~序文~
他のメンバーより一足先に欧州入りする私は、10月26日朝に大阪伊丹空港より出発し成田空港へ、この度はScandinavian Airを利用しておれば、Copenhagen経由にてBarcelonaへ向かう段取り。チケットの購入時に、Copenhagenにて当日の乗り継ぎ便なければ一泊せねばならぬと予め伺ってはおれど、単なるトランジット故、当然宿泊は無料と思い込んでおれば、チェックインの際に、今宵のCopenhagenに於ける宿泊は含まれておらぬと知らされ思わず唖然、何しろクレジットカードなんぞ持てぬ身分にして所持金僅かに100デンマーククローネ(当日のレートでは1400円)と100ユーロ(当日のレートでは12600円)と日本円1万円程度なれば、果たして空港付近のホテルにて泊まる事叶うや如何に。昨秋の欧州ツアーに於いて、あのクソRyanairの陰謀によりやむを得ずLondon Stansted空港付近のホテルに泊まらざるを得じ際は、一夜の宿泊費が何と120ポンド(当時のレートで26400円)と云う驚愕の金額なれば、思わずその一件が脳裏を過りしか。(人声天語第138回「男は黙って噛み締めろ!(AMT & TMP U.F.O.欧州ツアー2007)」其之六参照)嘗て欧州にては、気温が氷点下の極寒にも関わらず野宿せし経験幾度もあれば、既に最悪の場合として、いきなり初日から北欧デンマークにての野宿さえも覚悟せしものなり。
チェックイン後、私はマイレージクラブのゴールド会員なればANAラウンジにてネット接続、Copenhagen空港付近のホテルを調べし処、現在の全所持金を以てすれば何とか宿泊し得そうなれど、何とも斯様に理不尽なる出費大いに納得行かねば、僅かなる可能性に賭けんと、奇特なる宿泊場所提供者求むとAMTのBBSに投稿、更に吉田達也氏にメールし、先のJNMF欧州ツアーに於けるCopenhagenのオルガナイザーMartinの連絡先を伺うや、メルアドは教えて頂けれど電話番号は不明との事。取り敢えずMartinへ事の次第に加えCopenhagen到着時間とフライトナンバーをメールすれば、いよいよ搭乗時間となり、ANAラウンジ名物の稲荷寿司4個をリュックに忍ばせ搭乗せり。さていざCopenhagenに到着せし処で、先ずはネット接続しMartinからの返信メール若しくはBBS投稿のレス等をチェックせねばならず、空港内にて野良電波を拾うは大抵不可なれば、何とか現金にてネット接続可能なる場所を探さねばならぬか。仮にMartin若しくは奇特なる宿泊場所提供者の電話番号を得し処で、そもそも携帯電話を持たぬ私なれば、公衆電話より連絡せねばならぬは必定、勿論向こうから連絡は一切不可能、果たして今宵の投宿先は何処になるやら。何にせよ寒空の下の野宿は避けたき処かな。
Copenhagen空港へ着くや、何とMartinが迎えに来てくれており、これは予想だにしておらねば感謝感激。これにて今宵は無料にて無事宿泊も叶い、また晩飯もANAラウンジにて失敬せし稲荷寿司4個と機内のキッチンにて失敬せしおにぎり3個を以て済ませば、これまた無料なり。Martinがビールを買いに行くとの事なれば、せめてもの御礼にとその代金は払わさせて頂き、ビールを呷りつつ音楽談義やら何やら歓談。Martinが午後8時頃に外出するや不覚にも大爆睡、目覚めれば丁度彼が帰宅せし午前2時過ぎにして、今更再び眠れぬと知れば、これにて見事時差ぼけと相成れり。早朝6時過ぎにMartin宅を失礼し、列車を乗り継ぎ再び空港へ立ち戻り、Barcelona行きのチェックインを無事済ませれば「貴方の12月8日のLondonから成田への帰国便がキャンセルになりましたので、チケットを購入した旅行代理店等に連絡して便の振り替え手続きをしてもらって下さい」と告げられし。一難去ってまた一難か。されど帰国までには大凡6週間程もあれば、然して慌てる事もあるまいと気にもせず。斯くして無事Barcelonaへ向かいしは、メンバー一同の渡欧予定日を遡る事3日の10月27日の事なり。
