11月19日(水)
午前7時半起床。昨夜Francescoが「午前9時には出発する」と宣っておれば、朝飯とシャワーの時間を逆算し、先ず朝飯を拵えんとす。未だ全員寝静まる中、昨日の食材の残りのマッシュルームを醤油を加え炒め、同じく昨日の残りの冷飯をぶち込み、麺つゆと胡椒とケチャップにて味付け、チキン抜きチキンライス擬きを拵え、即席しじみ汁を添え、これにて朝飯完成。チキンライス擬きは矢張り玉葱が入っておらねば何ともひと味足りぬ風にして、結局ハバネロソースをぶっ掛け誤摩化し完食。
欧米人は大抵朝にシャワーを浴びる習慣なれば、立て込む前に浴びてしまわんと思い早起きすれど、未だ起きて来る気配さえなし。ならば今のうちにとのんびりシャワーを浴びる。東君と津山さんは、どうやら昨夜のイタリア超重量級料理に轟沈されしか、起きて来るなりトイレに直行する有様、東君と入れ替わるようにトイレへ突入せし津山さんは、香しき東君の残り香に悶絶死せし様子。嘗てイタリア超重量級料理の前に幾度も轟沈憤死せし私なれば、今やベジタリアンKoppaの拵えしベジタリアン料理如きにて轟沈する程軟弱にあらず、昨夜は私のみパスタをお替わりまでしておれど、全く以て問題なし。 結局イタリア軍団は、午前9時半頃に漸く起き出して来る始末にして、私の杞憂とは裏腹に誰もシャワーを浴びる事なく、午前10時過ぎに慌ただしく一路Parisへ向け出発。果たして今宵Parisに到着するは何時になるのやら。
車内は相変わらずKoppaによるハードコアが爆音にて流れておれど、iPodにてMoondogなんぞ聴きつつ爆睡。途中立ち寄りしガソリンスタンドにて、昼飯を物色せんとすれども、既に国境を越えフランスへ突入しておれば、フランス名物の割高にして具がショボく味の無きサンドウィッチが並ぶのみ。これにはイタリア軍団も選択肢皆無と思いしか困惑の様子、迷いに迷いし挙げ句3ユーロもする玉子&野菜サンドを購入。電子レンジが置かれておれば加熱、これにてカチカチのバケットが柔らかくなれば些か食し易きかな。兎に角フランスのバケットサンドウィッチはパンが猛烈に硬く、顎が疲れるどころか痛くなる程にして、日本のふにゃふにゃバケットも如何がなものかと思えど、焼きたてのバケットは兎も角、この硬くなりしバケットは到底頂けるものにあらず。味付けが殆ど為されておらぬは言わずもがな、なればタバスコ社製ハバネロソースを召喚、これにて漸く食し得れどタバスコ社製ハバネロソースもここで名誉の戦死。
フランスを訪れる度に思うは、斯くもショボいサンドウィッチに比べ、日本のサンドウィッチの何と豪華にして美味な事か。フランス人は常々アメリカンフードを忌み嫌っておれど、マクドのハンバーガーの方が割安にして味もよっぽどマシじゃ!ボケぇ!お前らにハンバーガーがどうのこうのと文句垂れる資格なんぞあるかい!それにしても欧米各国に於いて、何と名物の少ない事か。国内に於いて旅の愉しみと云えば、その土地土地の名物を堪能する事なんぞ挙げられようが、欧州を列車にて旅すれど、日本の如き郷土の名物なんぞ駅のキオスクにて売られる筈もなく、代わり映えせぬサンドウィッチやらが並ぶのみ。日本なんぞ由緒正しき名物もあれば、常々無理矢理にでも新たな名物を発案する程にして、駅弁からお土産各種に至るまで「ホンマどんだけ名物好きやねん?」と首を傾げたくもなる。新千歳空港に至っては、最早空港なのか土産物屋なのか判然とせぬ程にして、そもそも魚屋の並ぶ空港なんぞ世界広しと云えど他にはあるまい。日本列島津々浦々何処へ伺いても名物各種が溢れておれば、これぞ世界にも稀なる資本主義社会のお手本か。嘗てイタリアの友人が日本を訪れし際、地上のみならず地下までも商店で溢れ返る様を見て「誰がこんなに店を必要とするんだ?」と驚いておられれど、日本の都市に於ける商店の多さは、世界を代表する大都市たるNew YorkやParisやLondonなんぞの比にあらねば 、況して営業時間もコンビニエンスにして、これこそ真の資本主義社会の姿と云わずして何とする。ライヴハウスにした処で、東京のライヴハウスの多さは尋常にあらず、況してやDJがプレイするクラブまでも含めれば、これ程ライヴスペースが犇めき氾濫する大都市なんぞ世界中にある筈もなし。それも殆どの店にて夜な夜な数多くのバンドが出演する中、例え所謂アングラ音楽に限りし処で四六時中バッティングしておれば、集客が容易ならぬは当然の理屈なり。斯様に厳しき状況の中で活動するとは、即ち壮絶なる自由競争社会の中にて生き抜ぬかねばならぬと云う意にして、故に海外の安穏とせしぬるい状況にて活動するミュージシャン共に比べ、日本のミュージシャン達が遥かに優れし音楽性を誇るも当然の結果ならん。
