogwaiにATPに招聘されし折ですら、メンバーの誰もがMogwaiを知らず、私と東君に至っては「Mogwaiって誰?」なんぞ宣う始末にて周囲を唖然とさせ、何しろMogwaiの写真も見た事なければ、ATP会場にても誰がメンバーかも判らず終いにて、津山さんに至っては「何で挨拶に来えへんねん!」なんぞと宣う有様なりし。まあポストロックなんて全然興味あらへんから、別にどうでもええけど…。今宵はオランダのサイケバンドGomer Pyleが前座を務めれば、彼等曰く「Kane?ハハハ!最低最悪のロックバンドだ!」今や世界中何処に於いても商業的に大成功を収める超人気バンドとは、何故斯様にどうしようもない糞以下の、既に音楽とさえ呼ぶも憚られる代物を垂れ流すのか。されどJ-POPの類いより酷き音楽なんぞ世界中に果たして存在するのやら。最悪なんぞと語るもおぞましき程なれば、ホンマ日本のメインストリーム音楽シーンなんぞ救いようもなけれども、全く無関係なれば関知する必要もなからんか。されど傍から見れば、我々さえもその末席に位置すると誤解もされんと危惧すればこそ、J-POPはROCKにあらず、ROCKはJ-POPを含まずと知れ。
さてKaneファンらしき若き女性がエントランスロビーを埋め尽くしておれば、例によってイタリア軍団は大いに発奮、こちらにも女性客が大挙して詰め掛けると期待せしらしけれど、矢張りAMTの客層たるやほぼ9割以上が男なれば、大いに失望せしか。ステージにて津山さんは「Kaneじゃなくてすみません」と客に謝れば、満場の客は大爆笑。
午前2時前、会場より徒歩30分にてホテルへ、今宵も勿論東君と同室。夜食として、鯖おろしポン酢ラーメンを食さんと思えば、洗面所の湯にて麺をふやかし、続けて白菜も湯通しし、ふやかせし麺と白菜を合わせ、そこへ大根おろしを添えポン酢をぶっ掛け、鯖のオイル漬けをその上に盛り付ければ完成。これは大いに美味、鯖と大根おろしのコラボレーションは感涙もの、白菜も湯通ししておればポン酢の馴染み具合も程良く、これで麺にコシがあれば完璧と云えるやもしれぬが、敢えてそこまでは望むまい。

室内は尋常ならぬ寒さにして、これでは外と然して変わらぬか。東君がヒーターのスイッチを入れし筈なれども、全く暖かくなる気配さえ無く、布団も大いに冷たければ、自分の体温にて先ずは布団を温めねば到底眠る事なんぞ叶わず、布団の中で迂闊に僅かでも動けば、折角温めし部分が動いてしまい、また布団を温め直さねばならぬ有様。隣室にはDavideと彼女が投宿しておれど、余りの寒さ故にその様子を盗み聞きする気力さえなし。午前2時半、寒さに打ち震えながらもエロチェンネルを観賞しつつ就寝。

 

 

11月23日(日) 
午前6時半起床。余りの寒さに安眠出来ず。極寒に打ち震えつつも、意を決し階下のトイレへ赴けば、廊下の方が遥かに暖かく、これはどうやら我々の部屋のみが極寒状態にあるを、この時初めて伺い知るものなり。さて朝飯を食らわんと、兄ぃの部屋へ携帯電気調理器を借り受けに伺えば、室内はまるで初夏の如く暖かく、我々の極寒なる部屋とは大違い、自室へ戻るや今一度ヒーターのスイッチを入れ直せば漸く稼働せしか、次第に僅かながらも暖かくなり、結局我々の不手際にて一晩中寒さに打ち震える羽目となりしか。されどホテルならば、予めヒーターを稼働し部屋を暖めておいて然るべきにあらずや。朝飯はキムチラーメンを食さんと思い、具増量を図り白菜を投入、更に味の素を投入すれば、これにて具増量キムチラーメンの完成。

