11月7日
午前7時15分起床。東君のアラームが延々鳴っておれど、彼は全く起きる気配なく、結局津山さんが止めに行く始末。Mattiasがスウェディッシュ・ブレックファーストを振舞ってくれる。
レバーペーストとオムレツをトーストに乗せて頂けば、空腹もあってか、なかなか旨い。スウェーデン名物と云われる鰯料理も出されれば、先日のフェリーでの悪夢が甦れど、ここは敢えて挑戦してみる事とす。フェリーの物とは味的なベクトルは似通っておれど、こちらの方は一応何とか口には出来る程の不味さなり。矢張り後味にクローブの甘き香りが残れば、何故鰯にクローブなのか。いらん事せんでええから、そのまま塩焼きにでもして欲しい処。
さてタクシーにてMattias共々Gotenborg駅へ、またしてもMattiasがタクシー代を払っていた故、今度こそ払おうとすれど矢張り受け取ってもらえず。Mattiasとは数日後の再会を約束し、午前8時27分発Oslo行きの超特急Linxに乗り込む。リザベーションを行う時間がなかった為、車内にて支払い。流石北欧、1等車は大いに快適にして、木の温もりを大切にしたインテリアも素晴らしく、日本のJRも是非見習って欲しい処か。
午後1時10分無事にOslo駅着、ノルウエイのオルガナイザーにしてApartment Records主宰のPerが迎えに来てくれておれば、今度こそノルウエイ・クローネに両替えせんと思えども、生憎の日曜日なれば駅でさえ両替する事叶わず、両替は諦め、徒歩10分にてPer宅へ。
スウェーデン・クローネしか持たぬ故、今から仕事に行くと云うPerよりノルウエイ・クローネを幾分借り受け、近所のアラブ系ストアにて、米、大根、オクラ、キュウリ、茄子、葱、玉子、ラーメン等を購入。早速飯奉行の津山さんが米を炊けば、オクラを茹で、各自思い思いの食事にありつく。
私は、豆カレーの缶詰を購入した故、豆カレー+茹で玉子+オクラを頂けば、大層美味なり。
東君は、ランチョンミートを使用せし沖縄料理「ポークと玉子」ならぬビーフ缶を使っての「ビーフと玉子」
津山さんは先ず生卵を御飯に乗せ、そこへオクラを口でちぎってぶち込み、醤油をぶっかけ「オクラ玉子御飯」
はじめちゃんはシンプルな玉子御飯として食せば、各自大いに御飯を堪能した様子。
満腹なれば、メールチェックや昨夜のギャラ受け取りの件等の雑務を済ませ、売れ行きの芳しくない休譜のコピーを付け直す。風邪気味の東君とはじめちゃんは爆睡、津山さんは奥方へ電話すると外出すれど、さて帰って来たと思えば、徐ろにキュウリの浅漬を作成し、御飯+日本から持参せし野菜ふりかけ+キュウリ浅漬を貪り
更にヴァージョンアップを謀り、味噌汁をぶっかけネコまんまにしてかき込めど
それでも尚、未だ空腹が満たされぬのか、今度はキッチンにて発見せし残り物スパゲッティーに浅漬けを併せた「漬物スパ」を貪る有様。
私も玉子御飯+漬物で頂く。
夕方、PerがSynesthetic RecordingsのオーナーPetterを連れて帰宅、来年彼がリリースするAMT10周年記念の初期作品リイシューの打ち合わせ。更にここのルームメイト達も帰って来れば、皆でアイリッシュ・ウイスキーを片手に歓談、ここでも津山さんのトラッド・マニアぶりが炸裂、北欧トラッドの精通ぶりにノルウエイ人さえも驚愕至極。
PerとPetterがピザを購入して来れば、さて皆で貪れど、津山さん考案の「漬物ピザ」が意外にも大いに美味なれば、PerやPetterまでが漬物ピザを堪能する始末。
意外やこの組み合わせは、ピザ特有のくどさを見事消し去り、これにてこの後に控えるイタリア・ラウンドでのピザ地獄も乗り越えられようか。
皆流石に睡眠不足気味か、午後9時半頃には早々に就寝する中、私はPerとPetterと共にウイスキーをチビチビやりつつ歓談すれど、流石に疲れているのか、午後11時半に就寝。
11月8日
午前7時起床。津山さんは「漬物入り雑炊ラーメン」を食しておられ、私も「玉子入り鍋ラーメン」を食す。