午後5時過ぎ、今宵の会場Mains d’Oeuvresに到着。生憎クラブの真ん前が道路工事中にて、クラブのスタッフに教えられし付近の駐車スペースに停車せんとするや、運悪く丁度1台の車が駐車とせんしており、Koppaが「機材を搬入するので10分程待って下さい」と懇願すれど聞き入れられず、ならば最後の手段と、こちらは車椅子のLucaを擁する故、ハンディキャップのステッカーを片手に「車椅子を降ろさなければいけないから」とアピールすれど、その車を運転する糞フランス男性は「俺の方が先にここに停めたんだから知った事じゃない!」と無視を決め込む始末。仕方なくKoppaはクラブ付近の歩道に違法駐車し、我々は大慌てにて機材を降ろし搬入する羽目に。Koppa曰く「本当にフランスは世界最悪の国だ!フランス人は本当に糞だ!いつ来ても最悪の体験ばかりだ…早くこの糞以下の国から出たいぜ!」私はフランスに友人も多く、フランス人全員が斯くある訳でもなしと知ってはおれど、確かに私もフランス人嫌いにして、あの高慢にして個人主義ならぬ利己主義な部分に辟易せし経験は数え切れぬか。奇しくも今宵の女性オルガナイザーも大いに鼻持ちならぬ糞アマにして、ここで思い出すも語るもうんざりする程なれば、ホンマこの糞アマなんとかせえ!としか綴る術さえなし。この糞アマへの怒りから、私は晩飯さえも拒否。ドイツのテレビ局が取材に来ておれば、怒り心頭のままインタビューも終了。今宵は昨夜と打って変わり満員御礼ソールドアウトなれど、この糞アマへの怒りを収拾すること既に不可にして演奏も大暴走、大暴れし過ぎなれば演奏中ギターにて自らの額を殴打し自爆。終演後に楽屋へ戻るや、既にケータリングのウイスキーのボトルも撤収されており、遂に怒髪天を衝くに至れど、糞アマは早々に撤収退去しておれば後の祭りか。後日イタリア軍団が、私の怒り心頭なる様を見て相当ビビったと笑い話にしておれど、ホンマ最低のオルガナイザーなれば、お前自殺せえ!
午前1時、ホテルへチェックイン。東君と同室にして、ルームキーはコードナンバーを打ち込む方式なり。これが後にトラブルを引き起こせども、勿論この時点にては斯様な事想像だにせず。シャワー後、寝酒にビールを呷り、午前2時就寝。
11月20日(木)
午前9時起床。朝飯として先日購入せしカップ麺を食してみんとす。そもそもヨガに興ずる女性の絵柄や「True to the taste!」と書かれしパッケージを面白がり購入せし代物なれば、何味かなんぞ全く気にも留めておらず、どうやら牛肉味の類いか。携帯電気調理器を所持する兄ぃの部屋まで赴くは既に面倒臭ければ、またしても洗面台の湯にて麺をふやかす作戦に打って出ん。さてパッケージを開けてみるや、麺と具と粉末スープと調味油に加えクラッカーも同梱されており、これは熱湯を注ぎ3分待つ間に食べて下さいとの心尽くしか。洗面台の湯は若干ぬるめなれど、製麺技術の悪さが功を奏し麺は見事にふやけ、粉末スープを味見せし処、何処か豚骨スープを思わせし故、ならばこのままこの粉末スープ少々及び調味油も使えば、矢張り出汁による奥行き不足にて麺つゆ少々、繁盛ラーメン店の奥義たる味の素も加え味を調整、矢張り調味油の諄さが気になりし故、大根おろしをも加え諄さを緩和、日本より持参せし最後の1本となりし愛用ハバネロソースを加え紅葉おろし擬きとすれば、これにて完成。この大根おろしとラーメンのコラボレーションは、常々ラーメンの諄さに苦悶させられし私としては、その諄さを緩和すると云う点に於いても、素晴らしき発見なり。されどそれならばラーメンなんぞ食わんでよろしいとラーメン通から糾弾されそうなものなれど、そもそも日本に於いて即席ラーメンなんぞ食す事皆無にして、ラーメン屋にて食する事さえ1年に1度もあるかないかなれば、大根おろしラーメンの発見もツアー生活以外に於いては意味もなし。