午前11時チェックアウトし、Davideの彼女も同乗の上、一路Groningenへ向け出発。今日もKoppaは休憩なしで一気に走破の様子、次第に外は雪景色となって来れど、決してヒーターを稼働させぬKoppa故、車内は既に凍てつく寒さなり。
午後4時半、今宵の会場Veraに到着。Veraは歴史ある有名クラブとかで、楽屋や食堂等そこら中にその歴史を感じさせるライヴポスター等貼られ捲っておれば、古くはU2やKilling Joke等に始まりNirvanaやDinosaur Jr.、日本勢としてはZeni Geva、Boredoms、Melt Banana、少年ナイフ、ギターウルフ等の海外ツアー常連組からあふりらんぽのポスターまでも見受けられし。イタリア軍団は有名バンドのポスターなんぞ見つけては大いに盛り上がっておれど、80年代以降の音楽に全く思い入れどころか興味さえ持たぬ我々は一切関知せず、と云うより残念ながら殆ど知りません。
楽屋には、ケータリングとして山積みされしビールこそあれど、スナック類一切無ければ、昨夜楽屋より失敬せし大量のパンやらハムやらチーズやらが、ここで見事に再利用されし。クラブより搬出退出するに際し、楽屋に用意されしケータリングの残りは全て失敬撤収する事こそ、どさ回りツアーの基本中の基本なり。特に日本人なればこそか、ミネラルウォーターなんぞに金を払うは不毛に感じられれば、無料にての水の確保は命題にして、またアルコール類も同様なり。
晩飯はスタッフの手料理なれば、またしてもカレーなり。今宵は一見かなり本格的なカレー3種にして、豆と牛肉のカレーは欧州流カレーにしては美味なる方なれど、矢張りハバネロソース召喚は当然、チキンのココナッツミルクカレーは例によって味が無く、驚くべき一品は果物のココナッツミルクカレー、何でもベジタリアン用らしけれど何とも不思議なる味にして、決して激不味くはなけれども、林檎と蜂蜜トロ~リ溶けてるどころにあらねば、後味が妙に甘ったるく、矢張りカレーの具に桃はあかんやろ。

女性スタッフが数名おれば、Francescoはその中のひとりに御執心、何でも偶然彼女の着替を目撃せしとかで、好色イタリア人魂に更なる火が点灯されしか。
国内問わずライヴ会場に於いて、大抵私の前にはマニアックなヒッピー親爺やらギターフリークやらが陣取りて、女性客は東君と津山さんの前に陣取るが常なれど、 今回のツアーに於いては、私の前に巨漢の女性を見掛ける事しばしばなれば、巨漢の女性を見掛ける度に津山さんと東君は「おっ、ありゃマコヤンのファンやで、絶対!」と、散々私をからかえど、今宵は東君の真ん前に巨漢の女性が陣取っておれば漸く逆襲叶いしか。そもそも私には女性ファンなんぞ殆どおらぬ様子にして、精々若かりし頃「マダムキラー」と呼ばれる程に矢鱈と中年女性には人気あれど、今や自分自身が四十路となれば、斯様な事も皆無にして、大抵はマニアックな男性ファン若しくは終演後に私の機材なんぞチェックするギターフリークの類いなり。何故女性ファンがおらぬのかと思えば、先ずはこの身成にして、ステージ上にて悪態をつくは文句は垂れるは、況してやあれ程暴れ捲り挙げ句ギターまで破壊しておれば、凡そ「恐い人」と誤解されても仕方なしか。更に打ち上げに於いては毒舌爆裂、嫌われる事はあっても好かれる事なんぞある筈もなしとは当然か。一部の外国女性達からはイケメンなんぞと煽てられれど、Shopzoneは津山社長と東部長に任せっきり、私は大抵楽屋にて転寝若しくは飲んだくれておれば、客と会話する機会も殆どあらざりて、今更ハッピーハプニングなんぞあろう筈もなし。
終演後、会場内の宿泊施設に投宿、私と東君はLucaと同室。Davideは今宵も彼女と同室なれば、当然熱き夜を過ごされん。AMT早寝組の兄ぃと津山さんは消灯就寝済みの御様子にして、今宵こそ何とかポイント獲得せんとするFrancescoは、例の女性スタッフに対し奮闘すれど結局報われじとかで、Koppaの友人と云うこの界隈にてバーを営む中年女性に導かれ、Koppa共々彼女のバーへ出撃せりとの事。寝酒にビールを呷り、午後3時半就寝。

