『人声天語』 第123回「文句垂之助の欧州地獄旅(AMT &TCI 欧州ツアー2005)」#11

6月21日(火)

午前9時半起床。シャワーと洗濯を済ませ、出前一丁にAlexandroより頂戴せし茹で玉子を放り込みて朝飯とす。

飽くまでも食にこだわる兄ィは、キッチンにて見つけしジャガイモと玉葱を使ってのポテトスープ&オニオンサラダ、その手間を惜しまぬ姿勢は見習わねばならぬか。 

無精者コンビの片割れ田畑君は、目敏く洗濯機を発見するや、衣類殆どを打ち込み稼働。「ヤバい、今日履くパンツあらへん!」

本日はオフ故、さて何をして過ごさん。此処Stjepan宅にNikoと彼女(名前を「バッテラ」に聞き取れど如何に綴るか不明…しかし「バッテラ」ってなあ…)が迎えに来れば「マコト、勿論レコードショッピングだろ?」斯様に云われて断れば、男が廃ると云うものか。「行かいでか!でもその前にAir Franceに行って、フライトチケットの変更手続きを済ませたい」当初ツアー最終日はギリシャのTessalonikiに於けるフェスティバル出演であれば、本ツアー後にJ.F. Pauvrosとのデュオを控えし私のみ、Tessalonikiより直接フライトするチケットを購入しておれど、結局Tessalonikiのフェスティバル自体が消滅せし故、最終ライヴ予定地Athensよりのフライトに変更せねばならぬ。
皆で市街へと繰り出す。マーケットが開設されており覗いてみれば、何と「The Bast of Bonsai」と書かれし盆栽屋を発見、一体如何な盆栽かと伺えば「Luck Bamboo」たる代物が並べられており、何じゃこりゃ?あまりに奇妙にして滑稽故に写真撮影すれば、店番のオバハンに睨まれる有様。「オバハン、これ盆栽ちゃうやんけ!」

更に通りを歩いて行けば、今度は「Latino Shop」たる謎の看板を発見、Latino Coolの異名を持つ兄ィに「兄ィの店ありまっせ!」ほんでこれは何屋やねん?

偶然にもレコード屋の看板を見つければ見逃せる筈もなく、いよいよ初めてのクロアチアにてのレコード漁りなり。旧ユーゴスラビア時代のロックのLP等が大量にあれど、試聴してみれば大した内容にあらず、店員のネエちゃんが「これはプログレよ!」と推薦せしバンドでさえ、単なる腐れフュージョンに過ぎず、「これはサイケデリックよ!」と推薦せし代物は至っては軒並みゴシック系ニューウェイヴなり。斯様な中で唯一気に入りしは「Drugi Nacin」なるバンドなり。所謂変種のハードロックとでも云えばよいか、何ともダサさ具合が涙を誘えり。私は1stのオリジナルLPを、田畑君は1stと2ndのカップリングCDを購入。

オープンカフェにて7 That Spellsのベーシスト(名前失念)と彼女も合流、ここで皆がビールを呷る間に、私はNikoに連れられAir Franceへ。変更せんとのチケットは、所謂クーポンにして、日本の旅行代理店にて伺いし処では手数料のみで変更可能との事であれど、ここの女性職員はよく存ぜぬ様子にして、変更の希望に添えるかどうかは後日電話連絡するとの事、おいおい頼むで。
カフェに戻り皆とビールを呷り、さて昼食へと赴く。「何が食べたい?」との問いに「クロアチアの郷土料理!」と、普段は間違えても斯様な戯言述べる筈もなけれども、旧東欧諸国は料理が美味いと知っておれば、未だ味わった経験のないもの至って興味深い故、ここは敢えて郷土料理を希望。ではとレストランに向けて歩き始めるや「The Original Legends Of Rock Hero Of Woodstock 36th Anniversary」なんぞと云う目を疑いたくもなるポスターを発見、出演はTen Years After、Canned Heat、Iron Butterfly、Country Joe McDonaldと、これまた21世紀とは思えぬ面子。老練ロッカー未だ健在なるか。それにしてもIron Butterflyは大いに観てみたい処、と云う訳で「In-A-Gadda-Da-Vida」が頭の中でエンドレスにてプレイされる有様。