何でも東君は、またしても夜中にひと騒動起こせしとか。そもそも夢遊病の気がある東君なれば、夜中に寝惚けてトイレへ赴かんとすれど、うっかり部屋の外へ出てしまえば、ドアはオートロックにして鍵たるコードナンバーを覚えておらず、不運にも同室の私は爆睡しており、結局ドアを開ける事叶わず、然れば1階ロビー横にあるトイレへ赴かんとすれど、そのトイレのドアを開けるにもコードナンバーが必要とかで用を足す事叶わず「なんでトイレに鍵かかっちょうがぞ!」怒りに任せトイレのドアを蹴り捲りておれば、そこへ黒人警備員が駆け付け「何してるんだ?今直ぐ自分の部屋へ戻れ!」されどそもそも自室のコードナンバーを覚えておらねば斯様な顛末と相成りし次第「帰れたらとっくに帰っちょらぁ!」部屋にも帰れぬ、然も深夜に裸足にて彷徨う怪し気な髭長髪のアジア人と来れば不審極まりなく「Go out!!(出て行け!)」「なんぞその態度は?ワシぁ客ぞ!」黒人警備員は東君に不審人物の烙印を既に押しておればこそ、今や彼に対し出て行けの一点張り、一方東君もこの客をも客として扱わぬ態度の悪さに怒り心頭「なしワシが出て行かないかんがよ!お前がトイレ開けたらええんじゃ」等と応酬するや小競り合いに発展、この騒ぎに一人二人とフロント係が駆け付ければ、東君がフロント係に事の次第を説明、然れば黒人警備員曰く「俺は全然悪くない!こいつが悪いんだ!」、先ずはフロント係が東君の身元確認せんとすれば、不運にも東君は自室のコードナンバーどころか自室のルームナンバーさえ覚えておらず、ならばと自分の名前を告げれば宿泊者名簿に彼の名前が登録されておらず、凡そStearicaの名前にて登録されしかと訊ねたりしておれば、これがまた黒人警備員の抱く不審感を大いに増長させる結果となり更なる押し問答に発展、すったもんだの末に漸くフロント係が東君をホテルの宿泊者と確認、結果フロント係の判決は「警備員、お前が悪い!」勝訴せり東君は、この横柄にして散々彼を罵倒せし黒人警備員に対し謝罪を要求、されど黒人警備員は頑として謝罪を拒否、一件落着と思いきや今度は「謝れ!」「Non!」と押し問答となり、これを見兼ねしフロント係達が黒人警備員に謝罪するよう催促、流石に斯くなれば黒人警備員も謝ざるを得ず渋々謝罪、これにて今度こそ一件落着。ロビー横のトイレを解錠してもらえば、事の起こりから45分を要し漸く用を足せりとか。さてフロント係よりルームナンバーとコードナンバーを入手し自室へと向かえば、フロント係の綴りしコードナンバーでは解錠叶わず、然れば何が間違いか、外人ならではの癖字を解読せんと悪戦苦闘、「33292」としか解読し得ねども矢張り解錠不可なれば、再び1階まで立ち戻り、今一度フロント係に訊ねに行かねばならぬ始末、然ればフロント係曰くメモのナンバー末尾の書き損じの如きは書き損じにあらず「4」との事で「332924」なりければ「アホか!判る訳なかろうが!」と、またしても大いに憤慨、されどこれにて漸く自室へ帰還叶いし。ホンマご苦労さん。
午後11時、ホテルをチェックアウト。ホテルのロビーに設置される自販機を覗けば、流石は観光客数世界一を誇るParisばかりと絵はがきやら切手やらエッフェル塔のキーホルダーやら使い捨てカメラ等が並べられ、更に香水やら小型LEDライトキーホルダー、国民平均年間セックス回数世界2位のフランス人なればこそかコンドームまで見受けられし。
さて一路Darmstadtへ。相変わらずKoppaのマシンガントーク炸裂、Francescoに聞きし処では、如何にフランスが糞かと云う事を延々と独演せしとか。当然私は車中にて爆睡。