午前7時15分にはTrondheimへ同行するPetterも来訪、皆でOslo駅へ向かう。朝早過ぎたのか、両替は未だ開いておらず、またしてもノルウエイ・クローネは手に出来ぬまま、午前8時7分発Trondheim行の列車に乗り込む。約6時間半の列車の旅なれど、全車両禁煙なれば、駅に停車する度にプラットホームへ降り、慌ただしく喫煙。ノルウエイ・クローネを所持せぬ故、車内のビュッフェにて昼食を取る事も叶わず、次第に迫り繰る空腹地獄を如何に対処するか、これが大きな問題と化す。私は車内サービスの紅茶を飲み凌げど、津山さんは必殺「おしゃぶり昆布」にて空腹感を紛らわせる作戦に。東君は、ここで虎の子「出前一丁胡麻とんこつ味」を取り出すや、車内サービス・コーナーに置かれている魔法瓶に入れられし紅茶用のお湯を用い、紙コップにてラーメンを作成すれど、麺がほぐれず大苦戦、挙げ句は乾麺を袋の中で砕き、そこへ粉末スープを混ぜて「セルフ・ベビースターラーメン胡麻とんこつ味」として食す有様なれど、何とも不味そうな風体なり。
午後2時45分、空腹極まりし矢先、漸くTrondheimに到着。オルガナイザーが迎えに来てくれており、先ずは徒歩5分の処にあるライヴ会場Blaestにて機材を降ろし、続いて徒歩2分のホテルへチェックイン。
あまりの空腹故、早速晩飯にする事とし、オルガナイザーに連れられ近所の中華料理屋へ。私は「黒椒牛柳」なる逸品を選択すれば、アジア放浪経験豊かな津山さん曰く「柳の葉で牛を絞め殺し、その葉で肉を縛って焼いた料理や」との事であったが、勿論斯様な筈なく、牛フィレ肉と野菜の炒め煮黒胡椒風味と云ったようなものなれど、折角の牛フィレ肉なれば、より素材の旨さを生かした料理方法もあろうもので、不味くはなけれど別段取り立てて旨くもなし。
されど満腹になれば、取り敢えずは先程までの空腹感からも解放され、幸せである事に違いなし。はじめちゃんは牛肉焼そば、東君は海鮮焼そばを、食に対して「知らんもんは食わん」と保守的な姿勢を貫く津山さんは「これは知ってるから」と焼飯を注文すれば、これぞ恐るべき大盛りなれど流石は津山さん、見事に悠々と完食。
漸く腹ごしらえも済んだ処で、午後5時、さてサウンドチェックと相成れば、津山さんの出音のデカさに、エンジニアが機転を利かせ、用意されていたSWRからAmpegの巨大アンプにスイッチ、このエンジニアなかなかの切れ者なれば、段取りも素晴らしく、一瞬にてサウンドチェックも終了すれば、午後6時にはホテルに戻り暫しの休息。
今宵は喫煙組と云う事にて東君と同室なれば、2人してビール片手にテレビにて大相撲やらアメリカのナンパ番組やらを観賞しておれば、東君はどうやら風邪の具合が芳しくない様子にて、苦しそうながらも爆睡、私は独り、アメリカのド田舎者達が都会育ちのド阿呆野郎とLAにて共同生活を送ると云う企画ものバラエティー番組なんぞも鑑賞し、更に引き続きカンフー映画さえ観ておれば、漸く午後10時前となり、東君を起こし会場へと向かう。
東君は風邪が矢張り酷い様子なれば楽屋にて寝かせ、今日は私と津山さんとでShopzoneを切り盛りする事となる。コピーを付け変えし効果は如実にして、ここまで苦戦せし旧譜の売れ行きも好調なり。本日のShopzone。
ノルウエイは、今春より公共の場所にての全面禁煙が法定されたとかで、ライヴ会場内でも一切禁煙なれば、この寒い中にも関わらず、多くの客が、表のオープンカフェにてビール片手にタバコをくわえる。何でもオーロラが出ていると、店のスタッフから教えられ、未だ極寒の季節にあらずともオーロラが見えるとはと、半信半疑にて津山さんと表へ出てみれば、確かにグリーンのカーテンが夜空に輝いており、前回オーロラを見た際は、極寒のマイナス35度であった故、何やら得した気分なり。
午後11時15分開演、今宵はワンマンなれば、オープング・バンドの御陰でアンプがへたっている心配もなく、エンジニアも素晴らしき腕前なれば、心地良き浮遊感を伴う大爆音にて演奏し得た。
(impro/Dark Star Blues/impro ~ La Le Lo/Pink Lady Lemonade/アンコール:impro ~ What Your Name/La Novia(アカペラ))