因みに私の出国日たる10月26日付けの外貨→日本円の両替レートは以下の通り。1ユーロ=120.83円、1イギリスポンド=144.72円、1スイスフラン=78.41円、1ノルウェイクローネ=11.76円、1デンマーククローネ=14.44円。
さて今回持参せし海外ツアー必携品、所謂激不味料理対策としての味を補正修正する為の調味料をはじめとする「A代表」をここに紹介せん。今やA代表レギュラーとなりし「麺つゆ」「ポン酢」「トンカツソース」「おろし生姜」に始まり、久々のA代表復帰となりし「マヨネーズ」、カレー味こそ最強の味補正力を持っておればこその「粉末カレー粉」、手軽に煮物なんぞ作らんとの思惑あればこそA代表復帰を果たせし「ほんだし」、味噌汁としてのみならず調味料としても活躍を期待し得る「袋入りしじみ汁」、今やタバスコ如きでは全く辛味を感ぜられぬ超激辛党の私なればこそ、普段より愛用せし「ハバネロソース」も2本召喚、日本に於ける日常生活にては全く縁なき代物なれど、今回のツアーに於いては新たなる秘密兵器として大いに活躍が期待される「味の素」、愛しき大根おろしを料理に添えんとすればこその「おろし金」、食糧調達行えぬツアー初日の夜に食さんと持参せり「カップ麺」、以上の究極的最強ラインナップにて、今回の欧州激不味料理戦線を見事殲滅撃沈せんとするものなり。
10月31日(金)
昨夜、兄ぃよりメンバー全員無事にRoma入り果たせしとの報を受けておれば、今宵彼等と合流し、いよいよ欧州ツアーの幕は切って落とされん。
地下鉄と列車を乗り継ぎBarcelona空港へ。ターミナルCは列車の駅より遥か彼方にして、されどターミナルバスの存在に気付かねば、重量級の荷物を携え徒歩にて向かう愚かさ。この移動に約20分を要せば全く以てアホ極まりなし。Vueling Airなる格安フライトを利用すればこそ、受託荷物20kg制限もさぞ厳しからん、些かの超過料金は支払う心構えにて臨むや、4kgの重量超過は不問に付され、ギターは機内に持ち込めとの指示にて、午後1時Barcelona発Roma行き、ここにチェックイン無事完了。
さてRoma Fiumicino空港ターミナルBに到着、されど出口の案内不備にてAlitalia航空の牙城ターミナルAへと誘導されれば、同じ過ちを犯せしイタリア人老夫婦と共に、一度出口を通過しターミナルBへ移動、事情を説明しスタッフ用セキュリティーチェックを通過し出口より逆走する形にて漸くVueling Airの受託手荷物受け取り場へ到着、既に受託手荷物受け取り場のコンベアは停止しておれど、大凡乗客ほぼ全員分のスーツケース等が残されており、即ち乗客ほぼ全員が今頃自分の荷物を探し空港内を彷徨中ならん。国際空港にてこの案内のええ加減さ、普通なら苦情も殺到しようものにして、早々に対処もしようものなれど、流石は能天気天国イタリアか、斯様な事なんぞを以てしても誰も腹さえ立てぬに違いなからん。
列車にてTermini駅へ移動、明日のTorino行き切符4枚を182ユーロにて購入。ヨーロッパの常識として、何しろ切符を購入するには長蛇の列に並ばねばならぬ故、前日に購入するが得策なり。未だ長蛇の列を成しておれど、私に切符を発券せし職員も終業時間と相成りしか、私の切符発券を最後に無情にも窓口閉鎖、ホンマこいつらに「サービス」なる概念なんぞ一切あらざらん。
地下鉄にてPiramideへ、駅の出口にて運良くメンバー全員と合流、何でもここで午後5時にオルガナイザーと待ち合わせとか。これはなかなか幸先良きかな。オルガナイザーMassiの車にて今宵の会場Sinister Noiseへ。
