『人声天語』 第141回「日伊共同戦線欧州道中股栗毛(AMT & TMP U.F.O.欧州ツアー2008)」其之参

11月7日(金)
午前7時起床。兄ぃと共に、朝飯に有り付かんとホテル内のレストランへ。当然の如く用意されしは所謂イングリッシュブレックファースト、即ちトースト、シリアル、ベイクド・ビーンズ、マッシュルーム、目玉焼き、ソーセージ、焼きトマト、通常ならばハッシュド・ポテトなれど今朝はフライドポテトのラインナップなり。イングリッシュブレックファーストに関しては、調理云々にあらぬ故、即ち「焼くだけ」「缶詰を温めるだけ」と云う誰が拵えれど同じ味なれば、今更「美味い」「不味い」も無く、宛ら満腹になると云う一点に於いて、欧州の典型的朝飯たる所謂コンチネンタルブレックファースト(パン、シリアル、果物、チーズ、時折これにハムや茹で玉子が加えられる)よりは優れしか。

午前11時チェックアウトと伺っておればこそ、我々日本人は律儀にも時間通りにチェックアウトし玄関先にて待機しておれど、はてイタリア軍団は全く出て来る様子もなし。結局30分以上待たされし末、漸く姿を現せど「寝坊して朝飯食いそびれたから、今から朝飯を食う!」通常なら我々大いに憤って然りの場面なれど、この能天気且つアホにして悪びれぬ様に、我々は笑うしか術もなく「ホンマ憎まれへんよなあ…何しろ悪気ないからなあ…」と諦め顔を並べるのみ。結局ホテル近くのドライブインへ赴き、我々は昼飯を食わんとす。スーパーとファーストフードと割高なイギリス料理屋しかなければ、イタリア軍団は「食えるもんがない!」と途方に暮れつつ憤慨の御様子、我々の如くサバイバルなツアー生活術を身に付けておらねば、過酷なる食事情の前に、味的にも経済的にもいずれ自滅するは必至なり。私は昼飯にと海老サラダを購入。一見海老ばかりの如きに見受けられれど、その下にはミックスベジタブルの如き代物とショートパスタのマヨネーズ和えが眠っており、マヨネーズの量が半端ならず大いに諄く、最早海老の味も食感も全て打ち消す程なれば、ここはハバネロソースに含まれる酢の酸味にて緩和せんと投入。これにて何とか食し得れど、ここにハバネロソース1号最早事切れ戦死せり。完食するや、猛烈なる胃もたれと胸焼けを併発、気持ち悪き事半端ならず、何でサラダ食うて胃もたれや胸焼けやらにならなあかんねん!

昨夜の晩飯にてコールスローを大層お気に召せり兄ぃは、ここでコールスローを購入しれおられれば、私が海老サラダにて苦悶するを横目に「うん、コールスローは美味いよ!」と、御満悦にて一気食いされておられし。