終演後、前回東君と共に泊めて頂いた家の女性と再会、あの折のコシキなるアルコール度数90%以上のTrondheimのローカル・アルコールを飲み捲った話なんぞで談笑、何でもコシキとはコーヒーで割った際の名称だそうで、紅茶で割れば別称らしく、そもそもこの強烈な逸品はこの地方特有の完全自家製アルコールだそうで、バーなんぞではお目に掛か得れども、店頭等でボトルを購入する事は不可らしい。また72年のDeep Purpleも観たと云うロック親爺ともロック談義なんぞに花を咲かせれば「君達の演奏は、ここ15年間で観たライヴでは最高だ」との賛辞も頂く。明朝の出立が早い故、メンバーを先にホテルへ返し、独りギャラの精算待ちをしておれば、店のスタッフも大いに喜んでくれた様子にして、美人女性スタッフより熱い抱擁なんぞもせがまれる始末、大いに役得なり。午前2時半に漸くホテルへ戻りシャワー、東君は既に就寝、風邪もどうやら峠なれば何とも苦しそうな様子。先日のフェリー内にて買い求めたキャビアを肴に、クラブから頂いたビールを独り呷る。午前4時、テレビにて「クロコダイル・ダンディー」を観つつ就寝。
11月9日
午前5時20分起床。7時からのブレックファーストへの未練を振り払うかの如く、午前5時50分、ホテルをチェックアウトし、タクシーにてTrondheim駅へ。Petterと合流し、さて午前6時27分発Oslo行きの列車のリザベーションを行おうと思えば、何と時刻表に斯様な列車は見当たらず、どうやら我々の携行しているユーレイルパス付録の時刻表は古いようで、既に時刻表は大幅に改編されていると思われる。AMT最初のヨーロッパ・ツアーの際も、同様のトラブルに難儀させられた事を思い出す。結局Oslo行きの始発は午前8時30分発なれば、ホテルのブレックファーストを一蹴してまで、あれ程朝早く出立したにも関わらず、駅構内にて何と2時間以上も列車を待たなければならぬ羽目と相成った次第、況して午前7時にならぬと売店やカフェレストラン等も開かない様子なれば、取り敢えずベンチに腰掛け仮眠するしかする事もなし。
漸く午前7時となり、カフェレストランにてブレックファーストでもと乗り込めど、何とも要領を解せぬ私なれば、どうせ不味そうなハムやらチーズやらパンやらしか選択肢が与えられぬ故、ここは潔く諦め、表のベンチに腰掛け朝焼けに輝く三日月を仰ぎて、タバコ片手に練り梅を舐めつつ、ここは「真の北欧流ブレックファースト」を堪能せんと、昨夜のクラブより頂きしビール2本を呷る。
その頃カフェレストランにて津山さんは、朝食バイキングに於いて、こっそりゆで玉子1個を万引きせんとポケットに忍ばせるも、バイキング形式なれば、何個取ろうがお構いなしにしてお咎めなし。しかし最終的には「金払おうと思ってんのに受け取ってもらわれへん」と云いつつ朝食バイキングを見事無銭飲食。ええ大人やねんからこれしきの金ぐらい払いなはれ。
乗車前にサンドウィッチ・スタンドにて昼食用にとサンドウィッチ1個を購入すれば、何故かバケットもおまけで付いて来る始末で、これはつまりサンドウィッチをおかずにして、バケットを齧れと云う意味合いなのか、まあ日本で云う処の牛丼+御飯みたいなものか。
午前8時30分発Oslo行きの列車に乗り込めば、流石にいきなり2時間程爆睡。目覚めれば空腹故、先程購入せしサンドウィッチを頬張る。フランスにて誰しもが食べ歩いているフランス流バケット・サンドウィッチに比べ、パンも柔らかければ、具も豊富にして味も問題なし。ハムも一度軽く火で焙り脂分を落としており、またバターの代わりとしてレバーペーストが塗られておれば、なかなか贅沢な味わいである。あのフランスのバケット・サンドウィッチは、顎が疲れる程にパンは硬く、具も貧相なれば、私は一向に好きになれぬどころか、如何に空腹であろうとも食べたいとは思わぬ代物にして、斯様に不味いサンドウィッチを愛するフランス人の食に対する意識の低さ、されど烏滸がましくも美食天国を自負するとは片腹痛し。まだお前らが「不味い」と忌み嫌うマクドナルドのビッグマックの方が百倍マシじゃ!フランス人全員切腹せえ、ボケが!なんぞとフランスへの文句を垂れつつ腹も膨れれば、また思い出したかのように眠くなるもので、再び爆睡。