さてレストランに到着、Nikoが「Hardcore meat!」と呼ぶその代物を皆で注文、ハードコアな肉って何や?正体は、トルコ料理のKofteに類似せしハンバーグの如きのみがパンに挟まれし代物なり。付け合わせに玉葱スライスが添えられておれば、何故このスライスも一緒に挟まぬのか不思議でならぬ。味の方もKofteと類似せし、少々香辛料を効かせし具合にて至って美味なれど、矢張り味の単調さに、どうしても食い飽きるは仕方なしか。せめてトルコのサンドウィッチの如く野菜がいろいろ挟まれていたり、ソースも数種添えられておれば、もう少し様々な味のバリエーションも楽しめると云うものであろうが、ソースも添えられておらねば、付け合わせも玉葱のみとは、これでは紅生姜やら七味等のトッピング一切皆無にして味噌汁もお新香もなしの牛丼を食らうようなもの。

経済的理由により、今回のツアーに於いては「絶対にレコードは買わん」と宣誓せし東君は、せんせいと連れ立ちNiko宅にてメールチェック、田畑君と兄ィは、スーパーにて食糧を仕入れるとかで、私のみStjepanに案内されレコード屋へ出陣、何でもAMTの作品も扱っていると云う、Nikoの云う処の「狂ったサイケ親爺の店」へ連れて行って貰えば、その店主たるサイケ親爺に「お前はGongのギタリストだろ?あの新譜は最高だ!」と顔を見るなり熱烈歓迎され、コーヒーと赤ワインを頂戴する羽目となり、おちおちレコード棚のチェックさえさせて貰えぬ有様。Niko曰く「クロアチア唯一のサイケデリック専門店」だそうだが、リイシューCDがメインなれば、結局Pink FloydのDVDを購入するのみに留まる。店内の柱にはサイケデリックなペイントが施されておれば、これはこのサイケ親爺の娘が描きしものとか、親娘揃ってのサイケ家族なるか。
再びオープンカフェに戻りて東君一行と合流し、軽くビールを呷る。クロアチアは、ポーランドやトルコ、南フランスと並ぶ美女の産地なれば、カフェに座する間も目の休まる暇さえなし。されど賞味期限が短いのは仕方あるまい。花の命は短くて、綺麗な花ほどデブになる。

Stjepan宅に戻れば、あまりの暑さに田畑君は既にダウンの御様子。ここZagrebは先のイタリアよりも更に暑けれど、当然クーラーなんぞ備えておらず、確かに夜ともなれば随分涼しけれど、矢張り日中気温が36度なんぞとは、暑さに滅法弱い私にとれば灼熱地獄以外の何物でもなし。暑気中り気味なればスタミナをつけんと思えども、持ち合わせし食糧は今や出前一丁のみなれば、晩飯は再びその出前一丁にて済ませる。果てしなく食にこだわる兄ィは、独り黙々とキッチンにて調理中、一方リビングルームでは、サッカーフリークの東君と田畑君がテレビにてサッカー観戦中。さて兄ィが出来上がりし料理を携え食卓テーブルへ登場、今宵のメニューは具沢山のチャンポンなれば、サッカーの試合に夢中でありし筈の東君、この堪らぬ匂いと麺を美味そうに啜る音、何より兄ィの「うん、うん、う~ん、美味いよ、う~ん」と云う感嘆具合に、もうどうにも我慢ならぬのか、遂には一口御強請りする始末。