今日はオフにしてLondonへの移動日なれば、イタリア軍団もいつも以上にお気楽な塩梅かと思いきや、どうやらLorenzoとKoppaが大いに反目し合いしとかで、道中FrancescoとLorenzoが激論を展開。連日車内にて大はしゃぎと見受けられしLorenzoの言動とは、何でも「休憩直後に『トイレに行きたいから止めてくれ』」だの『(バン内禁煙故に)タバコが吸いたいから止めてくれ』だの『金がないから金貸してくれ』だの、挙げ句は『こんな狭いバンに長時間押し込められるのは真っ平御免』だの子供じみた我侭」らしく、ドライバーの仕事を全うせんとするKoppaの反感を買い捲り、遂には彼に「これ以上Lorenzoが同行するならドライバーを辞める」とまで云わしめしとかで、また性格穏やかにして最も人格者たるLucaさえもLorenzoの我侭ぶりに嫌気が差し、その憤りがLorenzoにエンジニアを依頼せしFrancescoへと向けられれば、流石のFrancescoもLorenzo解雇の決断を下さざるを得じとか。結局Lorenzoは明日のLondon公演を最後に解雇と相成りし。イタリア語なんぞ片言程度しか解さぬ故、その特有のアクセントや喋りっぷりから常にアホな冗談ばかり喋りしかと思っておれど、実は言い争いしとは全く想像だに出来ず。斯く云う日本語も、大抵の欧米人に云わせると、その聞こえ具合とは、常に怒っているように聞こえるとか、またフランス人に限れば、日本語は大層セクシーに聞こえるとか。そんなもんかいな。
午後6時半、漸くLondonに到着。今宵も2組に分かれて投宿の運びにて、我々はDavideの友人の日本人男性宅に投宿との事。Davideは嘗てLondonにて音楽理論等を学びしとかで、その日本人男性とは級友なりけり。待ち合わせ場所に現れしその日本人男性とは、Londonにて活動する日本人バンド「棒人間」のリーダー大元君、AMTのみならず私とダモさんのライヴ等にも幾度も足を運んでくれしとか。これにてイタリア軍団と別れ、さて大元君宅へ赴くや、ルームメイトも皆日本人とかで、何とごはんまで炊いて歓迎してくれれば、我々一同感謝感激、メンバー各自思い思いの「おかず」を手に食卓に着く。私は先日購入せし鯖のオイル漬け缶詰におろし生姜とポン酢を添えんとし、兄ぃは玉子ふりかけ、津山さんは今朝スーパーにて購入せし野菜サラダに練り梅、東君も今朝購入せしサラダを、各々おかずに久々のごはんを貪り食う有様。嗚呼、久々に食らうごはんと、そして鯖の何たる美味なる事か。日本人に生まれし喜びを大いに実感せり。

界隈の酒屋へ赴きスコッチを1本購入、大元君や彼女のAbeeちゃん達と歓談しつつ皆で呷ればボトルは空に。午前1時半過ぎに就寝。

 

 

11月8日(土)
午前7時起床。朝飯を拵えんとキッチンへ赴き、袋入りラーメン、麺つゆ、葱にて、今や定番の麺つゆラーメンを拵え食す。

この麺つゆラーメンの御陰で、こちらの粉末スープの不味さに苦悶させられる事もなくなり、勿論日本に於いて斯様な代物を食さんとは思わねど、取り敢えず如何なる袋麺ですら安心して食し得るようになりしは事実なり。毒入り餃子を発端に今や日本を大いに騒がす中華食材なれど、海外ツアー生活に於いては中華食材こそライフラインなれば、それをを回避する等不可能なり。毒入りに当たるか当たらぬかはまさしく運次第かもしれねども、そもそも狂牛病問題の真只中のアメリカにて、T-Boneステーキなんぞ食らいし経緯もあれば、日本で叫ばれる「食の安全」なんぞなんぼのもんじゃ!そもそも日常生活に於いてですら、私は社会の底辺に巣食う低所得者なれば、格安の中国産食材を食すは当然至極、今更「食の安全」もへったくれもあったもんちゃうちゅうねん。
兄ぃは鯖のオイル漬け缶詰を用いし鯖スパゲッティー、津山さんはざるそばならぬざるスパゲッティー、東君は例によって大量のニンニクを投入せしスパゲッティー・ペペロンチーノを各々拵え食されし。

界隈のアラブ人系移民が営む店にて漸くトマトジュースを発見、この機を逃すまいと購入。ハバネロソースも既に残り1本となりし故に温存せんと、タバスコも購入。これにてビタミン補給も叶うか。

昼飯は、スパゲッティーを駆使しての焼きそばを拵えん。例によってフライパンにてスパゲッティーを茹で、具として葱と冷蔵庫より失敬せしキャベツを用意、トンカツソースと、かつお節の代用として味の素にて味付けすれば完成。豚肉やらイカやらは兎も角、薬味たる青海苔やら紅生薑がない故、何ともひと味もふた味も足らぬ気はすれど、瀬に腹は代えられぬ、充分に納得し得るレベルの味なり。