 

 

11月24日(月) 
午前5時45分起床。未だ全員が寝静まる中、洗面所へ向かい朝飯を拵えんとす。シャワーの湯は充分に熱けれど、洗面台の蛇口から湯は出ぬ様子なれば、廊下に設置されるコーヒーメーカーにて湯を沸かし、何とかラーメンをふやかす作戦を取るしか術もなし。コーヒーメーカーのドリップ部分にコーヒーの出涸らしなんぞ無き事を確認後、先ずは充分ならんと思える程の水を注ぎ、続いて即席ラーメンの麺のみを例のプラスティック製御椀に入れ、本来出来上がりしコーヒーを受けるポットを置くべき場所に設置、さてスイッチを入れれば後は湯が御椀に落ちて来るを待つのみ。暫くすると御椀に入れられし麺の上に熱湯が注がれ始め、御椀一杯分の湯が溜まれば即蓋を閉じ、後は麺がふやけるを待つのみ。どうやら予め水を注ぎ過ぎしか、未だ熱湯が落ちて来れば、ここはすかさず味噌汁でも啜らんと即席しじみ汁をも拵え、麺がふやけるまでの間、そのしじみ汁に舌鼓を打つ。外国製即席ラーメンは、ラーメンとして食さんと思えば、製麺技術の稚拙さから麺はふやけ過ぎコシなんぞ皆無、スープも何とも云えぬ不味さ漂い食すに耐えぬ代物が多けれど、添えられし粉末スープを使わず麺のみを使わんとするや、その製麺技術の悪さ故にカップ麺の如く湯にて簡単にふやける故、鍋にて煮る事叶わぬ場合には大いに重宝するものなり。麺をふやかせし湯は麺から出し油が浮いておれば一旦捨て、つゆ用にと再びコップ一杯分の湯を注ぎ、そこに永谷園のお吸物の素を加え、麺つゆを僅かに注げば、これにて松茸風味ラーメンの完成なり。前回この永谷園のお吸物の素を用いラーメンを拵えし際は不本意なる結果に終われども、今回は思惑通り見事成功にして、この松茸風味の香しさたるや感涙もの、斯くの如きを以て安直に贅沢気分を味わい得る自分の哀しさに苦笑しつつ、松茸風味ラーメンに舌鼓を打てり。北欧人が味覚の違いから、この香しき松茸の香りを生ゴミの臭いにしか感ぜられぬとは、まあ何と不幸な話なるか。されど故にフィンランドより安価な松茸を輸入し得う運びとなりし今、ならばその嗅覚の違いに感謝せねばなるまいか。