サウンドチェック後、晩飯はスタッフの手料理にしてシンプル極まりなきトマトソースのスパゲッティー。全員大いに空腹なれば「まさかこんだけか?」「イタリアやしパスタは前菜でしょう」「いや、これ以上何か出て来る気配ないで…」結局このスパゲッティーのみにて晩飯完了。Shopzone設営後、時差ぼけ故に楽屋にて爆睡、東君の「お仕事ですよ」の一言にて起床、即ステージへ。
終演後、イタリアンリカーを数杯呷り搬出。送迎のMassiの車を待つ間に界隈のバーガーキングにてWhopper Meal+オニオンリングを購入。今宵の投宿先はMassi宅、私のベッドに置かれし首枕所謂Uピローが何とも心地良し。そもそも羽毛枕やら一時話題になりし低反発素材枕やらは寝心地悪く、相も変わらず蕎麦殻枕を愛用しれおれど、このUピローは空気で膨らませるエアーピローにあらず、硬目にして大きさ高さも丁度良き塩梅、これは帰国後に是非購入したき逸品なり。
夜食にオニオンリングとフライドポテトに日本より持参せしハバネロソースを打っ掛け食せり。午前2時半就寝。
11月1日(土)
午前6時起床。朝飯として昨夜購入せしWhooperを食らえば、幾らハバネロソースを召喚せしところで、矢張り冷め切りしハンバーガー大いに不味し。
午前8時半、Roma Termini駅へ向け出発、長旅なれば駅のキオスクにて昼飯の菓子パン3個を購入。そもそも大の甘味党でもある私なれば、欧州のクソ甘き菓子パン類なんぞ全く以て問題なし。昨今の日本に於ける「甘さ抑えめ」こそ許すべからじ。甘いもんが甘なかってどないすんのんじゃ!
午前9時46分発Torino行きICに乗車。車内はかなりの混雑の様子にて、我々に強引に割り込み乗車せんとする男性が大いに鬱陶しけれど、その輩が私の前に強引に割り込みし際、私の腰にぶら下がるシザーバッグの蓋を開けしを直感的に察すれば、このボケはスリなり。「こらっ!お前何しくさっとんじゃ!ボケがぁ!」斯様な場合口から出づるは日本語にして、未だ何も盗られじを瞬時に確認すれば「こいつスリやで!」他のメンバーに伝えるや、そのまま車内から引き摺り下ろせし。各自貴重品を確認すれば何も盗られておらず。嘗てドイツの列車内にて、私は稼ぎ全額を盗まれし経緯もあれば(人声天語第115回「AMT欧州ツアー2004 ~世界残酷食物語~」#5参照)同じ過ちを二度と繰り返すまじ。7時間に及ぶ列車の旅は大いに退屈、先程購入せし菓子パンを食らい、iPodにて音楽鑑賞しつつ転寝。
午後5時前、無事にTorino Porta Nuova駅到着、されど迎えの姿は見当たらず、矢張りイタリア人なれば時間に無頓着は当然か。駅構内の売店にてプリングルスとグレープフルーツジュースを購入、プリングルスにて空腹を誤摩化せり。迎えを待つ事約1時間、漸く今回ツアーを共にするイタリアのバンドStearicaのベーシストLucaが迎えに来れば、彼の車にて彼等のスタジオへ。Lucaは10年前にバイクで大事故を起こし下半身不随となれば、車椅子生活を強いられておれど、車の運転は勿論の事、何とも器用に自力にて車椅子を降ろし乗り移る等、その逞しさは大いに尊敬に値する。彼等のスタジオへ到着すれば、今回のツアーのブッキングを手掛けしStearicaのギタリストFrancescoとドラマーDavideと再会。今回ツアードライバーを務めるKoppaは巨漢のパンクスなり。既に巨大バンに機材一式と予め送付せし物販商品等も積み込まれており、後はエンジニアのLorenzoを待つばかり。出発前の腹拵えにとピザをオーダー、イタリア人の彼等曰く「イタリア国外のイタリア料理は最悪だ!」彼等のソウルフードたるイタリア料理と暫しの別れとばかりにピザを頬張りしか。されどイタリアにしては珍しきアメリカンスタイルとも云える厚手のパンピザなれば、国外に於いても然して問題なかろうと思うは、これも所詮日本人なればこそか。ピザ好き東君はいきなりのピザに御満悦。