今宵は「Hokaben Festival」なる何とも珍妙なる名前のフェスティバルにヘッドライナーとして出演予定、明晩のヘッドライナーはSun Ra Arkestraとか、されど何ちゅうネーミングセンスやねん。日本人にとっては苦笑せざるを得ぬ名前なれど、欧米人にとっては何やらエキゾチックな響きなのやもしれぬ。何でもこの週末はMelvinsによるATPも開催中とかで、巷ではATPかHokaben Festivalに行くかで物議を醸せしとか。入り時間が午前1時と伺っておれば「出番が深夜やのに何でそんな早よ行かなあかんねん!逆リハってホンマおちょくっとるよなあ…」大元君とAbeeちゃんの案内により、今宵の会場93 Feet East Clubへ向け出発。バスにて向かわんとすれば、僅か1区間乗車せし処にて「この先で工事してるので降りてくれ」と告げられる始末。3ポンド(この日のレートにて435円)も払ってたった1区間で降ろされるとは、おちょくってんのか!それやったら乗る時に一言云うてくれよ!当然返金なんぞされる筈もなく、況してや中途半端な場所に降ろされれば、ここより徒歩にて会場へ向かうしか術もなしとの事。生憎雨が降り始めれば、雨宿りしつつ、漸く会場へ到着。サウンドエンジニアは到着しておれども、肝心のクラブの鍵を保持する輩が来ておらず、漸く連絡が付けども彼の到着は午後3時頃との事で、我々一同はこれより2時間も待たされる羽目となりし。ならば時間潰しにと訪れしは界隈にあるレコード店Rough Tradeなり。店内のカフェコーナーにてカプチーノなんぞ啜りておれど、津山さんは早速店内を物色し何やらレコードを抜いておられる模様。結局堪り兼ねて私も3枚程レコードを購入、レコード屋を訪れながら手ぶらで出ずるは矢張り大いに困難なり。

Rough Tradeの向かいのバーにStearica一同を発見、彼等と合流すれば、最早飲むしかする事もなし。午後4時、漸くのクラブの扉が開けば、待ち草臥れし全出演バンドが一斉に機材搬入。サウンドチェックのタイムテーブルは既に3時間以上遅れており、果たして今宵フェスティバルは無事に問題なく進行するのやら。当然我々はサウンドチェックを拒否、さっさとShopzoneを設営すれば、既にやるべき事さえなし。クラブ内には我々が出演するメインステージ以外に、バー2部屋に各々小さなステージが設営され、どうやら3箇所にてプログラムが同時進行する運びの様子。楽屋に大量のビールが用意されておれど、ビールは何かと飲み疲れる故、界隈の酒屋にてスコッチのポケットボトルを購入。表通りにてマーケット等も開かれ大層な人通り、中華料理の屋台にて晩飯の焼きそばを購入せんとすれば「Are you hungry?」と問われ「yes」と答えるや、山盛りの焼きそばの上に山盛りの酢豚ならぬ酢鶏を乗せられる始末、こんなぎょうさん食えるか!

されどこれが思いの外美味にして、結局見事完食せり。海外に於いて数々の珍妙且つ激不味酢豚に轟沈せし私なれど、これは大凡日本の酢豚と然して違わぬ塩梅なり。せやけどこれ肉が多過ぎやろ。
予定より1時間遅れにて開場、大層な賑わいにして満員御礼なり。2つのサブステージは何とか開演すれど、メインステージのサウンドチェックは押し捲り、未だ何時開演するのか全く不明。我々こそサウンドチェックを拒否すれど、残りのバンドは全てご丁寧にサウンドチェックを行う始末、どうやら臨機応変と云う思考は存在せぬらしきかな。予定より2時間近く遅れてメインステージも開演、会場内をブラブラし幾つかバンドを観れど、近頃流行りとなりしノイズやらストーナーやらばかり、然して興味なければ、開場の中庭に設営されし喫煙スペースにて、大元君をはじめとする棒人間のメンバーと歓談。結局1時間押しにてタイムテーブルは進行、終演時間がタイムテーブルに記されておれば、我々の演奏時間は40分程度しか残されぬ運びとならんと思えども、Francesco曰く「タイムテーブルの遅れはオルガナイザーの不備に因るものだから、俺達に責任は無い!だから終演時間なんか気にせず好きなだけ演奏すればいい!大体今夜は土曜日だから終演時間なんて関係ない!」彼がオルガナイザーに掛け合い、結局我々は好きなだけ演奏してよい運びとなりし。
午前2時過ぎ、再び投宿先の大元君宅へ帰り着き、さて夜食厳禁の戒を破り、先日購入せし蓋付きカップ麺を食さんと思い、前回は調理方法に則り汁麺として頂けど、今宵は津山スタイルの焼きそばとして食さんとす。焼きそばとして食す故、粉末スープは投入せず、また前回の反省の下、グリンピースを麺の下へ忍ばせ湯を注げど、結局浮き上がって来れば、この作戦は成功せず。蓋と器の隙間から強引に湯を捨て、粉末スープを投入すれば完成。確かに津山さんの云う通り、これはこれで充分食し得る味なり。ならば調理方法の記述通りに拵えし汁麺でも、完成写真から伺える焼きそばでも、どっちでもええって事か。何とも不可思議なるカップ麺なりしか。