午後3時半、給油休憩にしてここで皆何かを捕食せんと物色。矢張りフランスのドライブインは、フランス名物のぼったくりバケットサンドウィッチ程度しか選択肢なければ、私はオーシャンサラダなるシーフードサラダとチキンナゲットを購入。昨日の如く電子レンジがあればチキンナゲットを加熱し得れども、残念ながらここには設置されておらねば、冷蔵庫に保存されし状態のまま頂かん。常々コンビニ弁当さえも温めぬを信条ととする私にとっては、そもそも子供の頃より「弁当は冷めてるのが当たり前」にして、斯様なチキンナゲット程度些かの問題もなし。但し添えられしソースは到底頂けし代物にあらずんば、トンカツソースやハバネロソースが召喚されしは言わずもがな。シーフードサラダは、海老サラダが刳り貫かれしトマトに、ツナサラダが刳り貫かれしピーマンに詰められており、それでなくともこの海老サラダもツナサラダもマヨネーズの比率が高過ぎ、海老やツナよりもまるでマヨネーズを食らいしが如きにして諄き事この上なく、更に付け合わせのドレッシングの諄さも半端ならず、レタスをこのドレッシングに付け食すや否やいきなり胸焼けを起こす始末。何でサラダ食うて胸悪うならなあかんねんな。
東君は自販機にてスープを所望すれど、これまたおぞましき激不味さにして、汚い中華料理店にて炒飯の付け合わせに出される脂っぽいスープを想起させるか。
フランス人、お前らどんだけ脂っぽくて諄いもん好きやねん!お前ら完全無欠の「油味覚」やな!味覚には「油味覚」と「出汁味覚」なる2種ありて、そもそも人間は、胎内にて出汁の旨味成分が含まれる羊水の中にて育つ故、本来「出汁味覚」として生まれれど、幼少の頃の食生活次第で「油味覚」に変貌する場合があるとか。「出汁味覚」とは、出汁の旨味を関知し得る繊細なる味覚を持つ故に和食を好み、また肥満になりにくい体質とか。一方「油味覚」とは、脂っこい料理を好み、肥満に陥り易い体質とかで、今や日本も7~8割程の成人が「油味覚」になりけり。されど人間とは、脂っこい料理により油分を摂取せし際、脳内にて「愛を囁かれる」場合等に分泌される「至福感」を誘う成分を含む物質が分泌されるとかで、故についつい脂っこい料理に手を伸ばしがちとの事。成る程、故に享楽主義者たる私や東君は、愛に渇望すばこそ、ついついトンカツに手を出してしまうのか。なれば斯様に脂っこく諄き代物を欲すフランス人とは、日本人とは比較にならぬ程愛だのセックスだのを好む民族にして、故にその愛や性欲の深さが誘う至福感も大いに深ければ、食事に対しても同様の至福感を求めるが故、これ程脂っこく諄からん。宛らフランス人、況や西洋人の羊水とは、既に油分にて出来ているやもしれぬ。幾ら西洋人が、その体内に必要以上に摂取せし脂肪分を体外に排出する物質を所持しておろうが、これ程脂っこく諄きものを欲するは尋常にあらず。故にあれ程体臭も臭く、耳垢さえも脂っぽく耳垂れとなりて自然に耳から垂れて来る故に耳掃除の必要さえなからん。日がな純和食を食する私なんぞ、凡そ「出汁味覚」と思われれば、愛に対する至福感もフランス人に比べれば僅かならんと推察出来、道理で東君から「愛の育み方を知らん不幸な男」なんぞと呼ばれしか。
さてここまでドライブインのレストランにて食事するが故、大層なる出費となりしイタリア軍団も、我々の「不味い飯に無駄金は叩かん」との倹約ぶりから、漸く倹約への手掛かりを見つけし様子にて、皆で纏めてバケットとハムとチーズを購入し、サンドウィッチを拵えんと目論みし。然れば売店入口にて新発売のチョコ入りパンの試食販売をする女性に「サンドウィッチを作りたいからナイフを貸してくれ」と懇願、図々しくも彼女の作業台上にて徐ろにサンドウィッチを作り始めれば、この図々しさにこちらは思わず唖然、こいつらどんだけ悪気ないねん。当然好色なるイタリア人なれば、早速その女性と軽妙なるトークまで展開し始め、挙げ句私に「彼女もイタリア人なんだぜ!」と、その女性を紹介する始末。彼等はその女性とサンドウィッチ片手に歓談、挙げ句彼女が我々全員にそのチョコパンを振る舞う有様。恐るべしは、イタリア人の能天気な図々しさと悪気のなさかな。
午後7時前、今宵の会場Oetinger Villaに到着。教会を改装せし雰囲気のあるクラブなり。 今宵の晩飯はスタッフの手料理カレーライスにして、再びフランスからドイツに戻れども矢張り味は殆ど皆無にして、またしてもハバネロソースをぶっ掛け食す羽目に。それにしても何でカレーに味ないねん!お前らが「油味覚」なんは判ってるけど、もしかして脂の味しか判らへんのとちゃうやろな?