Stjepanのリクエストにて、先程購入せしPink FloydのDVDを皆で観賞、初期から中期までのライヴ映像集なれば、自然と皆でPink Floydについて語り合う。
「Pink Floydって何であんなに売れたんやろ?テクニックあった訳でもシングルヒットがあった訳でもないのになあ。」
「歌もハミングやスキャットだけやったりするしなあ。」
「やっぱりあのRoger Watersの叫び声で売れたんちゃう?」
「あれってどないやって出してんねやろ?」
「殆どのプログレバンドが音楽的に行き詰まって解散したのに、Pink Floydは『古臭い』って云われへんかったしね。」
「でも『The Wall』以降はおもろないねえ。」
「今のルックスは酷いね。特にDave Gilmore。元モデルやったのに…。」
「ハゲてデブって最悪のパターンやね。せめてどっちかだけにせえへんと。」
「年とっても、あんな風にだけはなりたないねえ。」
「何か最近Roger Watersが参加してるらしいやん。」
「今更って感じやね。」
「Roger Watersもソロで酷いパフォーマンスしてるよね。殆ど自分のヒットメドレーって感じで。」
「コンセプトが売りの人間やったのにね、終わってるわ。」
「ルックスも俳優みたいになってるよなあ。」
「Rockちゃうねえ。」
「結局再結成したらあかん云うこっちゃなあ。」
「長髪切った時点で終わりやろ、Rockは…。」
「その点Black Sabbathは長髪やなあ、スーツとか絶対着いひんし。Rockやなあ。」
「Led ZeppelinはRobert Plantだけやなあ。今のJimmy Pageは酷いで。」
「Ritchie Blackmoreは長髪やけど植毛やな。」
「(DVDを観ながら)この頃のDave Gilmoreはカッコええのになあ。」
「まあハゲんのはしゃあないけどねえ。今はこれ誰かわかれへんもんな、Gilmore。」
「ハゲても長髪やな!」
「内田裕也か!」
「それは嫌やな!」
結局馬鹿話は延々と続き、午前1時頃就寝。

6月22日(水)

午前10時起床。先ずはシャワーを済ませ、洗濯機にて洗濯、矢張り機械は便利なり。早起きせし兄ィは、何と朝一番で米を炊いておられる。主夫の鏡。さてその兄ィの朝飯とは、何と昨夜のうちに下拵えせし豚の生姜焼き定食なり。

「うん、うん、う~ん、美味いよ」皆の猛烈な羨望の眼差しを一点に集めつつも、恍惚の表情にて豚の生姜焼き定食を堪能しておられれば、昨夜皆がテレビを眺めつつゴロゴロせし間も、独りキッチンに立ち何やらこさえておられしは、これであったか。

未だに大量のそうめんやら蕎麦を所持する東君は、一気にそれらの消費に挑めども「もう食い飽きたなあ」とこぼしておられる。何しろ横では兄ィが豚の生姜焼き定食を食しておられれば、そう滅多な事ではこれに勝てぬ。負けず嫌いの私なれば、兄ィの「御飯たくさんあるから食べて」とのお言葉に甘え、ここで最終奥義たる必殺アイテムのレトルトカレーを取り出し、久々のカレーライスを頂く。日本から持参せし食糧を全て食い尽くせしと思わせておきながら、実はレトルトカレー1袋のみ温存しておくイヤらしさなり。豚の生姜焼きの前に轟沈せし東君、今度はカレーの香りに再度轟沈「未だカレー持ちよったが?」これにて兄ィの豚生姜焼き定食に対し、然程見劣りせねば、ここは蕎麦を啜る東君に対し高らかに勝利の凱歌を口ずさみつつ、カレーライスを大いに満喫せん。

せんせいは昨日購入せしツナ缶を味見。

どうやら田畑君と、ツナとミックスベジタブルを用いてスパゲッティーを共同制作するらしい。2人してキッチンは大騒ぎなれど、無事に完成すれば、お味の方は「なかなかイケるで」との事。


されど量を作り過ぎたとかで残っておれば、私がその残りを貰い受け、粉末焼きそばソースとで和えれば焼きそば風スパゲッティーの完成、矢張りソース味は堪りませんな。

さてStjepan共々皆で外出、またしてもオープンカフェにてNikoと彼女と合流、どうやらこの辺りで斯様に待ち合わせするのが7 That Spells流らしい。相手が約束の時間に遅れ多少待たされようが、ビールを呷りて待つ故に腹も立たぬか。一見何とも良きアイデアのようにも思えるが、故により一層時間にルーズになると云う欠点もあり。先ずはNikoとAir Franceに向かい、恙無くチケットの変更も済ませれば、今度はNiko宅へ向かいてメールチェック。クロアチアからフィンランドへ向かうに当たり、イタリアのMilanoにて一泊し翌朝にフライトする為、投宿先を探さねばならぬ。またParisの投宿先の手配の結果も気になる処、加えてBergamoでのフェスティバル出演の有無も未だ確認取れず。ツアー中に於いてでさえ、未だ確認せねばならぬ雑務多ければ、気の休まる暇もなし。何とNiko宅にて日本刀を発見、彼曰く「400年前のもので本物だ」確かにこの重量感は紛れもなく本物であろうし、切れ味も素晴らしければ、ここはひとつ眠狂四郎宜しく円月殺法か、それとも拝一刀宜しく水鴎流斬馬刀若しくは波切りの太刀でも披露せん。