兄ぃはイギリス名物ベイクドビーンズを、東君は麺つゆラーメンを各々食されし。

午前3時就寝。

 

 

11月9日(日)
午前6時起床。朝飯は、冷蔵庫より玉子1個と玉葱少々を失敬し、先日ドライブインにてせしめしケチャップを用いてのナポリタンスパ。何とも懐かしき味にして、これはこれで満足か。下手な小細工を労し珍妙なる無国籍風スパゲッティーに自爆轟沈するよりも、余程安全にして且つ美味なり。

本場イタリアに存在せぬ元祖和製スパなれば、一度Stearicaの連中に御見舞いしてみたき処なれど、そもそもケチャップ+スパゲッティーなんぞその時点にて気持ち悪がらんか。そもそもあれ程トマトを料理に用いるイタリア人なれど、イタリア人がケチャップを使う場面なんぞ殆ど記憶になく、嘗てRomaのレストランへイタリアの友人の赴きし折、韓国人観光客のグループがピザにケチャップを添える様に遭遇し「ピザにケチャップなんて信じられない!」と絶叫せしを思い出す。矢張りケチャップを愛して止まぬはアメリカ人か、果たして和製スパたるナポリタン、イタリア人には如何様に映るやら。
津山さんは、日本から持参せしそばを、東君は恒例スパゲッティー・ペペロンチーノを食されし。

腹も満たされれば、大元君の蔵書「ゴルゴ13」読書大会ゴルゴクラブ開催と相成る。デューク東郷と拝一刀、果たしてどちらが強者なるか。漫画のデューク東郷は超人的なれど、実写版映画のデュークは斯くもあらず、特に千葉真一のデュークはかなり人間的にして情けなき部分多ければ、実際は精々この程度かもしれぬか。

例によってStearicaは約束の午前10時に迎えに来る筈もなく、大元君の携帯に「11時までには行けません」とのメッセージ着信。 結局正午頃に迎えに来れば、御陰でゴルゴクラブも大盛況。
午前11時、大元君とAbeeちゃんとは来月のダモ鈴木&河端一のLondon公演にての再会を約束しお別れ、Stearicaと合流し一路Leedsを目指す。車中は例によって爆睡、気付けば休憩なしにて会場The Brudenell Social Clubに到着。Stearicaの面々は未だ何も食うておらぬとかで、着くなり機材の搬入なんぞ後回しと、楽屋のケータリングに群がる有様。我々日本勢は、ビタミン補給とばかりセロリスティックを貪る。ツナサンドは殆ど味無くマヨネーズの諄さのみ、タバスコを添えて頂けど、評価にさえ値せぬ代物なり。

近所にインド系移民にて賑わうスーパーあれば、成る程インド人向け食材なんぞも充実。大根、オクラ、葱、ゴーヤ、鯖缶2個、即席ビリヤニ2個、ガルバンソー缶、グリーンピース缶、ラーメン4袋、インド製ホットソース、タバスコ社製ハバネロソースを購入。これにて豆サラダやらゴーヤ料理なんぞも拵え得ると思えば、これから暫くの食生活はかなり充実せんと期待される。