いざ開演となりセッティングすればギターにトラブル発生、ハンダ付けに関し自称「黄金の右手」を持つ東君と共に修理せんと中を覗けど、既に我々の理解を越えておれば修理叶わず、結局為す術もなくFrancescoのテレキャスターを拝借し演奏。されどどうにも音作り困難にして、最後まで悪戦苦闘。終演後にFrancesco曰く「俺のギターはリアピックアップが壊れていて低音が出ないから、フロントしか使えないんだ」お前、それを先に言わんかい!
終演後は楽屋にて、イタリア軍団と共にスコッチを飲み倒し歓談。明日楽器屋へ赴きギターを修理するか、若しくは新たに買うかせんと、FrancescoとKoppaに伝えれば「それは当然最優先事項だ!明朝は9時に出発しよう!」との返事なれど、果たして予定通りに出発し得るやら大いに不安。晩飯のカレーが大量に鍋に残っておれば、タッパに詰め明日へ備えん。投宿先は会場の2階に設けられしツアーバンド用宿泊部屋なれど、部屋の外のソファにて寝袋に包まり、午前4時半就寝。
11月21日(金)
午前5時半起床。朝飯を拵えんとキッチンへ赴けば施錠されており使えず。ならばと冷麺的発想から、洗面台の湯にてラーメンをふやかし、昨日のオーシャンサラダの残りとチキンナゲットに大根おろしを加えポン酢をぶっ掛け、チキンナゲットおろしサラダ麺を作成すれば、あの胸焼けさせられしサラダさえポン酢と大根おろしにより諄さも見事緩和されし。結局ポン酢にて食らうが最も美味にして、大いに満足行く結果なり。
午前9時、津山さんより台所が解錠されたと聞くや、昨夜タッパにキープせしカレーライスの残りを用いてドライカレーを拵え弁当にせんとす。そもそも味の皆無なる欧州流カレーなればこそ、フライパンにカレールーと冷飯をぶち込み、先ずは今回よりA代表入りせし日本のカレー粉を投入、日本のカレー粉は大抵こちらの所謂カレー粉に比べ香辛料の内容や配合が大いに異なれば、これにて味の根幹となる部分を補整せんとす。何しろこの一見カレーの如き代物は、ジャガイモに殆ど味が滲みておらず、またニンジンとレンズ豆の如きは具として確認し得れど、肝心の玉葱の存在が如何にしても確認出来ず、大凡煮込み時間が極端に短ければ、野菜の旨味成分が煮崩れにより溶け出す事もなく、御陰で何とも薄っ平き味に成り果てしと推察されし。カレー粉に続き麺つゆを投入、出汁こそ日本人の命、本場インドカレーと日本のカレーを同時に食べ比べれば、日本のカレールーは出汁の味がするとは幾度もこの人声天語にても述べし通り。されどこの欧州流カレーの不味さは半端ならず、カレー粉と麺つゆにても未だ納得の行く味とはならぬ有様、矢張りドライカレーに欠かせぬはウスターソースなれど、キッチンを探索すれど見当たらねば、ここはトンカツソースにて代用するしか術もなし。いざトンカツソースを投入するや、嗚呼、素晴らしきかな、見事に豊穣にして美味なるドライカレーの味に昇華されり。量が多ければ、皿とタッパとに取り分け、半分を熱々のまま今食らい、残り半分を弁当にせん。そもそもジャガイモが大量に投入されしカレーなれば、食感はカレーコロッケの中身の如しにして見た目は大いに悪けれど、ジャガイモのホクホク感が些少なりとも豪華さを感じさせるか。これは今回のツアー中に食せし全メニューに於いても、間違いなくベスト3に数えられん。