午後3時半、Oslo駅に到着。Perが迎えに来てくれ、先ずは彼の家にて車に機材を積み込み、我々一同は先日購入したラーメンを食す。カレーラーメンなれば、味的には何の問題もなし。津山さんはPetterに連れられレコード屋へ、Fotharingayの1stアルバムUKオリジナル盤やAndy Robertsの在籍するEveryoneなるブリティッシュ・フォークロック・グループ等数点購入した模様。私はメールチェックにて東君と共にPer宅にステイ、はじめちゃんはPerと共に今夜のライヴ会場Garageへドラムの搬入。メールにて明日のフェリーの予約をMattiasに依頼、またこの先の日程についての確認等の雑務に明け暮れるうち、午後6時に津山さんとPetteyが帰宅、徒歩10分にて会場へ。
サウンドチェック後、Perの案内にて日本食レストランへ。各自思い思いの品、津山さんは平目握り+野菜定食+お茶、東君は刺身定食+ビール、はじめちゃんは鯛の生姜揚げ定食+お茶、Perは寿司セット+ビール、私は天婦羅定食をオーダー。ヨーロッパなれば、味噌汁+漬物3種がスープ&アペタイザーとして出されるも、「味噌汁も漬物も御飯と一緒に食べたいんじゃ~!」と、殆ど手をつけずにおれど、あまりの空腹故、食べても差し障りの少なそうなモヤシなんぞに箸を伸ばす。
クラブから食事代として頂いた1人当たり180クローネ内に抑えたつもりの津山さんなれど、「捨て銭は使わん」なる私の一言にて、日本と異なりお茶も有料である事を告げれば、そのショックは隠し切れず、されど悔し紛れかお茶をひたすらお替わりし捲る辺り、流石転んでもタダでは起きぬ男なり。一方一番安いビールをオーダーせし東君は「このビール、何か味薄いなあ」とこぼせば、すかさずPer曰く「それはノンアルコール・ビールだ」酒をこよなく愛する土佐男児東洋之、そのあまりに無情な顛末に敢え無く轟沈せし。
さて料理が出揃えば、津山さんは平目を堪能後、野菜定食に挑めども、味もない如何にもなヨーロッパ風野菜炒め+野菜天婦羅なれば、彼の三種の神器なる醤油と山椒と七味にて味つけ、見事完食。
東君の刺身定食は、一見豪勢な舟盛りなれど、あまり嬉しくないサーモンやマグロ等がメインにして、大して旨くはなかったそうな。
はじめちゃんの鯛の生姜揚げ定食は旨かったらしいが、自称味覚障害のはじめちゃんなれば、その真相は知る由もなけれど、本人が幸せそうなればそれで良し。
私の天婦羅定食は、エビ天6本に北欧ならではかサーモン天婦羅、更に人参やオクラや茄子の天婦羅等が大量に盛られたものなれば、斯様に多くの天婦羅を一度に食せる筈もなく、半分をテイクアウトすれば、何と新たに御飯も天つゆも同梱してくれるサービスぶり。衣は到底サクサクとは程遠かれど、この際斯様な文句を云える筈もなく、まあ充分に日本食を堪能したと云えようか。
東君とはじめちゃんはクラブへ戻り、私と津山さんはPerと共に彼の家へ。津山さんは、今宵の夜食にと、すかさず御飯を炊き、茄子の漬物も作成。私はメールにて明日のフェリーのチケットの件や今後の予定等の雑務。
さて会場に戻りてShopzoneをオープンし、前座バンドのパフォーマンスを眺むれば猛烈な睡魔に襲われ、楽屋にて爆睡。本日のShopzone。
前座バンドも終了し、さてセッティングしてみれば、ZOOMのマルチペダルのパネルが謎の点滅状態にして、どうにもならず怒り心頭、思わず叩き壊してしまうが、いざ演奏を始めれば、同じく電源を取っている他のペダルも同様に謎の点滅を繰り返し、音が途切れる事頻りにして、結局電源を必要とするディレイやリバーブ等のペダル全てを外し、9V電池で稼動しているファズとワウのみにて演奏すれば、御陰でスペーシーな広がりのある演奏は到底不可となり、ならばとひたすらノイジー且つハードチューンな演奏に終始、かなり狂乱な内容と化し、ギターアンプは最後に見事御陀仏御昇天。
(impro/Dark Star Blues/La Le Lo/impro/Pink Lady Lemonade)
終演後、機材を撤収しPer宅まで徒歩にて帰宅。明日の移動に向けてパッキング、津山さんは御飯+大根おろし+茄子の漬け物を食すや即寝成仏。
私はテイクアウトした天婦羅+茄子の漬物+御飯にて夜食、これはいと旨し。
その後、ワイン等飲みつつPerと歓談、午前5時40分就寝。
(2004/12/10)
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