兄ィが何やら売店にて情報誌なんぞチェックしている故、一体何を御探しかと思えば「風俗情報誌ってないんだねえ」その威風堂々たる物腰、相当の使い手とお見受けいたした。その経緯を笑いながら伺いしStjepanとNikoが、兄ィにクロアチア産のエロDVDをプレゼント、満面の笑みを浮かべておられる兄ィなり。そんな嬉しそうな兄ィの顔、初めて拝まさせて頂きました。

今宵はAMT & TCI + 7 That Spellsによるセッションライヴなり。いざ機材を車に積み込まんと荷物を携え出動、最後に私が玄関の扉を閉めた刹那、Nikoが絶叫「No!」大抵ヨーロッパの扉はオートロックになっておれば、所謂インロック状態、即ち誰も鍵を持たずに外に出てしまったらしく、何と鍵はテーブル上に置かれっ放し。Stjepan宅は一軒家の2階部分を賃貸しており、況してやセキュリティー面を考慮して建造されておれば、窓から侵入する事も到底不可にして、はてさて途方に暮れるばかり。NikoとStjepanは何とか打開策を見つける故、先に会場へ向かってくれと、我々は彼等を残し迎えの車にて会場Mochvaraへと向かう。
午後5時半、会場へ到着すれども機材が到着しておらねば為す術もなし。会場近くに川原があれば散歩なんぞしてみた処で、先日のTarcentoの如き清流にあらず、何の変哲もない普通の川原にして犬の散歩やらジョギング等する所謂市民の憩いの場所とでも云えば良いか。ビールを呷りつつ川原にて昼寝、何もやる事がない事程、苦痛に感ずる事はなし。「ボ~ッとする」「リラックスする」なんぞ、私にとっては精神衛生上全く芳しくなく、何かやっておらねば落ち着かぬどころか不安にさえなる、東君の云う処の「回遊魚のような」性分なる故、時間に追われ忙殺される方が余程幸せなり。時間を不毛に消費する行為が耐え難き苦痛なれば、退屈極まりない長距離フライト等に於いても、このiBookにて仕事をこなしたしとは思えども、何しろ内蔵バッテリーが2時間しか保たぬのでは話にならず。四十路も目前となれば、時間に関する意識がより一層厳しくなりて、それもこれも自分の余命と、これから為し得んとする事に最低限要するであろう時間とのジレンマに、大いに悩まされる事に起因するか。例えばこのツアー日記にした処で、斯様な雑文をしたためるに当たり要する時間とは、これが実は可成りな時間であり、本来ならば自分にとって斯様に不毛な行為に要する時間なんぞ割いている場合ではなかろうが、そうは云えども書かねばならぬ因果もあれば、ならばなるべく早く脱稿せんと思えども、物理的にタイピングする時間等を考慮すれば、一朝一夕と云う訳にも行かぬのが実状なる。またレコーディング作業にした処で、30分の曲を録音すれば、最低限プレイバックするのみで30分を要する訳で、全編に渡りオーバーダブするともなれば、最低限30分×オーバーダブの回数分だけは費やすのであり、どう足掻いた処でこればかりは短縮する事なんぞ物理的に不可能なり。斯様に考えれば、即ち自分の余命全てを費やせども、既に為し得る限界は容易に推察可能にして、ではこれから「何を為して何を為さぬか」これを確と見極めて行かねば、結局余命を無闇に浪費するのみにして、何も為し得ぬまま人生の終焉を迎える事にも相成ろう。されど「何を為して何を為さぬか」なんぞとばかりに頭と時間を使っておれば、それこそ愚の骨頂、思案し悩む行為こそ時間の浪費の極みなれば、結局は迅速且つ直感的な決断が優先される下りとなり、されどそれ故に回り道させられる経緯もいと多し。慌てる乞食は貰いが少ないとの諺もあれど、イラチやねんからしゃあないやろが。
為す事なければ今まさに退屈の限界点に達さんと云う刹那、Niko一行が到着。何でも合鍵を見つけしとかで事なきを得た様子。これにて漸くサウンドチェックかと思いきや、先ずは腹ごしらえとNikoが大量にピザを持参。種類はあれどもどれも似たような味にして、何よりどれもこれも塩っぱ過ぎて到底食える代物にあらねど、空腹なればビールにて胃袋に流し込むのみ。