さて午前9時出発予定と伺っておれど、時間厳守を旨とするKoppa以外のイタリア軍団の面々は、案の定午前9時過ぎに漸く起床の御様子。ホールに未だ機材を置いてあれば、先ず積み込まねばならねども、ホールの扉が施錠されており叶わず。鍵を所持するクラブのスタッフに電話すれば今から出向くとの事なれど、いつまで経っても来る気配なく、キッチンにてはLucaとDavideが悠長に朝飯なんぞ食らいておれば、この隙にと東君もラーメンを食い始め、ならばそれに続かんと津山さんがラーメンを調理し始めるや、何とも間悪くホールが解錠されしとの知らせにて、津山さんは機材搬出積み込みを行いつつラーメンを啜る始末。結局午前11時、Diksmuideへ向け出発。
出発時間が大幅に遅れし故、Koppaは休憩なしにて一気に走り切る所存と察すればこそ、弁当のドライカレーを食らいて便意を催しては一大事と、迂闊に弁当を食す訳にもいかず。国境を越えベルギー突入を確認すれど、国境から今宵の目的地までどれ程の距離が残されておるか不明にして、未だ弁当に手を付けられず。されど運転席に装着されしカーナビの画面に、到着予定時刻が表示されておれば、余程の渋滞に巻込まれぬ限りはその到着予定時間に到着せんと思い、ここで漸く弁当のドライカレーを食す。冷めても充分に美味なり。
午後5時過ぎに今宵の会場4ADに到着。クラブのスタッフに楽器屋の所在を訊ねれば、一番近い楽器屋はここから約40km、今から急いで赴きても閉店までに間に合うか否やとの事なれば、今日のギター修理は不可能かと諦めし矢先、ここのスタッフが修理を試みるとの申し出。結果無事ギターを修理して頂ければ、ひたすら感謝あるのみ。クラブ内に併設されるバーには、界隈の若き女性達が屯しておれば、連日客席を眺めては「今日はfiga(お*こ)がいっぱいだ!」「今日はno figaだ…」と一喜一憂するイタリア軍団は「今夜こそポイント獲得だ!」と、大層興奮気味なり。況してや今宵の投宿先は、このクラブと同系列の4AD Hotelにしてクラブと隣接しておれば「今夜は絶対何かが起こる!」と期待感もピークに達せし様子なり。
さて今宵の晩飯は、投宿先のホテルの食堂にて、勤続20年の初老女性シェフによる鮭料理なり。鮭のソテーのクリームソースとアボガドソース添え、トマトの生鮭マヨネーズ和え詰め、サラダ、マッシュポテトと云うラインナップにして、全て大層美味なれば、Francescoも「今回のツアーのベストフード!」と大絶賛。
さて会場へ戻れば、イタリア軍団の期待を見事裏切るが如く、先程バーにて屯せし若き女性達はライヴの客にあらねば既にその姿なく、詰め掛けし満場の客の9割は男性客なれば、彼等の絶望ぶりにこちらも思わず笑うしか術もなし。されどStearica物販担当のLucaは、その物販ブースにて何やらひとりの女性客と懇意になりておれば、Francesco曰く「今夜きっとLucaがポイントを獲得するぞ!」終演後もLucaはその女性客と話し込んでおれば、我々は撤収しホテルへ帰還。食堂にて赤ワインやらスコッチを呷りアホ話に終始、その横でFrancescoは、食堂に設置されるPCを使い、Skypeにて彼女と愛を語らっておられれば、皆に散々冷やかされる有様。お前らは中学生か!自ずから話題は、Lucaが今宵ポイント獲得を果たし得るかに及び、まるで小学生か中学生の修学旅行の如くDavideが「俺、ちょっと偵察して来る!」と斥候に出る始末。彼のレポートによると、Lucaの部屋から女性との話し声が聞こえるとの事で、先ずは連れ込む事に成功せしか。今宵イタリア軍団はLucaに気を利かせ、Koppaの部屋に移動しその動向を伺うとか。ホンマにお前らなぁ、これは修学旅行か!挙げ句バナナとキウイにてまたしても「コンテンポラリーアート」を製作し爆笑しておれば、まるで小学生か中学生の如し。
結局食堂にてFrancescoと飲み明かし、午前6時就寝。
(2009/1/5)