Lorenzoが予定より3時間遅れにて到着、これにて漸く今宵の目的地たるフランスのLyonへ向け出発。3人掛けシート3列なれば、最前列はドライバーのKpppa、Davide、そしてFrancesco、2列目は車椅子のLucaが扉側、そしてLorenzo、日本代表として東君の3名、最後列に津山さん、兄ぃ、私と云うオーダー。流石は「陽気なイタリア人」だけあって、兎に角ひたすら喋り続ける有様、喋りの大阪人でもここまで休みなく喋る続ける事なかろうかと思う程、喋る、喋る、喋る。2列目のLorenzoに至っては立ち上がりて最前列のシートへ乗り込まん勢いなり。余りの喧しさ故、iPodにて外部の音を遮断し転寝を決め込むしか術もなし。
深夜、LyonのオルガナイザーFred宅へ到着。早速酒盛り状態にして、私はイタリアンリカーのAmarettoを頂く。家主が用意してくれしドリトス用の一見かに味噌の如き自家製ソースがまさしくかに味噌の如きで美味なり。何でも小魚とアボガドをペースト状にして練り合わせし逸品とか。
AMT早寝組の兄ぃと津山さんは早々に就寝されておられれど、私同様AMT夜更かし組の東君は、若かりし頃に飲みつけしテネシーウイスキーJack Daniel’sを発見し、またしても御満悦。先ずは無事に初日の移動を終えし事を祝し、また明日よりいよいよ始まるツアーへ向け「ではよろしく!」と2人で乾杯。
気が付けばすっかり夜も更けイタリア軍団も就寝すれど、唯ひとり猛烈に喋り続けるエンジニアのLorenzo、どうやら彼に気に入られしか、遂には元彼女の写真まで見せられる始末にして、挙げ句朝まで延々と彼の話相手をさせられる始末、御陰でボトルは次々と空に。
11月2日(日)
徹夜状態のまま、朝飯を拵えんとキッチンへ。日本より持参せり唯一のカップ麺天婦羅そばを、キッチンにて発見せしサラダ菜と胡麻と唐辛子を加え食さんとすれば、湯が温かりしか麺が程よき塩梅とならず、堪り兼ねて鍋に移し一気に調理し食せり。
されど何とも中途半端な量なれば空腹感は満たされず、再びキッチンを物色しパスタとカレー用スパイス数種を発見、これにてカレーうどん擬きを製作すれば、先程の天婦羅そばよりも遥かに美味なり。
一方殆ど朝飯を食さぬ習慣のイタリア人なれば、彼等はコーヒーのみにて済ませ、本日の目的地Nantesへ向け出発。相も変わらずイタリア軍団の喋り捲り具合は留まる事を知らず、そのハイテンションぶりたるや完全に脱帽完敗にして、矢張りiPodを御供に転寝を決め込むしか術もなし。兎に角「cazzo(ち*ぽ)」「figa(お*こ)」「fanculo(Fu*k you!)」「merda(うんこ)」等を連発し捲る故、津山さんは大笑い。「まあ言うたら、こいつらずっと『ち*ぽ』とか『お*こ』とかばっかし言うてんねやろ!アホやんけ!まるでワシらと一緒やがな!」いえいえ、決して一緒ではございません。何しろセクシーな女性を見掛ければ、「figa! figa!(お*こ!お*こ!)」と全員大騒ぎにして、窓を開けてアピールする程の大馬鹿野郎ぶりなれば、更にこのツアーに於いて、女性から迫られキスへ到れば3ポイント、こちらから女性に迫りてキスが叶えば5ポイント、ペッティング若しくはオーラルセックスに到れば50ポイント、事を見事成就すれば100ポイントなんぞと、ナンパコンペティションさえ始まる始末。ならば日本代表として、AMTモテ男ランキングNo.1の東洋之をノミネート、果たしてこの超強烈なイタリア軍団に立ち向かえるのか。
途中のドライブインにて各自何やら購入し捕食、私はLiptonのIce Teaマンゴ味を所望。欧州にて売られるLiptonのIce Teaは、マンゴ味、レモン味、パイナップル味等、必ずや果実フレーバーを加えられており、一方で茶っ葉の味なんぞ殆どせぬ程希薄なれば、まるでフルーツジュースを飲み干せし空瓶に出涸らしの紅茶を注ぎしかの如き味なれど、他の清涼飲料は果実ジュースか炭酸飲料しか存在しておらねば、これが最も甘みの抑えられし代物なり。私は無類の甘味党なれば「甘さ抑えめ」を好まねど、唯一ジュースの類いは好まざりて、日頃はお茶を愛飲すればこそ、甘味飲料にあらざる飲物がミネラルウォーターとスパークリングウォーターしか存在せぬ欧州に於いては、常々苦悶させられるものなり。