晩飯は会場にて、ポテト+野菜のグリル+白身魚の香草焼きなれど、白身魚は殆ど味無く、味の素と醤油にて補正、更に終盤はタバスコ投入にて味に変化を求む。結局ポテトが最も美味なりしか。

用意されし赤ワインは南アフリカ産、スペイン産、フランス産なれど、どれも見事に不味き限り、Stearicaの面々も「人生最悪のワイン」と零しつつも、選択肢が他になければ一気に全てのボトルは空に。
終演後ホテルへ、例によって私は東君と同部屋。今宵も夜食厳禁の戒を破り、東君共々さて夜食を食さん。兄ぃより携帯電気調理器を拝借し、本日購入せしマレーシア産即席ラーメンのうちBombay Masala味に挑戦。 東君は同ラーメンのVegetable味に挑戦し「むむむむ~っ!麺がオイリー!」と閉口しつつも完食。こちらはパクチー爆裂の辛酸っぱい如何にもマレー半島系の味なれば、薬味の葱、更に大根おろしにタバスコを打っ掛けし紅葉おろし擬きを加えれば、大根おろしの辛味が爽快でさえある程にて、麺の脂っぽささえ相殺されしか、エキゾチック且つ和風なる佇まいの味覚を満喫せり。

結局今日1日もライヴ以外は殆ど寝ておれど、午前2時半就寝。果たして人間はどこまで眠れるのか。

 

 

11月10日(月) 
午前6時半起床。シャワーぬる過ぎ、風邪引くやんけ!ボケがぁ! 約3ポンドの朝飯を求めロビーへ、看板の絵面からイングリッシュブレックファーストのビュッフェかと勝手に期待し、東君共々「玉子やソーセージ食い捲ったる!」との意気込みて臨めば「コンチネンタルブレックファーストですね?」なんやと?どうやら早とちりにして我々の悪癖たる思い込みか、結局クロワッサンやトースト各種+シリアル+コーヒー+ジュースのビュッフェなれば大いに失望、されど今更後にも引けず、斯くなる上はクロワッサンを食い捲りエスプレッソを飲み捲るのみ。後程ブレックファーストの看板のイラストを再度眺むれば、成る程ベイクドビーンズと思しきはシリアル、ソーセージと思しきはパンなりしか。しゃあけど何か納得いかへんな、何か騙された気ぃするわ。まあ騙されたワシらがアホや云う事か。そもそもイングリッシュブレックファーストが斯くも安価な筈もなし。

正午チェックアウト、ロビーにてイタリア軍団を待てど、ドライバーのKoppaのみが姿を現しバンを取りに行けど、Stearica一行は姿を見せる気配なし。Koppa曰く「だからイタリア人と仕事するの嫌なんだ!あいつら時間にルーズ過ぎるからな!」ロビーにて雑誌なんぞ捲っておれば「Sweet sesame mackerel with banana chutney」なる料理のレシピを発見、鯖とバナナチャツネの遭遇、鯖好きの私には到底許されぬ代物か。斯様なおぞましき料理にされる鯖が可哀想、って云うかお前ら鯖の美味さを何も理解してへんのちゃうか!鯖の生臭さを打ち消さんと胡麻やら砂糖やら酢やらのみならずバナナチャツネまで動員せしかと思えば、お前らに鯖食う資格なんぞないんじゃ!ボケがぁ!と叫びたくなるも当然か。

またお薦め高級日本料理レストランの記事が掲載されておれど、その写真から察するは寿司と鉄板焼の店なり。嘗て名古屋に食い放題を謳う激安焼肉店にして寿司とカレーも食い放題と用意する店なんぞ知っておれど、その味たるやに肉も寿司もおぞましき程不味ければ、また新世界には串カツも焼肉も寿司も全て揃う飲み屋多けれど、これらは決して高級レストランにあらず、所謂大衆酒場的な存在なればこそ「客の食べたいもんを何でも出してあげたい」との浪花商魂に起因するものと思しきか。斯くの如くシェフが鉄板にて客の眼前にて調理する所謂鉄板焼レストランと、同じく客の眼前にて寿司を握る寿司屋とは、確かに同じようにも見受けられども当然同居し得るものにあらず、そもそも鉄板の横に寿司を並べれば、寿司が温まってしまうは必定、これを堂々と合体させる感覚は矢張り日本人には無からん。シェフの顔付も全く日本人然としておらねば、これまた贋日本料理屋に他ならぬ。されど日本の欧風料理屋やらアジア料理屋なんぞも、殆どがイカサマこの上なければ、贋日本料理のみを糾弾する訳にもいかぬか。