せんせいと田畑君は「Shark」なるエナジードリンクを購入、Tシャツもペアルック状態なれば、2人して「Shark Brothers」を名乗る。このShark Brothers、今宵はその凶暴極まるパフォーマンスを発揮するのか、それとも甘い一夜を演出するのか。

そもそも今宵は何をやったらええのやら?サウンドチェックに於いて、漸く今宵のラインナップが判明、ドラムセット2台、ベースアンプ1台、ギターアンプ2台が用意されておれば、兄ィとせんせいとStjepanがローテーションにて2台のドラムセットを使用、田畑君と兄ィと7 That Spellsのベーシストの3名がローテーションにて1台のベースアンプを使用、私とNikoが各々1台ずつギターアンプを使用、東君と7 That Spellsのシンセ奏者も各々DIを使用、田畑君と東君と私の3名の前にマイクが用意され、この編成にてジャムセッションにてライヴを行う手筈。

午後9時開場、情宣はネットのみらしけれど、この広い会場がほぼ満員となる客入り。いよいよ開演すれば、ボーカルに専念せし田畑君のロック魂が炸裂、物凄いアクションにしてその姿はまるでロックスター。兄ィのベースプレイを聴くのも久しぶりにして、私もギターパートの殆どをNikoに任せ、気分はCalifornia JamのGlenn Hughesにして、一体いつ以来となるか、20年ぶりともなろうかシャウト!シャウト!シャウト!もう何が何か訳判らぬ阿鼻叫喚地獄状態なれど、客席を見れば大いに踊り狂うておられ、こりゃ一体何なんや、Freak Out Discoか。気分はまるでイカれた60年代のGo Go clubなり。この夜の様子もビデオにて撮影されておれば、いつの日かリリースされる日が来るやも知れぬ。

終演後も客の帰る様子なく、会場内は巨大酒場状態にして、その喧噪が鬱陶しければ、独り川原にて満月を眺める。月は日本でもヨーロッパでも同じように見えると云う、心地良い月光浴を満喫すれば、Stjepan宅へと車数台に分乗して戻る。祭好きの東君は、この乱痴気騒ぎを大いに楽しんでいる様子にして、どうやら意気投合せし仲間も出来た様子なれば、これから徹夜で飲み明かすと云う。日本男児が如何程頑強たるか、クロアチア人にその恐ろしさを篤と味わわせたれ!

Stjepan宅に戻るや、例によってNikoを始め大勢押し掛けパーティー状態、その喧噪の中、最後の1袋となりし出前一丁に玉子を打ち込み夜食とす。せんせいも出前一丁を啜っておられれば、先程グラサンのレンズの片方を女の子に踏んで割られてしまえども、出前一丁の美味さの前には怒る気にさえならぬとかで、美食は世界をピースフルにするか。

兄ィは早速キッチンにて調理開始、今宵は何と豚汁に挑戦、これまた羨まし過ぎる逸品なり。「うん、うん、う~ん、美味いよ」例の兄ィ節が聞こえて来れば、こちらはもう辛抱ならぬ状態なり。

「いっぱい作ったからみんなで食べて」待ってました、その一言。慈愛に溢れる兄ィの優しさに感謝しつつ、さて皆で豚汁を頂けば「うひょひょひょひょ~っ!」頬が緩むとはこの事か、あまりの美味さに何故か笑えてくるばかり「美味いですねえ!美味過ぎますねえ!美味過ぎると云っても過言ではないですねえ!」思わず「美味い3段活用」最上級まで一気に駆け上がれり。

パーティーもいつしかお開きとなり皆寝静まる中、私とせんせいのみ、テラスにてワイン片手に、お互いの心霊体験談やら超常現象体験談等語り合いては「ひぇえええええ!怖過ぎるぅ~!」と戦慄すれど「でもここはヨーロッパやから、何か出て来ても言葉判らへんし、大丈夫ちゃう」等と気休めにもならぬ言い逃れを口にしては、結局夜明けまで延々語り続けし。午前5時就寝。

(2005/9/13)

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