燃えるイタリアン・パンクスのKoppaは、運転中にヒーターを全く入れぬ故、車内の寒さは尋常ならず。今回のツアーは全行程車移動と知ればこそ、然して防寒具も必要あるまいと、革ジャン以外に何も持参しておらねば、これは全くの想定外。寝袋を引き摺り出し、足元から腰にかけて寝袋の中へ潜り込めば、何とか足元からの冷気は遮断し得しか。イタリア軍団は既に完全防寒状態にて相変わらず大騒ぎしておれど、こちらはひたすら寒さに打ち震え転寝を決め込むのみ。もしこのまま極寒の北欧やスイス山岳部に突入されれば、死さえも覚悟せねばならぬか。
今宵は「Soy Festival 6」最終日のヘッドライナーとして出演、午後3時入りとの事なれど午後6時過ぎに会場Pannonicaへ到着。ひたすら能天気なイタリア人なれば矢張り時間に遅れるは当然か。我々はサウンドチェックが面倒臭いとの理由から拒否、Stearicaがサウンドチェックする間に、楽屋に用意されし晩飯に群がる有様。パスタやインサラタ・デ・リゾ(insalata di riso)所謂ライスサラダ等も用意されし中から、カレーライス+サラダ+スパイシーなハンバーグの如き代物を選択。カレーは所謂典型的欧州カレーにして例によって味が無ければ、ハバネロソースと今回よりA代表入りせし味の素にて味を補正、これにて充分食し得し。以前より持参せしだしの素の類いは、加えれば塩っぱさも加味されると云う欠点を擁しておれど、味の素に於いては単純に味の奥行きのみを加味するに留まれば、些か味の素ならではの風味が鼻に付けど、塩っぱくなるよりは遥かに救われん。スパイシーなハンバーグの如きは充分に美味なれば問題なし。
パイの類いなんぞも用意されておれば、兄ぃと東君はすかさず持参せしタッパに詰め込み、津山さんはバケット丸々1本を、私はバケットにパイ1切れを挟み込みパイサンドを拵え、各々明日の朝飯にせんとお持ち帰り。
今宵はソールドアウトにて、入場出来ぬ多くの客が表に溢れれば、何とも申し訳なし。
終演後、Eveil’ Artなる工房を営む女性宅へイタリア軍団と共に投宿。移動中の車内にて丸一日爆睡せしにも関わらず、午前2時半就寝。
11月3日(月)
午前6時起床。家主が朝飯としてコーヒーとパンを用意してくれておれば、これも如何にも典型的フランスの朝飯にして、勿論文句なんぞあろう筈なく有り難く頂きし。
本日の移動にはイギリスへフェリーにての渡航も含まれておれば、午前8時半出発。途中のドライブインにて念願のトマトジュースを発見、結局1Lを1日にして飲み干せり。アメリカに於いては野菜ジュースV8を如何なるスーパーやガソリンスタンドにても購入し得れども、欧州に於いては野菜ジュースの存在はほぼ皆無、アラブ人が営むデリカにて稀に遭遇する程度にして、トマトジュースでさえ、あれ程料理にトマトを多用するにも関わらず、発見するは至難の業なり。更に非常食として即席ラーメン3袋とスパゲッティー1kgを購入。
車内は相変わらずの大騒ぎ、こいつらが黙る瞬間ってあるんか?途中のドライブインにてイタリア軍団はレストランへ向かい、ステーキなんぞ頬張っておれど、異常なる円高によって大幅に収入減となる我々は、ここは不味飯に無駄金は叩かんと節約、フェリーに乗船すればバーガーキングにでも寄りてWhooperでも食らわんとの思惑なり。
さて今回のツアーに於ける唯一の懸念とは、過ぐる夏のAMT & TCIのUK&アイルランド・ツアーに於いて、予め送付せし物販商品に消費税VATを課税され、約16万円(そもそも当時のレートが1ポンド=205円なればこそ)を払わされし経緯から、イギリス入国の際に於ける物販商品への課税一点なり。事前にFrancescoにこの件に関し伺えば、彼等は一度も課税されし経緯なしとかで「いざとなれば隠せば大丈夫だろう!ハッハッハッ!」常に能天気且つポジティヴなイタリア人なり。