朝飯を食い終わりし刹那、Francescoが何処かより朝帰り、昨夜あれからバーに赴きし後、遂に彼も100ポイントを獲得せりとか。これにてイタリア軍団はDavideを除く全員がポイントを獲得済み、そのDavideも彼女がイタリアへ帰る本日を以て、いよいよポイント獲得に乗り出すと宣いておれば、最早我々日本勢の惨敗は火を見るより明らかなり。そもそも端から勝負を放棄しておれば、勝負にもなってへんか。ところでFrancescoは、Davideの彼女の昨夜からの動向を気に掛けており、それと云うのも彼女がFrancescoの彼女の親友らしく、もしも彼が昨夜何処ぞへ失踪せしを目撃されておれば自分の彼女にその情報が漏れるやもしれぬと杞憂しておれど、私が楽屋から自室へ撤収せし時には、即ちFrancescoがバーへ赴きし頃には、熱き夜を過ごさんとの想いに駆られしDavideと彼女は既に部屋に引き籠りており、今朝も未だ就寝中と思われる故、それは取り越し苦労ならんと告げれば、漸く安堵せし様子。されど斯様な事を杞憂するならば、抜かり無くアリバイ工作ぐらいしとかんかい。Davideの彼女は今朝イタリアへ帰る故、それまではポイント獲得の一件は皆に伏せおくよう依頼されれど、そんなもんとっくに承知ですから御心配には及びません。
午前7時出発と伺っておれば、あと15分を残す時点にて東君が朝飯を拵えんと動き始め、兄ぃの携帯電気調理器を拝借せんとすれど、使用後に本体の熱が下がるまで収納しかねる故、この出発直前の使用は不可なりて、私のコーヒーメーカー作戦に準ずる運びとなりし。何とか出発直前には無事調理終了すれど、大慌てにてラーメンを食らわねばならぬ羽目となれり。
午前7時過ぎ、いざ一路フランスのLyonへ向け出発。本日の走行距離は1000km以上なれば、Koppaは殆ど休憩もせぬ筈にして、我々は迂闊に便意を催さぬように、必要以上の水分摂取を避け、無闇に貪り食うも控えんとす。雪の降りしきる中、先ずDavideの彼女を駅まで送りお別れ、そのままドイツ経由にてフランスへ突入せん。Davideの彼女を降ろせば、Francescoが100ポイント獲得を申請、流石バンドリーダーか、今回は証人一切皆無なれど無事承認され、これにて首位は変わらずKoppaの305ポイント、LucaとFrancescoが各々100ポイントにてKeppaを追う。Davideも彼女がイタリアへ帰りし故、満を持して今夜からポイント獲得を狙うと宣言。いよいよツアーも終盤戦に突入すれば、果たして如何なる大逆転劇が待ち受けておるやら、今後の展開から目が離せぬか。
途中の給油休憩にて、イタリア軍団は先日同様、皆で纏めてパンとハムとチーズを購入しサンドウィッチを拵える作戦を取っておれば、日本勢も各自サンドウィッチやらを購入捕食、私は今回のツアーに臨むにあたり、ジャガイモが主食と自らに言い聞かせておれば、ここは再びプリングルスにて済まさんとす。何しろあの筒1本の半分も食らわば大いに胸焼けし、それ以上の食欲さえ失せる故、何かと好都合なり。

いよいよ窓の外は雪景色となり、流石に車内も凍てつく寒さともなれど、昨夜熱き夜を過ごせしFrancescoとDavideはお疲れにて爆睡、元来基礎体力に些か問題ありし東君も、ツアー終盤なれば疲労も相当蓄積されしか、魂の抜け殻の如く爆睡、ベンチシートの真ん中に座する兄ぃは、寝心地良きポジションを見つけんとすれど常々難渋しておられれば、寝袋を前の座席のヘッドセットに結わえ枕とされるや「うん、これはなかなかいいよ」と、漸く安眠されし御様子。

午後6時前、今宵の会場Ground Zeroに到着。先日Lyonにて一泊せし際に御宅へ投宿させて頂きし今宵のオルガナイザーFredと再会。楽屋には既にケータリングならぬ晩飯として、ホームメイドと思しきピザ各種、ホットウイング、ドリトスとFred御自慢の蟹味噌の味がするホームメイドソース、フランスならではか大量のバケット、果物各種、極め付けは我々が忌み嫌うライスサラダことインサラタ・デ・リゾ(insalata di riso)のみならず麦のサラダまで用意されておれば、皆貪り食い始める有様。私は車中にて食らいしプリングルスにて胸焼け気味なれば、冷めきりしホットウイングを摘みし程度にて、後は赤ワインをひたすら呷るのみ。