結局午後12時半に出発、一路Manchesterを目指す。イタリア軍団の昼飯休憩の為、途中のドライブインにて停まるや、私と東君は朝飯のビュッフェより失敬せしクロワッサンを昼飯として食せり。

ここでポンドがユーロに対し史上最安値を記録せしとのニュースをテレビにて知る。過ぐる8月のAMT & TCIのUK&アイルランド・ツアーの際ですら、未だ1ポンドが204円程度にて両替し得れども、今回渡欧せし当日たる10月26日のレートでさえ145円まで下落しており、更に先日ネットにてレートをチェックすれば同じくユーロも大幅に下落しておれば、我々のギャラはポンド立て及びユーロ立て故、これは経済的大打撃に他ならぬ。況してや我々がフライトチケットを購入せし折は、未だ原油価格高騰が問題とされておればこそ、付随する燃料費の高騰ぶりに閉口させられし下りもあれど、今や外貨と共に原油価格も下落しておれば、市場の混乱により二重に損害を被りし結果なり。津山さん曰く「もうユーロもポンドも100円計算やな!ほならもし100円以上で両替出来たら『儲かった!』って思えるやろ!」更に、私が前回のAMT & TCIのUK&アイルランド・ツアーより200ポンドを両替せずに持ち越すが故、この3ヶ月弱にて日本円にすれば4万円が3万円弱となり、財布に入れておくのみにて1万円も損せしとの話を聞けば「ほなら今イギリスで200ポンド分レコード買うたら、4万円分のレコードを3万円で買えたって事になるから、自動的に1万円儲かったって計算になるな!それや!持ってるポンド全部レコードに替えたらめっちゃ儲かるって事や!あっ、でもその儲かった金は何処にあるんや?」常にマイナス計算から詭弁にて儲けを弾き出すある意味ポジティヴな経済観念をお持ちの津山さんらしき論理なれど、流石に今回の円高は、日本円対ほぼ全ての外貨の図式を取っておれば、こちらでは誰もが円高なんぞ何処吹く風、何処の国も円高対策を講じる気配さえなければ、我々にとっては絶望的展開にして、東京に於いて同時多発テロ若しくは社会的機能を麻痺させるに到る程の超ド級大地震でも起こらぬ限り、我々の帰国する12月上旬までに円安に転ずる望みあらざらん。
午後5時、今宵の会場Deaf Institute到着。機材搬入後、今宵徹夜にて運転せねばならぬKoppaはオルガナイザー宅へ仮眠に赴く。Stearicaのサウンドチェック終了を待ち、オルガナイザー宅へ赴き晩飯を食す。オルガナイザーの奥さんによる手料理は、またしてもカレーなれば期待ゼロにて臨めども、これは意外にも美味なりて、イタリア軍団も「イギリスでこんな美味い料理を食えるとは思わなかった!今回のツアー中一番美味い晩飯だ!」と大絶賛。カレーと呼ぶには刺激が皆無なれど、味の奥行きや深みは充分なれば、我々日本人勢の評判も美味いと上々、付け合わせのタンドリーチキンも美味なりて、皆お替わりし捲る有様。

会場へ戻れば満員御礼、終演するや否や機材搬出、午後1時45分Manchesterを出発、一路Doverのフェリーポートを目指す。Francescoは「じゃあ皆で朝まで一緒に歌おう!」と約6時間に及ぶミッドナイトドライブに臨むKoppaをアシストせんとすれど、我々全員即寝成仏。私はiPodにてTwin Peaksのサントラを聴きつつ眠れば、案の定理解不能且つ奇妙奇天烈なる夢を連発にて食らう羽目に。

 

(2008/12/29)

Share on Facebook

Comments are closed.