フェリーポートへ到着するや、警備員に「チケット売り場は何処だ?」と問うておれば、いやはや今までフェリーにて移動せし事幾度とあれど、未だ嘗てチケットの予約もせぬ輩と仕事をするは初めてなり。能天気且つ陽気なイタリア人は何処までも行き当たりばったりか。チケットを購入せしFrancesco曰く「30分後に出航の便のチケットを買ったから、通関の際の荷物を調べる時間は殆どない筈だ!これで課税される事はないだろう!ハッハッハッ!」陽気なだけで行き当たりばったりと思っておれど、これはなかなかの切れ者なるか。イギリスへの入国手続きへと向かえば、空港に於ける何とも厳めしい雰囲気とは大いに異なり、しょうむないジョークなんぞも交えての入国審査、これにて無事イギリスへ入国を果たし、荷物のチェックも一切無ければこれにて課税される事もなし。全ては順調に運びしかと思いし刹那、無情にも我々が乗船予定のフェリーは既に出港、御陰で1時間後のフェリーに振り替えとの顛末、何もない閑散とせし寒空のフェリーポートにて佇むのみ、されど何とも陽気なイタリア軍団、彼等にネガティヴな思考回路は一切存在せぬ様子、相変わらずひたすら喋り捲りては爆笑せし有様。流石「人生の愉しみ方を教えてくれる国イタリア」に生を受けしイタリア人なり。
フェリーに乗船すれば、いざバーガーキングにでも赴かんと意気込めど、割高な豪華レストランのみにして安価なファーストフードは見当たらず、これもアメリカの帝国主義的資本主義を忌み嫌うフランス人の営むSea Franceなればこそか。御陰で我々の思惑は見事に外れ、空腹を抱えしままソファにて不貞寝を決め込むのみ。
Doverよりイギリス本土へ上陸するや、一路今宵の目的地Brightonを目指す。既に大幅に入り時間を遅れておれば、会場Green Houseへ到着せしは開場時間午後8時半さえ過ぎし午後9時過ぎ頃。されどイタリア軍団は全く気にする様子もなく「開演時間には間に合った、ハッハッハ!」と笑っておれば、通常なら時間厳守出来ぬ輩を大いに忌み嫌う津山さんなれど、彼等の天真爛漫な「悪気のなさ」の前には「なんかこいつらには腹立てへんわ…どうせワシら運ばれてるだけやし、もう『お任せします』って感じやなぁ…」と、完敗宣言。
今宵もソールドアウトにして、満場の客を掻き分け機材を搬入、Stearicaはサウンドチェックからそのまま本番へ突入。Shopzone社長津山さんと部長東君がShopzoneを設営し客の応対に当たる一方、私はその隙に界隈の中華料理店にて海老炒飯4人前をテイクアウト、大振りの海老がゴロゴロ入っており充分に美味、これにて漸く腹拵えも叶いし。
開演前にFrancesco曰く「到着が遅れたので、今夜Stearicaは30分のショートセットで終わるから、AMTはいつも通りのセットの長さで演奏してくれ」一見能天気にしてアホの如きなれど、この辺りはサポートバンドが何たるかを重々心得ておる様子、時折持ち時間を無視しては延々と演奏を続けるクソ前座バンドの御陰にて、ヘッドライナーたる我々がセットを大幅に短縮せねばならぬ憂き目に遭う事もあればこそ、その心意気に大いに感謝。
終演後、今宵は2組に分かれて投宿との事で、我々4名はO-Rosa RecordsのJames宅へ、イタリア軍団は彼等の知人宅へ。さてJames宅へ到着すれば、おぞましき程に散らかり捲りし部屋にて彼の友人2名がゲームに明け暮れており、久々に遭遇せしゴミ溜めの如き部屋なれども、斯くの如き部屋に投宿なんぞ数え切れぬ程の経験あれば、汚さなんぞ全く気にもならず。津山さんのみ2階の部屋にて既に就寝されておれど、東君と兄ぃ共々寝酒にウォッカを呷りつつ、Jamesと友人がサッカーゲームにて繰り広げる日本vsフランスを観戦、何と日本が圧勝すれば、W杯マニアの東君が一言「こんな事現実に起きる筈ないよなあ…」午前3時ソファにて就寝。
(2008/12/24)