今宵は前座としてフランス在住のドラマー村山征二朗さんが出演との事で、久々に再会すれば暫し歓談。LyonにてAMT名義で演奏するは、何と1998年に行われしAMT & TMP U.F.O.の初めての海外ツアー以来となり。当時はPeznarと云う素晴らしきクラブがあれば、AMT & TMP U.F.O.以前にもMainlierやMusica Transonicとしても2度程演奏せし経緯あれど、1999年に残念ながら閉店せしとの事で、それ以来ここLyonにてAMT名義にて訪れる機会に恵まれず今日に至る。前回、即ち1998年に訪れし際は、未だ1stアルバムのリリース後にして、その1stアルバムがWire誌にて1997年のベストアルバムに選出されてはおれど、況してやここLyonでのライヴはAMT & TMP U.F.O.の歴史に於いて僅か3度目のライヴなれば、 当然ながら全くの無名バンドにして、ポスターにも「Acid Temple」なんぞと名前も間違えて綴られしと記憶する。この11年間で我々を取り巻く状況も変貌しておれば、何しろ当時のメンバーは既に私と東君のみにして、今宵詰め掛けし満場の客に於いて、果たして11年前のライヴを体験せし御仁はおられるのやら。現在25歳の女性ならば当時は僅か14歳の少女かと気付けば、今宵は客層大いに若く、ならば先ず以て当時の客はおらぬと思われる。ところで今宵は若き女性客が矢鱈と多ければ、果たしてこれは何故か。フランス嫌いのKoppaを除くイタリア軍団の面々は、勿論今夜のこの好機を逃すまいと発奮せしは言わずもがな。
さて11年ぶりとなるライヴは御陰様にて満員御礼、尋常ならぬ盛り上がりにて無事終了。終演後、撤収作業を行っておれば、珍しく若き女性2人に話し掛けられ、今から何処かへ飲みに行かんと誘われし。されど流石に疲労困憊の上、我々の投宿先はここから遥か離れる郊外と伺っておれば大いに躊躇、結局私は皆と宿泊先へ。然ればイタリア軍団曰く「何で彼女達と一緒に行かなかったんだ?彼女達は間違いなくMakotoのグルーピーだぞ!絶対に200ポイント獲得出来た筈なのに!」いやいや、海外ツアーに於ける教訓のひとつとして「D.T.A.(Don’t Trust Anybody)」があれば、何しろ彼女達こそフランスの美人局かもしれぬと、美味しい話なればこそ、そう易々とは信じる訳にはいかぬ哀しき性分なり。
投宿先は、今宵のオルガナイザー達の事務所のみならずアートギャラリー等も入る古いビルにして、何でも国からの経済的援助の下に借り受けしものとか。されどこのビルも老朽化が激しければ近々取り壊しになるらしく、新しく建て替えし際には、再び国よりの援助の下、そのビル内にスペースを事実上格安にて借り受けられるそうな。斯くも素晴らしく好条件なるも、如何にも芸術至上主義たるフランスらしければ、日本では到底信じ難き話か。さてベッドルーム2部屋を与えられれば、津山さんと東君は早々に御就寝。私と兄ぃは、イタリア軍団と共に赤ワインやらバーボンを飲み倒さんと事務所へ。昨夜の100ポイント獲得を契機にいよいよ本領発揮かFrancescoは、今宵はこのビル内を案内してくれし女性スタッフに御執心の様子、先ずは何とか一緒に酒を酌み交わさんと執拗に誘えども、残念ながら御丁重に断られし顛末。
事務所にてイタリア軍団と共にバーボン片手に無線LANを以てしてネット接続するうちに、先日Francescoと日本のアニメ話にて盛り上がりしを思い出すや、youtubeにて先ず「マジンガーZ」を検索、オープニングテーマを見せるや、イタリア軍団もイタリア版オープニングテーマにて報復、これを契機に「UFOロボ・グレンダイザー」「デビルマン」「鋼鉄ジーグ」等の当時イタリアにても人気を博せし永井豪&ダイナミックプロ作品に始まり「宇宙の騎士テッカマン」等のタツノコプロ諸作品、その次作となる機動戦士ガンダムは知らずとも「ダイターン3」等の日本サンライズ諸作品、更には「キャプテン・ハーロック」勿論「北斗の拳」は云うに及ばず、果ては「ダッシュ勝平!」やら「おはようスパンク」から「アタックNo.1」まで、怒濤の勢いにてyoutubeを観賞。されど極め付けは矢張りサッカー大国イタリアらしく「キャプテン翼」なり。サッカーに興じる子供達が皆、キャプテン翼の放送時間になるや家へ戻ると云う逸話さえ伺いし。イタリア語版テーマソングが流れるや全員にて歌い出すは当然にして、オリジナル日本語版のテーマソングでさえメロディーがイタリア語版と同じならば、強引にイタリア語にて歌い始める始末。結局バーボン片手に懐かしアニメ話は大いに盛り上がり、午前4時半就寝。

 

(2009/1/5)

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